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2020/07/20

ADPKDに対する尿路結石、トルバプタン使用でどうなるのか?

今回、この話題に触れるのはあまり自分が考えたことがなかったためである。
まず、一般的にADPKDと結石に関して取り上げてみる。
・ADPKDにおける結石の割合:10-36%程度と言われる(Urol Ann 2012

・結石の成分:尿酸結石(40-60%)かシュウ酸カルシウム結石が多い(AJKD 1988)これは、一般の尿路結石に比べて明らかに尿酸結石の割合が高い。

・ADPKDにおける結石を有している場合の特徴:嚢胞が大きく、全腎容積量が非常に大きい。加えて、低クエン酸尿、高シュウ酸尿、高尿酸尿、アンモニア排泄が低く尿中pHが低いという特徴がある(CJASN 2009

このようにADPKDでは結石症は合併しやすいことがわかる。

我々は、ADPKDの治療にトルバプタンを選択する場合がある。このトルバプタンを使用することで尿路結石はどうなるのであろうか?増えるのか、減るのか?

今回、これを見た研究がCJASN 2020で出ている。
今回の研究では18歳以上でRavine criteria(LANCET 2014)でADPKDと診断された125人の患者を対象にしている。
治療投与前のベースラインと年のフォローアップの際に24時間蓄尿検査を行っている。
125人の患者で38人がトルバプタン治療・87人が非トルバプタン治療群であった。

トルバプタン治療群では、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸の尿中排泄量が減少し、尿中クエン酸や尿中カルシウム排泄量が増加した。
CJASN 2020より引用

また、尿中の酸排泄も低下し消化管からのアルカリ再吸収が増加した。
CJASN 2020より引用
ちなみに一般論として、尿路結石の予防としては、下記のものがある。
・水分を十分に摂る(1日尿量を2L以上にすることで結石再発リスクを減少できる)

・カルシウムを摂る(カルシウムは腸管内でシュウ酸と結合して便に排泄させ、尿中シュウ酸を減少)

・クエン酸を摂る(シュウ酸とカルシウム、リン酸とカルシウムが結合するのを抑制、また尿中pHを上昇させ酸性尿を是正させ尿酸結石、シスチン結石の予防に有効)

・シュウ酸摂取量を抑える(ほうれん草、キャベツ、ブロッコリー、竹の子、バナナ、玉露や抹茶や煎茶などのお茶、ココア、チョコレート、コーヒー、紅茶などを控える)

・ブリン体の多く含まれる食品や飲料を控える(プリン体は体内で代謝され尿酸となり、過剰摂取で高尿酸血症や酸性尿を引き起こす。)

・動物性のタンパクや脂肪の摂取を控える。(動物性タンパク質が多くなると尿中尿酸が多くなる、動物性脂肪が多いと腸内脂肪酸が増えてカルシウムと結合し、シュウ酸がカルシウムと結合困難になり、尿中にシュウ酸が多くなり結石ができやすくなる)



今回の論文結果からは、ADPKDに対してトルバプタンを使用することで結石の発祥というリスクを減らすことが示された。
個人的にはトルバプタンをあまりこの視点から見ていなかったので非常に参考になった。


2018/03/23

低ナトリウム血症を考える③

前回CSWSの話をしたが、尿中Naが高い場合にCSWSとSIADHを比較して多いのはSIADHである。

あるケースシリーズで、187人の神経外科領域の低ナトリウム血症の原因を検証した場合であるが、7人がCSWSで123人がSIADHであったという報告がある。
なので、脳外科手術後低ナトリウム血症≠CSWSは非常に重要である。

では、SIADHとはどんな病態であろう?
まず、ADHに関しては身体にとっては浸透圧変化に対しての重要な調整因子であり、また循環血液量の変化に対しても重要な調整因子である。調整因子というのは、変化に対して調整しようと働くホルモンであるということである。
下図は低ナトリウム血症のキーな図である。


まず、低ナトリウム血症は基本的には水の異常(自由水過多=低ナトリウム血症、自由水不足=高ナトリウム血症)である。水の異常は浸透圧の異常と相関する。なので、低ナトリウム血症を見た際には、まずは浸透圧の異常は大丈夫かな?と尿中浸透圧を見る。
ここで、ADHは浸透圧(Osmo)と循環血液量(volume)の両方の調整因子であるので、もし浸透圧系の異常があった場合に、volume系はどうなのだろう?と考えて、尿中Naの変化をみる。このアルゴリズムが今のガイドラインの診断アルゴリズムである。

話は脱線してしまったが、SIADHはADHが浸透圧変化やvolume変化に関係なく不適切に分泌する疾患である。
不適切に分泌する理由としては、疼痛や嘔気に伴うもの、小細胞肺癌に伴うものなど様々な理由がある。


また、ADHの血中濃度測定に関しては、参考程度にはなるが必ずしも必要はないということは認識する必要がある。

SIAHDでは、
・有効浸透圧の低下(275mOsm/kg・H2O)
・血清浸透圧が低い割には尿の浸透圧が高張(Uosm>100mOsm/kg・H2O)
・臨床的に循環血液量で脱水所見(起立性低血圧・頻脈・皮膚の乾燥・口腔内乾燥)や過剰所見(腹水・浮腫)は乏しく、正常である。
・正常の塩分摂取・水分摂取の状況でも尿中Naの上昇がある(UNa>20-30mmol/L)
・甲状腺機能低下症や副腎不全などの似たような病態を取るものが否定されている。
・腎機能は正常、利尿剤の使用(特にサイアザイド)はない。

ことが診断には重要である。
治療は
・基本的に重篤な症状(痙攣や意識障害など)のある場合には、高張食塩水を使用
その際には、体重あたりの量を1時間で投与をすると約1mmol/LのNaの上昇が見込める。
・飲水制限は一番推奨度は高い:尿量よりも500mL程度少ないくらいの飲水制限が一つ推奨されている。
・トルバプタンも一つの治療のオプションである。バプタンに関しては自由水の排泄からの急速なNaの補正がかかり、これが患者のアウトカムをどこまで改善させたかは現時点では定かではなく、これが米国と欧州のSIADHに対するバプタン使用の差にもなっている。
・尿素の投与も一つの選択で、急速な上昇はないが飲むのが不快で非常に苦みがある。
・デメクロサイクリンも一つのオプションであり、腎性尿崩症を生じうる。


今回の教訓としては、CSWSが状況的に(脳外科手術後など)で疑われたとしても、SIADHは非常に多いので注意をするという事である!!


下の図は飲水制限をしている人の絵である。









2017/12/09

ADPKD~少し知っておいていいこと~

T 「ADPKDのこと好きになりました!色々と他に知りたいこともあって。。嚢胞ってプスッと穿刺して水抜いて小さくするのはどうなんですか?あと、トルバプタンに関しても具体的な使い方や保険も教えてくれませんか?」


M 「とても大事な疑問ですね。やはり、実際に机上の話だけでは臨床の応用はできないので、今日はしっかりと実践にもつながる事を含めて話しましょう!」


★腎嚢胞穿刺吸引について
前提として、腎嚢胞穿刺吸引によって腎機能が保たれたりするエビデンスは現時点では認めていない。そのため、無症状の患者に腎機能を良くするために穿刺吸引を行う事はすすめられない。
基本的に適応になるのは、症候性(嚢胞に伴う慢性疼痛。腹部圧迫症状)の改善のための一つの手段として使用される(J Endo 2013)。
海外のものでは、吸引ドレナージにはなるが感染性嚢胞で抗菌薬治療に奏功しない場合には適応となっている
下記はADPKD2014のガイドラインにある、Flemingらの症候性ADPKDの治療アルゴリズムである。

ADPKD ガイドラインより抜粋
どのように手技を行うか:
エコー下経皮的腎嚢胞穿刺吸引療法が使用されている。
通常の単純嚢胞であれば穿刺して、縮小効果を維持するためにエタノールなどの硬化剤を使用する事が多い。
しかし、ADPKDなどであれば、基本的には全ての嚢胞へのアプローチはできないため安全性を考慮して、疼痛を来たしていると考えられる、1つないし少数の大きな嚢胞をターゲットとして治療する事が多い。


合併症は嚢胞出血・血尿・嚢胞感染・気胸などがあるため、注意する!


★トルバプタンの具体方法
トルバプタンの使用適応
①両側総腎容積が750ml以上
②腎容積増大速度が概ね5%/年以上


では、腎容積に関してはどのように測定するのがいいのか?
検査機械のmodarityは基本はMRIやCTを用いて検索する。測定に関しては下記のように計算をして腎容積をもとめる。


杏林大学ページより引用


なので、腎臓の容積をもとめ、年毎の増大速度を計算する。
そこから、年齢・両側総腎容積・腎増大速度/年をもちいて患者の腎機能低下を予測する(下図:大塚製薬資料より)。
大塚製薬資料より引用



大塚製薬資料より引用
なので、これによって患者さんには個別化した治療になる。
80歳の高齢者に腎予後をのばす事を目標としてトルバプタンの導入をすることは個人的には、適応は無いと考える。


もし、患者さんがトルバプタンの導入をしようと思った場合には原則は入院加療でおこなうべきである。用法・用量に関しては、色々とあるが一例としては、


160mg2回(朝45mg夕方15mg投与開始


160mgの用量で1週間以上投与忍容性があれば190mg(朝60mg30mg)へ増量


③最高用量を1120mg(朝90mg30mg)と1週間以上の間隔を空けて段階的に増量する。
    最高用量は1120mgまで


入院中の指導として大事なのは尿量が非常に増えるため、水分補給をしっかりとして頂くことが重要となる。また、肝機能障害の有無に関しては検査をする必要がある。


また、本邦ではADPKDに対するトルバプタンの処方にあたっては、高用量であり大塚製薬のe-learningを受講する必要があり、その受講後にもらえるサムスカカードが重要になる。
(e-learningの受講は担当MRに確認してください。)


また、大事なのは難病申請である。
難病申請を行う事で自己負担の軽減につながる。下図のように所得によってことなるが、自己負担額が3割→2割になり、軽減される。


大塚ホームページより
トルバプタンは30mg:4000円/錠で、60mg内服で8000円/日となる。
単純計算で(1か月を28日とした場合)
3割負担で67200円、2割負担で44800円となる。


そのうえで、上限が下図のようになる。そのため、難病申請は患者負担という意味では非常に重要である。
大塚ホームページより


T 「ありがとうございます!長々と話していただいてすみませんでした。腎嚢胞の穿刺吸引のこと、ADPKDの周囲の状況などよくわかりました。」


M 「日常の臨床では、患者さんの病態のこと周囲の保険のことの把握も非常に大事です!なので、患者さんの常に視点にたって医療をできるようにしましょう!」







2017/11/24

ADPKDについての復習と新しい試み ②

前回、簡単なADPKDに関しての概論を話した。

ある時に、のんびりとコーヒーを飲みながら歩いている時に後輩の先生からこのように尋ねられた。仮に後輩をTとして自分をMとする。

T「先生に教えていただいたことをよく見ながらやっていたら、自分の外来の人にADPKDっぽい人がいました。でも、30歳で腎機能もGFR<60未満なんです。なんか、トルバプタンも使うといいという報告もあるし、この人の治療をどうすればいいですか?」

M「いい質問ですね!本邦で使える薬も含めて見ていきましょ!最近、これに関する論文も出ているので是非見てね!」

ADPKDは個人的にはやはりとっつきにくいなと思う時も多い。それは、やはり患者予後や治療プランや方向性をある程度自分が知っておく必要性がある。

※まず、脱線するが最近の報告でFGF23とADPKDの話題が取り上げられている。FGF23上昇と腎サイズ上昇は関連があり、腎サイズ上昇は腎予後不良に直結する(CJASN 2017)。

治療について
・血圧管理
 −厳密な血圧管理はADPKDの進展を予防する可能性を示しており、薬剤としては投与禁忌がなければACE-IやARBは初期の血圧治療薬として推奨されている(理由としては、RAA系の活性上昇と細胞外液量増加のため。)。特にタンパク尿があるものには効果があるとされ、HALT-PKD trialではARBとARB+ACE-IでADPKD進展を比較しているが、差はなかった(NEJM 2014)。

※まず、血圧管理で120-130/70-80mmHgを目標に禁忌がなければACE-IやARBを1剤でいいので入れる。

・塩分制限
    −塩分制限に関しては2g/日以下を推奨しているものもある。塩分制限の効果としては、尿中Na排泄増加→腎疾患悪化につ上がることがわかっているためである(CJASN 2011)。これは、先に述べたHALT-PKD trialでも証明されている。ADPKDでは高血圧になる傾向もあり、それに対しての塩分制限は重要である。

・飲水励行
 −これは、原理としては血清のバソプレシン濃度を抑えてADPKDの嚢胞の進行を防ごうとしている。ある先行研究からは水を3L/day以上飲むと尿浸透圧を抑え、ADH分泌も抑えるとしている。ただ、腎不全の進行した症例などは飲水によって低ナトリウム血症が助長される場合もあるため、気をつける必要性がある。3L飲むのは大変そうである。。

・スタチン投与
 −高脂血症は慢性腎不全患者の冠動脈病変の進展に寄与する。また、CKD患者の腎機能の進行をスタチン投与で遅らせることができる報告もある。ADPKDのデータは少ないが、RCTでプラバスタチン(メバロチン)が小児や若年のADPKDの進行抑制に寄与したという報告もある(CJASN 2014)。

・トルバプタン
 −トルバプタンが効果がある機序としては、詳細は図に示すが、嚢胞の増大にはcAMP上昇が関与している。そのcAMP上昇を抑える治療としてトルバプタンが用いられる。
杏林大学ホームページより

トルバプタンとADPKDの関連でまずは覚えておく必要があるのが、TEMPO trial(NEJM 2012)である。研究の詳細は割愛するが、世界129の医療機関でのRCT第3相試験である。1445人に対して961人にトルバプタン投与、484人がプラセボに振り分けられ3年間見た研究になる。腎容積の増加に有意な差が認められた研究である。日本人グループでの解析も行われているが、その結果でも効果があったという。

トルバプタンに関しての詳細は次回の話題に述べるが、今回はREPRISE trial(NEJM 2017)に関しての話題である。
この前提として、トルバプタンはTEMPO trialの結果を受けて承認される国もあったが米国のFDAでは承認されなかった。その理由としては、やはり副作用である。
副作用は肝機能障害、多尿、夜間頻尿などであった。
また、TEMPO trial ではGFR≧60の患者を対象に見ている研究であった。

今回のREPRISE trialでは、平均GFR41(30-50)の中等度〜重度腎不全に対するADPKD患者のトルバプタンの作用を見ている。詳細は割愛するが、一年の期間で見てCKD stage4の人であってもトルバプタンの効果があるということが示されている。副作用に関しても肝機能上昇は投与群で5.6%で非投与群で1.2%であった。ただ、全体を通しての副作用には有意差はなかった。FDAはこの結果を見てどう動くのか?また、この論文の感度分析では高齢者での効果は薄く、非白人でも効果は薄いという結果であった。
なので、現時点では非高齢者(55歳以下)のADPKDの症例で腎不全があってもトルバプタンを内服することができる場合には適応になる可能性はありそうである。

・mTOR阻害薬
 −これに関しては、2010年のNEJM,NEJM2に論文が出ている。シロリムスとエベロリムスを用いて見ているが現状では腎機能障害を遅らせるという報告には至ってはいない。
mTOR阻害薬が用いられる理由としては、ADPKDではmTORパスウェイの活性化が促進していることがあり、これを阻害したらどうだろうというのが治療薬の選択となった。

他にもソマトスタチンやアミロライド、メチルプレドニンなども選択肢にはなっている。
今回は、特にトルバプタンの話題に触れたかった。

では、会話に戻る。
M「最近の論文でGFR<60の人に対するトルバプタンの使用も有用性は認められているね。あとは、トルバプタンを使用するとかなりの部分で患者さんに協力してもらわないといけないことも多くなるから、それが大丈夫であれば患者さんと相談して始めよう。あとは、保険や金銭的なものも。これは、次回に話すね。」

T「ありがとうございます。とてもスッキリしました。」

ADPKDは遺伝性の疾患であり、一人を見つけたら家族も考えて治療・検査も行わなくてはならない。

2016/12/24

利尿剤が効かない!?(利尿剤抵抗性について考える) パート3

利尿薬抵抗性の症例を見たときにアルゴリズムがあるといいなと思うのは僕だけだろうか?
アルゴリズムはその流れに乗ればある程度うまくできるので好きなのだが、もちろんしっかりとなぜこのようなアルゴリズムになっているかなどを考えなくてはいけないと思う。
今回、アルゴリズムを乗せる。

1:アドヒアランスの不良やNSAIDsの使用はないかチェック!!
2:食事で塩分制限はできているか?
3:症例のPK,PDの点から考えて一回の利尿薬の投与量を増量したほうがいいのか回数を増やしたほうがいいのかを考える。
4:経口のループ利尿薬を使用し、ダメなら違う作用の利尿薬を加える(遠位尿細管の薬や近位尿細管作動薬など)
5:点滴投与を考える。ダメなら持続投与も考える。

パート2を読んでいただいた方にはスッと内容が理解できるであろう。

利尿薬抵抗性を乗り越えるために重要な点は
・2つの作用タイプの利尿薬を使用する(ループ利尿薬がファーストライン治療薬)。
・肝硬変症例であればフロセミドとスピロノラクトンの併用が様々なデータの蓄積がある。
・肝硬変以外の併用薬に関してはエビデンスが少ない。なので、小規模の研究からサイアザイドをセカンドラインの治療薬をして推奨されている。
・タンパク尿が出ている症例ではプラスミンの働きでENaCの活性が生じているので、ENaC阻害薬がいいかもしれない。

また、アセタゾラミドがペンドリンの阻害を起こすのでセカンドラインではどうだろうという意見もある。

本当に浮腫は悩まされるし、難しい。

ちなみに今回の症例はフロセミドの投与を行いつつ(しっかりと量と回数を注意して)、あとENaCを阻害するトリアムテレンを使用し、浮腫の改善を認めた。
つまり、今回の症例は
ネフローゼ、慢性腎不全、ENaC亢進などが主に利尿薬抵抗性に関連していたのだろう。


あと、ポイントとして利尿薬はスピロノラクトンとトルバプタン以外は糸球体濾過を受けずに近位尿細管から基本的には分泌されて作用するのはポイントだろう!

どうであろうか?
かなり深く抵抗性に関してかかせていただいた。腎臓内科は利尿薬使用のスペシャリストとしてしっかりと把握しなくてはと常に思う。


2016/07/12

Predicting diuretic response

 ADHF(急性非代償性心不全)における利尿薬のボーラスと持続を比較した論文については書いたが、そのあとでた利尿薬と限外ろ過を比較するスタディ(CARRESS-HFトライアル、NEJM 2012 367 2296)は読んだだけで書いていなかった。Cr 1.5-2.5mg/dl程度の心不全増悪で入院した患者を、末梢カテーテルを用いるAquadex®というUFマシン群と、尿量や血圧に応じて利尿薬の量や種類、昇圧剤などを調節するstepped pharmacological care群にわけて96時間後の尿量と腎機能悪化を比較ところ、マシン群で腎機能悪化が多かった。マシンを使い慣れなかったのと、薬剤調節のアルゴリズムがけっこうよく出来ているのでそれが効いたのかなとも思う。一日尿量3リットル未満、3−5リットル、5リットル以上で治療を動かすかなり大味なものではあるが、これで腎機能が動かなかったんだからいいのかもしれない(日本人は体重も小さいし利尿薬の効きが倍くらいなので、そのままは当てはめられないが)。

 またTolvaptanを心不全症例につかったことはある(いま読み返すと相当抵抗しているが、すくなくとも私が向こうにいた時にこの薬をつかうことはほとんどなかった)が、Tolvaptanを入院患者に用いたEVERESTトライアル(JAMA 2007 297 1319)のことは書いていなかった。いまさらだが、ベースラインCr不明(3.5mg/dl以上は除外)のADHF患者を通常のケアと30mg/dのTolvaptan群とプラセボ群にわけたところ、all-cause mortalityで非劣性(プラセボと比較して非劣性というのもどうかと思うがまあ害はないということ)で、心血管系イベント、心不全再入院などに有意差が見られなかった。入院翌日の呼吸苦改善、退院時・7病日の浮腫改善は有意だった(利尿剤を追加したんだから当たり前といえば当たり前だが)。低Na血症の改善にも有意差があって(6mEq/l程度あがった)、高Na血症の頻度は有意差は不明だがTolvaptan群でたかかった(口渇も)。

 EVERESTスタディをみる限り、入院医療費がTolvaptanよりもずっと高くて、使うことで日数が短くなるなら使ってもいいのかなと思うが、それはアウトカムにみつけられなかった。あとNa値をあげて認知機能や歩行障害が改善するならいいが(先日SIADHを対象にしたINSIGHTトライアルのパイロット結果がでたが、3週間の介入で精神運動スピードに差があったものの総神経認知機能には差がなかった、AJKD 2016 67 893)。あとTolvaptanもhANPと同じで、急性期に使って効くのはいいけれど退院後も十分な利尿を得るために使い続けることが技術的に金銭的に難しいので、結局ループとサイアザイドでお帰しすることになる。やはり再入院を防ぐには患者教育(水分、塩分モニター、体重に応じた利尿薬調整またはこまめな訪問看護、外来フォロー)なのかなと思う。

 というわけで特別にいい薬とおもっているわけでもない(作用後の揺り戻しNa保持傾向、RAA系亢進なども指摘される)がやっぱりループ利尿薬が心不全治療の基本だ。しかしその効きは腎機能が低いほど悪くなる。というところへ、ループ利尿薬を少しでも使いやすくするために反応量を予測できないかと調べた論文がでた、と教えてもらった(Circ Heart Fail 2016 9 e002370)。どんな魔法かと思ったらコロンブスの卵で、クリアランスCがUcr x V / Pcr、変換してV = C x Pcr / Ucrなことを元にして得た式だった(Ucrには静注後2時間のスポット尿を用いた)。このVは微分的な尿生成速度(instantaneous rate)になるが、ここでCにCKD-EPIのeGFR(ml/min/1.73m2)を当て、時間を2.5時間に(静注ブメタニドの半減期 x2、よく効いているあいだということ)、また体表面積を補正(BMIが40kg/m2以上では理想体重を使用)すると、2.5時間あたりの尿量が次式で得られる。
 
V(ml/2.5h) = eGFR x BSA / 1.73 x Scr / Ucr x 60 min x 2.5 h

 さらに、この尿にいくらのNaが含まれているかを計算するには尿Na濃度(mmol/l)をかけてミリリットルとリットルを同じにすればよい。

Na(mmol/2.5h)= eGFR x BSA / 1.73 x Scr / Ucr x 60 min x 2.5 h x UNa / 1000

 ブメタニドを用いたのは薬理学的により計算予測がより立ちやすいためだという。で、ADHFの入院患者さんで蓄尿とスポット尿採取を行い、式と6時間反応Na利尿量(mmol)の相関に関わる信頼性をvalidateした。患者さんは多くがEF 40%以下、フロセミド静注換算量で平均100mg/dを使われており(25%でサイアザイドも)、Crは1-2mg/dlだった。なお留置カテーテルを使ったかは書いていないが「朝ブメタニドを打つ前に膀胱を空にしてもらった」とあるのでおそらく使っていない(こんな正確さを求める実験でも使わないんだから、いかに留置カテーテルが無駄に使われて合併症を起こしているかを改めて考えさせられる)。その結果、12%で大失敗した(とこっそり書いてある)が、うまくいった例を集めるとNa利尿量予測、Na利尿不良群予測、Na利尿良好群予測に関して非常にAUCが高いROCが得られた。式の定数2.5時間はコンピューティング予測で3.25時間にしたほうがよいとか細かいこともわかった。

 この臨床上の意義はなにか。ループ利尿薬は本来1日2回用いる薬なので、朝の反応をみて夕の用量を調節できるかもしれない。その際に午後まで蓄尿して看護師さんに6時間尿量を報告してもらうのを待たずに、より正確に(今回の論文は尿量や体重と式を比較しているが式のほうがNa利尿量の予測に優れていたという;ただし体重とNa利尿量でどちらが臨床的に意義があるかは疑問だが)回診の時点で静注2時間後のUNaの結果がでて予測が立つのは便利かもしれない。また、K利尿量もVにUKをかければ同様に求められるはずなので、K値低下の予測に応用できれば補正に活かせるかもしれない。高いミラクル薬がなくても、ちょっとした生理学の知識をつかって昔からの診療を洗練させることはできるのだな、そういうのかっこいいなと思った。Cardiorenalresearch.netにcalculatorが置いてある。



2013/01/25

TEMPO3:4

 気になっていたTEMPO3:4トライアル(NEJM 2012 367 2407)をやっとレビューする機会があった。自分で読むタイミングがなかったので、Grand Roundで話すトピックを探していた内科レジデントに「これなんかいいんじゃない?」とお勧めし、スタディ論文といくつかの参考文献をセットにして送っておいたのだ。彼の発表は分かりやすく面白く高評価で、私も学べたし、これぞチームプレイ?

 ADPKDで同定された二つの遺伝子異常PKD1もPKD2も、尿細管細胞の内腔側に一本ずつヒョロっと付いている線毛に関係しており、nephronophthisisなどと同様にciliopathiesの一つだ。Kartagener症候群で内臓逆位になるように線毛は極性決定に関係するので、難解なレビュー(NEJM 2011 364 1533)によればPKDでは尿細管細胞が縦に伸長せず横に伸長し、cystやら何やら作ってしまうらしい。

 どうしてtolvaptanが試されたのか?それは、線毛の異常が尿細管細胞に起こすさまざまな変化(細胞内カルシウム濃度の低下、cAMP増加、mTORなど細胞増殖シグナル、他)の一つがV2Rだからだ。ADHが多いとcystが成長してしまうので、もともとADPKD患者さんは日ごろから水をたくさん飲むようアドバイスされていた。では、いっそV2Rをブロックしてはどうか?というのがこのスタディだ。

 このスタディが2012年に腎臓内科界が最も興奮したニュースなどと騒がれる一つのわけは、それが腎のサイズ増加率を低くしたのみならず、GFR低下率も低くしたからだ(もう一つのわけは年末に発表されたからだが…)。プラセボ群との差は有意だが正直控えめだ。そのわけは①両群とも水分摂取を励行したから、②病気進行がゆっくりな(あるいは病初期の)患者群が対象だったから、などと推測されている。

 [2016年7月追加]ADPKDは単一遺伝子(PKD1、PKD2)疾患ではあるものの、その異常の種類がさまざまで、おのおの病状の進行などがちがう。というのもPKD1は14000塩基以上で46個のexonを持つ巨大な遺伝子なうえに、1-33番までのexonはPKD1遺伝子のそばで6回複製されている(進化の過程でつかわれなくなったとされる偽遺伝子PKDP1-PKDP6)からだ。PKD2遺伝子にも15個のexonがある。それでいままではPKD1異常のほうがPKD2よりも進行が早いというくらいのざっくりさしか分からなかった。

 しかしPKD1特異的PCRによって、フレームシフトや大きな欠損だけでなくミスセンス変異やin-frame insertion/deletion(コドンが崩れない3塩基単位の挿入欠損)のようなわかりにくいももわかるようになった(JASN 2007 18 2143、CRISPコホート)。その技術をトロントのTGESPコホートに用いて腎・生命予後を調べた研究結果がでた(JASN 2016 27 1861)。すると、protein truncatingなPKD1異常がもっとも悪く、次にPKD1 in-frame insertion/deletionで、non-truncatingなPKD1異常と変異が見つからない群はPKD2とほぼ同じだった。これらは白人中心のコホートなので、日本の研究結果も知りたいところだ。

 ADPKDは画像診断で遺伝子検査は高価なうえ研究や遺伝コンサルティングでないとしないと思われるから、TEMPO3:4トライアルはもちろんPKD1、PKD2、PKD1異常の種類までランダム化していない。各遺伝子異常の進行速度は腎サイズに相関するので、腎サイズを合わせていればあるていど振り分けられるとは思うが、理論上同じ腎サイズでも進行の早い若い症例と進行の遅い高齢者がいるので、そういう目で見たほうがいいかもしれない。


2012/11/03

Evidence-based management of hyponatremia

 低Na血症の治療で推奨されている速度は、30年前は2mEq/l/hrだった。というのも、重度の低Na血症は脳浮腫により脳ヘルニアや重篤な脳機能障害をもたらすと考えられていたからだ。0.6mEq/l/hrでは遅いという論文がいくつもでた(JEJM 1986 314 1529、Ann Int Med 1990 112 113)。

 しかしODS(osmotic demyelanation syndrome)が0.6mEq/l/hrを越える治療群で起こるというsingle-centerの報告が出て(Ann Int Med 1987 107 656)、12mEq/l/24hrと18mEq/l/48hrを越えると危険域と分かって来た(JASN 1994 4 1522、J Neurol 2010 25 1176)。

 そもそも低Na血症治療のゴールは症状(とくに神経系の)を取ることで、そのためには4-6mEq/lのNa上昇で十分かもしれない(脳外科領域での脳浮腫に対する3%NaClのデータによる、Neurology 2008 70 1023)。

 Na濃度を上げ過ぎたら、戻した方がいいのか。Overcorrectionは、起こる(CJASN 2007 2 1110)。コントロールスタディはないが、戻したら何も起こらなかったという報告はある(CJASN 2008 3 331)。ここではDDAVPを使っているが、これがVaptan使用例にも有効かは不明だ。演者は、overcorrectionを防ぐため3%NaClを用いる場合prophylaciticにDDAVPを投与していると言う(AJKD 2010 56 774)。

 現在では、6-8mEq/l/dayを越えるべきではないというのが推奨だ(Editorial、JASN 2012 23 1140)。急性低Na血症は急速にreverseしても大丈夫と言われているし、実際水中毒のような場合、水を止めればNaは急速に戻る。しかしこの論文ではdo no harmの立場から急性でも慢性でもこのthresholdを守るべきとしている。

2012/09/13

Vaptans in cirrhotics

 肝硬変の低ナトリウム血症にVaptanは有効か?ふたつのレビュー論文(Semin Nephrol 2008 28 279、KI 2006 69 2124)によると、その役割は明確ではない。経口lixivaptanを用いたスタディ(J Lab Clin Med 2001 138 18)では、最大用量で最大50%の患者さんでNa濃度が正常化した。しかし、経口tolvaptanを用いたSALT-2スタディで、肝硬変患者のサブグループの結果をみると、37%で不応だった。うちの病院には静注のconivaptanしか置いてないが、これは肝硬変患者には薦められない。ConivaptanはV1a受容体もV2受容体もブロックするため、静脈瘤の血管壁にあるV1a受容体をブロックして血管が弛み出血しやすくなるからだ。

2012/06/29

ユリア 1/3

 今回は、面白いJournal Clubをする事ができた。おそらくトピックがよかった。また、通常30分のトークを、たまたま他に話す人がいないので内容と時間を増量することができたのもよかった。Academic positionを目指すなら、どこに行こうとも面接とレクチャがセットになっているので、こういうチャンスを逃さずに長いトークの練習をすることが大切だ。

 さて今回取り上げた論文は、"Efficacy and Tolerance of Urea Compared with Vaptans for Long-Term Treatment of Patients with SIADH"(CJASN 2012 7 742)だ。ユリア(urea、尿素)もバプタン(vaptan、バソプレシン受容体拮抗薬)もうちの病院では滅多に使わない。とくにユリアはもはや米国ではすたれた診療で、簡単には手に入らない。

 慢性で中等度のSIADHに外来でバプタンを処方すれば患者さんに莫大なお金がかかる。それで、利尿剤と水分制限と塩でなんとかやるわけだが、ベルギーのグループは米国では忘れられたユリアを使い続けており、今こそそれを再び世界に問う時期だとこの論文を発表した。CJASNのeditorialまで付いた注目記事だ。

 ベルギーのある病院では、バプタン登場とともに慢性SIADHの患者さんをSALT-2などの治験に参加させていたのが、治験が終わると製薬会社が薬をくれなくなり困っていた。そこで、バプタンとユリア、どちらが有効なのか比べてみようと始まったのがこのスタディだ。13人の患者さんに、1年間バプタンを試し、約一週間バプタンを止め、Naレベルが下がってから1年間ユリアを試した。

 結果は、基本的にNaの上昇率に差はなかった。バプタン治療は一人が口渇が強すぎてやめてしまったが、ユリアは全員が中止せずに飲み続けた。血中尿素窒素(BUN)は人によって100mg/dlを越えたが、ユリア自体は尿毒物質ではないので何も起こらなかった。ユリア内服中の一人、89歳の男性が肺炎に掛かってNa 155mEq/lになったが、Naは何事もなく下がり、肺炎治療後にユリアの内服を再開した。つづく。

2012/01/08

super pill

 心不全の患者さんの低Na血症をコンサルトされて、スタッフが「tolvaptan 15mgを使おう」という。私はスタッフの考えには反対で、どうなる事かと思って様子を見ていた。この薬がナトリウム濃度を上げることは間違いないだろうが、この症例では利尿剤を増やすだけで同様の効果が出るように思われたし、一錠300ドルするとかいうのに(ヨーロッパではhepato-renal syndromeだの低Na血症だのによく使われるそうだが)患者さんが内服しつづけられるとも思えなかったので、私はスタッフの考えには反対だった。

 SALT1、SALT2(NEJM 2006 355 2099)、そしてそのフォローアップであるSALTWATERスタディ(JASN 2010 21 705)をみても、mortalityはoutcomeに入っていないし、とにかくナトリウム値を上げること、それにより低ナトリウム血症の症状が取れることがこの薬の売りのようだ。低ナトリウム血症患者のmortalityを規定するのはナトリウムそのものではなく寧ろ原疾患(肝不全、心不全、SCLCなど)ということだろう。

 さておきこの薬は患者さんに素晴らしい水利尿効果をもたらし、患者さんは「これはsuper pillだね」と言っていた。そのぶん口渇も悪くなったが、水制限もなんとか守り、ナトリウム値は丁度良くあがった。しかし、この薬を飲み続けることは現実的でないので、結局その翌日からは利尿剤を増やして様子を見ることになった。そこで今度はfurosemideの低ナトリウム血症における役割が議論の的になった。

 私は「furosemideは尿を希釈させ相対的に水排泄を助ける」と習った。「furosemide下では尿がだいたいhalf normal salineになる」という話も聞いた。しかしfurosemideがナトリウム濃度を下げることも経験したし、「furosemideはナトリウム排泄を増やし血漿ナトリウム濃度を下げる」と信じる人が多いことも知っている。それで利尿剤を増やしたあと尿ナトリウム濃度と浸透圧がどうなるか楽しみにしていたら、尿Naが77mEq/l(36から増えた)、尿浸透圧は300mOsm/kg(340から減った)という結果で、血漿ナトリウム値は122-124mEq/lでほぼ変わらなかった。

 ここから言えるのは、「furosemideで尿が希釈される」「furosemideでNa排泄が増える」「furosemideで尿はhalf normal salineくらいになる」というどれも正しいが、それぞれの程度次第でこの薬が血漿ナトリウム濃度に与える効果は変わるということだ。しかしこの例では、どうして尿Naが77しかないのに尿浸透圧が300もあるのだろう。尿中尿素が高いのだろうか、しかし血漿BUNは9しかないが。まあ折角だから尿中尿素でも調べてみよう。