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2017/06/06

低ナトリウム血症におけるreset osmostat(reset osmostat in hyponatremia)

 今回、低ナトリウム血症の中のreset osmostatについて触れたいと思う。

 僕はこの概念を知ったのは後期研修医になってからと比較的遅かった。最初はよくわからないなと感じて、今回この論文(AJKD 2017)をよんで色々と分かった部分もあり、つねに勉強することが重要だなと感じた。

 まず、入院患者の低ナトリウム血症で最多の原因としてはSIADHといわれている(Eur J Endocrinol 2010)。
 
 SIADHにおいてはADH調整パターンは下記のように4つあると言われている。

 ①:古典的SIADH:浸透圧とは関係なしにADHが出てしまう(悪性腫瘍などに多い)。
 ②:視床下部のバソプレシン抑制ニューロンの障害で持続的にバソプレシン(ADH)がでてしまう。
 ③:臨床的にはSIADHを疑うが、ADH増加はみとめていない。:まれだがバソプレシン受容体変異により不適切に抗利尿が働くパターン(大人にも子供にも表出)
 ④浸透圧調整系に対するバソプレシン反応も問題なく、集合管での濃縮希釈機能も問題ないが、ADH分泌の閾値が低い

 この中の④がいわゆるreset osmostatにあたる。

 これは、重度の神経学的な異常、肺疾患、感染症、アルコール依存、悪性腫瘍、外傷などでもみられる。

 古典的なSIADHとreset osmostatを分けることは治療にとっても非常に重要な部分である。SIADHであれば飲水制限が重要ではあるが、reset osmostatではそうではない。

 ・定義について

 基本的な事項として人間の体では、血清浸透圧は280-290mOsm/kgになるように調整されており、これが浸透圧系とよばれている。この調整に関わる因子がADHである。
血清浸透圧が<275mOsm/kgではADH分泌は抑制されるし、血清浸透圧が上昇すればADHが分泌し浸透圧を整える。

 しかし、reset osmostatでは、ADHの出る閾値が低く慢性的な低ナトリウム血症になっている。




 この図ははreset osmostatの患者で血清Naが低いのに尿浸透圧上昇しているのがわかる。



 この図はreset osmostatの患者の血清Naと尿浸透圧の推移であり、血清Na130前後で尿浸透圧の増加がある。

 ・検査について

 Reset osmostatの検査にはどんなものがあるかだが、水分負荷試験である。

 経口でも点滴でもかまわないが、10-15ml/kgの水分負荷をおこない、reset osmostatであれば4時間以内に水分負荷量の80%以上が尿から排出されるが、SIADHではこれがおこらない。

 これは、reset osmostatでは前述したように集合管の部分の機能は維持されているためである。

 ・機序について

 なぜ、これが起こるかに関しては様々なものが言われている。

 ①腫瘍浸潤や自律神経の疾患で抑制系に支障がきて低い浸透圧でADHがでてしまう。
 ②sick cellsといわれる細胞膜の障害で細胞内外の電解質のバランスが崩れてADHの早期分泌が生じる。

 妊娠はreset osmostatがしばしば生じるため注意をする。平均5mEq/L低下し、妊娠後8-10週で達する。

 ・治療について

 治療は前述した何らかの原因があるのであれば、そちらの治療を行う(結核が根底にあるならそちらの治療を)。

 補正をすることで、逆に狡猾が刺激される場合があるため無理に正常に戻す必要はない。

 今回の論文ではもともと中枢性尿崩症で慢性的にDDAVPを使用しており、その慢性的な使用がreset osmostatを生じたのではないかというものであった。

 DDAVPに関しては短期的な副作用で多いのは軽度の低ナトリウム血症や頭痛である。
長期的使用に伴う副作用の報告は少ない。

 慢性的にDDAVPを使う中枢性尿崩症などの症例に出会うことは腎臓内科医としては少ないかもしれない(内分泌科で管理が多いかと。)

 ただ、今回この論文からはreset osmostatについても勉強になる部分も多い。



2017/05/25

膜のいらない水の浄化

 透析室で大量の塩を消費している、と聞くとびっくりするかもしれない。食事に使っているわけでは、もちろんない。カルシウムやマグネシウム塩によるRO膜の劣化をふせぐために原水をあらかじめイオン交換樹脂に通すが、その樹脂を再生するためだ。それで、透析室には業務用の塩袋(写真はイメージ)が大量につんである。


 
 逆浸透圧(RO)法は海水の淡水化にも利用されるすばらしい技術だが、膜がデリケートで劣化が問題だ。高圧で水分子を漉しだすので多くのエネルギーを消費し設備コストがかさむのも課題だ。この技術を知ったとき、これで世界の水不足問題はあらかた解決するのではないかと思ったが、そうでもない。

 そこで、膜の要らない新しい技術がNature Communicationsに紹介された(doi:10.1038/ncomms15181)。この仕組みでは、水を一面は炭酸ガス、もう一面は空気に触れさせる。すると、H+とHCO3-による濃度勾配ができて、拡散泳動(diffusiophoresis)という原理によって不純物が移動してきれいな水と分離できる(図は論文より)。




 拡散泳動とは、イオンや溶質などの濃度勾配がある水溶液のなかにいるコロイド粒子が、濃いところにいると窮屈なので薄いほうに追いやられることだ(図はTexas Christian大学ウェブサイトより)。




 実験系は長さ1ミリに満たないミクロ規模だが、著者はスケールアップ可能という。将来的に、良質の飲み水が不足して病気が蔓延している途上国地域の都市部などで、工場やごみ処理施設などで発生するCO2を集めて水をきれいにするサステナブルな施設が安くできるかもしれない。

 血液透析の原理は腎臓に似ている面もある(図は限外濾過と糸球体濾過の比較)けれど、吸着透析とか新しい可能性が模索されてもいる(こちらこちらにふれた)。新しい技術や原理は、いまは未熟でもいずれあたらしい治療に結びつくかもしれないから期待したい。




 [2019年3月追加]海水の淡水化(desalination)についての考察が、Economist誌2019年3月2日号に載った。現在世界で15906の淡水化工場が稼動しており、1日あたり9500万立方メートルの淡水を生産している。

 その約半分をサウジアラビア、UAE、クウェートなどの中東・北アフリカ諸国が占め、シンガポールやカタールなど河や湖のない小国では、天然資源としての淡水よりもこうした人工淡水のほうが生産量が多い。
 
 世界の水不足を解決するうえでの問題点は主に三つあり、一つ目は地理だ。海が近くなければ、ただでさえ高い生産コストに輸送コストまで加わってしまう。二つ目は上述のように工場の設営と稼動に必要なコストで、膜の効率性など課題が多い。

 そして三つ目は産業廃棄物(brineとよばれる濃い塩泥、処理に用いられたさまざまな化学物質をふくむ)だ。淡水化工場が生み出す塩泥の量は淡水よりも多い。多くの場合パイプラインで沖合いの海底に捨てられるが、周囲の海水濃度を上げるなど生態系への影響が懸念される。

 こうした問題点もあることから、下水を上水に再生する(イスラエルは農業用水にしているが、シンガポールは飲料水にもしている)など他の方法も検討されているが、いずれもコストがかかる。

 こうした記事を読むと、水が比較的安価に手に入り不足を感じないなんて本当に恵まれているなと痛感する。

 


 

2017/05/15

火星だより 2

 前回、塩分6g/d食のひとが12g/d食になると、捨てる溶質が増えるが尿は濃縮するので自由水クリアランスがへる、つまり自由水が身体にたまるという話をした。いっぽう、6g/d食のひとが12g/d食になると水分摂取量はへる。これが液体の水分なのか食事中のも含むのかが分かりやすい場所に書いていないが、とにかく減る。


 塩を取れば血液の浸透圧があがり喉が渇き水分摂取が増える、という定説と違うが、尿データをかんがえると、溶質が増えても腎臓が尿濃縮で自由水をためるので、身体の浸透圧がさがり口渇がさがるということかもしれない。血液の浸透圧データはないので、詳しいことまではわからない。

 6g/d食から12g/dになって減った水分摂取量の差(図の薄い青)は、腎臓でためた水(図左バー)から不感蒸泄による喪失分(斜線)を差し引いた量(図の濃い青)にほぼひとしかった。一日水分摂取量が一日尿量より32%おおいことから、ためた自由水の32%が不感蒸泄ででていくと推定したそうだが、正確かわからないことは研究グループもみとめている。ちなみに火星探査の訓練なので、被験者は運動も肉体作業もした。


 このあと、彼らは塩をおおくとった時に腎臓が尿を濃縮する仕組みについて考えさらに実験をおこなった。まず一日Na排泄量(蓄尿Na濃度に1日尿量をかけて計算するので、UNaVと書く)と尿Na、K、尿素濃度の関係をみると、一日Na排泄量が多いほど尿Na濃度があがり、尿K濃度は変わらず、尿urea濃度は低くなった(それぞれ左、中央、右)。


 尿の尿素濃度と尿の濃縮にはどんな関係があるか?まず尿素と尿濃縮の関係をおさらいしよう(レビューはJASN 2007 18 679、図)。尿の濃縮に寄与するのは主にNaClと尿素で、NaClは有名なヘンレ係蹄のcountercurrent multiplicationで維持される。一方ureaは、とくに髄質内層の浸透圧勾配に重要だ。


 集合管をおりていく原尿はV2(バソプレシン)受容体の支配下にあるアクアポリン2を介して水を吸われるが、この部分は尿素を通さない。だから原尿が髄質内部の集合管(IMCD、internal medullary collecting duct)までくると尿素濃度はとても高くなっている。

 IMCDには尿素トランスポーターUT-A1、A3があって尿素は一気に間質にでていき、内腔と間質の浸透圧がほぼ等しくなる。それで浸透圧利尿で水が失われるのを防いでいる。その証拠に、UT-A1とA3をノックアウトすると(十分にたんぱくをあたえられた)マウスは水をどんどん喪失してしまう。

 高濃度の尿素を維持する仕組みのひとつはvasa rectaによるcountercurrent exchangeで、ヘアピンになった血管にあるUT-Bを通じて尿素が上がって降りてを繰り返す。もうひとつが尿素リサイクルで、ヘンレ係蹄のUT-A2を通じて間質の尿素が内腔に排泄され、遠位ネフロンをまわりIMCDでふたたび間質に再吸収される、の繰り返しだ。

 それをふまえてみると・・。

 尿の尿素濃度がさがることと尿の濃縮をむすびつけるひとつの考えは、尿素が尿に出てこないぶん腎間質にとどまり、濃度勾配をきつくして尿をいっそう濃縮させたというものだ。研究グループはそういっている。

 ただ間質の尿素濃度は測れないし、UT-A1、A3は濃度依存のトランスポーターだから間質の尿素濃度がたかければ集合管内腔の尿素濃度も高いかもしれない。尿素の摂取量はかわらなかったようだが、異化や同化がかわって尿素がつくられなくなったのかもしれない。この段階では、まだなんともいえない。塩分摂取が増えて尿素排泄がへる理由も、わからない。

 つぎに、研究グループは尿アルドステロン排泄とコルチゾン排泄をしらべたので、それをみてみよう。つづく。




2015/11/30

Stool Electrolytes

 私が初期研修したときには、腎臓内科が低Na血症の治療をするときに尿中Na喪失量だけでなく便中Na喪失量も測って、Naの出納を几帳面に測っていた覚えがある。そんな便中電解質だが、ここでは測れない。それに、調べた限りではどこでも測れないみたいだ。あの頃はどうしていたのだろう。

 しかし測れないことはないはずだ。というのも、便電解質は慢性水様下痢で浸透圧性下痢と分泌性下痢を鑑別する便浸透圧ギャップ(stool osmolar gap, SOG)を計算する際に用いられるからだ。

 SOGは便浸透圧 - [2 x (便Na + 便K)]で、unmeasured osmotic substanceが多ければ(125mmol/kgH2O以上)浸透圧性が示唆され、少なければ(50mmol/kgH2O以下)分泌性が示唆される。

 浸透圧性下痢には下剤の使用や乳糖不耐症、分泌性下痢には蠕動異常、内分泌疾患(糖尿病、副腎不全、甲状腺機能亢進症、肥満細胞症)、膵腫瘍(VIPoma、カルシノイド、ガストリノーマ)、IBD、腸管腫瘍、薬剤などがある(NEJM 2013 368 757)。

 あと便中電解質を利用するのが遺伝性塩素下痢(congenital chloride diarrhea, CCD)だ。便Clが100mEq/l、あるいは便Clが便Naと便Kの和よりも高いときに診断が示唆される。といってもCCDは稀で基本的には胎児・新生児疾患(写真)だが、腎外性の代謝性アルカローシスの鑑別で教科書に載っているから一応知っておかなければならない。成人発症も、ほんとうに稀だがある(Am J Med 1988 85 570、Am J Gastoenterol 2007 102 1329)。






2015/09/25

New Algorithm

 欧州三学会(集中治療、内分泌、腎臓内科)が昨年発表した低Na血症のガイドライン(それぞれが発表しているが腎臓内科はNDT 2014 29 S2 ii1)は、すでに和文誌でも詳細に取り上げられている(INTENSIVIST 2015 7 477)が、まだそれほど普及していない印象を受けるので、とりあげたい。そうなんだけど「ガイドラインをまとめる」というのは、ガイドライン自体がすでに「まとめられたもの」なので、うまくやらないと結局丸写しみたいになってしまって難しい。

 簡単には、このガイドラインでは新しいアルゴリズムが提唱されていて、そこでは大まかに①以前の体液量評価よりも尿浸透圧と尿Na濃度が前に来て、②重症・急性なら原因検索を待たずに治療(を考慮)というアクションが偽性や等張・高張浸透圧性低Na血症を除外したあとの最初に来ているという変化がある。

 尿浸透圧は水排泄能を見るよい指標だから(これなしに低Na血症を診るということはありえないように教わってきたので、「外注です」とか聞くとびっくりする)、これが前にでてきているのは理にかなっている。水排泄能はAVPと浸透圧物質摂取量(と腎機能)で規定されるので、尿浸透圧が低ければ(100mOsm/kg以下;この数字に根拠はないそうだが)、AVPがOFF(希釈して水を一生懸命排泄してもまだ余るほど水を摂取している)あるいは浸透圧物質がなくて水を排泄できず水が余る状態だ。

 ただ、尿生化学が先に来るからと言って、検査結果が出るまで指をくわえて待っているわけではない。腎臓内科コンサルトかなにかで、すでに尿検査結果がわかっている場合は別だが、そうでなければ結局検査を出す前に病歴聴取と診察で体液量をふくむ評価をすることに変わりはない。とはいえ体液量評価は難しいので、それを助けるために新しいアルゴリズムは腎臓の力を借りることにした。それが尿Na濃度だ。

 ここでは尿Na濃度のカットオフ値を30mEq/lとして、それより低ければ有効循環血液量が低下していると判断する。Würzburg大学(内分泌)のFenske先生がeuvolemic hyponatremiaとhypovolemic hyponatremiaの鑑別に20mEq/l、50mEq/lなどいろいろ実験して結局この値に落ち着いたらしい。有効循環血液量の低下は、心不全・肝不全・ネフローゼなどECFが拡張している場合もあるし、下痢嘔吐・敗血症性ショック・以前の利尿薬などECFが少ない場合もある。

 尿Na濃度が高ければ、まず腎のNa再吸収能が落ちていることによる原因(利尿薬、「腎臓病」←かなりアバウトだが)を除外する。そうでなければ①塩が捨てられECFが低下した病態(嘔吐←嘔吐初期には代謝性アルカローシスでろ過されてくるHCO3-を近位尿細管が再吸収しきれず、それに引きずられて尿Naも高くなる、renal / cerebral salt wasting;MRHEもここに入れていいかもしれない、一次性副腎不全→低アルドステロニズム、かくれた利尿薬使用)と、②ECFは正常にもかかわらず水排泄ができない病態(甲状腺機能低下症、二次性副腎不全→低コルチゾールによりACTHとAVPの抑制がされなくなる、SIAD←ADH過剰に似た稀な遺伝疾患も含めた総称)を考える。

 アルゴリズムというのは「頭のいい人たちがつくって、他の人たちが頭を使わなくてもいいようにしたもの」に感じられるので、個人的には自分の頭を使ってすべての患者情報と病態生理と鑑別診断をならべて総合的に判断したいなと思ってしまう。この論文でいえば、最初の病態生理の総論と一つ一つの原因の各論を読むのがやっぱりためになる(し、アルゴリズムではカバーされていないものも触れてある)。

 新しいアルゴリズムは尿生化学に重点を置いて、尿浸透圧ではAVPと溶質量を評価し(とくにAVPを中心においているのが正統的で)、尿Naで水過剰だけでなくNa喪失が従来よりもカバーされており(Na喪失の病態も結構多い…日本にとくに多いような気がする)、さらに有効循環血液量でECF低下と拡張の病態を統一的にしているのがすっきりしていると思う。アルゴリズムより、低浸透圧性低Na血症で尿浸透圧が100mOsm/kg以上のところから下流(そこまではお作法なので)を表か何かにまとめたら使いやすそうだ。



2013/03/27

ネフロンの大冒険 1/3

 19世紀後半から20世紀前半にかけて続いた、糸球体ろ過/再吸収と尿細管分泌の論争。しかし、糸球体と尿細管の間で揺れ動いてきたのは研究者だけではない。じつは生命そのものが、進化と適応の過程で両者の間を行ったり来たりしているのだ。どういうことか?ここで、5億年の間にネフロンが遂げた変化を追いかけてみよう。

 原始生物の腎臓には糸球体はなく、尿細管分泌による毒や老廃物の排泄を行っていたと考えられている(Am J Physiol Renal Physiol 2002 282 F1)。原始脊椎動物である円口類の腎はいまでもそうだし、amniotes(有羊膜類:爬虫類、鳥類、哺乳類の総称)が胎生期に利用するpronephros(前腎)も尿細管だけで糸球体はない(Dev Biol 1997 188 189)。

 糸球体があるとどう良いのか?例として淡水魚を考えてみよう。浸透圧が1mOsm/kgH2O未満の淡水では、浸透圧の高い体内に水がどんどん浸透してくる。その一方で、拡散により溶質は体外に出て行く。そんな環境で生きていくには、大量の水を捨ててしかも塩を保つ仕組みが必要だ。

 糸球体で体液をごっそりろ過すれば、水をじゃんじゃん捨てることができる。しかし体液をじゃんじゃん捨てたら死んでしまうので、貴重な溶質は尿細管(正確には遠位尿細管と膀胱上皮)でほとんど再吸収している。最終的な尿は40mOsm/kgH2O以下まで溶質フリーにできる(Am J Physiol Renal Physiol 2004 286 F811)。

 糸球体により淡水でも内部環境を維持することができるようになった脊椎動物。このあと彼らはネフロンの頭に糸球体を載せて岸から上陸し進化を遂げる一方、海水にも戻っていく。まず海の話をしよう。浸透圧が1000mOsm/kgH2O以上ある海水では体外に水がどんどん逃げ、塩が体に入ってくる。さて今度はどうやって体内環境を維持しよう?つづく。

2011/07/30

Osmotic gradient

 Furosemideがヘンレ上行脚のNa-K-2Clトランスポーターを阻害することは知られているが、そこで水の再吸収が行われているわけではない。ではなぜ、Furosemideによって水排泄が促進されるのだろうか。このように、現象としては常識なことも生理学的に問われると答えに詰まる。

 正解は、furosemideによってネフロンの浸透圧勾配(osmotic gradient)が消失するから。水の再吸収と尿の濃縮は、それぞれヘンレ下行脚と集合管で行われるが、そのためには腎髄質の高浸透圧が必要だ。これを維持しているのがヘンレ上行脚なのである。Na-K-2Clで細胞内に再吸収されたNaは、血管側にあるNa-K ATPaseによって汲みだされ体循環に帰っていく。

 この話は回診で一週間前くらいにあったが、なかなか一回聴いて全部覚えられるものではない(先生は一回で覚えなければならないとおっしゃるが)。同僚のフェローが同じ質問をしたら、先生は「この話、前にしたよね…」と言いつつちゃんともう一度教えてくれた。私も忘れていたので復習できてよかった。