2012/05/31

AKI and sepsis

敗血症にともなう急性腎障害の機序についてGrand Roundで学んだ。2004年の論文(NEJM 2004 351 159)と2012年の論文(Pharm Thera 2012 134 139)が紹介されたが、前者は神経、ホルモンなど腎臓の外からの機序が、後者は腎血管の内皮細胞や間質の細胞外基質など腎臓の中での機序がメインで書かれていた。いろいろ勉強にはなったが、まだまだ治療に結びつくような結果は得られていないのが現状だ。

SHARP trial

SHARPトライアル、これはこの一年で腎臓内科に関する最大のドラマだ。スタチン(コレステロールを下げる薬)は、血中の脂肪を除くのみならず、抗炎症作用によって動脈硬化の進行を遅らせ心血管系イベントを減らす。しかしその効果は、たび重なる治験にもかかわらず慢性腎不全の患者さんには証明されていなかった。

 その理由ははっきりしていないが、慢性腎不全の患者さんにおいては、心血管系イベントの機序が異なるからかもしれない。FGF23による左室肥大、透析や薬剤による血管の石灰化などは、コレステロールと関係ないのかもしれない。

 さておきSHARPトライアル(Lancet 2011 377 2181)はその文脈で、「スタチン単独でダメなら、ezetimibeと併用したら」という臨床試験だ。約9000人の患者さん(うち約3000人が透析中)を対象に、simvastatin(商品名Zocor) 20mg、ezetimibe(商品名Zetia) 10mgの併用を、プラセボと比較した。冠動脈疾患の既往がある人は除外された。

 五年間の追跡で、major atherosclerotic eventsは治療群で優位に低かった。これを受けて昨年11月、FDAのadvisory boardは全会一致で慢性腎不全患者へのこの薬(商品名Vytorin)の適応を支持し、スタディグループのボスは時の人となった。しかし、今年1月、FDAはadvisory boardの推奨をひっくり返してVytorinに慢性腎不全患者への適応を認めないと発表した。

 FDAの適応拒否の理由は、二剤の併用であるため、Zetia単独で効果があるのかVytorinでなければならないのか分からないというものだった。つまりPlacebo、simvastatin、ezetimibe、combinationという四群に分けて試験をすればよかったという訳だ。結局ZetiaにもVytorinにも添付文書にSHARPスタディの結果が載ることになった(しかしどちらも適応はない)。二兎を追うものは一兎をも得ず、ということなのだろうか。


2012/05/26

vancomycin nephrotoxicity

Vancomycin nephrotoxicityといえば、「あるにはあるけど、まれ」という印象だ。というのも、Trough levelが高くても、それが腎不全の原因なのか結果なのか分からないし、おそらく多くの場合それは原因ではなく結果と考えられるからだ。とはいえ、Trough levelが60mcg/mlとか100mcg/mlとかだと疑いたくなるし、いずれにせよ薬剤を止めることにはなる。Vancomycin toxicityというのは存在としては有るわけで、それを研究している人もいる(Toxicol Sci 2009 107 258)が、活性酸素がどうの…というレベルで、機序はまだちゃんと分かっていない。

2012/05/24

baroreflex failure

Renal Grand Roundでいつも感心するフェローが、今回も素晴らしい発表をした。まず食道がんの手術、放射線治療、化学療法後に血圧のコントロールがつかなくなった症例をプレゼンする。スタッフがすぐさま「放射線治療は頚部にもなされたの?」と質問する。あとから説明するが、まず最初にこれが聞けないと、腎臓内科医とはいえないのだ。
 主な二次性高血圧はあらかた除外され、引き続き降圧剤を七種類くらい飲み続けているが、いっこうに血圧が下がらない。どう思う?と少し議論になった。そのあと二例目は、CEA(carotid endarterectomy、頸動脈狭窄の治療)後に血圧が急に上がり、診察しようにも患者さんが大泣きしていて話にならない、というもの。普段は泣いたりしない普通の人なのに。
 二例目のほうが明らかだが、これらはbaroreflex failureが疑われる症例だ。圧受容体が頸動脈球、大動脈弓、その他の胸部の太い血管にあって血圧の変化を感知し、舌咽神経と迷走神経を介して脳幹nucleus tactus solitariiに伝える。その結果、交感神経や副交感神経の調節より血圧の急激な上昇と低下が食い止められる。
 この分野の第一人者はVanderbilt大学のDr. Robertsonという神経内科医だ(NEJM 1993 329 1449)。この論文によれば、baroreflex failureはlabile hypertension、emotional lability、flushing、diaphoresisなどを主徴とする。血圧の細かな調節が効かないので、ワッとnorepinephrineが出て、ワッと血圧が上がる。
 原因疾患は頚部の外傷、頚部の放射線治療、頸動脈周囲の腫瘍、頸動脈の内膜切除(CEA)、など。baroreflex functionの検査は、昇圧剤(あるいは降圧剤、nitroprussideなど)を持続静注して血圧ガクっと上がる(あるいは下がる)まで増量していくというもの。治療はclonidineで、典型的には著効するそうだ。二例目の症例には著効したらしい。
 今度から難治性の血圧で紹介されてくる患者さんをみたら、首のキズと感情の起伏に注目しようと思う。そういう目で思い返してみると、「ひょっとしてあの患者さんの高血圧はこれだったんじゃ…?」と思い当たる節がある。

2012/05/23

4 structures

腎病理で注目するのは四つ、糸球体、尿細管、間質、そして血管だ。糸球体ではまず何個あって、うち何個が硬化しているかをざっと見る。そのあとで一個一個を詳しく見て、capillary loopは開いているか、mesangial spaceはどうか(細胞数は多いか = proliferation、基質は広がっているか = mesangeal expansion)、urinary spaceは大きいか、urinary spaceに細胞はたまっているか(辺縁にあればcrescent、capillary loop間にまで入り込んでいればただのdebris)、などを見る。

 尿細管はbrush borderはあるか(PAS染色が見やすい)、細胞が小さいあるいは核が膨れているか(tubular atrophyのサイン)、尿細管内(基底膜の内側)に炎症浸潤はあるか、あるいはmicro-cystic dilatationはあるか(タンパク質が大量に漏れ出て尿細管のなかで便秘の様になっている状態、FSGS、HIVAN、obstructionなどで見られる)などを見る。

 間質は、線維化の程度をみたり、炎症浸潤の程度などをみる。血管は、色んな太さの枝がある。capillaryはもっとも小さく、移植腎病理ではperitubular capillaryへのC4d染色がAMR(急性免疫性拒絶反応)の診断に用いられる。

 糸球体とおなじくらいの直径を持つ血管がinerlobular artery、それより小さいとpre-arteriole、arteriole。interlobular arteryになると血管壁にelastic laminaが含まれるようになり、それより大きいとarcuate artery、segmental arteryとなる。しかしそんな太い血管を腎生検で傷つけていたら大変なので、arcuate artery以上の血管が標本に見えたら病理医は腎臓内科医にすぐさま報告する。

rainbow-color renal pathology

腎病理のローテーションというのは、希望しないとない。月一回、腎臓内科全体のbiopsy conferenceと、フェロー用の教育カンファレンスがある。でも如何せん頻繁にスライドを見たり議論したりしないので、基本も身に付かない。

 なんとかお手軽に基本的なことを系統的に学ぶ方法はないかなと思っていたら、例の開業医の先生方を招くイベントで"renal pathology"というセッションがあったので参考になった。腎病理に特徴的な多種の染色について主に説明していた。

 まず基本のH&E染色。ヘマトキシリンは塩基性pHのため、酸をよく染める。DNAはリボ核酸なので、核がよく染まる。壊死組織ではヘマトキシリンが染まらず、標本が真ピンクになる。エオジンは酸性pHで、細胞質とかがよく染まる。染まり方で、chunkyならfibrin(つまり塞栓)とか、ある程度染まっている構造物を特定できる。

 Jone's methenamine silver染色(JMS)は、glycosaminoglycanを染め、糸球体の基底膜と尿細管の基底膜が黒くなる。膜性腎症でspikeが見られることや、糖尿病性腎症で糸球体にlaminarな縞が入った結節、Kimmelstiel-Wilsonが見られることは有名だ。

 同じように基底膜をよく染めるのがPAS(periodic acid-Schiff)だ。他にmesangiumも染まる。これはglycogen、glycoprotein、proteoglycaなど多糖類を染める。Periodic acidとはper-iodic acid、つまり過ヨウ素酸ということで、ヨウ素なだけあって濃紫色だ。この染色のほうが、移植腎でtubulitisの診断をする際に浸潤細胞が尿細管基底膜の内側かどうかが見やすいらしい。

 Tricrhrome染色では、collagenが青色に、fuschinophillicなfibrillinやmuscle fiberが赤色に染まる。すまわり青色の比率で線維化の程度が評価でき(25%以下がmild、50%以下がmoderate、50%以上がsevere)、赤色は血管を評価するのに役立つ。

 Congo-red染色はamyloidを染め、偏光顕微鏡でgreen-appleなbifringenceを示すことはよく知られている。染まり方によってある程度アミロイドの種類がわかるが、いまはMayo Clinicがmass spectroscopyで調べてくれる。ここまでで時間になったので、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡は、また今度ということになった。

 本当は、officeにFogoの"Fundamentals of Renal Pathology"もあるし、自分で勉強すればいいわけだが。数少ない機会に学んだことを貯めていこう。そして二年目に二週間でいいからお世話になろう。腎臓内科のboardでも頻出なのだ。


2012/05/22

Diabetic kidney disease

こないだは、地域の開業医を招いて、最新の知識をアップデートする年に一度のCME(生涯学習)イベントがあった。なかでも目玉の講演はペンシルベニア大学の先生によるdiabetic nephropathyの分子生物学的な機序についてだった。糖尿病性腎症こそ腎臓病のなかで最も多いもので、その原因はmultifactorialで解明は難しいと思っていた。

 しかしこの先生は糖尿病性腎症の患者さんとそうでない人達の遺伝子発現の違いを調べて、主な違いはpodocyteに関する遺伝子だと発見した。それで糖尿病→podocyteのアポトーシス→糖尿病性腎性という動物モデルを作った(Diabetes 2006 55 225)。

 さらに、どうしてpodocyteのアポトーシスがおこるの?というのをこれまた遺伝子検索して、炎症とか、cell interactionとか、developmental pathway(Notch1)とか、色々研究しているらしい。炎症については、新薬bardoxoloneが抗炎症作用で腎症の進行を抑えようとしているし、MCP-1(monocyte chemoattractant protein-1、研究論文はDiabetes 2009 58 2109)もそのantigonistの臨床応用が試みられている。

2012/05/20

ABO incompatibility

 あるliving donorがあるintended recipientに腎をあげたいと申し出たとする。でもその組み合わせではABO不適合だったら、どうするか。とくに、患者さんがO型の場合、その人は抗A、抗B抗体を両方持っているので、A型の腎臓は患者さんの抗A抗体、B型の腎臓は抗B抗体、AB型の腎臓は抗A、抗B抗体両方による拒絶反応(AMR、antibody-mediated rejection)の危険がある。

 ひとつの方法は、paired kidney donation(PKD)だ。同じように不適合なドナーとレシピエントのペアがたくさんいるので、そのなかでマッチする組み合わせを見つけてswapするということ。もっともシンプルなのは、A型の患者さんに腎臓をあげたいB型のドナーが、べつのB型の患者さんに腎臓をあげるかわりに、そのB型の患者さんに腎臓をあげたい(があげられない)A型のドナーが、A型の患者さんに腎臓をあげる、という交換だ。PKDは韓国で最初に報告された。

 しかし、O型の患者さんはO型からしか腎臓をもらえない一方で、O型のドナーは、腎臓にA抗原もB抗原もついてないので、A、B、AB、O、すべての血液型の患者さんにあげられる。だから、たとえPKDをしてもO型のレシピエントがどうしても長く待たなければならない。そこで、生まれ持った抗A抗体、抗B抗体をできるだけ除去して、なんとかA抗原、またはB抗原のある腎臓を生着させようというのがABO不適合移植だ。

 米国ではJohns Hopkins大学が最もABO不適合移植を先進的に行ってきた(Transplatation 2009 87 1246)。術前治療は血漿交換とIVIGで、抗Aあるいは抗B抗体の抗体価が1:16以下に下がるまでやる。手術前日にもやり、そのあと抗体価が下がっていることを確認する。日本では全例脾摘するところが多いらしい([2015年5月追加]昔の話で、いまはrituximabを中心とした免疫抑制剤があるのでやらない)が、こちらではroutineにはやらない。

 成績は術直後のgraft lossがどうしても一定の割合でおこるが、それを過ぎると、極めてvigilantなモニタリングが必要(protocol biopsyなど)だけれども、成績はABO適合の移植と変わらない(Transplantation 2012 93 603)。ただ少なくともこちらでは、抗体価が1:512以上、AB→Oの不適合、HLAのflow cytometry cross matchも陽性な場合、などはやらない。

2012/05/15

補体の制御

こないだのGrand Roundと、そこで紹介された文献(Nephrology 2010 15 663, Nat Rev Immunol 2009 9 729)にもとづいて補体の制御について復習してみた。こんな専門的なことをアレルギー科や膠原病科でもなく、腎臓内科が扱うなんて素敵だ。 
 補体制御分子はめちゃくちゃたくさんあって、familyを形成している。まず古典経路でC1(q, r, s)が活性化しない様にしているのがC1INH。この異常は血管浮腫を起こすことで有名だ。C4(とC2)によるC3活性化を防ぐのがC4BP(binding protein)だ。
 代替経路の制御はC3bとFactor B(合わせてC3 convertase)の解離から始まる。これをdecay-accelerating activityといい、Factor H、DAF(CD55)などが司る。逆に解離を防ぐのがproperdinだ。解離して細胞膜に残ったC3bはすぐさま分解され、これはMCP(CD46)、Factor Iなどが司る。
 Factor Hは、N末端がDAFのco-factor、C末端はhost cell recognitionの機能を持つ。つまりC末端が自分の細胞を認識して表面にいてくれるので、自分の細胞にC3 convertaseが付いてもすぐN末端が分解してくれるというわけだ。
 逆にFactor Hがないと、補体(代替経路)が活性化されるたび無闇に自分の細胞まで壊れてしまう。これがatypical HUS、DDD(dense-deposit disease、MPGNの一つ)、C3 nephropathy、それにage-related macular degenerationの機序の一つだ。
 さあC3より下流にあるterminal pathway、すなわちC5とMAC(membrane attacking complex)の制御はどうか。C5 convertaseを制御するのがCFHR1(complement factor H-related protein 1)、MACを制御するのがvitronectin、clusterin、それにCD59などだ。
 これらの分子がそれぞれどこにあって(体液中か、細胞表面か、さらにどこの細胞表面かなど)、どんな構造をしており、どんな相互作用をして、どんな病気を起こすかは、病気ごとの各論で話したほうがよさそうだ。ともかく補体の各経路とそれぞれの制御を整理したから良しとしよう。

2012/05/12

CME

米国腎臓内科(ASN)の出す雑誌の一つJASNは隔月で生涯教育用の小冊子を発行している。そして物凄く内容が濃い。今月は糸球体腎炎を中心にした号だったが、最新のエビデンスが深く考察されており、質がとても高い。正直これを読んでおれば、わざわざ自分で論文を読み内容をまとめてここにシコシコ書く必要なんかないんじゃないかと思うほどだ。まあそんなことはないのでこれからもシコシコ続けるつもりなのであるが。
 この小冊子はNephSAP(nephrology self-assessment program)と呼ばれ、その名の通り最後に問題が25問付いている。これをASNのウェブサイト内で解いて正解すると、もれなくCME(continuing medical education) creditが貰える。まあそれはどうでもいいが、こうして問題にアクセスしておくと、後々に戻ってくることができるので、自分がスタッフになってからフェロー達に回診で遭遇する状況に関連した問題を取り出して教えてあげることができるのがよい。

2012/05/11

YouTube video

前にも触れたが補体の働きは複雑で、それに補体の制御まで含めるともはやその道専門の人でなければ把握しきれないほどだ。私は学生時代に「できればこんな複雑なものは分からなくても医者としてやっていければいいな」と密かに願ったことがあるが、腎臓内科にいるとそうもいかない。
 しかし先日のRenal Grand Roundでスタッフの一人がYouTubeのビデオを流して、これがとても分かりやすかった。古典経路と代替経路(alternative pathway)についての二つのビデオで、C1q-C1r-C1sがやってきて、C1rとC1sが分解されるとC4がやってきてC4a(anaphylatoxin)とC4bになって、C4bは細菌細胞膜に共有結合してC3を呼び寄せ…というのがグラフィックを使って説明されている。
 来年にはFACE(fellows as clinician educators)なるプログラムに参加して、レクチャのしかた、病棟での教育回診のしかた、テストの作り方などを教わる。時にはYouTubeをつかって説明するほうが分かりやすいとか、スタッフのちょっとした工夫をメモって自分の教育方法に取り入れていくのは有益だと思う。

2012/05/09

bigger fish to fry

  こないだ病院で、"bigger fish to fry"という表現を使った。心不全の患者さんが非虚血性心筋症に思われたのに、循環器科が心臓カテーテル検査をしたい、でも腎機能がよくないので患者さんがカテーテル検査をいやがっているという状況で。
 虚血性心筋症は心カテーテル検査でしか究極的には診断できないし、造影剤による腎機能障害のリスク(とコレステロール塞栓症のリスク)は低いと思われたが、we have bigger fish to fry、すなわちwe have other things to do、非虚血性心筋症の検査が先かと思われた。
 にしてもこの表現、大小さまざまな魚を釣って家に帰り、さあ揚げようという状況から生まれた言葉なのだろうか。由来について調べたが不詳らしい。Don Quixote(1712年)、第2部35章にDonが"I have other fish to fry"と言う台詞があるらしい。

Gitelman

もう二ヵ月前になるがRenal Grand RoundでGitelman syndromeについて発表したが、忘れないように主要な論文だけでも復習しておかなければ。何と言っても面白かったのは「なぜGitelmanでは低カルシウム尿症になるか」で、近位尿細管からのカルシウム再吸収が増加するため(であって遠位尿細管にあるカルシウムチャネルTRPV5によるものではない)とオランダのBindelsという人が示した(JCI 2005 115 1651)。あとはGitelman syndromeのキャリアが尿中のナトリウム排泄増加のために高血圧になりにくい(がBartterやhomozygousなGitelmanなどと違って激しい体液減少にはならない)。論文はNature Genetics 2008 5 592。

尿管結石の各論

各論で新たに学んだことを忘れぬように書いておく。各論一、高カルシウム尿(hypercalciuria、男性>300mg/d、女性>250mg/d)。腸管が悪い(過吸収)のか、腎臓が悪いのか(Ca wasting)などで分類しようと長いこと試みられてきたが、最近はあまり分類にはこだわらないようになったという(NEJM 2010 363 954)。

 高カルシウム尿を悪化させるものに1,25-OH vitamin D、高ナトリウム摂取、グルコース大量摂取、animal protein(酸の摂取)などがある。1,25-OH vitamin Dに関しては、尿細管でのリン再吸収障害→低リン血症→1,25-OH vitamin D高値→腸管からのCa/P吸収亢進→idiopathic hypercalciuriaと考えられており、尿細管タンパク質の遺伝子異常(NPT2a、NPT2c、PDZK1、NHERF1)が見つかっている(NEJM 2008 359 1171)。

 各論二、高シュウ酸尿(hyperoxaluria、>40mg/d)。enteric hyperoxaluriaについては前にも学んだが、Oxalobacter formigenesがいかにシュウ酸をエネルギー源にしているかが興味深かった。この細菌はoxalateを取りこんで代わりにformate(蟻酸)を放出するが、その際に差引きH+が一個細胞外にでる。これを繰り返すうちに細胞膜内外に電位差ができ、それにより生じるproton motive forceをATPに変換しているという。

 高シュウ酸尿の改善に高カルシウムな食事がよいというのは良く知られているが、この分野の第一人者はハーバード大のDr. Curhanだ(最初の論文はNEJM 1993 328 833)。カルシウムは食事から摂取するのがよく、600mg/d以上で効果が出始める。しかしカルシウム製剤では却って結石リスクが上がるらしい(Women's Health Initiative、NEJM 2006 354 1102)。

 各論三、低クエン酸尿(hypocitraturia、男性>450mg/d、女性>550mg/d)。先生はまず「クエン酸はどこで再吸収される?(近位尿細管)」と聞き、「低クエン酸尿は近位尿細管細胞内が酸性になる状況で起こる」と言う。すなわち①アシドーシス、②低カリウム血症(Kが細胞から出てHが細胞に入ってくるから)、③動物タンパクの大量摂取(ヒトの酸摂取のほとんどは動物タンパク由来だから)。

 各論四、高尿酸尿(hyperuricosuria、男性>800mg/d、女性>750mg/d)。urate + H ⇔ uric acid、電離定数pKaは5.5だから、酸性尿でこの電離平衡は右に傾き(水溶性の低い)尿酸が析出しやすくなる。前述のように高尿酸尿がある人は尿酸が核となってシュウ酸カルシウム結石の形成を助けるので尿をアルカリ性にしたり(クエン酸カリウムを高用量、20-30mEq 2x/d)、尿酸生成を抑えたり(allopurinol)する必要がある。

 おまけの各論五、シスチン結石。この病気の問題は近位尿細管におけるアミノ酸再吸収障害で、さまざまなアミノ酸が尿中に漏れるが特にシステインは水溶性が低いので石になる。治療は水分摂取と尿pHをアルカリ性にするのが基本だが、システイン二分子のdisulfilum結合を解くtioproninも用いられる。また通例struviteと言っているurea-splitting organismによる石の化学式はMgNH4PO4。

尿管結石

 尿路結石のレクチャが一時間あっても、なかなか一時間ですべてをカバーするのは難しい。でも例の教育熱心な先生はカバーしちゃうから凄いなと思う。おそらくまず総論、そして結石の生成に関わるプロセス(高カルシウム尿、高シュウ酸尿、低クエン酸尿、高尿酸尿)について各論で述べたから出来たのだろう。

 総論ではsupersaturationとmetastableという概念を教わった。溶解度積に近い概念だが、尿にはさまざまな溶質が混ざっているのでそれぞれの相互作用を加味して計算される。結石患者さんでは治療してもsupersaturationが1を切ることはまずないが、尿酸結石やシスチン結石の患者さんでは切ることもあり、その時には石が溶ける。

 Metastableとは、supersaturationを越えているので既存の石は成長するが、新しい石はできないレベルを言う。ここに留まっておればいずれ全ての石が去るはずである。Metastable域を越えると、新しい石ができる。石ができるには核が必要だ。最近の研究でメタボの人は尿が酸性のため尿酸が析出して核になり、そこからシュウ酸カルシウムが雪だるまを作ることがわかった。

2012/05/06

Randall's plaque

  尿路結石は尿細管内腔で出来るのかと思ったら、idiopathic hypercalciuriaの患者さんにおいてはそんなことはない。 腎皮質の尿が最も濃縮されるところで、 間質にRandall's plaqueと呼ばれるリン酸カルシウム(アパタイト)の塊が蓄積する。それが腎髄質のcalixに達するとポロポロと尿管にこぼれていくというわけだ(JCI 2003 111 607)。しかし、消化管異常によるhyperoxaluriaの場合は別で、こちらは集合管の内腔でシュウ酸カルシウムが析出する。

2012/05/04

AQP2

 腎性尿崩症と深部静脈塞栓症をきたす家族性の疾患と言われれば、AQP2の変異だ(J Clin Endocrinol Metab 1997 82 686)。これはV2 receptorの変異(もっとも多い、そしてX-linked)の次いで多い家族性の腎性尿崩症だ。文献ではautosomal recessiveとされているが、日本の医科歯科大グループがautosomal dominantの症例を報告している(Am J Hum Genet 2001 69 738)。

 Aquaporinは疎水性の細胞膜にあって唯一水の出入りを司るとても大事なチャネル分子だが、ADH支配下にあるのはAQP2だけだ。AQPが機能しないので下垂体は頑張ってADHをたくさん作るが、V2 receptorは機能しているので、血管内皮細胞ではADH支配下にFactor VIIIaとvWFが放出され塞栓症をきたす。

familial neurohypophyseal DI

尿崩症を疑う家族歴のある子供が、毎日5Lの水を飲まなければならず、多尿と夜尿で相談されたとしよう。腎性尿崩症で多い遺伝様式はX-linkedだが、この症例の家族歴はautosomal dominant、しかも他の家族はdesmopressinが効くという(腎性だったら効かないのでは)。
 絶水試験で血漿浸透圧が285mOsm/kg、尿浸透圧が477mOsm/kgになった。これが心因性多飲症だったら、血漿浸透圧はもっと高く、尿浸透圧ももっと高くなるはずだ。絶水に反応してADHは出ているから完全な中枢性尿崩症ではない。腎臓は反応しているから、腎性尿崩症でもない。
 というわけでこれはpartial central DI、疑うべきはneurophysin IIの異常だ。正確にはADH pre-prohormone geneの異常で、neurophysin IIはこの前駆体がADHになる際に出来る副産物だ。いずれにせよこの遺伝子異常によりmisfolded ADH precursor分子が神経分泌細胞内で詰ってしまう(J Cell Sci 2009 122 3994の図10)。だがdesmopressinを投与すると「(スタッフによれば)詰りが改善する」らしい。

GFR

 計算されたGFRは個人差があるし、steady stateでなければならないし、密かに単位がml/min/1.73m2で体表面積を加味してある。だからより正確な腎機能が知りたければ24時間蓄尿してクレアチニンクリアランスを測る。A g/24hrsのクレアチニン排泄量を血中クリアチニン濃度(B mg/dl)で割るので、単位を補正すると A/B x 69 ml/minだ。大雑把にはA/B x 70でいい。

 ただしクレアチニンクリアランスはGFRが低下した時にoverestimateしてしまう、というのもクレアチニンは尿細管から分泌排泄されるからだ。だから純粋なfiltration由来のクリアランスは少し低い。どれくらい低いかというのは何とも言えないが。そこでスタッフが使っていたのが尿素クリアランスだ。

 尿素クリアランスは、クレアチニンクリアランスと対照的にGFRをunderestimateしてしまう、というのも尿素は尿細管からすこし再吸収されるからだ(確か集合管の最後のところで水分子と一緒に)。だからクレアチニンクリアランスと尿素クリアランスの間がだいたいのGFRではないかというわけだ。実際の患者さんで測定したら、前者が8ml/min、後者が4ml/minで、GFRは6ml/min位かなということになった。