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2020/11/23

先生!尿の色が変です! 〜Pink urine syndromeについて〜

 尿の色というのは非常に興味深いと思う(そう思うのは腎臓内科医だけなのかもしれないが、、)

以前にRainbow urineの記事を投稿している。今回は、Pink urineを症例をとおしてみていこうと思う。

一般的には疾患では血尿、溶血性貧血、ミオグロビン尿(横紋筋融解症)、ポルフィリア症、食べ物ではビーツ、ルバーブ、ブラックベリーなどで見られることが多い。


下記に各種の尿の色ごとの鑑別のをのせる。上は薬剤にともなうもの、下は疾患や薬剤に伴うものの鑑別になる。

薬剤によって尿の色の変化


尿の色に伴う鑑別

症例:

21歳男性がヘロイン使用に伴う急性の呼吸不全と急性腎不全と敗血症でICUに入院。検査の結果黄色ブドウ球菌による肺炎が判明。呼吸状態の悪化と低酸素、呼吸性アシドーシスのため挿管管理となった。鎮静にはプロポフォールが用いられた。

翌日患者は血清Crが1.1mg/dlから1.8mg/dlに上昇し、尿沈渣で下図のようなピンク色のが出現。


これを酸性と塩基性にして偏光顕微鏡で確認してみると酸性下では多染性の尿酸結晶を認め、塩基性下ではまとまりのない結晶を認めた。



患者は、その後補液により腎機能は改善し、3日後に抜管もでき退院することができている。


■Pink urine syndromeとは?

尿がピンクで、尿沈渣でピンクの沈殿物がある場合とない場合があり、原因が溶血、薬剤、食事によるものでないものになる。主な原因は尿中尿酸増加やプロポフォール投与の影響を受けることによって生じる。

・どんな人に起こりやすいのか?

観察研究で、肥満男性、プロポフォール下で手術を行われた人、尿pH低下がある人で多く起こることがわかっている。その際に急性腎不全がある人は必須の条件ではない。

つまり、Pink urine syndromeのリスクに関しては、BMIが多い、男性、尿中pH低下があり、特に腎機能低下には左右されない(KI 2004, Urol res 2006,  AJP 2018)。

・尿中pH低下はどのように起こる?

そもそも、尿中pHは尿中の水素イオンとアンモニア分泌によって決定される。アンモニア分泌が減少し遊離水素イオンが増えることで尿中pHは低下する。

尿中pH低下は尿酸排泄低下と尿酸結晶の生成を起こす。また、尿酸結晶の生成においてインスリン抵抗性が併存している場合が多い(Sci rep2018)。

・インスリン抵抗性と尿pH低下について

インスリン抵抗性は尿のアンモニア産生を抑制させ、尿中の遊離水素イオンの上昇とともに尿の酸性化を起こす。尿中pH低下は尿酸結晶産生に傾かせる。

・インスリン抵抗性と尿中尿酸排泄低下について

インスリン抵抗性によって尿細管のURAT1が亢進し尿酸の腎排泄が低下し、ABCG2トランスポーターの活性化低下で尿酸排泄が低下する。



・外因性・環境因子とpink urine syndrome
そのほか、外因性や環境因子のものとしてはこの症例でもあったようにプロポフォール投与や外科手術(尿酸排泄増加)、術中のADH(抗利尿ホルモン)増加がある。
ADHはGLUT9トランスポーター活性を低下させ、尿酸の再吸収低下させ、ABCG2、NPT1などの尿酸分泌を起こすトランスポーターの活性化を抑制させる。
しかし、Pink urine syndromeを引き起こす関連性が強いのは、プロポフォール投与が最も強く、ADH分泌も関連がある。外科手術に関しては、先行研究からも必ず必要な条件ではない。

Anesthesia 1998より



まとめると、Pink urine syndromeが起こるには、1〜5が必要になる。まとめたものが、下の表のようになる。
1:慢性的な高尿酸血症:尿中に尿酸が排泄されるため
2:尿酸排泄が亢進している:プロポフォールなどで生じる、ADH分泌でも生じる
3:尿の酸性化:尿酸結晶生成に必要
4:適切な腎機能:尿酸クリアランス維持に必要
5:慢性的な酸化ストレス:酸化ストレスがビリルビン産生が増加し、ビリルビン代謝に伴いピンクの尿が上昇。




NHE3(renal tubular sodium-hydrogen exchanger)
Nrf2 (nuclear factor-erythroid 2 related factor2)
KI 2018を改変

今回、この記事を書いていて色々と勉強になった。そもそも、尿がピンク色になることが、ここまで複雑だとは思わなかった。



2018/09/08

血尿と蛋白尿での鑑別(メモ程度)

 今日は簡単に、図が多い投稿なのでカンペ用にぜひ。

 僕もよく混同する腎疾患の鑑別についてであるが、腎炎を見た際には

 ・Nephrotic syndrome
 ・Nephritic syndrome

 を鑑別することが重要である。

 簡単には

 Nephroticは蛋白尿主体で血清アルブミン低下し浮腫をきたす。
 Nephriticは血尿主体で高血圧・腎機能障害の合併をきたす。

 下記にわかりやすい図を添付する。






 では、これらがわかった場合の鑑別は好発年齢なども重要となるが、パターンも非常に
重要である。




 このようにして考えると非常に腎炎の鑑別もしやすいのではないか?




2018/09/01

ナットクラッカー症候群(Nutcracker syndrome)

 ある日外来をしているときにこんな患者が来たとする。

 30歳の女性で、繰り返す肉眼的血尿のエピソードと左背部痛を認めている。特に体液過剰はなさそうである。検査ではGFRは正常で尿中蛋白定量・アルブミン定量でも正常範囲。レントゲンなどの画像所見でもはっきりしない。膀胱鏡で検査をすると左の尿管からの血液の流出がある。

 診断はなんだろうか?

 まず、左からのみということで腎炎で血尿を生じうるようなIgA腎症やTBM(Thin basement membrane)などは鑑別からは除外されてくる。

 年齢が高齢であれば、尿管癌などの悪性腫瘍の可能性は非常に高くはなるが、この症例は30歳であり可能性は低い。

 診断は、Nutcracker症候群(通称:くるみ割り症候群)である。

 まず、これについてであるが下の図がわかりやすい。


Annals of vascular surgery


 通常であれば、上腸間膜動脈(SMA)と腹部大動脈によって左腎静脈は挟まれないが、

 ①左腎静脈の圧迫が生じる
 ②左腎静脈圧の上昇をきたし、血尿や腰部痛の原因となる。
 ③男性では精巣静脈瘤、女性では骨盤血流鬱滞や月経困難症や性行時痛の原因となりうる。

 頻度は女性に多い。

 診断には

 ・カラードップラー
 ・CTやMRIでの静脈造影
 ・膀胱鏡で左尿管からの血尿の確認
 ・静脈造影

 などを行うが、まずは侵襲性の少ないものから大きなものにする必要がある。

 下記にCTでの画像を提示する。左腎静脈の拡張が確認できる。


Mayo 2010より


Mayo 2010より

これは、2017年度の論文でNutcracker症候群の診断の基準や管理がUpdateされましたよという論文からの診断アルゴリズムである。

 これも、重要なこととしては非侵襲的なものから詰めていくという形になっている。


Eur J Vasc 2017より

では、治療であるが経過を見ることがまずは多い。中等度の血尿や耐えられる症状であれば経過観察をする場合が多い。

 特に、18歳未満の子では基本的にはSMAの発達もしてきて、その過程で圧迫が解除される可能性があり経過を見ることが多い。また、側副血行路も発達し改善をする場合も多い。

 だが、外科的な適応になる場合もある。

 重度の血尿・腹痛や貧血などの重度な症状・腎機能障害・持続する起立性蛋白尿などは手術適応に考えられる。

 また、経過を見ていた場合でも18歳未満であれば2年間様子を見ても改善しない場合、それ以上の年齢では半年経過を見ても改善しない場合は手術適応になる。

 手術は開腹手術・腹腔鏡手術・ステント留置などがあるがここでは詳細は割愛する。

 とても、血尿診断では大事なのでマスターしよう。







2017/06/25

抗凝固薬と腎機能障害 4

では、診断と治療に関してであるが以前にも述べたようにこんな疾患があるという事を疑う事が非常に重要である。


特にAKIがあって、直近のPT-INR>3.0の人には鑑別のなかに入れるべきである。
しかし、DOACの場合にはINRでは判断できない。


ここで、AKIを診断する話になるがAKIの診断で重要なのは3つである。
①病歴
 -(その人がどんな薬をのんでいるか?血圧低下のエピソードが直近でないか?造影剤を直近で使用していないか?)
②画像検査
 -腹部超音波検査で水腎症の有無や腎の大きさの確認でCKD合併の鑑別など
③尿沈渣
 -尿沈渣で顆粒円柱や蝋様円柱の存在がATNを示唆しないか。


まず、これを行いAKIの原因を絞り込むことが重要である。


その後ARNの鑑別には血尿(顕微鏡的でも肉眼的でも)の有無を考える必要がある。




ただ、しっかりと診断をつけるのであればもちろん腎生検ではあるが、出血リスクが非常に高いため行う事は推奨されていない。


なので、診断に関しては腎生検をなるべくまずは避けて、AKIの原因を探るという事が重要である!まさに、患者さんに病歴を聞いたりすることが非常に重要になっている!!




治療に関してであるが、基本的には支持療法である。
・INRを治療域にすぐに戻すことが改善につながるかについては不明確なところである。
だが、できることとしては糸球体内圧を低下させるために血圧のコントロールを行い、抗凝固薬の量の調整を行う事である。


予防がやはり大事でワーファリンを使用する場合には、しっかり評価を行いながらすることが重要となってくる。


DOACを使う際にもヨーロッパのガイドラインでは3か月毎には腎機能をフォローすることが推奨されている。
下記にどのくらいの頻度での推奨期間かを示して、このシリーズは終了する。


Initiation (3 months)Maintenance
GFR > 60 mL min−1GFR 30–60 mL min−1GFR < 30 mL min−1
  1. GFR, glomerular filtration rate; DOAC, direct oral anticoagulant.
Warfarin3–4 weeks6 months2–3 months2–3 months
DOAC3–4 weeks12 months6 months3 months


薬はいい部分も悪い部分も大きいので、しっかりと注意をしていく必要性がある。





2017/04/20

無症候性の顕微鏡的血尿の診断方法でコストがいいのは?(Cost-effectiveness of Common Diagnostic Approaches for Evaluation of Asymptomatic Microscopic Hematuria)

腎臓内科の外来で紹介患者で多いのは何だろうかと考えたときに、やはり検尿異常で紹介となる患者が多い。
そのなかで、今回は無症候性の顕微鏡的血尿にフォーカスを絞ってみた。


今回はJAMAの論文に無症候性血尿を精査する時にコスト的にいいのは何かという論文があった。
健診などで偶然発見された無症候性顕微鏡的血尿が、生命予後に直接影響するか明らかでない。
しかし、イスラエルの報告では16–25 歳(60%が男性)1,203,626 人では0.3%に持続血尿を認め,その22 年間の経過観察では持続血尿例の0.7%,非血尿例の0.045%に末期慢性腎不全の発症を認め,糸球体疾患による腎不全のリスクが約32 倍に上昇していたという報告があり、慢性腎不全の発症リスクの上昇に繋がる事も言われている。


ただ、無症候性血尿で注意をいなくてはいけないことは尿路上皮癌の存在である。
精密検査を受けた無症候性血尿の1.4 - 6.0% に尿路悪性腫瘍が発見されたとの報告がある。


尿路上皮癌罹患年齢は男女とも45 歳ころから増加し始め,60 歳以上で急に増加する。尿路上皮癌の危険因子として,
40 歳以上の男性,喫煙,有害物質への暴露,肉眼的血尿,泌尿器科疾患の既往,排尿刺激症状,尿路感染の既往,フェナセチンなどの鎮痛剤多用,骨盤放射線照射既往,シクロホスファミドの治療歴
がある。


日本のガイドラインでは顕微鏡的血尿があった場合に悪性腫瘍の検索も含めた検査としては、腎膀胱超音波検査+尿細胞診 ± 膀胱鏡となっている。
膀胱鏡検査に関しては、上記の危険因子を有している高リスクには適応になる。


では、前置きが長くはなったが、今回の論文を見てみる。
無症候性血尿に対して悪性腫瘍の検索という点で効果的に費用をかけすぎずに検索する方法は何かを4つの検索方法を比較しているものである。10000人の患者に対して。


① CT検査単独
② 膀胱鏡のみ
③ CT検査と膀胱鏡検査併用
④ 腎膀胱超音波検査と膀胱鏡検査


結果として腎膀胱超音波検査と膀胱鏡検査が最も費用対効果(費用でみてがんの発見が高かった。)がよかったという結果になった。
腎膀胱超音波検査をCT検査に置き換えて再度見ているが、1人追加でがんが見つかったが莫大にコストは増加してしまった。


なので、現状は我々はこの血尿患者さんはリスクが高いのかな??と判断する必要があり、その中で必要な人には腎膀胱超音波検査と膀胱鏡検査の併用が検査ではいいのではと感じた論文であった。



2016/07/05

How many is many?

 尿中の変形赤血球(dysmorphic RBC、図はNEJM 1996 334 1440;浸透圧により金平糖状になったcrenated RBCとはことなる)は一般に糸球体由来を示唆するが、どれくらい見られたら有意なのか?アメリカ時代に自分で鏡検してなんとなく「半分あれば確実だけど」くらいのイメージだったのと、Mayoで検査技師をしてから医者になった研修医がいて「25%」といっていたのを勝手に信じ込ていたが、ふとしたきっかけを与えられて調べてみるとじつはこの問いについては一定した見解がないらしい。10-90%と幅がある(Nephron Clin Pract 2010 115 c203)。先月AJKDに尿沈渣のレビュー論文がでたが(AJKD 2016 67 954)、やはり施設ごとまちまちの基準を用いているとあり、「どんなに優れた眼を持った人が評価しても変形赤血球だけで糸球体か非糸球体かを決めることはできないと肝に銘じること」と結論づけられている。
 日本はおおくの施設で検査技師さんのレポートを参照するため、日本腎臓学会の血尿ガイドライン(2013年)は日本臨床検査標準協議会 JCCLS 尿沈渣検査法指針提案 GP1-P4(2010)を載せている。これはhigh power fieldでみられたRBC総数あたりの糸球体型RBCの割合に応じて、30%くらいまで(ただし糸球体型RBCだけで5-9/hpf以上あること)が「少数」、60%くらいまでが「中等度」、それ以上が「大部分」と分けるそうだ。「赤血球形態情報は臨床側との協議に応じて記載する」と書いてある。検査室からオーダーした先生に「こんな赤血球が見えたのですが」とか「変形赤血球は中等度です」とかコールしている病院もあるのだろうか。また赤血球の粒度(テクスチャの粗さを表す程度)によって変形型、均一型に分けて表示する自動分析装置もあるが、これは参考と考えられているようだ。