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2017/12/26

腎臓内科が必要とされるとき~急性血液浄化を考える~下巻

今回、下巻として、まずはどんな透析方法を用いるかについて話したいと思う。


透析方法に関しては大きく分けるとIRRT(intermittent renal replacement therapy)、CRRT(continuous renal replacement therapy)に分かれる。
まず、この両方のmodarityについてであるが、一般的にはCRRTのほうが血圧変動が少ないので血圧が低い場合に用いられることが多い。


注意点:
※CRRTであっても透析を開始してすぐの血圧低下(initial drop)は生じるという事は念頭に置く必要がある。
※血圧変動がある場合でも効率をあげる必要がある病態(重度高カリウム血症、重度尿毒症など)は血圧を維持して、IRRTを選択する必要がある。


まず、CRRTとIRRTに関しては2007年の論文では血行動態が安定しているものに対しての差は出ていなかった。2013年のsystematic reviewでも大きな差はみられなかった。ほとんどのRCTでの論文でもCRRTの有用性を示している論文はなかった。SSCG(surviving sepsis campaign gudeline)でも、重症感染症とAKIの患者に対しての短期死亡率を比較した場合にCRRTとIRRTの差はなかったとしている。
しかし、2017年のGMSの論文ではCRRTのほうが腎回復や経済学的な面でも良かったという事が言われている。


まだ、どちらのmodarityがいいかに関しては、明確な結論は出てはいないが、KDIGO2012のガイドラインではCRRTは血行動態が不安定な患者や、急性脳卒中や他の頭蓋内圧亢進を生じさせる病態があるAKIや脳浮腫があるAKIの患者には適応となる。


自分の施設でもCRRTの稼働に関しては少ないが、それで困った事は少ないと感じている。
ちなみに日本で多く用いられる血流量などを下図に示す。
日本内科雑誌 103巻 5号より

では、CRRTになった場合に治療量をどのように決めればいいのか?は悩む部分であろう。


CRRTで決める必要性があるのは血液流量(Qb)、透析液流量(Qd)、濾液流量(Qf)である。


まず、設定するにあたって浄化量(Qd+Qf)のことが悩ましいのではないだろうか?
CRRTの中で、CHFであればQd=0、CHDであればQf=0、CHDFではQd+Qfとなる。


これらの3つに関しては一般的に小分子量物質のクリアランスはほとんど差がないが、中分子量物質のクリアランスに関してはCHF>CHDF>CHDとなる。そのため、目的物質に対してQfをおおくするのか、Qdを多くするのかは変えるのは一つである(たとえば、サイトカインを除きたいならばQfを多くしたりする。)。


注意点:
※血液濃縮や膜劣化を防ぐためにQfはQbの30%未満に設定する必要がある。
※浄化量の保険上限に関しては15-20L/日までになっている。


まず、浄化量をどのくらいにすればいいのかは悩むかと思う。
これについては歴史を知っておく必要性がある。
2000年にC Roncoらの報告で浄化量を25ml/kg/hr、35ml/kg/hr、45ml/kg/hrで比較した際に25ml/kg/mlに比して有意に35ml/kg/hrや45ml/kg/hrが予後が良かった。
そのため、この時点では高流量の浄化量の方が予後がいいという風潮になっていた。

その後、2つのRCTが2008年と2009年に出された。
一つはATN(Acute Renal Failure Trial Network) studyで、1124人をintensive therapy群(循環動態安定:週6回のHD、循環動態不安定:35ml/kg/hrのCVVHDF、または週6回のSLED)とless-intensive therapy群(循環動態安定:週3回のHD、循環動態不安定:25ml/kg/hrのCVVHDF、または週3回のSLED)を施行し、結論としては60日死亡率に差は認めなかった。



もう一つはRENAL(Randomized Evaluation of Normal Versus Augmented Level Replacement Therapy) studyである。これはオーストラリアとニュージーランドで行われ、1508例のAKIをhigher intensive therapy(浄化量が35ml/kg/hrのCHDF)とlower intensive therapy(浄化量が25ml/kg/hrのCHDF)にわけて、90日死亡率を見ているが有意な差は認めなかった。



なので、それまで主流であった浄化量は大容量ほどいいというのではなく、現在の至適の浄化量はKDIGOのガイドラインでの20〜25ml/kg/hrを推奨量としている。

Crit care 15:207,2011より

つまり、患者が50kgで浄化量を20ml/kg/hrで設定した場合には、浄化量は1000ml/hrとなる。その浄化量を病態に合わせて、QdとQfに分ければいいということになる。

※CRRTでの透析での注意点として透析液に注意する必要がある。透析液にはリンは含まれていなく、またKは2であり、Mgは1に設定されており下がりやすいため注意する必要がある。

腎臓内科は急性血液浄化ではやはり第一線に立って治療をしていく必要がある。少しでも自信を持って第一線で戦って欲しいと思う。


2017/12/22

腎臓内科が必要とされるとき~急性血液浄化を考える~上巻

腎臓内科医が必要とされる場面は多いと思う。


尿異常、電解質異常、慢性期管理も依頼されるが、やはり急性期の場面で患者さんのアウトカムを救うことは重要なことだと考える。


その中で、今回急性血液浄化に関して考えたいと思う。


AKIで急性血液浄化療法を依頼される場面は多い。ポイントは以下の点と考える。
①いつから開始するか?
②どんな透析方法をもちいるか?
③いつ終了するか?
④抗凝固療法やアクセスの問題?


順を追って話す。
①いつから開始するかに関しては以下のものが考慮される。
・腎代替療法で生命の改善が得られる場合
・絶対適応がある場合


絶対適応に関しては、
・高度アシドーシス(pH≦7.15)
・高尿素窒素血症(BUN≧100mg/dL)、尿毒症症状(脳炎・心膜炎・出血傾向)
・高カリウム血症(K≧6mEq/Lや心電図異常)
・高Mg血症(Mg≧4mEq/L、無尿、深部腱反射消失)
・尿量の減少(乏尿<200ml/12Hや無尿)、体液過剰(利尿薬反応なし)


などになってくる。


たとえば、患者さんにフロセミドを高用量投与しているが、全く尿の反応がない場合は急性血液浄化療法の施行を考えなくてはならない。


では、早期にやった方が良いかに関してはKI2015にでており見ていただくといいが、生命予後・維持透析・ICU入室・入院期間のいずれのアウトカムに対しても有意な差は認めなかった


2016年に有名な論文が二つ出ている。
AKIKI trial(NEJM 2016)
ELAIN trial(JAMA2016)
である。


この2つに関しては、結論ではAKIKI trialは早期群と晩期群では差は認められず、ELAIN trialでは早期群に有意な差をもって良い結論が出た。
結論だけでなく背景も非常に大切である。


AKIKIでは多施設で主に敗血症患者(8割)に対して早期群:KDIGOstage3、晩期群:緊急急性血液浄化療法も基準を満たす場合とした。


ELAINでは単施設で主に銃後患者(5割)で早期群はKDIGO stage2+NGAL、晩期群はKDIGOstage3の患者群をとっている。


なので、正直患者群にもばらつきがあるため、何とも言えない。
最近、重症度で分けてみて急性血液浄化をした場合に、早期群と晩期群はどうかというメタアナリシスがあった(Oncotarget 2017
図を示す。左が重症患者、右が非重症患者である。


この論文では、重症患者には早期にやった方がよかったという結論であった。非重症患者では早期にやっても変わらないというものであった。

なので、個人的には絶対適応であればやる!また重症患者は急性血液浄化をおこなう閾値を下げてもいいのでは?とおもった。

また、1つの話で終わってしまった。次回は、どんな透析方法かを話したいと思う。




2017/12/10

IgA腎症と妊娠

今回、上記話題を挙げたのは外来での会話からである。
自分をT、患者さんをPとする。


P 「IgA腎症治療のステロイド療法も終了し、蛋白尿の悪化も無くて安定しました。先生がステロイド減量後に妊娠許可してくれて、早速なんですけど妊娠しました」


M 「本当ですか!?とてもうれしいです!!おめでとうございます!」


P 「でも、先生。妊娠してIgA腎症ってどうなるんですか?必ず悪くなるんですか?」


M 「そうですね、免疫も関連してますし悪くなる人もいますし、悪くならない人もいます(曖昧な回答。。。)」

自分の中でしっかりとした解釈ができていなかった。患者さんがこれからどういう転帰をたどるにせよ、しっかりと自分のなかの答えをもつようにしなくちゃ。ということで今回の話題である。

ちなみに以前、IgAと妊娠について成立するまでの話を書いた。


今回、AJKD2017にとってもいい論文が載っていた。これをもとに考えてみる。


IgA腎症は世界的に見てももっとも頻度が高い腎症であり、IgA腎症の好発年齢は10代後半から30代前半と言われており、女性であれば妊娠との関連性が非常に高い腎炎である。


妊娠とIgA腎症に関しては報告もまちまちな事が多い。
 ●ある報告では妊娠はIgA腎症の経過を変化させない(AJKD2010AJN2010
 
 ●ある報告では中等度から重度CKDの患者では腎機能低下の進行が非常に早くなる(23%-43%の割合)(NEJM1997


と言われている。


AJKDの論文の詳細は割愛はするが、この研究では413人の患者がenrollされ、そのうち妊娠をした人が104人で妊娠をしなかった人が309人であった。
今回の研究のcharacterは下記になる。





パッと見た感じは違いは意外に妊娠群で治療していない人が多く、ステロイド治療をした人が少なかったという印象である。

患者をCKD別に分けた表が下記になる。
これの印象としては、やはり腎機能悪化している症例ほど、蛋白尿は多く、血圧は軽度髙い傾向にあると感じた。

結果としては
★腎疾患の予後
CKD stage1 or 2:妊娠にともない腎疾患の増悪は見られなかった。

CKD stage3 or 4 :妊娠にともない腎機能の低下がみられた。(eGFR≧60以上の人に比べると数倍以上)

★妊娠・子供への影響
CKD stage3 or 4 :出産に伴う胎児の生存割合が55%程度に低下。

今回の研究ではCKDstage3以降の人数は少ないこと、選択バイアス(フォロー中に妊娠になった人のみ拾っている)、出産のリスクになる蛋白尿の評価が不十分という点はあるが、
IgA腎症でCKD stage1-2程度の人であれば、特に問題を起こす可能性は低いが、
CKD stage3以降の人であれば、腎機能障害や胎児影響などを引き起こす可能性がある。

そのため、しっかりと患者に情報を伝達する事は重要である。

ちなみにCKDはやはり進行とともに妊娠の成功率は悪くなる(下図)。


なので、我々としては腎機能障害をおこさせないように早期介入が非常に重要であることを感じた。

ちなみに最初の患者さんはCKD stage1であり、妊娠もそのまま継続としたし、このようなお話しもしっかりして納得して外来フォローとなっている。

ただ、医師として患者さんの子供ができることは非常にうれしいことで、その日はほっこりとした気分になった。





2017/11/19

ADPKDについての復習と新しい試み ①

今回はADPKDについての話題に触れたいと思う。


自分の患者でもADPKDの人は多いが、遺伝性疾患であるので患者のケアももちろんであるが家族のケアも非常に重要な疾患である。
下図のように進行性の病気であることもわすれてはならない。




まず、今回はADPKDに関してお話しするが、ARPKD(常染色体劣性多発性嚢胞腎)もしっかりと認識しておくことは重要である。


常染色体優先遺伝の場合は下記。
常染色体上に存在する一対の遺伝子の一方に異常があれば発症する。
なので、やはり家族へのケアは注意する必要性がある。


大塚製薬サイトより


原因:遺伝子異常が原因
ADPKD:PKD1遺伝子とPKD2遺伝子が主役になる。このPKD遺伝子は腎臓ならば尿細管の液体のながれを感知し、肝臓ならば胆細管の胆汁の流れを感知する。流れを感知して、順序よく並んで流れをスムーズにいくように働きかけている。
※PKD1から作成されるものがPC1(polycystin1)、PKD2から生成されるものはPC2である。


※PKDの違いによるものは下記に示す。

杏林大学Homepageより
杏林大学Homepageより



この遺伝子異常が生じると、順序よく並べなくなり嚢胞が生じる(図)。


その際に治療で重要になるのが、cAMPである。
cAMPは抗利尿ホルモン(バソプレッシン)の作用を細胞内に伝える働きがある。
正常細胞ではcAMPは細胞増殖を抑制するが、ADPKDでは嚢胞細胞の数を増やしてしまう。

★また、ADPKDの発生に関しては遺伝子異常はもちろんであるが、下図に示すように多彩な原因で生じてくる。その一つが肥満である(図)。(JASN 2007


症状に関してはほとんど無症状の場合が多い。
血尿が30%程度におこり、嚢胞感染や嚢胞出欠などがある際に生じる背部痛を契機に気づかれる症例もいる。

検査:下記が診断基準となっている。

つまり、検査ではCT検査やMRI検査が重要となる。
ここで、除外すべき疾患として記載されているように、それらの疾患の可能性はどうなのかを常に考えることは重要である。
家族内発生をしっかりと認識する事は一番重要である。


また、併存症の管理が大事である。
致死的になるものは脳動脈瘤破裂であり、だいたい10%程度の人に見られるものなので、ここに関しては把握しておく必要がある。
杏林大学Homepageより


2部構成に今回はしようと思う。
今回の点で大事なのは、遺伝子異常はもちろんのことADPKDを悪化させるものはないか?家族は大丈夫か?である。




2017/11/10

少しアフェレシスと透析について PAについて②

ある時こんなコンサルトを受けたとする。



M医師「今、外来で診ているSLEの患者さんが薬物治療もしっかりと行なっているんだけど活動性が改善しなくて。透析治療で原因物質の除去ってできない?」


T医師「??(どうなんだろ・・、SLEに透析治療、考えたことないな。。)」


M医師「なんか、前に血漿吸着療法がいいみたいな話をきいたけど?」
調べてみよう。


前回話したように、SLEの症例にPAを行う場合にはPlasma absorberの選択が非常に重要である。


SLEでは
・イムソーバ
・セレソーブ
が選択肢になる。


簡単に原理をおさらいする。
イムソーバはPHとTRにわかれる。この違いは吸着原理の違いによるものである。
吸着リガンドは、下記のものになる。
 PH:フェニルアラニン
 TR:トリプトファン


吸着リガンドは何かというとイムソーバはポリビニルアルコールゲルからなる多孔質ビーズの単体に下図のように青い吸着リガンドがくっついているものである。


ASAHI KASEI homepageより

PHは免疫複合体、リウマチ因子、抗DNA抗体(図1)

TRは抗アセチルコリンレセプター抗体(図2)
を選択的に吸着すると言われている。


図1:PHによる吸着性能
ASAHI KASEI homepageより


図2:TRによる吸着性能
ASAHI KASEI homepageより




SLEに対してのPH膜は下図のように報告によっては、抗体除去率や症状改善に有用とする報告も多い。
ASAHI KASEI homepageより


なので、まずイムソーバをSLEに使用する際にはイムソーバTRを用いる際にはACE阻害薬に関しては、ブラジキニンの蓄積が生じてショックを生じる可能性があり禁忌となっているので注意する必要がある。




もう一つはセレソーブである。
セレソーブに関しては陰性荷電したデキストラン硫酸が陽性荷電の抗体とくっつき除去するものである。


SLEに関しての保険に関しては下記のものに該当する限り月4回算定できるとしている。
1:特定疾患医療受給者と認められたもの
2:血清補体価(CH50)の値が20単位以下、補体蛋白(C3)の値が40以下および抗DNA抗体の値が著しく高くステロイド療法が無効、または臨床的に不適当
3:RPGNまたはCNAループスと診断されたもの


M医師への答えはわかっただろうか?


SLEにおいて免疫抑制剤も発展しており、PAを行う機会はめっきりと減っているかもしれない。
ただ、腎臓内科医はしっかりとこのような選択肢ももつべきである。



2017/09/09

少しアフェレシスと透析について HA の続き

前回から投稿の期間が空いてしまった。

今回は、前回の続きでHA(血液吸着療法)についての話を進めていきたい。
前回、下記の①について話を進めさせていただいた。
①活性炭(DHP-1、ヘモソーバ、ヘモカラム)
②ポリミキシンB固定化吸着剤(トレミキシン)
③ヘキサデシル基固定化セルロースビーズ(リクセル)


今回は、②、③について触れたいと思う。

まず、ポリミキシンB固定化吸着剤についてであるが、イメージしやすいのはPMXという言葉であると思う。
PMXに関しては、まずは一番論議されるのは有用性である。
ここで知っておくべきtrialは4つある。
1)  EUPHAS trial(JAMA 2009):イタリア
2) ABDO-MIX trial(Intensive care medicine 2015):フランス
3) EUPHAS2 trial(Annals of intensive care 2016):イタリア
4) EUPHRATES trial(Enrollmentは終了:現段階で論文化未):アメリカ・カナダ
である。

現在の流れとしては、EUPHASやEUPHAS2はpositiveな結果は出たが、ABDOMIXによって死亡率悪化傾向が見られ、EUPHRATESは論文化はまだであるが、2016年のESICMで死亡率なども有意差がないことが示されている。
なので、現時点では推奨度は高くない。

日本からの最近の観察研究(Crit care 2017)で敗血症性ショックにPMXがいいという論文が出ている。ABDO-MIXやEUPHRATESがRCTであり観察研究にどれだけ打ち勝てるかは厳しいところではあるので、PMXは推奨度は低いというのは変わらないであろう。

では、PMXについての構造などを見ていきたいと思う。

PMXはカラムに抗菌物質「ポリミキシンB」がポリスチレン誘導体繊維に共有結合によって固定されているものである。ポリミキシンBにエンドキシンのリピドAがくっつきエンドトキシンを中和するのが原理である(下図)。
東レメディカル トレミキシンカタログより
・保険の算定は報酬点数より引用すると、下記のようになる。
エンドトキシン選択除去用吸着式血液浄化法は、次のアからウのいずれにも該当する患者に対して行った場合に算定する。
ア)エンドトキシン血症であるもの又はグラム陰性菌感染症が疑われるもの
イ)次の(イ)~(ニ)のうち2項目以上を同時に満たすもの
(イ)体温が38度以上又は36度未満
(ロ)心拍数が90回/分以上
(ハ)呼吸数が20回/分以上又はPaCO2が32㎜Hg未満
(ニ)白血球数が12,000/㎜3以上若しくは4,000/㎜3未満又は桿状核好中球が10%以上
ウ)昇圧剤を必要とする敗血症性ショックであるもの(肝障害が重症化したもの(総ビリルビン10㎎/dL以上かつヘパプラスチンテスト40%以下であるもの)を除く。)


・トレミキシンの種類:下記の3つに分かれる(図参照)。
共通としては、治療時間は2時間。
-PMX-01R  血流:8-12ml/min
-PMX-05R  血流:20-40ml/min
-PMX-20R    血流:80-120ml/min
となる。
東レメディカルより引用
プライミング:これが多少めんどくさい。理由としては、充填されれている液が、pH2の強酸であり、生食をたくさん流して洗浄する必要がある。上図の膜サイズにより、洗浄に使う生理食塩水の量は異なり、PMX-20Rでは4L、PMX-05Rでは、2L、PMX-01Rでは、500ml生食で洗浄。その後、抗凝固剤を添加した、生食で洗浄する。

相互作用:麻酔剤、筋弛緩薬、アミノグリコシド系抗生剤との併用で神経筋遮断作用による呼吸抑制が出ることがあるので併用薬については注意する必要がある。

カラムは垂直にすることが構造上必要である。
最後に回路を示す。
東レメディカルより引用

今回もPMXで終わってしまった。
PMXに関しては、今後どうなるのかはわからない。おそらく正式にEUPHRATES trialの論文が出てnegativeが有用性がないというものであれば、治療の正当化がいままで以上に難しくなるかもしれない。


2017/07/30

少しアフェレシスと透析について。

今回はアフェレシスについて話題をふれたいなと思います。


腎臓内科に関わっていると一定頻度で下記のようなコンサルトをうける(ちなみに登場人物はA医師と腎臓医師くんとする。)。


A医師「うーん、患者さんの状態が良くないんだよね。透析で炎症物質とかとったりできない?」


腎臓医師くん「それは何の病気の方ですか?」


A医師「わからないんだよね。ただ、状態が悪くて。。」


こんな会話をする、もしくはされることは多いのではないだろうか?その時に何を適切に行うかという事は常々難しいなと思う。


この答えはこれからのを読んでいただいて皆さんなりに答えが出ればいいなと思う。




まず、重要な事は何をターゲットとするかである。
血液は血球と血漿に分けて考えることができる。


今回は、まず血球に関しての話を行う。ちなみに私たちになじみのある血液透析(IHD:intermittent hemodialysis)も血漿成分の除去を行っている。


血球に関しては、基本的には吸着療法である。
一般的には膜の部分はダイアライザー(透析器)ではないので、カラム(浄化器)と言われる。


☆血球に対してはおもにLCAPとGCAPがある。


①血球の白血球に対して白血球除去療法(LCAP : Leukocyteapheresis)が行われている。
適応疾患:潰瘍性大腸炎


カラム:セルソーバE(潰瘍性大腸炎)、セルソーバCS(関節リウマチ)
カラムの特徴として
下図のように不繊維フィルターを通るときに関与している白血球を除く治療になる。






「治療に関して」
血液流量:30~50ml/h、時間:1時間
血液処理量:1800~3000ml
抗凝固剤:メシル酸ナファモスタット20~50mg/h

で行われる。


この治療は患者さんの両手の肘窩に透析針を穿刺し行う治療である。シャントなどは必要ない事は重要である。




②白血球の中の顆粒球・単級を選択的に吸着する顆粒球除去療法(GCAP:Granulocyteapheresis)が行われている。
適応疾患:潰瘍性大腸炎、クローン病


カラム:アダカラム
カラムの特徴としてはビーズである。酢酸セルロースビーズの粒が3000個以上ふくまれており、ビーズ間に血液が流れ顆粒球・単級が吸着される。LCAPとは違い、リンパ球は吸着はされない。いい点としては、LCAPとは違い目詰まりを起こさないことがある。



「治療に関して」
血流量:30ml/min、時間:1時間
血液処理量:1800ml
抗凝固剤:ヘパリン又はナファモスタットメシル酸塩
ヘパリン:初回1000~3000を初回ワンショット、持続500~1500単位/h投与。
ナファモスタットメシル酸塩:持続20~40mg/h投与。    


この治療も患者さんの両手の肘窩に透析針を穿刺し行う治療である。シャントなどは必要ない事は重要である。


まずは、血球に関しての理解は少しは出来たならうれしい。
また、次は数回にわたり血漿成分に関してフォーカスを絞ってみたい。





2017/07/26

がん患者の急性腎不全 6

今回は前回の続きで、抗がん剤とAKIについての実践的な内容について触れたいと思う。
少しでも知識の片隅に置いてもらえたらうれしいと感じる。


まとめるとNEJMの下記の表と図がとてもみやすい。(NEJM 2017



上記を文章にまとめてみる。
★細胞障害性抗がん剤では
・シスプラチン:直接的に尿細管障害を生じ、ATNを生じる。また、Salt wastingを生じ低ナトリウム血症になったり、マグネシウム排泄が亢進し、低マグネシウム血症もきたす。低クロール環境が毒性の増悪を生じるため、投与前に生食投与を行い尿量を維持する事は重要である。1/3が治療後数日でAKIになる。また、反復投与で悪化しやすい。


・カルボプラチン・オキサプラチン:シスプラチンと同様の白金製剤ではあるが、尿細管障害は生じる頻度は低い。


・イフォスファミド:シクロフォスファミドと同様なアルキル化剤。30%程度にAKIを生じる。近医尿細管障害を生じ、尿糖・低カリウム血症・低リン血症・近医尿細管アシドーシスを生じる。重度な症例ではFanconi症候群を呈する。CKDがある症例やシスプラチン投与歴がある症例、腎に悪性腫瘍の進展がある症例はAKIのリスクになりうる。


・メソトレキセート:代謝阻害薬の薬である。白血病・肉腫・リンパ腫の治療に使用。高容量(1g/m2)は尿細管内の結晶を形成し閉塞を生じ、また直接的に尿細管障害を生じAKIを引き起こす。


・ペトレキセド:代謝阻害薬で、尿細管障害を生じATNを生じAKIを生じる。重度の場合ではFanconi症候群を生じる。


下記は骨粗鬆症の予防で使用されものであるが、
・パミドロネート:FSGSを生じやすい。
・ゾレドロネーと:ATNを生じやすい。
は覚えておく必要はある・


★分子標的薬
・VEGF阻害薬:大腸ガンや腎細胞癌などの治療薬として使用される。高血圧、タンパク尿、AKIとの関連性が示されている。また、TMAやFSGSの報告もありVEGF阻害薬のAKI機序としては最多である。

・BRAF阻害薬:容量依存性のAKIを生じる。尿細管間質障害を生じる。80%の症例が薬剤の中止で改善するが、はっきりとした機序までは不明確である。

・ALK阻害薬:クリゾチニブ(ザーコリ)はATNやAINを生じAKIを生じうる。

★免疫治療薬
パート5のカテゴリには入れてはいなかったが、インターフェロンやインターロイキン2はAKIにおいては重要なので、把握しておく必要がある。
両者ともAKIを生じ、
−インターフェロンは、高容量のタンパク尿を生じ、微小変化群やFSGSといった腎炎所見をもたらしたことがわかっている。機序としてはインターフェロンがpodocyteにくっつき正常細胞の増生を変化させたと考えられている。薬剤の中止によりAKIの多くはよくなるが、collapsing FSGSなどは効果が乏しいと言われている。

★免疫チェックポイント阻害薬
これはAKIに関しては急性間質性腎炎を生じることが報告されている。また、AKIの程度も中等度から重度になることも多い。ステロイド治療や薬剤の中止により徐々に改善する。

今回は2回にわたって抗がん剤と腎機能障害に関して振り返ってみた。
うまくまとめきれていなく、読みづらい部分も多いと思うが、少しでも臨床の参考になればと思う。





2017/07/25

がん患者の急性腎不全 5

今回パート5、6として挙げさせてもらうのは、『抗がん剤と腎機能障害』であり、興味がありつつも腎臓内科医にとってはとっつきにくい部分なのかなと感じる。


では、少しずつ話していこうと思う。
まず、ひとえに抗がん剤と言っても現在は多種なものに分かれている。
抗がん剤を大きく分けると下記の4つに分かれる。
・細胞障害性薬剤
・分子標的薬
・ホルモン治療
・免疫チェックポイント阻害薬


細胞障害性抗がん剤の代表としては
-シスプラチンやカルボプラチンなどの白金製剤
-シクロフォスファミドなどのアルキル化剤
-ゲムシタビンやメトトレキサートなどの代謝阻害薬
-ビンクリスチン、パクリタキセルなどの植物アルカロイド薬
などがある。


分子標的薬としては様々な種類があり、最近話題の薬である。
・VEGF阻害薬:アバスチン、スーテントなど
・多種キナーゼ阻害薬:ネクサバール、グリベックなど
・m-TOR阻害薬:アフィニター、トリセルなど
・EGFR阻害薬:イレッサ、タルセバなど
・BRAF阻害薬:ゼルボラフ、タフィンラー
・MEK1阻害薬:メキニスト
・ERBB2作動薬:ハーセプチンなど
・CTLA4阻害薬:エルボイなど


とてもたくさんあり、少し知識として入れておくのは大事である。


ホルモン治療としては
・ステロイド
・抗アンドロゲン薬:クロルマジソン
・女性ホルモン薬:エストラジオール
・アロマターゼ阻害薬:アナストロゾールなど
・抗エストロゲン薬:タモキシフェンなど
・LH-RHアンタゴニスト:リュープロリンなど


免疫チェックポイント阻害薬としては下記のものがある。値段が高額なものであり、問題とはなっている。

http://answers.ten-navi.com/pharmanews/7342/ より転用




まずは、抗がん剤についての簡単な知識をいれていただいた。
次のパートで抗がん剤とAKIに関して触れていきたいと考える。





2017/07/17

がん患者での急性腎不全 4

今回はパート4になる。
造血幹細胞移植とAKIについて簡単に触れようと思う。


まず、
★造血幹細胞移植とはなにか?
造血幹細胞移植:Hematopoietic Stem Cell Transplant (HSCT) は造血幹細胞(血液細胞である白血球、赤血球、血小板のおおもとになる細胞)を輸注し、それが骨髄に根付くことによって造血機能の再構築をはかる代替療法である。


造血幹細胞移植を行う目的としては、骨髄の最大用量を上回る大量の抗がん剤や放射線照射による治療を可能とすることと、ドナー免疫に由来するGVL(Graft versus Leukemia:移植片による抗白血病効果)やGVT(Graft versus Tumor:移植片による抗腫瘍効果)を得ることができることである。


1960年代から行われ始めており、今では血液腫瘍治療では欠かせないものになっている。




★造血幹細胞の種類(採取方法について)
①骨髄移植
ドナーに全身麻酔をして腸骨(腰の骨)から採取した骨髄液を、レシピエントの静脈へ点滴で注入。HLA型の適合は重要。

生着まで:2-4週間

②末梢血幹細胞移植
ドナーに白血球を増やす薬(G-CSF)を3~4日間、連続注射し、末梢血中の造血幹細胞が増えたところで血液成分分離装置で造血幹細胞を採取し、骨髄移植と同様にレシピエントへ移植。

生着まで:2-3週間

③臍帯血移植
臍帯血は、母親と胎児を結ぶ臍帯と、胎盤の中に含まれる血液で、その血液中に造血幹細胞がたくさん含まれている。臍帯血バンクでは臍帯血を保存し、移植の必要な患者さんに提供し移植。メリットとしてはドナー負担がなく移植可能なHLA型が広い。

生着まで:3-4週間

★造血幹細胞の種類(用いる検体について)
①自家移植
患者自身の造血幹細胞を事前にあらかじめ採取・保存し、それを幹細胞移植に用いる方法
・利点:拒絶・GVHDリスク低い、ドナー不要
・欠点:自己の造血幹細胞に腫瘍細胞が混入している可能性、GVL効果・GVT効果は期待できない。

②同種移植
HLAの一致した健常ドナーから提供された造血幹細胞を移植に用いる方法。
・利点:GVL効果・GVT効果が期待できる。
・欠点:拒絶・GVHDリスクあり。免疫抑制剤を用いるので感染にかかりやすい。ドナーがみつからないことも。

★造血幹細胞の分類(前処置の種類によるもの)
移植前には大量の抗がん剤投与、および放射線照射による治療がおこなわれる。
前処置の強さで2つにわかれる。
①フル移植(骨髄破壊的前処置)
様々な方法があるが、多くは全身放射線療法+エンドキサンの大量療法

②ミニ移植(骨髄非破壊的前処置)
前処置が弱いため腫瘍細胞が残ってしまうが、その後のドナー由来のリンパ球による GVL効果 、GVT効果で腫瘍細胞の排除を目指す。
高齢者や臓器障害がある患者や体力低下した患者にも可能であるが、再発が増加する危険差異はある。


ここまで、前置きがかなり長くなってしまったが、造血幹細胞移植とAKIに関しては高頻度で認める。
報告も様々ではあるが、10-73%と幅は広い(NEJM 2016←秀逸なReviewなので一読すべし)。
また、透析を要する重症のAKIの割合は5%程度と言われている(Bone Marrow Trans 2011)。

★リスクファクター
体液量減少、敗血症、腎毒性薬物の使用、GVHD、SOS(sinusoidal obstruction syndrome)などがリスクになる。

※腎毒性薬物:バンコマイシン、アミノグリコシド、アシクロビル、アンホテリシンなど。また、カルシニューリン阻害薬も関連する。

※SOS:放射線や大量化学療法(特にアルキル化剤)で類洞内皮細胞障害や肝細胞障害を起こし肝臓の小血管が閉塞し、門脈圧亢進症を呈する状態。いわゆるhepatorenal-syndromeを起こすので腎臓は強い血管収縮から虚血をきたし腎不全を起こす。発症時期は移植後3か月以内が多い。

※上記にはないが、ウイルス感染は重要。ウイルスとしてはアデノウイルス、BKウイルス、サイトメガロウイルスなどである。


今回は造血幹細胞移植のAKIを少し話した。
ここで、分かるように患者さんがどんな移植をうけたかを知ることは重要である。

つまり、自家移植なのか同種移植なのか(これによってGVHDなどのリスクや免疫抑制剤内服の事など分かる。)
前処置はフル移植かミニ移植か(ミニ移植であればSOSのリスクは低い)

今回のことが少しでも何らかの腎機能障害を見る時のツールになればうれしい。


2017/07/11

がん患者での急性腎不全 3

今回、間が空いてしまったが、血液腫瘍とAKIに関してその他の要因として
腫瘍崩壊症候群(Tumor lysis syndrome)について話す。


★腫瘍崩壊症候群に関して:
 腫瘍細胞の自然崩壊、または化学療法による崩壊で細胞内含有物の放出が生じる疾患である。TLSに伴う電解質異常としては高リン血症、高カリウム血症や低カルシウム血症がある。

・腫瘍崩壊症候群のリスク:
 悪性腫瘍に関しては、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性白血病、リンパ芽球性リンパ腫、びまん性大細胞性リンパ腫や増殖性が高く治療に対する反応が高い固形がんは腫瘍崩壊のリスクが高い。そのほかに腫瘍の大きさが大きいもの、LDH上昇正常の2倍以上、WBC上昇(50000)、臓器浸潤症例、高尿酸血症(7.5mg/dL)、腎障害合併例ありなどはリスクが高い。

腫瘍崩壊症候群に関してはリスクを評価するという事が重要である。
リスクによって治療や予防もことなる。


Clin J Am Soc Nephrol 7: 1730–1739, 2012
                   CJASN 7: 1730–1739, 2012


・予防:補液が基本となる
 -低リスク:アロプリノールかフェブリクの使用を検討
 -中リスク:アロプリノールかフェブリクの使用
 -高リスク:ラスブリカーゼの使用


・治療:集中治療室への入院でモニター管理
 -尿量>100ml/hrになるように補液
 -ラスブリカーゼを単回投与(0.1-0.2mg/kg)
 -電解質補正
   ・ 高カリウム血症:通常と同様(カルチコール、GI療法、K吸着薬など)
   ・ 低カルシウム血症
      症候性:グルコン酸カルシウム静注
      無症候性:カルシウム補充は避ける(リン酸と錯体を作り沈殿)
   ・ 高リン血症:経口リン吸着薬(Ca含有は避ける)、高度:透析考慮

                 NEJM 2017 376;1770-1781

Tips
□ちなみに尿酸が上昇することが何が悪いのか?
・尿酸の糸球体濾過量の増加→尿細管に到達し、尿細管閉塞、腎虚血と同様の血管狭窄や炎症
性サイトカインを助長し結果的には糸球体濾過量を減量させる。
そのため、尿酸は下げるべきである。

□カルシウム補充に関してはなぜ避けた方がいいか?
腫瘍崩壊症候群で高リン血症がある症例では、カルシウムリンの沈澱ができやすくなる。
とくにアルカリ尿の場合にできやすい。

□アルカリ尿にすると尿酸の可溶性は上がるが尿はアルカリにした方がいいの?
ちなみにアルカリ尿にする手段としては、クエン酸製剤などがある。(製品としてはウラリット)
ちなみに、尿のアルカリ化は推奨されていない。理由としては、リン酸カルシウム結石のリスクが上
昇するためである。

今回、長くなってしまったが少しでも参考になればと思う。
次回は少し話を進められたらと考える。