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2021/03/15

満額回答、ADVOCATEトライアル

  アバコパンといえば、本ブログでも2017年から注目してきた経口C5a受容体阻害薬である。ANCA関連血管炎に対するADVOCATEトライアルが行われ、色よい速報結果が出ていたことは2019年にも紹介した

 当時からよい最終結果が予想されていたが、先月公式にNEJMから発表され(NEJM 2021 384 599)、「満額回答」といってよい結果であった。そこで、本ブログでも3度目になるが簡単に紹介したい(詳細は2019年の投稿を参照されたい)。

1. 患者

 参加したのは日本をふくむ20カ国で、対象はMPO-ANCAまたはPR3-ANCA関連血管炎で18歳以上(国によっては12-17歳も含む)の患者330人。BVASスコア主項目1つ以上、または副項目3つ以上、または血尿と蛋白尿の腎項目2つ以上が条件であった(ただしeGFRは15ml/min/1.73m2以上)。

 除外項目には、肺胞出血、腎代替療法を受けている、血漿交換や免疫抑制薬の治療歴、がん(5年以内)・感染症(結核・HBV・HCV・4週以内の生ワクチン)・心血管系イベント(12週以内)の既往、肝酵素上昇(正常上限の3倍以上)などが含まれた。

 患者の平均年齢は約60歳、女性は約4割、白人が約8割(アジア系は約1割)。約7割が初発(約3割が再発)だった。MPO-ANCAは約6割、BVASスコアは平均16点、臓器症状では腎が約8割と最も多く、平均eGFRは約45ml/min/1.73m2。次に全身症状・耳鼻咽喉・胸部・神経などが続いた。 

2. 治療

 寛解導入レジメンは①RTX4週間(375mg/m2、「半年おきの追加」はなかった;こちらも参照)、②点滴シクロフォスファミド14週間(15mg/kgを0・2・4・7・10・13週)、③内服シクロフォスファミド14週間(2mg/kg/d)。②と③は15週目から内服アザチオプリン(2mg/kg/d)。内訳は①が約65%、②が約30%、③が約4%であった。

 そのうえで、介入群はアバコパン(30mg1日2回)とプレドニゾンのプラセボ、コントロール群はプレドニゾン(60mg/dから20週で漸減;55kg未満では45mg/dから)とアバコパンのプラセボを投与された。

 ・・・が、じつは両群とも「隠れ」ステロイドが投与されている。RTX群はアレルギー反応予防に点滴されるし、スクリーニング前から入っていた患者もいる(4週で漸減中止された)。その量はプレドニソン換算で654mg(介入群)、727mg(コントロール群)であった。

3. 結果 
 
 「BVASスコア0」と「4週以上ステロイドOFF」で定義されたプライマリ・エンドポイントは、26週で標準治療群と非劣性、52週では有意にすぐれていた。

   介入群 対照群
 26週 72.3% 70.1%
 (非劣性についてp<0.001)
 52週 65.7% 54.9%
 (優性についてp=0.007)
 
 さらに、セカンダリ・エンドポイントのひとつであるeGFRは、26週・52週ともに介入群のほうが有意に上昇していた(単位はml/min/1.73m2、カッコ内は95%信頼区間)。

   介入群 対照群
 26週 +5.8 +2.9
  差2.9(0.1-5.8)
 52週 +7.3 +4.1
  差3.2(0.3-6.1)

 それだけでなく、ステロイドによる副作用をまとめた毒性指数(Glucocorticoid Toxicity Index、こちらの追記も参照)を両群で調べてみると、介入群で有意に低かった(26週時点、スコアは最小二乗平均で表示)。

      介入群 対照群
 GTI-CWS 39.7  56.6
  差-16.8(-25.6から-8.0)
 GTI-AIS 11.2  23.4
  差-12.1(-21.1から-3.2)

 また、患者QOLをSF-36とEuroQOL-5D-5Lのスコアリングで計測したところ、52週時点で量スコアとも介入群で有意に高かった。

 ・・ジャジャーン!という結果ではあるが、ここまでは2019年の速報値とほぼ同じである(「満額回答」と言われる所以である)。問題はステロイド毒性以外も含めた有害事象であるが、こちらも件数は対照群のほうが多かった。

    介入群 対照群
 全件  1779 2139
 重度  71   94
 致死的 8  22
 死亡  2   4
 
 有害事象のカテゴリー別内訳でも、対照群よりも多かったものはなかった。また、補体制御で気になる(エクリズマブ投与前にはワクチン接種しなければならない)髄膜炎菌感染は1件もなかった。

4. まとめと感想

 Steroid-sparing agent(ステロイドなしでやる薬)として、腎炎・ネフローゼ領域ではCNI・アザチオプリンなどがよく用いられ、最近はRTXもある。しかし、ほとんど誰も「寛解レジメン後はステロイドなし!」という診療をしようとはしなかった。

 だから今回、寛解レジメン中にプレドニゾン約600mg相当のステロイドが入ったとはいえ、その後ステロイドなしで寛解が維持できたのは、とても画期的なことである。コロンブスの卵みたいなことである。


こちらより引用


 もちろん、いくつかの懸念については考察しなければならない。

 まずは安全性である。有害事象がステロイドより少なく髄膜炎菌感染もなかったのは朗報であるが、比較的若い患者を対象にしてTB・HBV・HCV感染者を除外していることには注意が必要だ。RTX後のHBV劇症化も考慮すると、認可時に既感染者がどう扱われるかにも注目したい。

 また、いつまで使うかについてもきちんとした何かが今後必要になるだろう。長く内服するほど再発率は下がるだろうが、長期投与による「アバコパン毒性」がでてくる可能性もなくはないし、当然ながら高価な薬でもあるからだ(半年に1回のRTX追加が不要になるなら「トントン」なのかもしれないが)。

 とはいえ、時代を変える論文である。今後のANCA関連血管炎治療だけでなく、腎炎・ネフローゼ診療全般に強いインパクトを与えることだろう。

 アバコパンは日本でも今月に国内製造・販売・承認の申請が行われた。ADVOCATEには日本も参加しており、使えるようになるのはほぼ確実だろう。認可後に「コロンブスに続け」とステロイドのない海に漕ぎ出す医師がどれくらい腎臓内科にいるか、注目である。



フランシス・ベーコン『ノヴム・オルガヌム』表紙
(旧弊の学問からの脱却を説いた。こちらより引用)





2020/06/02

1/2の魔法(速報 MAINRTSAN3スタディ)

 ANCA関連腎炎の治療一覧でよく目にする、下図。内科学会誌5月号の腎炎特集(日内会誌 2020 109 886)にも、『専門医を目指すケース・メソッド・アプローチ 腎臓疾患(3版、2017年)』にも出てくるので、これが日本の標準的なケアなのだろう。


最下段は、追加治療や第二選択


 今回は、それを尊重しながら、以下の2点を考察したい。


1. 点滴シクロホスファミドの量


 「0.75g/m2」と聴くと、ループス腎炎のNIHレジメンを思い出す読者も多いだろう(Ann Intern Med 1996 125 549、こちらも参照)。もちろんANCAでこのレジメンを試したスタディはある(Arthritis Rheum 1998 41 1835)し、2012年のKDIGOガイドラインも以下のようになっている。


  • 0.75g/m2、3-4週ごと
  • 初回は0.5g/m2に減量(60歳以上、GFR 20ml/min/1.73m2未満も)
  • 投与2週後の白血球数が3000/mm3以上になるよう用量調節


 しかし、RAVEスタディ、RITUXVASスタディなどの代表的なスタディはいずれも、CYCLOPSスタディで用いられたレジメン(Ann Intern Med 2009 150 670、経口CYとの毒性・効果比較が目的)を使っている:


  • 15 mg/kg、2週あけて3回
  • そのあと3週あけて寛解後3ヶ月まで
  • 年齢・腎機能で減量(下図)


出典はこちら


 NIHレジメンは回数が少なくて済むが、体表面積の算出が手間だ。また日本のはKDIGOの「0.5g/m2に減」を半分にした、「0.25-0.75g/m2」と減量幅が大きい。

 医師の裁量と経験が反映しやすくなっているともいえるが、その根拠は不詳だ。日本人患者に欧米量のクスリを投与すると効きすぎることは確かに多く(フロセミドなど)、経験的な「1/2の魔法」なのかもしれない。


公開が待たれるディズニー映画、『1/2の魔法』
(出典はこちら

 
2. リツキシマブによる維持療法


 ANCA関連血管炎に対するリツキシマブの維持療法を延長したMAINRITSAN3スタディの結果が、きょう米国内科学会誌に発表された(doi:10.7326/M19-3827)。フランスの39施設が参加したものだ。

 対象は、ANCAの種類(PR3-ANCA:MPO-ANCAは約7:3)、初期治療の種類(シクロフォスファミドが6割、リツキシマブ4割、1例がメソトレキセート)を問わず、リツキシマブ維持療法(6ヶ月ごと0.5gを4回)を受けた97例。約半数がPSL 5mg/dを処方されていた。

 彼らをランダム化し、介入群は同様のリスキシマブ維持療法(4回、18ヶ月)を延長した。なお、介入群もプラセボ群もmPSL100mg・アセトアミノフェン1000mg・クロルフェニラミン5mgの前投薬をうけた。すると、延長28ヶ月後の無再発率は以下のようであった。




 有害事象の総報告数に有意差はなかったが、敗血症性ショックの発症は介入群にのみ2件あった(肺炎の発症は介入群で1件と、プラセボ群の4件より少なかった)。延長を正当化できるか、リスクと利益は考えなければならない。

 またスタディ患者は若く(平均63歳)、寛解後で腎機能も良好(eGFRは約60ml/min/1.73m2)、RTXの忍容性も高かった。やはり、日本でよく診る症例には、なんとなく「ステロイド±アザチオプリン(ミゾリビン)」が安全なようにも思える。

 しかし、同じ時代に「それで本当にいいんですか?」という文脈で行動し発表している人たちがいるのもまた確かである。その流れのなかにアバコパンがあり(こちらも参照)、リツキシマブがある(アザチオプリンと比較したスタディは、NEJM 2014 371 1771)。

 米国内科学会誌は「標準的なケアがまた変わる(again, changing the standard of care)」と題するエディトリアルを載せているが、こうした流れが日本の標準的なケアに(どんな魔法をかけて)波及するか、注目したい。

 


2019/12/04

速報 ADVOCATE試験

 2017年に速報した、C5a受容体阻害薬の小分子、アバコパン(こちらも参照)。その後行われていた、ANCA関連血管炎に対する第3相試験ADVOCATE(NCT02994927)が、先月終了した。そして11月25日には、はやくも製薬企業から速報が発表された(こちらなど)!




 さっそく紹介したい・・が、最初に、このニュースリリースが論文ではないことをお断りしておく(製薬会社がみずから発表しているのだから、当然ながら記事にはよいニュースしか書かれていない)。なお、筆者はこれら製薬企業に利益の相反を持たない。

 まず、治験情報によれば、ADVOCATEは、ANCA抗体はMPOかPR3かを問わず、BVASスコア(下表も参照)で①大項目1つ以上、②小項目3つ以上、③腎項目2つ(蛋白尿・潜血尿)のいずれかがあり、eGFRが15ml/min/1.73m2以上の患者が登録された(日本でも行われた)。速報は「20カ国の331人」というが、実際の年齢やANCA抗体・国の内訳、ベースのBVASスコア・腎機能などは未公開だ。


出典はこちら


 プロトコルは、いずれの群も①RTX4週間または②シクロフォスファミド12週間→アザチオプリンが入ったうえ、介入群はアバコパン(30mg1日2回)とプレドニゾンのプラセボ、コントロールの標準治療群はプレドニゾン(60mg/dから20週で漸減)とアバコパンのプラセボを投与された。プレドニン開始量は多めだが、パルスはせず、30mg/dから年単位で漫然と使うよりも累積量は少ないだろう。

 結果であるが、「BVASスコア0」と「4週以上ステロイドOFF」で定義されたプライマリ・エンドポイントは、26週で標準治療群と非劣性(介入群72.3%、標準治療群70.1%、非劣性についてp<0.0001)、52週では、有意に優性すぐれていた(介入群64.7%、標準治療群54.9%、優性についてp=0.0066)。
 
 さらに、セカンダリ・エンドポイントのひとつであるeGFRは、26週・52週ともに介入群のほうが有意に上昇していた(26週では介入群5.8ml/min/1.73m2、標準治療群2.8ml/min/1.73m2、p=0.04;52週では介入群7.3ml/min/1.73m2、標準治療群4.0ml/min/1.73m2、p=0.02)。eGFRが15ml/min/1.73m2未満の患者が除外されているとはいえ、期待させるデータである。

 それだけでなく、ステロイドによる副作用をまとめた毒性指数(Glucocorticoid Toxicity Index、追記も参照)を両群で調べてみると、介入群で有意に低かった(増悪のみをカウントするCummulative Worsening Scoreは介入群で39.7、標準治療群で56.6、p=0.0002)。また、患者のQOLも介入群で高かった(SF-36とEuroQOL-5D-5Lが用いられた、数値は未公開)。

 ステロイドを使わないアバコパンのレジメンで、ステロイドの害を避けてしかもより有効に寛解できるなら、いいことづくめだ。あとは、アバコパン長期投与の安全性と、この試験の適応範囲を確認しておくことだろう。

 まず安全性であるが、プロトコル上、アバコパンのレジメンにはアバコパンを「何年続けたらやめる」といった期限が見当たらない(製薬会社にとってはいい話だろうが)。GTIが低く患者QOLが高いのはよいが、当然ながら副作用のない薬はないので、確認が必要だ。

 たとえば、おなじ補体阻害薬のエクリズマブで有名な、髄膜炎菌などナイセリア属への易感染性はどうか?アバコパンはmembrane attack complexの形成を阻害しないとされるが、これについてのデータは未公開だ。実際にどうだったかは来年論文が出るのを待たねばならない。

 次に適応範囲であるが、まずはスタディどおり「(GFRが15ml/min/1.73m2以上の例で)RTXまたはシクロフォスファミド後の維持として、ステロイドの代わりに、アザチオプリンと併用する」に限定されるだろう。しかしスタディでみられたGTIの低さとQOLの高さを考えると、ゆくゆくは「なんとなく(しかたなく)ステロイド」という使用を置き換える可能性もある。


 腎臓内科領域は自己免疫疾患を扱う他科に比べてステロイド依存が強い感もあるが、実際には「他の免疫抑制薬で恐ろしい感染症を起こすよりはまし」というネガティブな使用も多い。また、「ステロイドでなんとかなってる」と言いながら、じんわり確実に累積する毒性で多くの患者が命を落としているのかもしれない。

 今回の結果は、そこからやっと脱却できるチャンスにつながる可能性がある。

 なお補体阻害薬は、じつはアバコパンの他にもさまざまな創薬が試みられており、先日もその一つであるCRIg/FHがループス腎炎のMRL/lprモデルマウスでステロイドより優れた効果を示したと発表される(doi:10.1186/s12882-019-1599-0)など、ホットな領域だ。この新しいパラダイムで、これからより一層安全で有効な薬が登場することを期待したい。






[2019年12月11日追記]上記のステロイド毒性指数、GTIとは何か?調べてみると、ステロイド量を減らす(ステロイドに代わる)薬の治験での使用を意図してごく最近生まれたものだった(Ann Rheum Dis 2017 76 543)。GTI composite scoreは下記のように、9つの領域について31の項目からあてはまるものを選び、点数を総計する。項目や点数の重み付けは、19人のエキスパートによるコンセンサスで決められた。




 感染のグレードとは聞きなれないが、米国の国立がん研究所が出しているCTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)グレードだとすれば、以下のようになる。




 また、下記のリストはSpecific Listと呼ばれ、スコアと別に特記される(アステリスクをつけたものに関しては、上記Composite Scoreの最高点にもなる)。

BMI上昇*
糖尿病性網膜症*
糖尿病性腎症*
糖尿病性神経障害*
高血圧性緊急症*
PRES*
骨密度低下*
脆弱性骨折*
重度のステロイド筋症*
重度の皮膚症状*
サイコーシス*
ステロイドに起因する暴力行動*
その他の重症な神経・精神症状*
グレードIVの感染*
グレードVの感染*
副腎不全
消化管穿孔
消化性潰瘍
骨頭壊死
腱断裂
中心性漿液性脈絡網膜症
眼内圧上昇
水晶体嚢後部の白内障

 上記Composite Scoreを加点・減点したものは、改善分も加味するためAggregate Improvement Scoreと呼ばれ、マイナス36点から439点の値をとる。いっぽう増悪した加点のみ総計するのが、Cummulative Worsening Scoreだ。

 ・・・とまあ、極めて複雑だが、幸い計算アプリが開発中だ(デモをこちらから入手できる)。ADVOCATEにおける20点程度の両群間の有意差が臨床的にどれくらいなのか(どの領域にどのような差があったか、など)は、論文も待ちたい。

 それにしても、ステロイド毒性を客観的に評価する一般的なツールがいまだ存在しないというのは、驚くべきことだ。論文著者は、ステロイド毒性が「仕方のないこと(fact of life)」と諦められている現状を問題視してこの指数を作ったという。それだけでも、大事な一歩だろう。




2017/05/16

速報 ANCA血管炎とアバコパン

 ACPのメンバーシップは日本内科学会より高い、とくに海外会員だと高い。それでも、その価値があるとおもうから払う。ACP JournalWiseという最新論文お知らせ機能からメールがとどき、JASNにANCA血管炎とアバコパンの論文がでたことをしらせてくれた(doi: 10.1681/ASN.2016111179)。

 インパクトあるので、速報する(火星だよりは後日お送りします)。アバコパン(Avacopan)は経口のおくすりで、C5a受容体の選択的な阻害薬だ。モノクローナル抗体ではない、小分子だ(図)。




 アバコパンは、以前からMPO-ANCA血管炎をおさえることが動物実験でわかっていた。今回の対象はMPOとPR3がだいたい半々、平均年齢50歳、BVASスコア13-14(63が最重症)、平均eGFRは40-50ml/min/1.73m2。薬を作ったのはカリフォルニアのバイオベンチャーChemoCentryx社だが、患者さんはヨーロッパだ。規制がゆるかったのだろうか。

 導入療法にサイクロフォスファマイドないしリツキシマブをもちい、それにくわえて①ステロイド60mg/d、②アバコパン30mg2T2x+ステロイド20mg/d、③アバコパン30mg2T2xのみ、の3群にわけた。どうやらステロイドパルスはしなかったようだ。12週フォローした結果、BVASスコアはこうなった。ステロイド単独より併用がよく、併用とアバコパン単独はあまりかわらない。




 肝腎のeGFRには差がなかった。比較的eGFRが高い群で、フォロー週数も短いからなんともいえない。蛋白尿の低下は併用群でステロイド単独より有意にさがった(アバコパン単独もさがったが有意ではなかった)。

 いっぽう副作用はどうか。どの群も有害事象の割合はおなじだが、アバコパン単独で多かった副作用には高血圧(ステロイド群より割合が多い)、血管炎(定義は?)、リンパ球減少があった。同じくC5を押さえるエクリズマブは髄膜炎菌予防などが必須だが、この薬はどうなのだろう。

 ステロイドを置き換える薬となると、ANCA血管炎だけでなく幅広く使えるかもしれない。まだ選ばれた軽症の患者層で短期間つかっただけなので、これからの研究に期待したい。







 

2017/04/23

MPO-ANCA関連腎炎とMMF

 ANCA関連血管炎といえば日本ではほぼMPO-ANCAで、ほとんどがご高齢の方の印象だ。だから疫学がちがえば、治療が違っていいのかもしれない。ステロイド、ときどきミゾリビンやアザチオプリン、リツキシマブはつかっても1回、うまくいけば半年後もう一回、というように副作用を避けながら丁度よいさじ加減で治療するのもひとつの考え方なのだと思う。

 中国でもMPO-ANCAが多いらしく、MPO-ANCAにかぎった関連腎炎の腎予後について一施設で215人の患者さんを後ろ向きに振り返った論文がCJASNにでた(CJASN 2017 12 142)。いろいろと、違いを考えさせられた。ただし平均年齢は52歳(37-59歳)と日本で見かける臨床像より若い。最初のCrは平均で3.8mg/dl、34%が最初に透析を必要とし、約4割に肺病変があった。

 全員がステロイドセミパルス(500mg methylprednisolone/dを3-6日間)+免疫吸着ないしDFPPをうけ、そのあとステロイドパルス単独、サイクロフォスファミドパルスの併用、またはMMFの併用を受けた。KDIGOの推奨といっても、米国や欧州など限られたところでしか行われていないのかもしれない。病理のタイプや腎機能などさまざまな層別化をしているが、治療群でいうとMMF併用群で予後がよかった。



 もちろん相関しかないが、同じグループが以前におこなったサイクロフォスファミドとMMFの有効性をくらべた試験(NDT 2008 23 1307)のコホートを流用しているので、意外とランダム化されているかもしれない。MMFをつかう可能性について考えさせられる。以前にMMFをANCAにつかった試みを調べて、寛解の報告はあったが欧米のものだった。

 このスタディは人種が近いとはいえ年齢が若いから、高齢の日本人MPO-ANCA血管炎にそのまま当てはめるとおそらく感染症は増えると思う。ただ、どう治療するか議論されているひとつの参考にはなるかもしれない。現にこの結果は、3月に東京でおこなわれた国際血管炎・ANCAワークショップでも発表されている。


2012/09/07

MMF in ANCA-associated vasculitis

 ANCA-associated vasculitisの治療は、cyclophosphamideが主要な治療だが、毒性がつよいため他の薬はないか?ということでrituximabが試されたことは知っている。しかし、これは腎臓内科ではあまり使われてこなかった薬で、高価だし、注射後にサイトカインショックみたいな副作用が起こることもあるので、尻込みする腎臓内科医は多い。

 第三の選択肢はないかと探したら、MMFが試されていたことが分かった。欧州のスタディ(Ann Rheum Dis 2007 66 798)では、cyclophosphamideを最大量用いたが再発した、出血性膀胱炎や骨髄抑制など副作用がひどい、などの32例を対象にステロイドと共に1g 2x/日のMMFを投与した。

 結果は、完全寛解率78%であった。ただし、ほとんどの症例がPR3-ANCA陽性例で、腎病変が約半数にみられたもののmedian creatinineは1.1mg/dlであったこと、そしてMMF投与後に半数で感染の合併症がみられた(一人がaspergillosisで死亡した)ことに留意する必要があるだろう。

 もう一つのスタディはMayo Clinicが行ったもので(CJASN 2010 5 445)、MPO-ANCA陽性のmicroscopic polyangiitisで、腎病変(ただしCrが3mg/dl以下)が尿沈渣または腎生検でみられた17例に対してステロイドと共にMMFを投与した。用量は750mg 2x/日で始め、一週間後に1000mg、副作用がなければ1500mgに漸次増量した(さらに薬または代謝物の血中濃度を測っている)。

 結果は、投与後6か月で76%がprimary outcome(BVASスコアがゼロでcreatinineが同程度か減少)した。GFRは最初の6か月で変わらず、その後少し上昇した。蛋白尿は漸減した。58%が副作用を経験したが、上気道炎、消化器症状、白血球減少などいずれも軽度で用量を減らすことでだいたい改善した。

 比較試験ではないし、single centerなスタディだが、internal validationは高い。似たようなピンポイントな症例があってcyclophosphamideは使いたくない、という時にはエビデンスとして応用できそうだ。Patient characteristicの表がないが、median ageは64歳、10/17人は男性、全員がCaucasian、10/17人が初発だった。


2011/12/03

UNC Chapel Hill v. EUVS

 今日はrenal vasculitisの講義があった。先生はUNC Chapel Hillの出身だ。UNC Chapel Hillといえば糸球体腎炎の全米における最大のセンターであり、全米屈指の腎臓内科センターらしい。そんなことも知らなかった。そんな先生が「悔しいけどEUVS(欧州の血管炎研究グループ)のほうが質の高いスタディをしてるのよねー、でも彼らは論文を発表するのが遅い!」とか言うのを聞くと「本場で鍛えた人は違うなあ」とか思う。

 さてそんな先生の講義で分かったのは、腎血管炎(ANCA-associated vasculitits)の治療が9年前と変わっていないことだ。IV cyclophosphamideのほうがPO cyclophosphamideよりも短期間で積算投与量が少なく毒性を減らすことができるらしい。maintainanceにはAZA(azathioprine)のほうがMMF(mycofenolate mofetil)より優れている(EUVSのRCT、NEJM 2003, 349, 36-44)。

 血漿交換も、これまたEUVSがRCTをしており(MEPEX study: JASN 2007, 18, 2180-2188)腎機能の悪い例(Scr 5.8以上、あるいは透析を要する)では血漿交換とcyclosporine(とステロイド)を併用した群でESRDへの進行が有意に防がれた。彼らのprotocolが"7 exchanges in 14 days, exchange volume of 60mg/kg/session, with albumin replacement"だったので、皆それに従っている。

 以前に紹介したRAVE trialも、腎臓内科医(やリウマチ内科医)が「cyclophosphamideよりも毒性の少ないクスリはないものか?」と何年もかけて探し求めた文脈の中で生まれたと気付かされた。それでcyclophosphamideとrituximabを組み合わせようなどという話にはならないわけだ。MTXなども試され、重要臓器が冒されていないケースでは関節痛などの症状を緩和するらしい。

2011/09/16

RAVE

 同じ薬でも、科によって違う病気に用いられて、その薬がもつイメージが違う。たとえばrituximabはその良い例だ。hematology/oncologyにいた頃は、なんとなくCHOPのオマケ(R-CHOP)のように軽く使っていた。もちろんSIRS様の副作用を起こした例も経験したのでbenignな薬でないことは知っているが、他のheavyな化学療法に比べると軽い感じがした。リウマチ内科にいた頃は、使う機会こそなかったが、いろんな病気に用いられ始めておりimmunomodulatorsの一つくらいに感じられた。

 それが、腎臓内科に来たらみんなのこの薬に対する見方がチョット違うのに気づいた。こないだ「ANCA-associated vasculitisにrituximabとcyclophosphamideとどちらがいいか?」という問いに対する二つの論文(NEJM 2010, 363, 211とNEJM 2010, 363, 221)がgrand roundで紹介された。前者はANCA-associated renal vasculitisを対象にしたもので、12か月の時点で両者にremission、severe adverse effectの率に差がなかった(not superior)。

 後者(RAVE study)はANCA-associated vasculitis(Wegener or microscopic polyangiitis)を対象にしたもので、6か月の時点でrituximab群のほうがprimary endpoint(BVAS/WGスコア)に達する割合が高く(non-inferiorityを満たし)、再発患者のremissionについてはcyclophosphamideより優れていた。severe adverse effectの率には差がなかった。

 先生方は、ritaximabには否定的な意見であった。たしかに後者の論文は明らかにフォロー期間が短くこれだけでは何も言えない。前者もnot superiorならあえて高額なrituximabを選択することはないということになる。fertilityが問題になる場合は別だが、ANCA-associated vasculitisはSLEと違いたいてい50代から発症するのであまり問題にならない。私は「どっちも一緒に使ってみたらどうかな?」と思ったが。