尿の色というのは非常に興味深いと思う(そう思うのは腎臓内科医だけなのかもしれないが、、)
以前にRainbow urineの記事を投稿している。今回は、Pink urineを症例をとおしてみていこうと思う。
一般的には疾患では血尿、溶血性貧血、ミオグロビン尿(横紋筋融解症)、ポルフィリア症、食べ物ではビーツ、ルバーブ、ブラックベリーなどで見られることが多い。
下記に各種の尿の色ごとの鑑別のをのせる。上は薬剤にともなうもの、下は疾患や薬剤に伴うものの鑑別になる。
薬剤によって尿の色の変化 |
尿の色に伴う鑑別 |
症例:
21歳男性がヘロイン使用に伴う急性の呼吸不全と急性腎不全と敗血症でICUに入院。検査の結果黄色ブドウ球菌による肺炎が判明。呼吸状態の悪化と低酸素、呼吸性アシドーシスのため挿管管理となった。鎮静にはプロポフォールが用いられた。
翌日患者は血清Crが1.1mg/dlから1.8mg/dlに上昇し、尿沈渣で下図のようなピンク色のが出現。
これを酸性と塩基性にして偏光顕微鏡で確認してみると酸性下では多染性の尿酸結晶を認め、塩基性下ではまとまりのない結晶を認めた。
患者は、その後補液により腎機能は改善し、3日後に抜管もでき退院することができている。
■Pink urine syndromeとは?
尿がピンクで、尿沈渣でピンクの沈殿物がある場合とない場合があり、原因が溶血、薬剤、食事によるものでないものになる。主な原因は尿中尿酸増加やプロポフォール投与の影響を受けることによって生じる。
・どんな人に起こりやすいのか?
観察研究で、肥満男性、プロポフォール下で手術を行われた人、尿pH低下がある人で多く起こることがわかっている。その際に急性腎不全がある人は必須の条件ではない。
つまり、Pink urine syndromeのリスクに関しては、BMIが多い、男性、尿中pH低下があり、特に腎機能低下には左右されない(KI 2004, Urol res 2006, AJP 2018)。
・尿中pH低下はどのように起こる?
そもそも、尿中pHは尿中の水素イオンとアンモニア分泌によって決定される。アンモニア分泌が減少し遊離水素イオンが増えることで尿中pHは低下する。
尿中pH低下は尿酸排泄低下と尿酸結晶の生成を起こす。また、尿酸結晶の生成においてインスリン抵抗性が併存している場合が多い(Sci rep2018)。
・インスリン抵抗性と尿pH低下について
インスリン抵抗性は尿のアンモニア産生を抑制させ、尿中の遊離水素イオンの上昇とともに尿の酸性化を起こす。尿中pH低下は尿酸結晶産生に傾かせる。
・インスリン抵抗性と尿中尿酸排泄低下について
インスリン抵抗性によって尿細管のURAT1が亢進し尿酸の腎排泄が低下し、ABCG2トランスポーターの活性化低下で尿酸排泄が低下する。
Anesthesia 1998より |
NHE3(renal tubular sodium-hydrogen exchanger) Nrf2 (nuclear factor-erythroid 2 related factor2) KI 2018を改変 |
今回、この記事を書いていて色々と勉強になった。そもそも、尿がピンク色になることが、ここまで複雑だとは思わなかった。