2017年6月14日水曜日

滝を追いかける 3

 移植がうまくいくとみんながハッピーで、人類愛に満たされ心があたたまる。しかし移植後は危険も潜んでいるから注意が必要だ。移植後多尿に関するそんな論文が、ふたつあったので紹介する。

 一つ目(doi:10.1111/j.1432-2277.2005.00221.x)は155cm45kgの30代女性が195cm111kgの夫から腎グラフトを受けたケース。体格ミスマッチの移植には独特の問題がある(こちらも参照)が、ともかくフロセミドとマニトールも使ったので、この例は術後に1-2L/hの尿が出た。

 それをハーフ生食で補充していたが、移植9時間後にけいれんを起こし、調べるとNaが140mEq/lから113mEq/lに低下。Na欠乏量を体重×0.5×(140-113)で計算し602mEqと見積もったが、一気に戻すわけにもいかないので12時間で120mEq/lに戻そうと、体重×0.5×(120-113)の155mEqに近い量を3%食塩水で投与した(25mlを12時間で153mEq)。

 けいれんは止まり、12時間後には122mEq/lになった。その間にも尿は出ていたはずだが、尿については補充をつづけ、Na補正は3%食塩水でおこなったのかもしれない。そのあと0.9%食塩水に切り替え、予後良好で退院した。

 ふたつ目(CKJ 2016 9 180)は44歳男性で献腎移植を受けたケース。移植後の多尿がおさまらない。この方は多尿の家族歴があって幼い頃「腎性尿崩症」と言われたそうだが、腎臓を移植しても腎性尿崩症がつづくだろうか?

 しらべてみると、中枢性尿崩症だった。遺伝子検査をおこなうと、AVP遺伝子そのものではなくて、その9kb先にあるc.225>G point mutationが異常だった(flanking microsatellite markersを用いてわかったそうだ)。これが異常だと、AVP遺伝子のNeurophysin II部分(図はBrenner教科書)、75番目のアミノ残基がシステインからトリプトファンにかわるので、たんぱくの折りたたみが異常になるのかもしれない。




 たまっていた浸透圧物質と水が腎臓の尿濃縮能低下で排泄され多尿になる事態が、AKI後、移植後とべつに少なくとももうひとつある。もうお分かりかもしれないが、閉塞後多尿(post-obstructive diuresis、POD)だ。つづく(写真はヴィクトリアの滝)。