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2021/04/07

悪性腫瘍と低マグネシウム血症〜導入編〜

 今回は、私の大好きな電解質で悪性腫瘍患者の低マグネシウム血症について触れたい。

今回は、導入編として一般的な話を記載していく。

定義:低マグネシウム血症:血清Mg<1.8mg/dl

悪性腫瘍、入院中や集中治療患者では50-60%程度とリスクが上昇する(Journal of intensive ar 2018)。

低マグネシウム血症は急性であろうが慢性であろうが臨床的予後の悪化と関連している。慢性の低マグネシウム血症はインスリン抵抗性、糖尿病、糖尿病性腎症の悪化の促進と関連している。

低マグネシウムの重症度と症状:

Grade1:血清Mg:1.2-1.7mg/dl   倦怠感や症状がない

Grade2:血清Mg:0.9-1.2mg/dl  筋力低下、繊維側筋攣縮

Grade3:血清Mg:0.7-0.9mg/dl  神経学的所見の出現、心房細動

Grade4:血清Mg:0.7mg/dl 未満 痙攣、テタニー、眼振、精神疾患、致死的不整脈


Mgの分布やバランスについて

Mgは大人では平均24gあり、99%が細胞内(骨、筋肉、軟部組織)に分布。30%が蛋白(主にアルブミン)と結合している。

マグネシウムはナッツ(アーモンド)や緑黄色野菜(ほうれん草、ふだん草など)、シリアルやミルクやヨーグルトに多く含まれる。


・消化管から120mg/day吸収され、20mg/day分泌される。

消化管吸収は通常は30-50%程度だが、低マグネシウム下であれば吸収が80%まで増加する。

・腎臓からは約2400mg/day濾過され、2300mg/day再吸収されnet excretion は100mg/dayになる。

低マグネシウム下であれば、net excretionが12mg/day未満になる。


□消化管吸収は2パターンある。

・Paracellular route:受動的なメカニズムでMg吸収の90%を担っている。Tight junctionの部分のClaudinによって調整されている。腸管にはClaudin2,7,12が発現している。小腸から盲腸まではこのルートで吸収している。

・Transcellular route:結腸ではこの方法で吸収される。TRPM6,7が活性され、吸収される。


□腎臓での吸収
・蛋白結合のないMgは糸球体を自由に通過する。
・近医尿細管で15%が再吸収され、ヘンレの太い上行脚(TAL)で大部分(70%)再吸収され、遠位尿細管で10%が再吸収される。

TALで再吸収の主体になるのがClaudin16,19であり、Paracellular routeで再吸収を行なっている。
図に示したようにClaudin14はClaudin16にnegativeに働き、CaやMgなどの陽イオンの再吸収を減少させる。
TALのCaSR(Calcium sensing receptor)活性化によって、NKCC2 (Na-K-2 Chloride Cotransporter) やROMK (Renal Outer Medullary K)の抑制によってMgやCaの再吸収を抑制される。また、Claudin14発現を調整させ、miR-9・miR-374のmicroRNAの発現を低下させることで、Ca・Mgの再吸収を低下させる。

*少し脱線:ここで、NKCC2、ROMK、CIC-Kb、Barttinの遺伝子の変異は、それぞれBartter症候群type1、type2、type3、type4と呼ばれ、これらは低マグネシウム血症を特徴としている。しかし、中には低マグネシウムを来さないものもあり、これは代償性にDCT (Distal Convoluted Tubule:遠位曲尿細管)での再吸収が亢進している。CIC-Kb、Barttinは DCTにも発現しているため低マグネシウム血症は来さない場合が多い。下表参照。

Bartter syndのための理解
Slide shareより引用

小児特定疾病情報センターより引用



本題に戻って、下の図には記載していないが、Claudin10もTALでの陽イオン選択性に非常に重要な役割を果たしている。動物実験で同様にClaudin10ノックアウトマウスが、高マグネシウム血症・尿路結石・Na再吸収障害を生じていることがわかった。これは、Claudin10がないことで、TALでのCaとMgの再吸収がしやすくなる。

また、DCT (Distal Convoluted Tubule:遠位曲尿細管)もMgにおいて重要な役割をはたす。Mg再吸収においては10%を担う。 
DCTにおいては、TRPM6 Mg channelを介して、transcellular routeで再吸収される。インスリンとEGFはTRPM6の発現を増加させる。
NCC (Na-Cl Cotransporter)もDCTでのMg再吸収に関わる。

Gitelman 症候群(NCCの変異)は正常血圧、低カリウム血症、代謝性アルカローシス、低マグネシウム血症が特徴である(上表参照)。NCCノックアウトマウスではTRPM6の発現が低下しすることから、Gitelman症候群での低マグネシウム血症は、再吸収の障害での尿中排泄とわかる。 DCTのTRPM6を介しての再吸収は電気的な差で生じる。Kv1.1(voltage-gated K channel)が電気的差の形成で重要である。


今回は、まずは低マグネシウム血症の導入編という形で話をしてみた。また、次回に悪性腫瘍との関連の話を進めていければと思う。




2020/08/21

夏休み「腎」由研究 2020

 いつもと違う夏だけど、夏といえば自由研究!昨年につづき、今年も遅ればせながら「ふっ切れた」話をしてみたい。


(筆者撮影)



 なお今年はマグネシウムについて調べる機会があったので、どの話もマグネシウムから始まることをご了承いただきたい。


1. マグネシウムなどの測定


 入院でも外来でも、腎臓内科診療に不可欠の血液・尿検査。しかし、どうやって測っているかを気にしたことは、筆者はほとんどなかった。そこで、マグネシウムをふくめた主な生化学項目の測定法を紹介する(施設や検査会社によっても異なるようだ)。


ナトリウム 電極法
カリウム 電極法
クロール 電極法
カルシウム 比色法(アルセナゾIII法)
イオン化カルシウム 電極法
マグネシウム 比色法(キシリジルブルー法)
無機リン 酵素法
浸透圧 氷点降下法
アルブミン BCG(ブロモクレゾール・グリーン)、BCP(同・パープル)法
 
 なお、クロール測定電極によっては臭化イオンも測定する(過去の投稿や、日内会誌 2017 106 2410も参照)。またアルブミン測定は日本はほぼBCP法であるが、世界には誤差の大きいBCG(同・グリーン)法の施設も多く、ネフローゼにおけるDVT予防の抗凝固開始時など、注意が必要だそうだ(KI 2019 95 1514)。


2. マグネシムと製塩の歴史


 上記、マグネシウムの測定法について調べていると、「キシリジルブルー法によるマグネシウムの比色定量」なる文献がみつかった。しかし読んでみると、なんと日本海水学会誌(海水誌 1981 35 28)からの報告だった。

 そう、マグネシウムは体内にこそ約24グラムしかなく、約1000グラムとされるカルシウムよりずっと少ない。しかし海水ではナトリウムと塩素についで3番目に多いのである(水分子の水素と酸素をのぞく;下図はこちらから)。




 製塩とは結局、海水からいかに副成分(カルシウム、マグネシウム、硫化物など)を除き純度の高いNaClを得るか?という問いである。そのため日本では伝統的に、揚浜式塩田・入浜式塩田(潮の干満を利用)・流下式製塩法(枝条架を利用)が行われていた。

 しかし、1970年代からは本格的にイオン膜・立釜法に置き換えられた。この方法はED(電気透析、electrodialysis)とも呼ばれるが、イオン交換膜の選択性がたかく、海水を濃縮してできる鹹(かん)水中の副成分は従来より減少し、その組成も変化した(下表は海水誌 2006 60 335を元に作成)。





 しかし、それもさることながら、この方法により「わが国製塩業の永年の宿領であった国際水準の塩価を食用塩の分野で実現」したと、前掲論文著者は記している。どういうことか?

 そもそも塩は江戸時代まで潮の干満差がおおきい低緯度地域でしか生産できず、できない地域は「国内輸入」していた。そして、開国後は低価格で高品質の外国塩に依存する事態となり、国内塩産業の確立が(ビールなど、ほかの産業と共に)急務だった。

 そんななか、塩は1905年に日露戦争の戦費調達目的で専売制になり、そのお金は塩田の整備や拡張などにも用いられたようだ。しかし塩田で作れる量には限りがあり、輸入がストップした第二次世界大戦中には塩も不足。1944年には例外的に自家製塩が認められたほどだった。

 そんななか、製塩効率と品質とコストを桁違いに改善させたのが、イオン交換膜法だったのである(そのため、塩田はほとんど姿を消したが)。

 海に囲まれた日本が塩のために苦しんできたことは、意外と知られていないかもしれない。その後、1949年には大蔵省専売局は日本専売公社となり、1985年に民営化(1996年には塩事業センターとしてJTから独立)。1997年には塩専売法が廃止された。なお詳細は、先月公開された『塩専売史も参照されたい。


3. マグネシウムとチャレンジャー号


 前掲論文(海水誌 2006 60 335)は冒頭に海水の成分表を載せているが、その引用文献が書かれたのは、なんと1884年。ドイツ出身でスコットランドで活動した海洋学者ウィリアム・ディトマー(1833-1892)が、英国軍艦を改造した科学調査船、チャレンジャー号が採取したデータを分析したものだった。



(Wikipedia日本語版より)


 チャレンジャー号は1872年から1876年まで世界の大洋を航海して調査を行った(1875年には横浜にも停泊している)が、ディトマーはこうして得られた77の海水サンプルを分析し、デンマークの地質学者ヨハン・ゲオルグ・フォルクハマー(1794-1865)が提唱した定比例の原理を確認した。

 定比例の原理とは、「海水は、場所によって塩分濃度に差はあっても、イオン組成比は一定」というものだ。つまり、海水は含まれる水分の差で薄まったり濃くなったりしているだけということだ。これは今でも海洋学の基礎となる原理らしい。

 なお、現在のように民間でスペースシャトルを打ち上げるようになる以前に数々のミッションを成功させた(が、1986年に10回目のミッションで分解・消滅した)スペースシャトル・チャレンジャー号は、この科学調査船にあやかって名づけられた。


4. マグネシウムと葉緑体


 クロロフィルとヘムはどちらもテトラピロール環構造をもつ分子で、どちらも金属と安定な錯体をつくる。しかし前者は鉄を配位するのに対し、後者は(筆者にとっては、なんと!)マグネシウムを配位する。1906年に初めて報告された(Annalen der Chemie 1906 350 48–82)。


こちらから引用)


 そして、ヘムは550nm程度の青~緑色光を吸収するため赤いのに対し、クロロフィルは450-500nm(B帯)の青色光と650-700nm(Q帯)の赤色光をよく吸収するため、緑色に見える。


Wikipedia英語版(Chlorophyll)より


 さらに色について言えば、クロロフィルは植物の抽出物から(分子量や溶媒への溶解性などの違いにより)下図のようにろ紙で分離できる。


(Wikipedia『クロマトグラフィー』より)


 これを最初に発表したのは、ロシアの植物学者ミハイル・ツヴェット(1872-1919)。そして彼は、1906年にこの方法をドイツ語で発表し(Berichte der Deutschen Botanischen Gesellschaft 1906  24 316–323)、Chromatogramm(色を意味するchrome+絵を意味するgram)と命名した。クロマトグラフィーのことである。

 ノーベル賞にも値する仕事だが、英字誌に発表しなかったことや、溶媒の違いなどで再現性が得られなかったことから、その功績は永らく認められなかった。そのうち第一次世界大戦がはじまり、ワルシャワ・モスクワ・タルトゥ(エストニア)などを転々としたうえ、ツヴェットは1919年6月に47歳で死去した。その墓には、以下のように彫られているという。


"He invented chromatography, separating molecules but uniting peoples."
(彼はクロマトグラフィーを発明し、分子は分離したが、人々は一つにした)


☆ ★ ☆


 いかがであろうか?お出かけできないと、却って好奇心が強まるのかもしれない。筆者としてはいろいろ発見があって楽しかったが、これがいつかどこかで誰かの何かを豊かにしたなら幸いである。





バルドキソロンとMg

 抗炎症の転写因子であるNrf2の作動薬バルドキソロンを糖尿病性CKDに用いた米国の第3相試験BEACON(NEJM 2013 369 2492)が、心不全の有害事象が多く中止になったことは、よく知られている。

 しかし、この薬で血清Mg濃度が有意にさがることは、意外と知られていないかもしれない。第2相試験BEAM(NEJM 2011 365 1745)ですでに知られ、じつは第3相のBEACON試験は低Mg血症の患者を除外していた。

 これについて、「低Mg血症といえば心血管疾患のリスク因子だから、心不全と関係あるのではないか?」と誰もがまずは考えるだろう(Diabetes Obesity and Metabolism 2015 17 9も参照)。昨年これについて検証が行われていたので(Cardiorenal Med 2019 9 316)、紹介したい。

 このポスト・ホック解析によれば、バルドキソロン投与群では確かに血清Mg濃度が下がる(20mg/d投与で、0.2mEq/l=0.24mg/dl程度)。




 しかし、別におこなった薬理動態のデータでははMg排泄も減っており、腎性のMg喪失ではないようだった。だとすれば細胞内外のシフトをまず考えるが、舌下粘膜の上皮細胞の細胞内Mg濃度は変っていなかった。




 ただ、投与群ではCK値が有意に低く、著者らは「細胞内Mgがエネルギー消費の高い筋細胞などに取り込まれ、CKのコファクターに使われたのではないか」と推察している。だったらよいが、正確なことはわからない。

 また、QTc(通常もちいられるBazettの式ではなく、心拍数が早い場合により正確とされるFridericiaの式)は投与群で有意に短縮するものの、その値は極めてわずか(24週で-0.9msec、48週で-1.7msec)であった。すくなくとも、延長はしていなかった。

 これらを受けてというわけでもないだろうが、現在腎領域で進行中のAYAME(NCT03550443)、CARDINAL(NCT03019185)、PHOENIX(NCT03366337)トライアルはいずれも、低Mg血症患者を除外していない。

 バルドキソロンは「蛋白尿は増えるがeGFRはあがる」など、いままでの考え方と大きくことなる薬だから、「Mgはさがるが心臓にはよい」のかもしれない。そうであってほしいが、期待と注意しながら上記RCTを見守りたいものである。



(カーディナル、アヤメ、フェニックス)


 

Mg点滴の神話

 低マグネシウム血症でマグネシウムを点滴で補充する時、日本では硫酸マグネシウム補正液(1mEq/ml)を用いることが多いだろう。20mlには20mEqのマグネシウムが含まれているから、硫酸マグネシウム(7水和物)としては約2.5グラムに相当する(こちらも参照)。

 それはよいとして、速度はどうか?「急速に点滴すると、血清マグネシウム濃度が急激に上がり、マグネシウムの尿中喪失がふえてしまう」と習う方も多いのではないだろうか。実際、レビュー論文(Am J Health-Syst Pharm 2005 62 1663、JASN 2009 80 157、AJKD 2014 63 691)に「腎のMg閾値を越えると、点滴したMgの半分が尿中に失われる」とある。

 そこで今回は、この神話について調べた結果を報告したい。

 まず、神話の前半である「腎のMg閾値」については、1960年代に動物で示されたことがわかった。1966年の報告(Clin Sci 1966 31 353)では、ラットの尾静脈からさまざまなMg濃度の溶液を持続静注し、血清Mg濃度と尿中排泄とのあいだに以下のような関係が見られた。同様の関係は、ヒツジ(Vet Rev 1960 6 39)、ウシ(J Sci Fd Agric 1962 13 621)でも見られた。


(Ann N Y Acad Sci 1969 162 865より)


 しかしヒトに関しては、1969年のレビュー論文(Ann N Y Acad Sci 1969 162 865)に「腎のMg閾値は存在するか」という章もあり、未確定だったようだ。しかし、1986年には「健常人といくつかの病態生理におけるTmMgと腎のMg閾値」という決定的な論文(Magnesium 1986 5 273)がでている。

 いっぽう、後半の「点滴の半分が失われうる」については、孫引きだけでは原典まで至らなかった。しかし、「点滴速度はゆっくりでなければならないか?」と検証する報告がいくつかみつかった。

 たとえば、米国の入院施設でマグネシウム補充プロトコルの変更前後でカルテレビューしたところ、補充速度が0.5g/時でも1.8g/時でも補充に要する日数や低血圧などの有害事象に有意差はなかった(Hosp Pharm 2020 55 64)。

 また、幹細胞移植後の低Mg血症(CNIなどによる)患者103人を対称にした後ろ向きの観察では、硫酸マグネシウム4gを1時間で点滴された群は、2時間で点滴された群にくらべて100日あたりの補充量が少なく済んだ(68g v. 85g, p=0.04)。

 生理学的に考えれば、腎にMg閾値がある以上、補充中にその血清Mg濃度を上回ればMgは尿中に排泄されてしまうはずである。しかし、実臨床に「何時間、どれくらい点滴すれば喪失を最低限にできる」と、直訳はできないのかもしれない。


 
映画『ロスト・イン・トランスレーション』
(引用はこちらから)

Mg保持性利尿薬

 カリウム保持性利尿薬という用語はあっても、マグネシウム保持性利尿薬のほうは、馴染みのうすい方も多いと思われる。筆者も知らなかったのであるが、ENaC阻害薬であるアミロライドやトリアムテレンは、カリウムだけでなくマグネシウムも保持することが知られている。

 古くは1980年代にも報告があるし(Br J Pharmac 1983 79 891)、最近ではGitelman症候群患者30人を対象にインドメサシン、エプレレノン、アミロライドのK保持性を比較したRCT(JASN 2015 26 468、クロスオーバーも)で、図らずもそれが示された。

 スタディで、アミロライドは尿中Mg排泄がコントロール群に対して有意に低かった(2.1mmol/24h v. 1.7mmol/24h、p<0.05)のに対し、インドメサシン・エプレレノンでは高かったのである(それぞれ3.1と3.0mmol/24h、ANOVA検定でp=0.02)。

 同様の結果は、健常者を対象にスピロノラクトンとアミロライドを比較したスタディ(Br J Clin Pharmacol 1993 35 373)でもみられている。ENaC阻害薬といえば、低ナトリウム血症を起こしやすいことは以前も紹介したが、マグネシウムについてもこうした違いがあるようだ。

 どうして、同じRAA系を阻害するミネラルコルチコイド受容体阻害薬(MRA)では起きないのか?ENaC阻害薬では阻害されない(が、MRAでは阻害される)アルドステロンの作用などが推察されるが、詳細は不明であり、解明が期待される。

 日本ではあまり使われない薬だが、じつはトリアムテレンが認可されている。また、利尿薬でもある?SGLT2阻害薬も、Mgの尿中排泄を低下させることが知られている(日本からの報告は糖尿病 2017 60 700など)。

 だから、マグネシウムの保持がいろいろと身体によいなら、それをきっかけにENaC阻害薬も脚光を浴びる・・なんて日が、来るかもしれない。



(enactは「採択する」を意味する英語)


Mg貯蔵量、どう測る?

 マグネシウムの診療で問題になるのが、「細胞外のマグネシウムは体内貯蔵量の1%しかない」だ。そのため臨床では、「血中Mg値が正常でも体内貯蔵量は欠乏している」とか、「血中Mg濃度を正常化するだけでは体内貯蔵量は不十分である」といった話になる。

 じつはこれは、マグネシウム研究の黎明期から知られていた問題であり、「マグネシウム欠乏症(magnesiopenia)」という用語も提案されたほどだ(ミネソタ大学古典学科のマクドナルド教授による、Ann N Y Acad Sci 1969 162 934)。

 血中濃度と体内貯蔵量の関係はマグネシウムだけでなく、たとえば鉄ならTSATやフェリチンが測れるし、骨量にはDEXAなどの測定方法がある。しかし、マグネシウムには、そこまで確立されたものはないのが現状だ。Mg点滴後の尿排泄量で足りているか判断するMg負荷試験も、腎のMg再吸収能が正常でなければ当てにならない。

 生理学のレビューには赤血球、白血球、筋肉などの記載がみられるが(CKJ 2012 5 Suppl1 i3)、いずれも精度や侵襲度に問題があって利用は一般的ではない。最近は口腔上皮細胞も用いられるが、採取は簡単なものの、ゴールド・スタンダードとはいえないのか、用いた論文で「当てにならないのかも」と考察されることもある(KI Rep 2017 2 380)。

 そんななか、意外な検体をもちいた論文(Circ J 2013 77 3029)を見つけたので、紹介したい。それは、「毛髪」である。


写真はボブ・マーリー
(Wikipediaより引用)


 毛髪中の微量元素測定は公害や法医学の分野では確立された方法であり、それをマグネシウムにも応用したわけだ。頭髪は1ヶ月に1センチ伸長するので、この方法で過去3ヶ月程度のマグネシウム量を比定できるという。

 この論文では、日本の血液透析1施設にいる男性患者79人を対象に、頭髪を数箇所から0.5グラム(3-4センチ)採取してマグネシウム濃度を測定した。すると、毛髪Mg量と左室重量(LVMI)の相関は有意差に達しなかった(p=0.09)が、下図のように心室壁厚などには有意な相関がみられた。


前掲論文より引用


 毛髪Mg量は年齢・Kt/V・Ca値と相関していたので、これらは交絡因子になりうる。しかし、血圧・アルブミン・鉄・Hgb・リン・iPTH値などには相関していなかった。また、毛髪Mg量は血清Mg濃度とは相関していなかった。

 「毛が血液ほどにモノを言う」興味深いデータである。毛髪診断士でもないかぎり、ふだんの診察で毛髪を意識することはないだろうが、血液・尿などと並び比較的低侵襲で採取できる毛髪から得られる情報は、意外と多いのかもしれない。



ミュージカル『ヘア・スプレー』
(Wikipediaより引用)

2017/07/26

がん患者の急性腎不全 6

今回は前回の続きで、抗がん剤とAKIについての実践的な内容について触れたいと思う。
少しでも知識の片隅に置いてもらえたらうれしいと感じる。


まとめるとNEJMの下記の表と図がとてもみやすい。(NEJM 2017



上記を文章にまとめてみる。
★細胞障害性抗がん剤では
・シスプラチン:直接的に尿細管障害を生じ、ATNを生じる。また、Salt wastingを生じ低ナトリウム血症になったり、マグネシウム排泄が亢進し、低マグネシウム血症もきたす。低クロール環境が毒性の増悪を生じるため、投与前に生食投与を行い尿量を維持する事は重要である。1/3が治療後数日でAKIになる。また、反復投与で悪化しやすい。


・カルボプラチン・オキサプラチン:シスプラチンと同様の白金製剤ではあるが、尿細管障害は生じる頻度は低い。


・イフォスファミド:シクロフォスファミドと同様なアルキル化剤。30%程度にAKIを生じる。近医尿細管障害を生じ、尿糖・低カリウム血症・低リン血症・近医尿細管アシドーシスを生じる。重度な症例ではFanconi症候群を呈する。CKDがある症例やシスプラチン投与歴がある症例、腎に悪性腫瘍の進展がある症例はAKIのリスクになりうる。


・メソトレキセート:代謝阻害薬の薬である。白血病・肉腫・リンパ腫の治療に使用。高容量(1g/m2)は尿細管内の結晶を形成し閉塞を生じ、また直接的に尿細管障害を生じAKIを引き起こす。


・ペトレキセド:代謝阻害薬で、尿細管障害を生じATNを生じAKIを生じる。重度の場合ではFanconi症候群を生じる。


下記は骨粗鬆症の予防で使用されものであるが、
・パミドロネート:FSGSを生じやすい。
・ゾレドロネーと:ATNを生じやすい。
は覚えておく必要はある・


★分子標的薬
・VEGF阻害薬:大腸ガンや腎細胞癌などの治療薬として使用される。高血圧、タンパク尿、AKIとの関連性が示されている。また、TMAやFSGSの報告もありVEGF阻害薬のAKI機序としては最多である。

・BRAF阻害薬:容量依存性のAKIを生じる。尿細管間質障害を生じる。80%の症例が薬剤の中止で改善するが、はっきりとした機序までは不明確である。

・ALK阻害薬:クリゾチニブ(ザーコリ)はATNやAINを生じAKIを生じうる。

★免疫治療薬
パート5のカテゴリには入れてはいなかったが、インターフェロンやインターロイキン2はAKIにおいては重要なので、把握しておく必要がある。
両者ともAKIを生じ、
−インターフェロンは、高容量のタンパク尿を生じ、微小変化群やFSGSといった腎炎所見をもたらしたことがわかっている。機序としてはインターフェロンがpodocyteにくっつき正常細胞の増生を変化させたと考えられている。薬剤の中止によりAKIの多くはよくなるが、collapsing FSGSなどは効果が乏しいと言われている。

★免疫チェックポイント阻害薬
これはAKIに関しては急性間質性腎炎を生じることが報告されている。また、AKIの程度も中等度から重度になることも多い。ステロイド治療や薬剤の中止により徐々に改善する。

今回は2回にわたって抗がん剤と腎機能障害に関して振り返ってみた。
うまくまとめきれていなく、読みづらい部分も多いと思うが、少しでも臨床の参考になればと思う。





2015/06/18

CKDとMg

 Mgが低く(2.1mg/dl以下)高リン血症のCKD群と、Mgが高く(2.1mg/dl以上)高リン血症のCKD群では、Mgが高い群のほうが末期腎不全になりにくいというコホートスタディがでた(doi:10.1038/ki.2015.165)。これだけでは相関しかいえないし、「高リン低MgのCKD患者さん」と「高リン高MgのCKD患者さん」というのは臨床的にどんな人達なのか想像がつかない。高Mgの人たちは、Mg摂取量が多いということだろうか。だとすればMgが多い食品というのはナッツ、藻類、豆類などだそうだからこれらを多く摂る人は野菜も多く摂っておりアシドーシスが抑えられているのかもしれない。

 ただ、Mgが血管の石灰化や炎症を抑制するということはin vitroでよく示されているようで(たとえばNDT 2012 27 514)、上記の論文でもMgがサイトカイン産生を抑制したなどの結果があった。Mg2+はCa2+と拮抗して平滑筋収縮を抑制したり尿路結石の形成を予防したりするから、同様に血液中のCa9(PO4)6粒子やcalciprotein particleの形成(これらについては以前に書いた)を抑制しているのかもしれない。将来的にMg投与によって心血管系イベントや末期腎不全への進展が抑えられるかというスタディが組まれて、もしそうだと分かれば明るい話題になるだろう(もちろん高Mg血症に注意しなければならないが)。

 [2016年7月追加]まだ大きなスタディはないが、Mg補充と降圧をみた小さなスタディはヨーロッパを中心にいくつもあって、それらをメタアナリシス論文がでた(DOI: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.116.07664)。それによれば、300mg/d以上(Mgの分子量は24.3なので酸化マグネシウムで約500mg以上)の摂取で収縮期血圧2mmHg、拡張期血圧1mmHg(CIで有意)さがっていた。高血圧患者も血圧正常被験者もあわせているし、おそらく腎機能正常例を対象にしているので上記テーマとは必ずしも直結しないが、きちんとしたスタディはしてもいいのかなと思う。なおMg濃度は0.05mmol/l(0.1mg/dl)程度あがった。



2015/05/12

Mgおたく(aka MgSO4 for severe asthma and premature labor)

 私が札幌で働いていたときに出会い、私の渡米を可能にしてくれ、以後も母親のように親身に面倒をみてくれている恩師が、札幌を去る送別会の席でみんなに「最も好きなイオンは何ですか?」と聞かれて答えたのがマグネシウムだった。そもそも私が腎臓内科を目指したのに彼女は影響しているわけだが、それだけでなく師のあとを追うように私もマグネシウムに何となく注目してきた(リンク1リンク2リンク3リンク4リンク5)。

 しかし、灯台下暗しで「なぜ重症の喘息にMgSO4静注が有効なのか(有効性についてはJAMA 1987 257 1076など)?」という問いに今まで答えようとしてこなかった。調べてみると、Mg2+はCa2+と競合するので、Mg2+を投与するとCa2+による平滑筋の収縮が抑えられ、その結果平滑筋の弛緩が起こると考えられているようだ(Indian J Anaesth 2007 51 225)。そして、premature laborを遅らせるためにMgSO4が投与されるのも同様の理由なようだ(NEJM 1984 310 1221)。

 さらに、Mg2+が肺でどのような機能を果たしているかについてまとめたであろう論文"Magnesium and the lungs"(Magnesium 1988 7 173)によれば、Mg2+は平滑筋収縮だけでなく肺血管収縮、マスト細胞顆粒放出、その他neurohumoral mediator releaseなど多彩に関わっているそうだ。このMagnesiumという雑誌、マニアックで興味深いがどうやら廃刊になったようだ。しかし、international society of the development of reseach on magnesiumが出すMagnesium Researchという雑誌はあり、学会も開かれている。



2013/11/08

Mgのいろいろ

 Mgのお話はEGFのところで止まっていたが、他にもCNNM2とかHNF1βとかZXYD2とか色々ある。全部書くのは大変だから、今回勉強になった中で二つ紹介する。一つは遠位集合管にあるMgの再吸収チャネルTRPM6がインスリンにより活性化されること(PNAS 2012 109 11324)。インスリンが間質側のインスリン受容体に結合することで細胞内のCDK5を活性化してTRPM6をリン酸化することで、TRPM6を含む小胞を移動させTRMP6を内腔側に表出させるのだという。

 もう一つは、MgはTRPM6だけでなくparacecullarにも再吸収され、それにはClaudin 16や19などが関わっていることだ。タイトジャンクションがイオンチャネルの役目をしているなんて知らなかった。聴けば、タイトジャンクションといっても壁ではなく、フェンスとでも言おうか、イオンくらいは通れるのだそうだ(Curr Opin Nephrol Hypertens 2010 19 456)。Mg2+、やはり奥が深くてこれからも目が離せない。

2013/05/06

EGF and Mg

 マグネシウムを愛する人が訪れたい場所でまず思いつくのはギリシャのThessaly地方にあるMagnesiaであろう。ここで取れる滑石、Mg3Si4O10(OH)2がmagnesiaと呼ばれたのがマグネシウムの語源だからだ。

 そして、もう一つ訪れたいのがEnglandのSurrey地方にあるEpsom。ここの泉から湧く水はMgSO4を多く含み苦く、水気を抜いたEpsom saltという粉が医薬品として昔から売られていた。もっとも今では当時の面影はほとんど残っていないらしいが。

 前置きはさておき、マグネシウムについてまた学ぶ機会があった。それは、血中マグネシウム濃度はPPI、calcineurin inhibitorsなど様々な薬の影響を受けるが、ほかに分子標的抗がん剤EGFR inhibitors(のなかでもcetuximabとerlotinib)もあるということ。

 これは、EGFが遠位尿細管でEGFRに結合してMgチャネルTRPM6発現を増やしMg再吸収を増やすからだ。それをブロックするEGFR inhibitorを投与すれば尿中Mg排泄が増えて低Mg血症になる(Clinical Science 2012 123 1)。

 それから、マグネシウムとは関係ないがEGFR inhibitorのcetuximabがネフローゼ症候群を起こしたかもしれないという報告を知った(DOI: 10.1177/1078155212459668)。分子標的抗がん剤のなかでは他にVEGF inhibitorのbevacizumabが蛋白尿とネフローゼのリスクを上げる(JASN 2010 21 1381)。

 VEGF inhibitorの方は、なんとなく「VEGFって言うくらいだからそれをブロックしたら糸球体の内皮細胞異常が起こるのかな」と想像されるが、原因ははっきり分かっていない。Thrombotic microangiopathyの報告もあるようだ。


[2020年3月25日追記]上述のEpsom(エプソム)は、元々からして地名である。Epsom Downsと呼ばれる丘陵に位置し、その地盤はほぼ100%が石灰岩の一種、白亜(chalk)だ。泉から湧くのが硬水なのもうなずける。

 ハイキングに最適のようで、ロンドンの街並みも望める(写真)。またエプソムは、英国で最も格式の高い競馬場の一つ、Epsom Down Racecourseがある(ダービーとオークスの舞台)。


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 いっぽう、硫酸カルシウムの英語は、gypsum(ジプサム)。エプサムと語感が似ているが、こちらは地名ではない。ギリシャの自然哲学者・博物学者のテオプラストスが名づけたそうだ。「ギプス」の語源でもある。

 ジプサムの結晶は、岩の空洞内部に生えるように産出することがある。こうした岩を晶洞(geode)というが、世界最大のものはスペイン南部のプルピ晶洞だ(写真)。1999年に元鉱山で発見され、2019年8月に一般公開された。


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2012/10/23

Hypomagnesemia and hypokalemia

 電解質異常・酸塩基平衡は腎臓内科の専売特許ではない。こないだ総合内科の診療チームの部屋で共有する患者さんの治療方針について議論していたら、ふとホワイトボードをみると細胞とイオンチャネルの図が描いてある。聞けば、チームについている医学生が「どうして低Mg血症があると低K血症は治りにくいのか」について論文を調べて講義したのだという。

 正直この質問については「まだ良くわかっていない」という答えに安住していたので、感心して彼の見つけた論文(JASN 2007 18 2649)を読んだ。著者によれば低Mg血症は低K血症の半数以上にみられ、低Mg血症が低K血症の治療を困難にする理由は"remains unexplained"としつつもどうやらそれが遠位尿細管での尿K排泄の亢進によるらしいと主張し説明している。

 というのも、Bartter症候群の患者やHCTZ服用の患者にMgを補うと尿K排泄が減り、健常な人にMgを静注するとに尿K排泄が減り、Gitelman症候群の患者にMgを静注するとTTKGが減るからだ。遠位尿細管でのK排泄はROMK(non-flow stimulated)とmaxi-K channels(flow stimulated)が司るが、MgはROMKを通じたK排泄を抑制しているらしい。

 ROMKはチャネル(ポンプではない)なのでKは自由に出入りできる。ただmembrane potential(細胞内が陰性チャージ)による内向きK流とカリウムのgradient(細胞内にKがたくさん)による外向きK流が平衡して、通常はKが外に排泄されている。しかし細胞内にfree Mgがあると、これが内側からチャネルの孔をふさいでK排泄を抑制するのだ(Science 1994 371 243)!

 では低Mg血症のとき、尿細管細胞内のfree Mg濃度もやはり低いのだろうか。実は、これを直接証明した人はまだいない。まずMgは60%が骨、38%が細胞内、2%がplasmaなど細胞外液にある。細胞内Mg濃度は10-20mMだが、free Mg濃度は0.5-1mM。細胞内外のMgは3-4時間で100%入れ替わる(Biometals 2002 15 203)ので、おそらく低Mg血症なら細胞内 free Mgも低いだろうと著者は推測している。

 OK、では低Mg血症だが低K血症を起こさない疾患(TRPM6変異など)はどう説明する?著者は、いくらROMKの滑りが良くなっても、流れを起こすdriving forceがなければK排泄は変わらないだろうと主張し、driving forceの例に遠位尿細管へのNa delivery、アルドステロンなどを挙げている。この論文はextremely interestingだった、関連論文も読みたい。


2012/07/28

FEMgふたたび

一年前にFEMgなるものを初めて知り、それからCNI(calcineurin inhibitors)やGitelman症候群で遠位尿細管のMgチャネルTRPV5によるMg再吸収が阻害されることなどを学んだが、「FEMgの正常値は?」と問われて知らないことに気づき、実験データを調べた。

 このMg好きによるMg好きのための論文(Magnesium Research 1997 10 315)によれば、extra-renal wastingによる低Mg血症患者さんではFEMgが1.4%(0.5-2.7%)、renal wastingによる患者さんでは15%(4-48%)だった。Control群では1.8%(0.5-4%)だった。

 腎機能が悪ければFEMgも下がるのではないか?と思われたが、彼らのデータによればrenal wasting群のクレアチニンは1.2mg/dl(0.7-1.4)で、血中Cr濃度とFEMgには相関は見られなかった。

 低Mg血症は利尿剤(renal wasting)、下痢、PPI(extra-renal wasting)によっても起こるし、通常は病歴でrenal wastingかextra-renal wastingか分かるはずだが、FEMgが助けてくれるかもしれない。やっと正常値が分かったので、これからもっと使ってみよう。


2011/07/23

塩の換算

 いまだに混乱するのが食塩とナトリウムの関係だ。食品の栄養成分表にはたいていナトリウムがmg表示で記されているが、私たちはたいてい体内のナトリウムをmEqで考え、食品の場合は食塩何gで考えるので、単位がバラバラだ。

 分かりやすい基準は、生理食塩水1Lに9gの食塩が入っており、それはNa 154mEq、Cl 154mEqだということだ。そして原子量の違いから、9グラムの食塩は約4グラムのNaと約5グラムのClからなる。これで換算できるはずだ。

 たとえば醤油大さじ1杯には940mgのNaが含まれている。これは940 x 9/4 = 約2グラムの食塩に相当し、2 x 154/9 = 約36mEqのNaとClに相当する。また生理食塩水を125ml/hで輔液した場合、一日に0.125 x 24 x 9 = 27グラムもの食塩を身体に入れることになる。


ポテトトングで塩分摂取


[2019年1月追記]カルシウムのmEq/l、mmol/l、mg/dlの変換も追加する。カルシウムの原子量は40、そしてイオンは2価イオンだ。だから計算しやすい10mg/dl(100mg/l)は、2.5mmol/l。そして1mmolのカルシウムは2mEq分荷電しているので、2.5mmol/lは5mEq/lになる。

 ただし、「イオン化カルシウム」は血中総カルシウムの約半分。実験では39.5%が蛋白結合、46.9%がイオン化し、13.6%がdiffusible calcium complexes(その間の、細胞膜などを透過できる状態)だった(JCI 1970 49 318)。それで、血中総Caが10mg/dlの患者さんでイオン化カルシウムだけをはかると、2.5の半分で1.25mmol/l程度になる。

 なお、血中カルシウムの一部が半透膜を透過しない(蛋白結合しているからだが)ことを1911年に初めて発表した論文(Biochem Z 1911 31 336)の第二著者、D. Takahashi博士は日本人と思われる。

 東大柏キャンパス図書館まで原著論文を閲覧しに行った筆者だが、「D」は原著にもイニシャルしか書かれていなかった・・。東京大学農芸化学科発酵学教室・第二代教授の高橋禎造博士のことかとも推察したが、確証はない。


頭文字Dを探して


[2020年6月4日追記]マグネシウムは原子量24、2価イオンであるから、1mmol/lは2mEq/l(2倍)、2.4mg/dl(24÷10の2.4倍)となる。したがって、SI単位系の血中Mg正常値である0.7-1.0mmol/lは、1.7-2.4mg/dlだ。

 また、混乱しやすい各種Mg製剤の単位も、いちど整理する。

 MgSO4・7水和物の分子量は約240。よって硫酸マグネシウム製剤1グラムには約4mmol(1000÷240)、8mEq(2倍)、100mg(24倍)のマグネシウムが含まれる。逆に、Mg20mEq含有のMgSO4製剤1アンプルは、2.5グラム(20÷8)に相当する。

 MgOの分子量は約40。よって酸化マグネシウム製剤1グラムには約25mmol、50mEq(2倍)、600mg(24倍)のマグネシウムが含まれる。ただし、剤形や腸の状態などによって吸収率に大きな差がでることに注意が必要だ(Nutrients 2019 11 1663)。

 ささいなことだが、単位を間違えると事故の元である。




2011/07/20

FEMg

 先日はfree water excretionを学び、それが近位尿細管の障害を反映すると知ったが、今日はFEMg(マグネシウムの排泄割合)を習った。ポイントは血清Mgに0.7を掛けること(30%はアルブミンに結合しているため)。腎臓からのMg排泄過多により低マグネシウム血症の場合、FEMgは15%を越えるという。マグネシウムは60%がヘンレ上行脚(thick ascending loop of Henle)で受動的に再吸収されるため、FEMgの異常はそこの障害を反映する。なお残りのMgは遠位尿細管でTRPM6チャネルにより再吸収される。