ラベル 血液腫瘍 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 血液腫瘍 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019/09/20

分化と統合、そして融合へ

 今月の日本内科学会雑誌は、4月に名古屋で開催された学会講演を特集しており、そのサブタイトルは「新時代の内科学の創造~分化と統合、そして融合へ~」だ。まったくそうだなあと感じたのは、招聘講演のひとつをまとめた「骨髄増殖性腫瘍の病態と治療戦略」(日内会誌 2019 108 1672)を読んだときだ。




 原発性骨髄線維症(PMF)は、「線維症」とはいうものの、遺伝子異常による腫瘍性疾患である。有名なのはJAK2遺伝子のV617F変異だが、同遺伝子のエキソン12変異だけでなく、カルレティキュリン(CALR)遺伝子、トロンボポエチン受容体遺伝子(MPL)などの変異も知られている。

 治療は、古典的な同化ステロイドやヒドロキシ尿素だけでなく、JAK1-2阻害薬のルキソリチニブがCOMFORT-I、II試験により全生存期間の有意差が示されている(J Hematol Oncol 2017 10 156)。貧血、易感染性などが課題であり、JAK2特異的阻害薬など研究が進められている。

 ・・と、ここまでは「分化」である。

 つぎに「統合」であるが、PMFは腎臓での髄外造血を起こす(下図矢印は巨核球、BMC Nephrol 2015 16 121より)。






 さらに、メサンギウムの細胞増殖と領域拡大、TMA、免疫複合体の沈着(C3、IgMなどが多い)、足突起の消失・微絨毛化など、実に多彩な腎病変をきたすことが分かっている(Clin Nephrol Case Stud 2017 5 70、表2も参照;膜性腎症の報告はAJKD 2017 70 874)。

 あとは「融合」だ。

 それは、実臨床レベルでは「腎疾患も血液疾患として扱い治療する」であり、MGRSと同じような話になる(こちらも参照)。PMF関連腎症には、上述のJAK阻害薬などで軽快するものも多い(Clin Nephrol Case Stud 2017 5 70、表1も参照)。しかし筆者は、そこから「なぜ髄外造血で腎病変がおきるのかを、腎臓内科と血液内科で一緒に考えよう」と話を深化させてこそ、真の融合ではないかなあと思う。

 そして、その糸口となる報告が今年7月31日にAJKD電子版に載った(doi: 10.1053/j.ajkd.2019.05.016)。主旨は「カルレティキュリン遺伝子の変異に特異的な免疫染色したら、腎に浸潤する巨核球が染まった」だが、筆者にとって興味深かったのは症例の経過だ。

 この症例では、PMFの診断から5ヵ月後にネフローゼとなり、それまでの同化ステロイドをプレドニン(30mg/d)に変更した。しかし、蛋白尿は減少(7g/dから2.6g/gCr)したが無効造血はあまり低下しなかった(LDHは、1250U/lから789U/l)。そこでJAK1-2阻害薬が追加されたが、蛋白尿は2g/gCrで、PMFで産生されるサイトカインであるVEGFやTGF-βにも変化は見られなかった。

 ここから示唆されるのは、「腎臓内科的にネフローゼにはステロイド」「血液内科的にPMFにはJAK1-2阻害薬」を越えた、VEGFやTGF-βを有効にとめる第三の治療の必要性だろう(著者らも「この疾患に確立した治療はない」と認めている)。

 それこそが、「真の融合」による成果なのかもしれない(下図は、1959年のレオ・レオニ著『あおくんときいろちゃん』)。






2017/07/03

がん患者の急性腎不全 2

がん患者にとって急性腎不全は比較的身近であり、また起こすのは避けた方がいいであろうことを前回復習することが出来たと思う。


では、ここから数回に分けて原因について考えていく。
★血液腫瘍とAKIについてまず考える。
血液腫瘍とAKIの関連では、下記の3つの概念で考える。
1:悪性腫瘍関連

2:治療関連

3:その他の原因

で考える必要がある。


これに関しては下記の図が分かりやすい。

ただ、これの他にも起こりやすいものはしっかりと認識しておく必要がある。

☆起こりやすいものとしては、
敗血症、腎障害をきたす薬物など、腫瘍崩壊症候群(特にburkitt's リンパ腫など)、循環血液量減少
などである。

分類に戻って、まず悪性腫瘍関連のものであるが、下記のものに関して説明する。
・腫瘍浸潤
−血液疾患でお越しうるものとしてはリンパ腫や急性白血病などがあげられる。
 リンパ腫の患者の報告で60%と高率で腎臓に浸潤を来していたが、ほとんどのケースは診断されていない。つまり、症状や検査所見で出ることは非常に少ない。
診断は腎生検。

・多発性骨髄腫
−これは過剰産生された単クローン性のガンマグロブリンやfree light chainがcast nephropathy(円柱腎症)、軽鎖による近位尿細管障害、様々な腎炎(軽鎖沈着症、ALアミロイドーシス)を生じたりする。

cast nephropathyは多くの軽鎖が糸球体を通過しTamm-Horsfallタンパク(uromodulin)に結合して生じる。これが生じることで、尿細管閉塞や尿細管糸球体の炎症を生じたりする。

治療において透析の話に関しては以前にここで書いた。

軽鎖による近位尿細管障害は大量の軽鎖が炎症性サイトカイン、酸化ストレス、アポトーシスや繊維化を生じさせる。

次回は、もう少し血液疾患の続きとそのほかの話題に触れていきたいと思う。