このところ、投稿の最後にTwitterのことが書いてあるので、もうサイト(https://twitter.com/Kiseki_jinzo)に行ってくださった方もいらっしゃるかも知れない。そして、下図のプロフィール写真にも目を留めてくださったかもしれない。
これはもちろん、「今年の漢字」のパロディだ。いつかはこんな日が・・と、私はずっと「キセキ」に期待している。腎臓病の治癒ができたら、あるいは、新しい人工腎臓ができたら、叶うかな。しかし今年の応募期間は12月5日までだから、まだ「腎」にもチャンスはある。12月12日の京都・清水寺での発表が待ち遠しい。
そんなわけで、きょうはこの「腎」という言葉について考えてみたい。まずは、空港でのこんな会話スキットに注目してみよう。
入国審査官「あなたは何をしていますか?」
私「医師です」
入国審査官「専門は?」
私「Nephrologistです」
入国審査官「え、何?」
腎臓内科・腎臓病・腎不全は日本語ではすべて「腎」だが、英語だとそれぞれネフロ(nephro)・キドニー(kidney)・リーナル(renal) と異なる。そしてネフロはギリシャ語、リーナルはラテン語だから、一般には通じにくい(リーナルは、フランス・スペインなどのラテン語圏なら通じるかもしれないが)。
それで、さきほどのスキットでは「キドニー・ドクターです」と言ったほうが通じやすい。中期英語でよりアングロサクソンな「キドニー」は、豆の名前にもなるくらい誰でも知っているからだ。CRF(chronic renal failure)をCKD(chronic kidney disease)にした米国腎臓財団タスクフォースK/DOQIの2002年宣言にも、名称変更の理由にその旨が明記されている。
つぎに、「腎」という漢字についてはどうか。左上の臣は「目を見開いた」、転じて「従う・家来」の意味があり、右上の又は「手」の意味がある。そしてこの二つが合わさると、「かたい・しっかりした」という意味になるそうだ。神のしもべの瞳を傷つけ身体を硬くする、家臣がひざまずいて身体を固くするなど諸説ある。
だから「腎」は、「かたい・しっかりした臓器」ということだ。たしかに、かたい。そして、しっかりしている。余談だが「腎」の「にくづき」を「貝」にした「賢」も同様に、「しっかりした通貨・宝を持っている」から「かしこい」の意味になったという。
ここまできたから、韓国語と和語についても触れておく。韓国語では、「腎臓」のハングル読み신장(シンジャン)も用いるが、より一般に使うのは콩팥(コンパッ)で、콩は「まめ」、팥は「あずき」だ(あずきカキ氷として日本でもお馴染みなパッピンスの「パッ」)。
そして和語は、「むらと」だ。平安中期に編纂された辞書「倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」に記載があるらしい。おそらく、身体の各部について説明した形體部だろう。解釈によれば「むら」は「まわる」、「と」は「ところ」に通じ、あわせて「循環するところ」という意味だそうだ。
循環する臓器はたくさんあるが、腎臓を「むらと」と名づけた先祖はすごい。
話はめぐってめぐりますが、最初のとおり、Twitterともども今後ともよろしくお願い申し上げます。
https://twitter.com/Kiseki_jinzo
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2018/11/29
2018/11/22
心臓が悪い人は腎臓も悪いのか?? 〜前編〜
腎臓の増悪を腎臓内科としては防ぐことが重要である。
腎臓が悪くなる原因に色々とあるが、心臓が悪いというのは一つ大きな原因として見かける。
今回は、慢性腎不全(CKD: Chronic Kidney Disease)と心機能が低下している人について考えてみる。
ある症例を見てみよう。
もともと慢性腎臓病で腎臓内科外来に通院していた80歳男性。この男性は、高血圧と心筋梗塞の既往があり循環器内科にも通院している。心臓に関しては収縮機能の低下した心不全(HFrEF: Heart Failure with reduced Ejection Fraction)として管理されている。内服薬はアスピリン、βブロッカー、ループ利尿薬、スタチン、ARBを内服している。バイタルは、血圧:118/70mmHg、心拍数:62回/分、呼吸数:16回/分。身体所見上は軽度のpitting edemaを下肢にに認めるが、JVPの上昇などは認めていない。生活の中では、悪い時にはNYHA class Ⅱの症状を夜間に感じるが朝には改善するとのこと。
もともと外来では血清Cr:1.3-1.6mg/dL程度であったが、ここ2年間では2.1-2.3mg/dLと増悪を認めている。特に尿蛋白定量や尿所見での新たな異常の出現はない。。
心機能に関しては心エコー所見でEF 38%であった。
ここで疑問がわく。
◆これは、心腎症候群 (CRS: Cardio Renal Syndrome)なのだろうけど、HFrEFの患者でCKDを持っている人はどのくらいなのだろうか??
◆この人にとってベストな治療はなんだろうか??
CRSの機序に関しては、下記の図が非常にまとまっている。
このような場面は、よく遭遇する機会が多い。今回はこの部分を少し考えれたらと思う。
・まず、HFとCKDが共に起こる割合はどうか?
–これに関しては、年齢上昇とともに並存する割合は増加する。また、高血圧、糖尿病、心血管疾患、腎疾患などのリスクファクターに強く影響を受ける。
☆エビデンスとして・・
ADHERE(The Acute Decompensated Heart Failure National Registry)の報告から、12万人のうっ血性心不全で入院した患者の半数以上がCKDの並存があったとしている。
HFrEF、HFpEF( Heart Failure with preserved Ejection Fraction)の患者が混合しているが、25の研究のメタアナリシスで55%の患者が、CKDを有していることが示された。
→なので、まず最初の疑問のどのくらいかに関しては50-60%の割合で持っていることがわかる。
・では、このように高率で併存する場合に何か悪いことがあるのだろうか?
–これに関しては、腎機能の低下と死亡率の上昇は先行研究によって示されている。下図が非常にわかりやすいが、CKDのステージが進行すると共にこの場合は生存割合は減少することがわかる。
別のデータ(USRDS)からもCKD患者の40%以上が慢性心不全を併発するのに対し、CKDがない患者では20%未満になることもわかっている。(下図)
なので、我々は腎不全の進行を抑えることは心不全の併発の割合を抑えているんだなーと感じながら管理をする必要がある。
ただ、腎機能だけを見ているわけにはいかず、ARIC(The Atherosclerosis Risk in Communicate) studyから、尿中のAlbumin/Cr比が心不全発生に関与していることも示されているため、尿中のデータも見て行く必要がある。
では、次の疑問のどのように管理すれば適切なのかであるが、今日は長くなってしまったので次回にしようと思う。
何かコメントあれば、Twitterにぜひ!
https://twitter.com/Kiseki_jinzo
とても、commonではあるが非常に重要なテーマなのかなと思う。
腎臓が悪くなる原因に色々とあるが、心臓が悪いというのは一つ大きな原因として見かける。
今回は、慢性腎不全(CKD: Chronic Kidney Disease)と心機能が低下している人について考えてみる。
ある症例を見てみよう。
もともと慢性腎臓病で腎臓内科外来に通院していた80歳男性。この男性は、高血圧と心筋梗塞の既往があり循環器内科にも通院している。心臓に関しては収縮機能の低下した心不全(HFrEF: Heart Failure with reduced Ejection Fraction)として管理されている。内服薬はアスピリン、βブロッカー、ループ利尿薬、スタチン、ARBを内服している。バイタルは、血圧:118/70mmHg、心拍数:62回/分、呼吸数:16回/分。身体所見上は軽度のpitting edemaを下肢にに認めるが、JVPの上昇などは認めていない。生活の中では、悪い時にはNYHA class Ⅱの症状を夜間に感じるが朝には改善するとのこと。
もともと外来では血清Cr:1.3-1.6mg/dL程度であったが、ここ2年間では2.1-2.3mg/dLと増悪を認めている。特に尿蛋白定量や尿所見での新たな異常の出現はない。。
心機能に関しては心エコー所見でEF 38%であった。
ここで疑問がわく。
◆これは、心腎症候群 (CRS: Cardio Renal Syndrome)なのだろうけど、HFrEFの患者でCKDを持っている人はどのくらいなのだろうか??
◆この人にとってベストな治療はなんだろうか??
CRSの機序に関しては、下記の図が非常にまとまっている。
![]() |
| AJKDより引用 |
このような場面は、よく遭遇する機会が多い。今回はこの部分を少し考えれたらと思う。
・まず、HFとCKDが共に起こる割合はどうか?
–これに関しては、年齢上昇とともに並存する割合は増加する。また、高血圧、糖尿病、心血管疾患、腎疾患などのリスクファクターに強く影響を受ける。
☆エビデンスとして・・
ADHERE(The Acute Decompensated Heart Failure National Registry)の報告から、12万人のうっ血性心不全で入院した患者の半数以上がCKDの並存があったとしている。
HFrEF、HFpEF( Heart Failure with preserved Ejection Fraction)の患者が混合しているが、25の研究のメタアナリシスで55%の患者が、CKDを有していることが示された。
→なので、まず最初の疑問のどのくらいかに関しては50-60%の割合で持っていることがわかる。
・では、このように高率で併存する場合に何か悪いことがあるのだろうか?
–これに関しては、腎機能の低下と死亡率の上昇は先行研究によって示されている。下図が非常にわかりやすいが、CKDのステージが進行すると共にこの場合は生存割合は減少することがわかる。
なので、我々は腎不全の進行を抑えることは心不全の併発の割合を抑えているんだなーと感じながら管理をする必要がある。
ただ、腎機能だけを見ているわけにはいかず、ARIC(The Atherosclerosis Risk in Communicate) studyから、尿中のAlbumin/Cr比が心不全発生に関与していることも示されているため、尿中のデータも見て行く必要がある。
では、次の疑問のどのように管理すれば適切なのかであるが、今日は長くなってしまったので次回にしようと思う。
何かコメントあれば、Twitterにぜひ!
https://twitter.com/Kiseki_jinzo
とても、commonではあるが非常に重要なテーマなのかなと思う。
2018/10/05
SGLT2と腎臓に関して
この話題に関しては何回もこのブログで取り上げている(CANVASとCREDENCE、EMPA-REG outcome)。
とてもいいreviewがAJKDに出ているのでぜひ参考にしてもらいたい。
SGLT2の使用割合はおそらく全世界で増加しているだろう。
去年の日経メディカルの記事では処方率は低空飛行とのことであるが、今後使用が期待されている。
まずは、種類の復習。現時点(2018年)では6種類のSGLT2阻害薬が本邦ではあり、色々と差別化をはかろうと試験が行われている。
用法:1日1回50mgを投与し、効果不十分な場合には1日量として100mgまで増量可
用法:通常、1日1回5mgを投与し、効果不十分な場合は1日量として10mgまで増量可能
用法:通常、1日1回100mgを投与する
DPP-4阻害薬(テネリグリプチン)との配合剤(カナリア配合錠)がある
用法:通常、1日1回10mgを投与し、効果不十分な場合には1日量として25mgまで増量可
現在までの有用なもの、これから結果が出る試験のまとめとしては下図になる。
まだ、Dapagliflozinの結果とCanagliflozinのCREDENCEは出てはいないが、以前に示したようにEMPHA-REGやCAMVASでの結果から、有用な結果は見いだされている。
この糖尿病性腎症に対して予防的に働く機序に関しては直接的な効果と間接的な効果に分けて考えると非常に理解しやすい。
直接的な効果
・近位尿細管のNaCLとGlucoseの再吸収をSGLT2阻害薬が防ぐことで、tubloglomerular feedbackがかかり、輸出細動脈の収縮が生じGFRを担保する(下図参照)。
・近位尿細管での血糖の再吸収阻害で細胞の炎症や繊維化を防ぐことができる(PLos one 2013)。
間接的な効果
・SGLT2阻害薬による体重の減少
・HbA1cの低下
・血圧の低下
などが挙げられる。
日常診療の中で、患者さんのことを考えながらどのように自分の処方が役に立っているのか、そしてそれを常にアンテナを張ってアップデートをしていくことは非常に重要だと感じる。
とてもいいreviewがAJKDに出ているのでぜひ参考にしてもらいたい。
SGLT2の使用割合はおそらく全世界で増加しているだろう。
去年の日経メディカルの記事では処方率は低空飛行とのことであるが、今後使用が期待されている。
まずは、種類の復習。現時点(2018年)では6種類のSGLT2阻害薬が本邦ではあり、色々と差別化をはかろうと試験が行われている。
・スーグラ®
最初に発売されたSGLT2阻害薬
用法:1日1回50mgを投与し、効果不十分な場合には1日量として100mgまで増量可
肝機能が低下している場合などに対する低用量規格(25mg錠)も
他の糖尿病治療薬との配合製剤に関してDPP-4阻害薬(シタグリプチン)との配合剤(スージャヌ配合錠)がある
・ルセフィ®
用法:通常、1日1回2.5mgを投与し、効果不十分な場合は1日量として5mgまで増量可能
・フォシーガ®
用法:通常、1日1回5mgを投与し、効果不十分な場合は1日量として10mgまで増量可能
・デベルザ,アプルウェイ®
用法:通常、1日1回20mgを投与する
・カナグル®
用法:通常、1日1回100mgを投与する
他の糖尿病治療薬との配合製剤に関して
DPP-4阻害薬(テネリグリプチン)との配合剤(カナリア配合錠)がある
・ジャディアンス®
用法:通常、1日1回10mgを投与し、効果不十分な場合には1日量として25mgまで増量可
現在までの有用なもの、これから結果が出る試験のまとめとしては下図になる。
![]() |
| AJKD 2017より |
まだ、Dapagliflozinの結果とCanagliflozinのCREDENCEは出てはいないが、以前に示したようにEMPHA-REGやCAMVASでの結果から、有用な結果は見いだされている。
この糖尿病性腎症に対して予防的に働く機序に関しては直接的な効果と間接的な効果に分けて考えると非常に理解しやすい。
直接的な効果
・近位尿細管のNaCLとGlucoseの再吸収をSGLT2阻害薬が防ぐことで、tubloglomerular feedbackがかかり、輸出細動脈の収縮が生じGFRを担保する(下図参照)。
・近位尿細管での血糖の再吸収阻害で細胞の炎症や繊維化を防ぐことができる(PLos one 2013)。
間接的な効果
・SGLT2阻害薬による体重の減少
・HbA1cの低下
・血圧の低下
などが挙げられる。
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| AJKD2017より |
日常診療の中で、患者さんのことを考えながらどのように自分の処方が役に立っているのか、そしてそれを常にアンテナを張ってアップデートをしていくことは非常に重要だと感じる。
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