2017/06/22

カンヴァスと信用と落とし穴

 Canagliflozinの治験CANVASと、続編CANVAS-Rスタディの結果がNEJMにでた(DOI:10.1056/NEJMoa1611925)。昨年書いたEMPA-REGと似た結果で、心血管系イベントが有意に下がったといっても、心不全がRR 0.78(信頼区間0.67-0.91)なほかは信頼区間が1.0をまたいでしまう。血圧がさがり体重がへるのもEMPA-REGと同様だ。

 気になることが3点ある。1点目はサブ解析の結果だ。人種ごとに結果を見ると白人の心血管系イベントRRは0.84(0.73-0.96)で有意、黒人はRR 0.45だが信頼区間は0.19-1.03でギリギリ1をまたぐ。そしてアジア系はRR 1.08(信頼区間0.72-1.64)で、なんとプラセボと変わらない。がっかりだ。

 このスタディは30カ国でおこなわれたのでアジア系は全体の13.4%とそんなに少なくはない。有意差が出なかったというのは信頼できるデータかもしれない。そのうち「CANVAS-J」みたいな日本のデータがでるだろうが(パンフレットの表紙はこんな感じか?写真)、この結果と余りに違わないか検証する必要がある。




 2点目は腎予後だ。アルブミン尿の進展、eGFRの低下、透析や腎による死亡はいずれも介入群で数字上はめざましく低い(CIが余裕で1.0未満)。しかしアブストラクトにもあるように、これらの結果は彼らが事前に計画した仮説検証モデルによれば統計学的に有意とはいえなかった。それで結論はpossible benefitと言っている。まして、人種差があるかもわからない。

 SGLT2阻害薬のクラスはどれも腎症予防効果があるように言われているし、その期待に水を差すつもりはない。武器は多いほうがいい。適応のあるひとに期待して使うことも、間違っていないと思う。ただ結果が「possible effect(効くかもしれない)」なことは知っておきたい。

 ここでやめておいても「効く(らしい)!」で(特に日本では)売れるだろうに、「結局ちがった…」というリスクを負ってでも、この会社と研究者は白黒つけに腎予後のCREDENCE(信用という意味)スタディを走らせている。金儲けだけじゃなくて、ほんとうに結果を追求したいのならplausibleなだけでなくapplaudableと思う。

 だからこそ突き詰めてほしいのが3点目、副作用についてだ。以前にFDAが警告していたが、やはり介入群で有意に足切断例がおおかった。ほとんどは趾レベルだが、気持ちが悪いし、いつか足元をすくわれそうだ(写真は絵にかいた穴)。糖尿病患者さんにとって末梢動脈疾患と足壊疽は大問題であり、この仕組みがわかって新しい治療になるかもしれないから研究を期待したい。




 また、日本ではまだあまり知られていないようだから書いておくが、SGLT2阻害薬には血糖正常DKA(eDKA)の副作用がある。すい臓のα細胞にSGLT2があるのでグルカゴン産生に傾く。私も書いたが、代謝のお話だし、詳しくは日本の先生方がお書きになったこちらの論文を参照してほしい。こちらはここまで分かっているし、足壊疽も調べたら何か分かるはず。