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2018/11/22

心臓が悪い人は腎臓も悪いのか?? 〜前編〜

 腎臓の増悪を腎臓内科としては防ぐことが重要である。

 腎臓が悪くなる原因に色々とあるが、心臓が悪いというのは一つ大きな原因として見かける。

 今回は、慢性腎不全(CKD: Chronic Kidney Disease)と心機能が低下している人について考えてみる。

 ある症例を見てみよう。

 もともと慢性腎臓病で腎臓内科外来に通院していた80歳男性。この男性は、高血圧と心筋梗塞の既往があり循環器内科にも通院している。心臓に関しては収縮機能の低下した心不全(HFrEF: Heart Failure with reduced Ejection Fraction)として管理されている。内服薬はアスピリン、βブロッカー、ループ利尿薬、スタチン、ARBを内服している。バイタルは、血圧:118/70mmHg、心拍数:62回/分、呼吸数:16回/分。身体所見上は軽度のpitting edemaを下肢にに認めるが、JVPの上昇などは認めていない。生活の中では、悪い時にはNYHA class Ⅱの症状を夜間に感じるが朝には改善するとのこと。

 もともと外来では血清Cr:1.3-1.6mg/dL程度であったが、ここ2年間では2.1-2.3mg/dLと増悪を認めている。特に尿蛋白定量や尿所見での新たな異常の出現はない。。

 心機能に関しては心エコー所見でEF 38%であった。

 ここで疑問がわく。

 ◆これは、心腎症候群 (CRS: Cardio Renal Syndrome)なのだろうけど、HFrEFの患者でCKDを持っている人はどのくらいなのだろうか??

 ◆この人にとってベストな治療はなんだろうか??

 CRSの機序に関しては、下記の図が非常にまとまっている。


AJKDより引用


 このような場面は、よく遭遇する機会が多い。今回はこの部分を少し考えれたらと思う。

 ・まず、HFとCKDが共に起こる割合はどうか?

 –これに関しては、年齢上昇とともに並存する割合は増加する。また、高血圧、糖尿病、心血管疾患、腎疾患などのリスクファクターに強く影響を受ける。

 ☆エビデンスとして・・

 ADHERE(The Acute Decompensated Heart Failure National Registry)の報告から、12万人のうっ血性心不全で入院した患者の半数以上がCKDの並存があったとしている。

 HFrEF、HFpEF( Heart Failure with preserved Ejection Fraction)の患者が混合しているが、25の研究のメタアナリシスで55%の患者が、CKDを有していることが示された。

 →なので、まず最初の疑問のどのくらいかに関しては50-60%の割合で持っていることがわかる。

 ・では、このように高率で併存する場合に何か悪いことがあるのだろうか?

 –これに関しては、腎機能の低下と死亡率の上昇は先行研究によって示されている。下図が非常にわかりやすいが、CKDのステージが進行すると共にこの場合は生存割合は減少することがわかる。





別のデータ(USRDS)からもCKD患者の40%以上が慢性心不全を併発するのに対し、CKDがない患者では20%未満になることもわかっている。(下図)




 なので、我々は腎不全の進行を抑えることは心不全の併発の割合を抑えているんだなーと感じながら管理をする必要がある。

 ただ、腎機能だけを見ているわけにはいかず、ARIC(The Atherosclerosis Risk in Communicate) studyから、尿中のAlbumin/Cr比が心不全発生に関与していることも示されているため、尿中のデータも見て行く必要がある。




 では、次の疑問のどのように管理すれば適切なのかであるが、今日は長くなってしまったので次回にしようと思う。

 何かコメントあれば、Twitterにぜひ!

 https://twitter.com/Kiseki_jinzo

 とても、commonではあるが非常に重要なテーマなのかなと思う。



2018/09/07

冠動脈と腎臓 透析では

 では、透析患者に話を移す。

 まずは、下の図は2010年頃の米国の透析患者の死因を表にしたものであるが、見ていただくと心疾患の関連死が非常に高いことがわかる。




 では、なぜこんなに多いのかについては、直接的に大きく関わるのは左室肥大である。
よく透析患者で心胸郭比を測定する場面を多く見ると思うが、心胸郭比管理は左室肥大管理で非常に重要である。

 では、なぜ左室肥大になるか?

 ・心筋の線維化や細血管の変化が生じることで生じると言われている。

 この原因となるものは、

 ・貧血、高PTH血症、RAA系の活性増加、FGF23の上昇、リン・カルシウムなどのMBD管理、高血圧、血管の石灰化、volume overloadなどが原因としてはあげられる。
 
 ・FGF23はLVHとの関連性に関しては2013年のNDTにも詳しく述べられており非常に重要な要素である。

 ・血圧に関しては、CLIMB studyDRIP studyで体重増加での血圧の上昇、体重減少での血圧低下が示されている2000年第後半の研究である。

 ・心筋の変化は剖検での症例(下図)からも腎臓が悪くなるに従い繊維化の増加、血管の数の減少、心筋細胞の割合が減少しているのがわかる。これは、臨床試験でPETを用いたものでも同様の結果が示されている。


Int J cardiologists 2014より


 透析患者の心臓では(一般的にもだが)、LVHがあること、EFの低下(収縮能の低下)が合併すると死亡リスクは非常に高くなることがわかっている(sem in dial 2003)。

 また、2013年のCJASNでもESRDの進行に伴う心機能の変化を見ており、透析患者ではEFの低下が認められる。


CJASN 2013より


 また、2014のJASNからもCKDのステージが進むにつれて心筋の変化は強くなることもわかっている。


JASN 2014より


 では、透析患者ではなぜこのように変化が起きやすいのか?

 一つのキーワードが"Myocardial Stunning"である。

 透析患者では除水をかける以前から心血管血流は低下していると言われ、透析中には心筋虚血が生じ、透析が終了して回復しても心筋壁運動の低下が持続している状態になると言われ、これが心筋の繊維化や心収縮能の低下につながると言われている。下図と論文は非常に秀逸である。


Rev cardiovasc 2011より 


 今回は、治療の話まではできていないが、僕たちができることはこのような現象をおこさいないためにどのようにするかが、透析患者の突然死(以前の投稿)にも直結するのではないかと思う。