ラベル 横紋筋融解症 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 横紋筋融解症 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2015/11/26

Rare Cause of Prerenal AKI

 代謝性アルカローシスの腎外性の原因に結腸絨毛腺腫があることは以前に触れたが、そこで止まっていた。しかし調べると、大量の体液喪失により腎前性腎不全・アニオンギャップ開大アシドーシス・横紋筋融解症・(低K血症にともなう)不整脈まできたす重症なものには特別にMcKittrick-Wheelock syndromeという名前がついているそうだ。

 1954年に初めて報告され、以来消化器系の雑誌に"rare cause of diarrhea"という報告が無限に出されている(からどれくらいレアなのかわからない)。しかし腎臓内科系の雑誌にはほとんど報告がないので大量の体液分泌の機序がよくわからない。どの論文も「腺腫(場合によっては癌化していることも)を取ったらよくなりました」で終っている。

 Prostaglandin E2の過分泌によるもので、COX inhibitorを使って治療することもあると書いた論文があった(Surg Endosc 2014 28 2247)が、出典がない。COX inhibitorを使えば腺分泌は抑えられるかもしれないが輸入細動脈も締まってしまうとおもうが。酸塩基平衡をちゃんと読んで病歴を聴いていれば、いつかは下痢と腎前性腎不全の症例で出会うかもしれない。





2014/02/18

Peerの重要性

 一緒に働いている先生方に言われるまで、IgA腎症のレビュー(NEJM 2013 368 2402)も、横紋筋融解症のレビュー(NEJM 2009 361 62)も、知らなかった。Peerの重要性はここにある。自分ひとりでは出来ない。こうやって高めあえる相手がいることが大事だ。

2013/01/15

ヘビと腎臓内科

 そういえば今年は巳年。インド出身の研修医が、インドではヘビ毒による溶血、横紋筋融解、ショックなどで腎障害になる例があとを絶たないと教えてくれた。調べると、インドで年間3万人がヘビに咬まれて死亡しているという(Ann Trop Med Public Health 2012 5 335)。

 北米の毒ヘビについてはNEJMのレビュー(NEJM 2002 347 347)があって、Viperidae(クサリヘビ科)、Elapidae(コブラ科)、Hydrophidae(ウミヘビ科)などの分類、毒ヘビとそうでないヘビの見分け方などが書かれていた。日本にいるマムシもハブもクサリヘビ科だ。

 腎不全のリスク因子はCK高値、抗毒素血清投与の遅れ、子供など。ブラジルのスタディ(KI 2005 67 659)によれば、100例のヘビ(Crotalus durissus)咬傷のうち29%がGFR60ml/min以下の急性腎障害、そのうち24%が透析を要し10%が死亡した。

  そんな怖い動物ヘビだが、沖縄ではなんと毒ヘビ入り泡盛というのが売っているらしい(エラブウミヘビを漬けたものはイラブー酒という)。アルコールはヘビ毒よりも強いのか…?


2012/12/26

PRIS

 うちの腎臓内科は毎月麻酔科インターンがローテートして、SICUのAKIなどを中心に様々な病態を学んでいく。そんな彼らがRenal Grand Roundで発表するのはたいてい麻酔科と腎臓内科のボーダー領域で、いままで何人もがPRIS(propofol infusion syndrome)の話をしてきたが、こないだのが一番よくまとまっていた。とはいえ私はたいてい発表者に参考文献(J Intensive Care Med 2011 26 59)を聞いて裏を取る。

 Propofol、あるいは2,6-diisopropylphenolは、ベンゼン環が胴体、OH基が頭、二つのイソプロ基が腕のように見える。PropofolはGABA受容体を刺激したりNMDA受容体を阻害したりして鎮静する。PRISは、飢餓やcritically illな患者さんにおいて主要なエネルギー源となる脂質代謝による細胞内エネルギー産生をPropofolが阻害して起こると考えられている。

 現在考えられている二つの主要な機序の一つは、TCAに入るAcetyl-CoAを減らすこと。遊離脂肪酸はAcyl-CoAになりミトコンドリア外膜を通過し、Acyl-CoAがAcylcarnitineになりCarnitine-Acylcarnitine Translocaseによってミトコンドリア内膜を通過し、Acylcarnitineが再びAcyl-CoAになって、β酸化を経てAcetyl-CoAになってTCAに入る。PropofolはAcyl-CoAをAcylcarnitineに変換するCarnitine Palmitoyl Transferase Iを阻害する。

 もう一つの機序は、ミトコンドリア内膜で起こる酸化的リン酸化(respiratory chain)の阻害だ。酸化的リン酸化は爆発的なATP産生で生命維持を可能にするプロセスで、ここを阻害する薬は青酸とか劇薬が多い。PRISにおいてPropofolはなんと4つあるComplexのうちIIとIVを阻害する(青酸はCytochrome Cを阻害)。

 PRISは稀だが起こると重篤になりえる(症状は低血圧、徐脈、致死的不整脈、横紋筋融解、急性腎障害、代謝性AGアシドーシスなど多岐に及ぶ)から、ICUでAGが上昇し始めたら、数ある代謝性アシドーシスの原因のなかでもPRISを疑う必要がある。リスク因子は若年、高用量(4-5mg/kg/hr以上)、持続静注(48時間以上)、カテコラミン使用、ステロイド使用など。