2015/05/31

透析患者さんの化学療法

 日本の透析患者さんにおいて悪性腫瘍は死因第三位(一位は心血管系、二位は感染症)で、透析患者さんは高齢なこともあり悪性腫瘍に罹りやすい(Jpn J Clin Oncol 2011 41 752)。透析患者さんに化学療法する時には、薬剤毒性と副作用による合併症のリスクと、抗腫瘍効果のベネフィットを慎重に検討しなければならない。どちらが予後を規定するか分からないからだ(performance statusが低い場合はリスクが高くなるだろう;ひとつには低アルブミン血症で薬剤が血中にfreeで多く存在するようになるからだが)。それでもやる時には、どうするか。透析患者さんに細胞傷害性薬剤を投与する場合の腎用量を提案したレビューがあるそうだ(Ann Oncol 2010 21 1395;高齢非透析慢性腎不全患者のものはEur J Cancer 2007 43 14)。が、古い文献なうえに「薬剤調整は要る」「要らない」「データがない」などとしか記載がなく余り使えないそうだ。モノクローナル抗体は網内系で代謝されるため透析患者さんにも使いやすいとされているが、まだ長期データがないので注意は必要だ。また分子標的薬(nibs)は肝代謝だが、高率に重症高血圧を起こしときにPRESまで合併することから、使用時はきちんと降圧することが重要だ(Bull Cancer 2012 99 371)。