2012/01/29

丁寧な診療

低ナトリウム血症の患者さんでADH(抗利尿ホルモン)分泌を見つけるのはたやすい。尿浸透圧が血漿浸透圧より高ければADHはオンだからだ。その意味は、患者さんが水(H2O)をため込んでいる(holding on to water)ということだ。
 ただそこから、なぜADHが出ているのかを見つけるのはたやすくない。まずvolume statusを見定めなければならないが、どの患者さんもたいていa little bit of浮腫があって、a little bit of起立性低血圧があるからだ。
 そのうえでADHが訳もなく(inappropriatelyというが)出ていると判断した時にどうするか。これまたどの患者さんも少しの痛み、少しの鎮痛剤、少しの嘔吐などがあって(これらはADH分泌刺激)、それらに帰着させようとしがちだ。
 こないだ診た患者さんは、一週間前の退院時には135mEq/lのナトリウムが今度の入院時に120mEq/lだった。その後生理食塩水を与えられた結果ナトリウムが114mEq/lになって(生理食塩水が尿よりも希釈なため塩をあげるつもりが水を余計にあげてしまったということ)コンサルトが来た。
 このような急性の低ナトリウム血症ではその期間に何かがあったと考えるのが常套だ。新しい薬、新しい何か。重喫煙者で末梢血管障害の合併症で血栓溶解療法の為に入院、そして再入院になったことと、コルチゾールが低値だったことから、adrenal hemorrhageから副腎不全かなあなどと考えていた。
 しかしこういう一本槍な推理をすると、当たるも八卦当たらぬも八卦だ。たしかに患者さんは血圧も低めで、カリウムは少し高く、HCO3は低めであった。果たしてACTH刺激試験をすると副腎の反応は良好で、結局この推理は否定。確かに副腎不全crisisっぽい切迫感のあるlethargyがなかった。
 代わりに指導医がADH分泌腫瘍を疑って、重喫煙者なことから胸部レントゲンを撮ってみるとなんと腫瘍が。腫瘍疾患は慢性の経過をとるので急性なプレゼンテーションの鑑別診断には入れないという落とし穴を、経験豊かな指導医が補って診断にいたった(まだ確定はしていないが)。
 たしかに、言われてみると痛みや嘔吐といったよくあるADH刺激因子がこの患者さんには見られず、ADHはジャンジャンでているのに(尿浸透圧は約600mOsm/kgと、生理食塩水の約二倍)その理由が見当たらなかった。そういうときにはSIADHの原因疾患リストを思い出し丁寧に捜査を進めなければならない。

2012/01/22

idrabiotaparinux

なお、antidoteのある新規抗凝固薬も開発されている。そのひとつがidrabiotaparinuxで、これはfondaparinuxを安定化して週一回の皮下注射でいいように工夫したidraparinuxに、さらにbiotin分子をくっつけたものだ。idraparinuxは、AMADEUS study(Lancet 2008 371 315)でwarfarinと比較されたが、出血のリスクが高くスタディは中止になった。
 これは新規抗凝固薬のなかで大っぴらに失敗が示された最初の例であったが、開発者(と製薬会社のSanofi aventis)があきらめずにこの薬にビタミンB群のbiotinをくっつけて、卵タンパクのavidinを注射すればこの薬がavidinにひっついて血液循環から除けるようにした。
 idrabiotaparinuxをidraparinuxと比較したスタディがPE/DVT患者を対象に行われ(J Thromb Haemostat 2011 9 92)、薬効はidraparinuxとほぼ同じだった。出血リスクもほぼ同じだが、idrabiotaparinuxの投与群で出血したうちの3例にavidinが用いられ、彼らはみんな助かったらしい。現在PE/DVTに対するphase III trialが進行中だ。
 これらの薬はfundaparinuxのイトコであるから、主に尿排泄でありCrClが30ml/min以下の人には用いられない。fundaparinuxのタンパク質結合率が94%(ATIIIに結合)であるから、おそらくこの薬も透析で除くことはできないと思われる。avidinによって血中から除けるのならよいが、どれくらいeffectiveに除けるのかはどこにも書いてない。

新規抗凝固薬

Atrial fibrillationは最もcommonな心疾患のひとつであり、しかも脳梗塞予防に用いられる抗凝固薬がwarfarinでほぼ独占されていることから、多くの製薬会社が新規抗凝固薬の開発に血道をあげている。warfarinは薬物相互作用も多く、vitamin K摂取量などにより薬物血中濃度が不確定なので抗凝固作用のモニタリングが必要で、薬が効き過ぎればひどく出血するし、horribleな薬だ。
 だからそれに代わる「安全で便利な」抗凝固薬が待たれているわけだが、いまのところ米国では2つの薬、欧州ではさらにもうひとつの薬が認可されている。ひとつはdabigatran(Pradaxa)で、これはBoehlinger Ingelheim社の商品だ。もうひとつはrivaroxaban(Xarelto)で、これはJohnson & Johnson配下のJanssen Pharmaceutica社の商品。そして今のところ欧州でのみ認可されているのがapixaban(Eliquis)で、これはPfizerとBristol-Myers Squibbが共同開発した商品だ。
 rivaroxabanとapixabanはともに、direct factor Xa inbitorと呼ばれる。おなじfactor Xa inhibitorのfundoparinux(Arixtra)がヘパリン同様にATIIIを活性化することでfactor Xaを阻害する(UpToDateにも載っている有名な図、NEJM 1996 334 724を参照)のに対し、rivaroxabanとapixabanはATIIIを介さず直接にfactor Xaを阻害する。
 rivaroxabanはROCKET AF trial(NEJM 2011 365 883)でwarfarinと比較され、non-inferiorityが示された。尿排泄66%(主に尿細管からのactive secretionらしい)で、ClCrが30ml/min以下の人には"avoid use"とされている。ちなみにこれは95% protein-boundで透析可能ではない。だから前掲の患者さんがこの薬を飲んでいたら、私たちが透析で助けることは出来なかったかもしれない。
 apixabanはARISTOTLE trial(NEJM 2011 365 981)でwarfarinと比較され、同じくnon-inferiorityが示された。これはall-cause mortalityがwarfarinよりも有意に低いことを示した初めてのスタディでもあるという。いまのところ欧州でのみ用いられているが、FDAが認可のためのpriority review(fast-trackのようなものか)を始めて、三月までに決定が下されるらしい。
 rivaroxabanもapixabanも、dabigatran同様に抗凝固作用をreverseするantidoteがない。PCC(prothrombin complex concentrate)がrivaroxabanの抗凝固をreverseしたという論文(Circulation 2011 124 1573)は出たが、この製剤は欧州でのみ用いられている。透析でも除けないし、心配だ。2012年は、多くの新規抗凝固薬が出ては消える年になるかもしれない。

Dabigatran

今月は働きながら将来のことを色々考えているが、それはさておきnephrology grand roundで発表したことをまとめておく。一日一日に出来ることをする、防日区画室(一日という区切られた時間)のなかで目の前にあることに集中する、そして信じること。ともかく始める。
 発表したのは、経口direct thrombin inhibitorのdabigatran(商品名pradaxa、日本ではプラザキサ)が透析可能かという話だ。この薬はnon-valvular atrial fibrillationの脳梗塞予防に用いられる新しい薬だ。結論から言うと、タンパク質結合35%、分子量は約400、distributionは50-70Lだから透析可能だ。製造者の行った実験によれば、透析二時間で約60%が除ける(Clin Pharmacokinet 2010 49 259)。
 この薬は80%が腎排泄で、腎機能が悪い人には注意が必要だ。米国ではCrClが15-30ml/minの患者にdose reduction(75mg 2x/d)、CrClが15ml/min以下の患者には"no recommendation provided due to insufficient evidence"となっている。カナダではCrClが30ml/min以下の患者には禁忌だ。というのも、この薬のnon-valvular atrial fibrillationにおける効果・副作用をwarfarinと比較したRE-LY trial(NEJM 2009 361 1139)で、CrClが30ml/min以下の患者は除外されているからだ。
 なぜ私がこんな話をするかと言えば、この薬がFDAに認可されて約一年(2010年10月)たったある日、"dabigatran内服患者がlife-threatening bleedingでやってきて、いま無尿の急性腎不全に陥って困っている"というコンサルトを外科ICUから受けたからだ。約10L輸血して、二回手術して、FFP・血小板・Factor VII・cryoprecipitate、etc、あげられるものは全てあげたが出血が止まらない。
 この薬は抗凝固剤だ。抗凝固剤には出血のリスクがある。当たり前のことだ。しかしこの薬には抗凝固作用をreverseする薬がない。だから認可される前から外科、消化器内科などがとくにこの薬に心配していた。循環器内科医は「RE-LY trialではlife-threatening bleedingはwarfarinのほうが多かった」と言うが、このスタディでdabigatran投与群はdrop out(経過フォロー中に飲むのをやめてしまった人)の率が高かった。それにGI bleedについてはdabigatranのほうがwarfarinより多かった。
 無尿になったらdabigatranは体内にとどまってしまい、出血も止まらない。それにドバドバ輸血していたら血中カリウム濃度も上がってしまうしvolume overloadにもなってしまうだろう。だから透析することにした。透析カテーテルを抗凝固の効いた患者さんに挿入するリスクはあったが、右内頚静脈にあった中心静脈カテーテルをガイドワイヤーで入れ換えただけで済んだ(その分外科ICUが左内頚静脈にラインを取ってくれたわけだが)。幸い出血もおさまり、なにより患者さんの腎機能が回復して、危機を脱することができた。
 この患者さんは幸い一命を取りとめたが、この薬が認可されてから世界で(製造者が把握しているだけでも)260の出血による死亡例が報告されており、FDAもついに先月からinvestigationを始めた。さらに今月この薬がMIリスクを上げるというmeta-analysisが出て(Arch Int Med, published online on Jan 9, 2012 doi:10.1001/archinternmed.2011.1666)、この薬がマーケットに残れるかどうかは分からない。
 いずれにせよ、①透析可能性(dialyzability)、②新規抗凝固薬、について学習する良い機会だった。なにより患者さんが助かってよかった。②については別に簡単にまとめる。

2012/01/12

二匹目のドジョウ

Journal clubでフェローがAJKD一月号からOral CalcitriolがIgA腎症で尿タンパクを減少させるというスタディ(AJKD 2012 59 67)を紹介した。これはOral calcitriolが2型糖尿病のalbuminuriaを減少させると発表したVITALスタディ(Lancet 2010 376 1543)と同じ研究者が発表したのに続く、二匹目のドジョウだ。VITALスタディはまだ読んでいないが、こっちのほうは残念ながらstatistically significantでもclinically relevantな結果とは言えず、publication biasと言えそうだ。もっとも患者群のGFRが高く(70-80ml/min)、CKDが進行して1,25-Vitamin Dが作れなくなった患者群には有効かもしれないという希望的な可能性は残るが。

NxStage

Home dialysisの患者さんを診ることがある。うちの病院はNxStageという機種を使っており、こないだhome dialysis nurseに色々教わった。考えてみれば在宅血液透析は日本にほとんどないだろうから少し書いてみる。NxStageは透析膜やチュービングがカートリッジになっており、機械にそれを嵌め込むだけなので簡単だ。それに透析液をセットし、患者さんのアクセス(fistulaあるいはcatheter)にhook upすれば準備完了だ。
 透析液は5Lバッグに入っているのを吊り下げればよい。またSAKと呼ばれる滅菌された濃縮液(72時間もつ)もある。これは、水道水をドボドボ40L-60L注ぐと少しずつ機械が滅菌して濃縮液と混ぜて透析液を作ってくれる仕組みだ。バッグを毎日吊るさなくても済むので楽チンだ。
 NxStageは、透析液の流量を極めてゆっくりにして、少量の透析液で透析するのが特徴だ。どれくらいゆっくりかと言うと、ダイアライザに透析液が入る一端から、透析液中の尿素濃度がどんどんあがって、透析液が出てくるもう一端では血液と透析液の尿素濃度がほとんど同じなほどだ。少ない透析液で最大限の透析効率をあげるため、カリウム濃度は1mEq/lと低く、バッファは40-45mEq/lと高い(bicarbonateの代わりにlactateを使っている)。
 NxStageでは透析の量は透析液の量で決まり、その量はたいてい20-25Lだ(45-50% of estimated body water)。In-center HDで600ml/minを4時間やれば144Lの透析液を使うことになるから、水の節約になる。透析液を全部使いきれば終わりで、透析流量はFF(filtration fraction、たいてい25-35%)に基づく。FF = (dialysate flow + net UF)/blood flowだから、血液流量を増やせば透析流量も増え透析がはやく完了する。たとえば透析流量が150ml/minで25L透析液を使うなら、2時間46分で終わりだ。これを週6回やる。
 週6回これをやるのと、週3回in-center HDをするのと、はたまた毎日PDするのと、透析の効率をどう比べよう。詳しい計算式はさておき、一週間あたりのKt/Vに相当するstdKt/V(スタンダードKt/V)という概念があって、NxStageではこれを2以上に保つことになっている。
 NxStageだと旅行に行けたり家にいられたり、患者さんのquality of lifeは格段に高い。ではmortalityはどうか?NxStageそのものを他のモダリティと比較したスタディは私の知る限りないので、frequent in-center HDのデータ(NEJM 2010 363 2287)やnocturnal HDのデータ(NDT 2009 24 2915)からextrapolateするしかない。これは独立した大きなテーマなので、別に書く。

FSGS

腎臓内科といえば、腎臓固有のいろんな糸球体疾患をたくさん診るのが仕事かと思っていたが実際はそんなことはない。糸球体疾患はそんなに多くないからだ(大学病院にいても)。そんなわけで、FSGSだの膜性腎症だの医学生のころから知っている腎疾患のことを掘り下げて勉強する機会が実はほとんどない。とはいえ回診で「FSGSの組織学的分類は?」とか「二次性FSGSの原因は?」とか聞かれてぱっと答えられないのはさすがにまずい。

 FSGSの組織学的分類は、①FSGS NOS(Not Otherwise Specified)、②Collapsing variant、③Tip variant、④Perihilar variant、⑤Cellular variantだ。臨床上最低限知っておくべきことは②が最も予後が悪く、③がもっとも予後がよいということだ(KI 2006 69 920)。他はだいたいその中間(数の少ない⑤についてはKI 2006 70 1783を参照)。

 二次性FSGSの原因は?有名なのはHIV(FSGSがあるだけでHAARTの適応になる)だが、他にもネフロン喪失(→適応しようとして糸球体の過濾過、肥大→糸球体硬化)、腎血管拡張(やはり過濾過、妊娠・糖尿病・肥満)、薬剤(interferon、同化ステロイド、pamidronate、etc)、その他の腎炎(lupus、IgA腎症、血管炎など→healing processにおいてサイトカインがたくさん出て糸球体硬化を起こす)など。

GRA

高血圧の患者さんでどうにも原因が分からない人がいて、鑑別診断に上がったのがglucocorticoid remediable aldosteronismだった。これはその名の通り少量のステロイドで改善するhyperaldosteronismのことだ。病態は、ACTH支配下にある副腎皮質zona fasciculataで、酵素異常(11-beta-hydroxylase)のためaldosterone活性のある18-oxocortisol and 18-hydroxycortisolが大量に作られてしまうことによる。
 家族性、優性遺伝で若い患者が多い。primary hyperaldosteronismにくらべて、低カリウム血症を伴うことは少ないのが特徴だ。原因は不明だが、ACTH支配下にあるためaldosteroneの分泌に日内変動があること、カリウム摂取によりaldosterone分泌が促進されないことなどが考えられている。しかしthiazideを投与すると集合管へのsodium deliveryが増えるため著名な低カリウム血症をきたし、これが診断の手がかりになることもある。
 検査所見ではaldosterone値の上昇とrenin活性の低下(ただしprimary hyperaldosteronismほどではない)がみられ、確定診断は遺伝子検査が主流(以前はdexamethasone stimulation testであった)。治療はphysiologic doseの糖質コルチコイド(prednisone, dexamethasone, hydrocortisoneなど)を寝る前に投与する(朝のACTHサージを抑えるため)。
 [2015年6月追加]上記は先天性のGRAだが、グリチルリチンも同様に11-beta-hydroxylaseを阻害するためアルドステロニズムになる。グリチルリチンが含まれているのは日本では甘草、米国ではblack licoriceだ。

2012/01/08

Waiting for Godot

こないだのrenovascular conferenceのタイトルは"fistula maturation - waiting for Godot"で、調べてみると"waiting for Godot"とはSamuel Beckettの有名な不条理劇(原題"En attendant Godot")のことと判った。劇はGodotが来るのを待つ二人の話だが、Godotは来ない。だからこのタイトルは「いつまでfistulaが成熟するの待てばいいんだ(いつまで待っててもしょうがない、何か手はないのか)」ということだ。二幕の脚本で、図書館に英語訳があるので読んでもいい。

Ortner症候群

Ortner症候群の既往がある症例に出会ったが、何の事だか知らなかった。インド出身のフェローは知っていた。というのもこれは古典的にはrheumatic heart disease→僧帽弁狭窄症→左房拡大→反回神経麻痺、それによる嗄声のことだからだ(cardio-vocal syndromeとも)。彼女はインドでたくさんのOrtner症候群を診たといっていた。他の疾患で左房拡大してもよく、大動脈弓、肺動脈、左鎖骨下動脈などが原因のこともある。

super pill

 心不全の患者さんの低Na血症をコンサルトされて、スタッフが「tolvaptan 15mgを使おう」という。私はスタッフの考えには反対で、どうなる事かと思って様子を見ていた。この薬がナトリウム濃度を上げることは間違いないだろうが、この症例では利尿剤を増やすだけで同様の効果が出るように思われたし、一錠300ドルするとかいうのに(ヨーロッパではhepato-renal syndromeだの低Na血症だのによく使われるそうだが)患者さんが内服しつづけられるとも思えなかったので、私はスタッフの考えには反対だった。

 SALT1、SALT2(NEJM 2006 355 2099)、そしてそのフォローアップであるSALTWATERスタディ(JASN 2010 21 705)をみても、mortalityはoutcomeに入っていないし、とにかくナトリウム値を上げること、それにより低ナトリウム血症の症状が取れることがこの薬の売りのようだ。低ナトリウム血症患者のmortalityを規定するのはナトリウムそのものではなく寧ろ原疾患(肝不全、心不全、SCLCなど)ということだろう。

 さておきこの薬は患者さんに素晴らしい水利尿効果をもたらし、患者さんは「これはsuper pillだね」と言っていた。そのぶん口渇も悪くなったが、水制限もなんとか守り、ナトリウム値は丁度良くあがった。しかし、この薬を飲み続けることは現実的でないので、結局その翌日からは利尿剤を増やして様子を見ることになった。そこで今度はfurosemideの低ナトリウム血症における役割が議論の的になった。

 私は「furosemideは尿を希釈させ相対的に水排泄を助ける」と習った。「furosemide下では尿がだいたいhalf normal salineになる」という話も聞いた。しかしfurosemideがナトリウム濃度を下げることも経験したし、「furosemideはナトリウム排泄を増やし血漿ナトリウム濃度を下げる」と信じる人が多いことも知っている。それで利尿剤を増やしたあと尿ナトリウム濃度と浸透圧がどうなるか楽しみにしていたら、尿Naが77mEq/l(36から増えた)、尿浸透圧は300mOsm/kg(340から減った)という結果で、血漿ナトリウム値は122-124mEq/lでほぼ変わらなかった。

 ここから言えるのは、「furosemideで尿が希釈される」「furosemideでNa排泄が増える」「furosemideで尿はhalf normal salineくらいになる」というどれも正しいが、それぞれの程度次第でこの薬が血漿ナトリウム濃度に与える効果は変わるということだ。しかしこの例では、どうして尿Naが77しかないのに尿浸透圧が300もあるのだろう。尿中尿素が高いのだろうか、しかし血漿BUNは9しかないが。まあ折角だから尿中尿素でも調べてみよう。

renovascular conference

Renovascular conferenceという、vascular accessについて血管外科と腎臓内科が話し合う機会があった。米国では腎臓内科がfistulaを作ることはまずなく(interventional nephrologyという分野もあるにはあるが、せいぜいfistulogramやPTCAしかしないようだ)、従ってアクセスについて学ぶ機会も実はほとんどなかった。それに米国は歴史的にAV fistulaの利用率が非常に低い(Fistula First Initiativeとか言ってるがまだまだ)。
 さておきカンファレンスでは、基礎疾患が多く良質な静脈のあまりない高齢患者のside-to-side anastomosisが二例議論された。一例目はbranching veinがとても多く、ligationをした後もうまく静脈が育っていない様子だった。血管外科が「fistulogramもultrasoundも自分たちでやらないとレポートだけでは何が問題やらサッパリ分からない」と困惑して、この件は彼らが自分たちでfistulogramをして問題を究明することになった。
 二例目は、fistulogramの質が悪くどこがanastomosisでどこがarteryかすら分からなかった。幸い患者さんがカンファレンスに腕を見せに来てくれたので、みんなで診察して様子が少しわかった。この件では、cephalic veinとbasilic veinの間にstenosisがあり、さらにその近辺に静脈弁でもあるのか、動脈からの流れはほぼbasilic veinに吸われてしまってcephalic veinが成長しないようだった。彼のbasilic veinを指で押さえると、cephalic veinの流れが増えるのが分かった。一人の血管外科医はanastomosisの位置をcephalic vein寄りに変えてはどうかと提案した。
 私は正直、cephalic veinとbasilic veinの違いも知らなかったので貴重な機会だった。Cephalic veinと言うのは、イブンシーナーの医学書がラテン語に訳される際の誤りとも分かった(本来は「外側」を意味するアラビア語al-kífalだった)。プレゼンターのフェローから文献(Seminars in Dialysis 2005 18 331)を貰って、まとまった勉強ができた。血管外科医が「fistulogramの前にultrasoundをしろ、そしてultrasoundは自分たちにやらせろ(リアルタイムで診たほうが問題が分かる)」と言っていたのもtake-home pointだった。