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2018/11/28

心臓が悪い人は腎臓も悪いのか??〜後編〜

 前回の投稿の続きで

◆この人にとってベストな治療はどうだろうか?について考えてみる。

 つまり、HFrEFとCKDを有する人に対しての治療である。

 ・治療目標:

 これは、症状の改善、機能の改善(心臓や腎臓の)、入院回数の減少などの生活の質(QOL)の向上、死亡率の改善であろう。

 ・治療としては、どんな方法があるのか?

 まず、HFrEFの治療として・・・ESC ( European Society of Cardiology)のガイドラインでは、ACE inhibitor、β blockerは耐えうるEBMで確立された最大投与量がFirst Lineの治療となる(下図に日本語のものを添付)。

 その後、症状残存しEFが35%以下ならばミネラルコルチコイド阻害薬を投与する。これも耐えうるEBMで確立された最大投与量が推奨されている。

 これでも、改善がない場合には本邦での発売は2018年12月現在未ではあるが、イバブラジンやARNI (Angiotensin Receptor Neprilysin inhibitor)を考慮する。

 それでも、難しい場合はジゴキシンやH-ISDN (Hydralazine and isosorbide dinitrate)やLVAD (左室補助装置)や心臓移植を考慮する必要がある。




では、CKDが加わった場合にはどうか??

 やはり薬がCKDに対してどれだけ影響を与えうるかは考える必要がある。

 ・ACE inhibitor、ARB

 これは我々が最も使用する薬の一つであると同時に悩ましい薬ではないだろうか?少なくとも私にとっては悩ましい薬である。

 では、CKDを有する心不全患者に対しての使用はどうであろうか?

 まず少し先行研究を振り返る。

 – 1987年にNEJMからCONSENSUS Trialが提唱された。

 これは、重症心不全に対して従来治療にenalapril(ACE阻害薬)を加えると全死亡はどうなるかを見た研究であるが、この結果でACE阻害薬の有用性が認められた(NYHA分類や心臓サイズの減少)。

 この際の腎機能としては平均で血清Cre 1.5mg/dL程度であったが、1.7~3.4mg/dLはハイリスク群として投与量を2.5mg/dayより開始し漸増する方法を用いた(通常は10mg/dayより漸増)。

 – 2001年にNEJMからVal-HeFT trialが提唱された。

 これは、慢性心不全治療に従来治療にvalsartan(ARB)を追加した場合の死亡率、合併症発生率などを見たものである。

 この研究は、ARBを従来治療(ACE-I, β遮断薬, 利尿薬, ジゴキシン)に加えた際に、死亡率や合併症発生は減少したが、ARB+ACE-I+β遮断薬の併用じは死亡率および合併症に有害な結果が出ていることがpost hoc analysisから分かっている。

 この研究では、血清Cre >2.5mg/dLは除外されている。

 CKD stage4以降の患者対象での研究がほとんどないため、結論づけは難しいがCKD stage3までのHFrEFの患者ではACE-Iの使用は効果を考えると使用はやむを得ないと考える。

・β遮断薬

 では、β遮断薬についてはどうであろうか?

 これも少し先行研究を振り返る。

 –1999年にLANCETからでたMERIT-HF trialをまずは話す。

 HFrEFに対してmetoprolol投与で全死亡や全入院の推移を見たものである。

 結論としては、死亡率、突然死、入院の低下、NYHA心機能分類の改善に寄与した。
この研究では、腎疾患での除外を行っていなかったためpost hoc analysisで、eGFR<45mL/min/1.73m2の患者群で見た時に、eGFR>60の患者群よりも死亡率の低下に寄与したと報告されている。

 なので、進行したCKDでもβ遮断薬の使用は有用である。

 これと同様の結果は、高齢者を見たSENIORS trialCIBIS-Ⅱなどでも示されている。

 ただ、すべてのβ遮断薬がいいというわけではなく、アテノロール、ナドロール、ソタロールなどの腎排泄性のものに関しては、高度腎不全の際には使用を控えることが推奨される。

 腎臓と心臓に関して少し見ていけたかと思う。

 また、もしミネラルコルチコイドについてなどやARNに関して、またACE-Iを途中でや得た場合どうなるのか?などの希望があれば書きたいなとおもう。

 もし、希望があれば是非Twitterのフォローとツイートをお願いします。

 https://twitter.com/Kiseki_jinzo







2018/09/04

冠動脈疾患と腎臓 CKDでは

 今日は冠動脈と腎臓についての話題に触れる。

 慢性腎不全や末期腎不全に伴い心血管リスクが上昇することは以前から示されている(NEJM 2004)。

 CKDを持っているかどうか、糖尿病を持っているかどうかで末期腎不全への移行の割合、心血管死亡の割合も大きく異なる。


JASN 2005


USRDS 2005より


 上記のデータを見てもわかるように心血管疾患においてCKDは大きなリスクの要因となっている。

 では、なぜ多いのか?

 理由としては、Traditional riskとNon-Traditional risk に分けて考えるとわかりやすい。

 Traditionalなもの(CKDでない人でも起こしうるリスク)としては

 ・高血圧
 ・高脂血症
 ・年齢
 ・糖尿病合併

 などが挙げられる。

 Non-Traditionalなもの(腎臓が悪い人に起こりうるリスク)としては

 ・治療の影響(steroidなど)
 ・炎症
 ・酸化ストレス
 ・CKD-MBD
 ・心筋の変化
 ・高尿酸血症
 ・動脈石灰化
 ・体液過剰

 などが挙げられる。

 2010年に本邦から出された論文でCKDの進行とともに冠動脈の閉塞の割合が増加することが剖検症例から示された(AJKD 2010)。

 では、このNon-Traditional riskのもので炎症や酸化ストレスどうなのか?2004年のKIでCKDの進行とともに炎症や酸化ストレスを示すマーカーは上昇していることが示されており、やはり関連性はあると考えられている。

 また、CKDの進行とともに冠動脈の石灰化が進行することも様々な論文で示されている。

 炎症や酸化ストレスなどの様々な要素→石灰化の進行がおそらくは一つの要因ではないかと考えられている。ただ、どうして石灰化しやすいのか?などは色々な論文も出ているが、不明確な部分も多い。

 次回は、少し透析患者について触れていこうと思う。





2016/07/12

Predicting diuretic response

 ADHF(急性非代償性心不全)における利尿薬のボーラスと持続を比較した論文については書いたが、そのあとでた利尿薬と限外ろ過を比較するスタディ(CARRESS-HFトライアル、NEJM 2012 367 2296)は読んだだけで書いていなかった。Cr 1.5-2.5mg/dl程度の心不全増悪で入院した患者を、末梢カテーテルを用いるAquadex®というUFマシン群と、尿量や血圧に応じて利尿薬の量や種類、昇圧剤などを調節するstepped pharmacological care群にわけて96時間後の尿量と腎機能悪化を比較ところ、マシン群で腎機能悪化が多かった。マシンを使い慣れなかったのと、薬剤調節のアルゴリズムがけっこうよく出来ているのでそれが効いたのかなとも思う。一日尿量3リットル未満、3−5リットル、5リットル以上で治療を動かすかなり大味なものではあるが、これで腎機能が動かなかったんだからいいのかもしれない(日本人は体重も小さいし利尿薬の効きが倍くらいなので、そのままは当てはめられないが)。

 またTolvaptanを心不全症例につかったことはある(いま読み返すと相当抵抗しているが、すくなくとも私が向こうにいた時にこの薬をつかうことはほとんどなかった)が、Tolvaptanを入院患者に用いたEVERESTトライアル(JAMA 2007 297 1319)のことは書いていなかった。いまさらだが、ベースラインCr不明(3.5mg/dl以上は除外)のADHF患者を通常のケアと30mg/dのTolvaptan群とプラセボ群にわけたところ、all-cause mortalityで非劣性(プラセボと比較して非劣性というのもどうかと思うがまあ害はないということ)で、心血管系イベント、心不全再入院などに有意差が見られなかった。入院翌日の呼吸苦改善、退院時・7病日の浮腫改善は有意だった(利尿剤を追加したんだから当たり前といえば当たり前だが)。低Na血症の改善にも有意差があって(6mEq/l程度あがった)、高Na血症の頻度は有意差は不明だがTolvaptan群でたかかった(口渇も)。

 EVERESTスタディをみる限り、入院医療費がTolvaptanよりもずっと高くて、使うことで日数が短くなるなら使ってもいいのかなと思うが、それはアウトカムにみつけられなかった。あとNa値をあげて認知機能や歩行障害が改善するならいいが(先日SIADHを対象にしたINSIGHTトライアルのパイロット結果がでたが、3週間の介入で精神運動スピードに差があったものの総神経認知機能には差がなかった、AJKD 2016 67 893)。あとTolvaptanもhANPと同じで、急性期に使って効くのはいいけれど退院後も十分な利尿を得るために使い続けることが技術的に金銭的に難しいので、結局ループとサイアザイドでお帰しすることになる。やはり再入院を防ぐには患者教育(水分、塩分モニター、体重に応じた利尿薬調整またはこまめな訪問看護、外来フォロー)なのかなと思う。

 というわけで特別にいい薬とおもっているわけでもない(作用後の揺り戻しNa保持傾向、RAA系亢進なども指摘される)がやっぱりループ利尿薬が心不全治療の基本だ。しかしその効きは腎機能が低いほど悪くなる。というところへ、ループ利尿薬を少しでも使いやすくするために反応量を予測できないかと調べた論文がでた、と教えてもらった(Circ Heart Fail 2016 9 e002370)。どんな魔法かと思ったらコロンブスの卵で、クリアランスCがUcr x V / Pcr、変換してV = C x Pcr / Ucrなことを元にして得た式だった(Ucrには静注後2時間のスポット尿を用いた)。このVは微分的な尿生成速度(instantaneous rate)になるが、ここでCにCKD-EPIのeGFR(ml/min/1.73m2)を当て、時間を2.5時間に(静注ブメタニドの半減期 x2、よく効いているあいだということ)、また体表面積を補正(BMIが40kg/m2以上では理想体重を使用)すると、2.5時間あたりの尿量が次式で得られる。
 
V(ml/2.5h) = eGFR x BSA / 1.73 x Scr / Ucr x 60 min x 2.5 h

 さらに、この尿にいくらのNaが含まれているかを計算するには尿Na濃度(mmol/l)をかけてミリリットルとリットルを同じにすればよい。

Na(mmol/2.5h)= eGFR x BSA / 1.73 x Scr / Ucr x 60 min x 2.5 h x UNa / 1000

 ブメタニドを用いたのは薬理学的により計算予測がより立ちやすいためだという。で、ADHFの入院患者さんで蓄尿とスポット尿採取を行い、式と6時間反応Na利尿量(mmol)の相関に関わる信頼性をvalidateした。患者さんは多くがEF 40%以下、フロセミド静注換算量で平均100mg/dを使われており(25%でサイアザイドも)、Crは1-2mg/dlだった。なお留置カテーテルを使ったかは書いていないが「朝ブメタニドを打つ前に膀胱を空にしてもらった」とあるのでおそらく使っていない(こんな正確さを求める実験でも使わないんだから、いかに留置カテーテルが無駄に使われて合併症を起こしているかを改めて考えさせられる)。その結果、12%で大失敗した(とこっそり書いてある)が、うまくいった例を集めるとNa利尿量予測、Na利尿不良群予測、Na利尿良好群予測に関して非常にAUCが高いROCが得られた。式の定数2.5時間はコンピューティング予測で3.25時間にしたほうがよいとか細かいこともわかった。

 この臨床上の意義はなにか。ループ利尿薬は本来1日2回用いる薬なので、朝の反応をみて夕の用量を調節できるかもしれない。その際に午後まで蓄尿して看護師さんに6時間尿量を報告してもらうのを待たずに、より正確に(今回の論文は尿量や体重と式を比較しているが式のほうがNa利尿量の予測に優れていたという;ただし体重とNa利尿量でどちらが臨床的に意義があるかは疑問だが)回診の時点で静注2時間後のUNaの結果がでて予測が立つのは便利かもしれない。また、K利尿量もVにUKをかければ同様に求められるはずなので、K値低下の予測に応用できれば補正に活かせるかもしれない。高いミラクル薬がなくても、ちょっとした生理学の知識をつかって昔からの診療を洗練させることはできるのだな、そういうのかっこいいなと思った。Cardiorenalresearch.netにcalculatorが置いてある。



2012/11/03

Beyond ACEI/ARB

 ACEIとARBを最大限に用いても持続する蛋白尿には、spironolactoneが用いられる。Aldosteroneは腎臓でENaCに作用するだけでなく、線維化、左室肥大、内皮細胞障害などにも関わることが分かっているし、ことに循環器領域ではEPHESUS(Circulation 2009 119 2471)など複数のスタディでMRA(mineralocorticoid receptor antagonist)の有効性が示されている。腎臓、蛋白尿についてはどんなデータがあるのか?

 1996年にGreenらがACEI/ARB投与ラットにアルドステロンを投与すると蛋白尿が増悪することを示した(JCI 1996 98 1063)。さらにアルドステロンがNADPH oxydase、ERK1/2などの細胞内シグナルを介してmesangial/fibroblast prolifilation、podocyte injuryを起こすことも示された(Nature Review Nephrology 2010 6 261)。

 2009年にはspironolactone(25mg/d)をlosartan(100mg/d)、placeboと比較したスタディがでた(JASN 2009 10 2641)。これによればspironolactoneはlosartanよりもanti-proteinuric effectがあり、それは血圧と無関係であった。しかしspironolactoneは高K血症を起こした(20%でKが6.0mEq/l以上になった)。現在、Kを上げずに蛋白尿を抑えるようなselective MRAが研究されている。

2012/01/08

super pill

 心不全の患者さんの低Na血症をコンサルトされて、スタッフが「tolvaptan 15mgを使おう」という。私はスタッフの考えには反対で、どうなる事かと思って様子を見ていた。この薬がナトリウム濃度を上げることは間違いないだろうが、この症例では利尿剤を増やすだけで同様の効果が出るように思われたし、一錠300ドルするとかいうのに(ヨーロッパではhepato-renal syndromeだの低Na血症だのによく使われるそうだが)患者さんが内服しつづけられるとも思えなかったので、私はスタッフの考えには反対だった。

 SALT1、SALT2(NEJM 2006 355 2099)、そしてそのフォローアップであるSALTWATERスタディ(JASN 2010 21 705)をみても、mortalityはoutcomeに入っていないし、とにかくナトリウム値を上げること、それにより低ナトリウム血症の症状が取れることがこの薬の売りのようだ。低ナトリウム血症患者のmortalityを規定するのはナトリウムそのものではなく寧ろ原疾患(肝不全、心不全、SCLCなど)ということだろう。

 さておきこの薬は患者さんに素晴らしい水利尿効果をもたらし、患者さんは「これはsuper pillだね」と言っていた。そのぶん口渇も悪くなったが、水制限もなんとか守り、ナトリウム値は丁度良くあがった。しかし、この薬を飲み続けることは現実的でないので、結局その翌日からは利尿剤を増やして様子を見ることになった。そこで今度はfurosemideの低ナトリウム血症における役割が議論の的になった。

 私は「furosemideは尿を希釈させ相対的に水排泄を助ける」と習った。「furosemide下では尿がだいたいhalf normal salineになる」という話も聞いた。しかしfurosemideがナトリウム濃度を下げることも経験したし、「furosemideはナトリウム排泄を増やし血漿ナトリウム濃度を下げる」と信じる人が多いことも知っている。それで利尿剤を増やしたあと尿ナトリウム濃度と浸透圧がどうなるか楽しみにしていたら、尿Naが77mEq/l(36から増えた)、尿浸透圧は300mOsm/kg(340から減った)という結果で、血漿ナトリウム値は122-124mEq/lでほぼ変わらなかった。

 ここから言えるのは、「furosemideで尿が希釈される」「furosemideでNa排泄が増える」「furosemideで尿はhalf normal salineくらいになる」というどれも正しいが、それぞれの程度次第でこの薬が血漿ナトリウム濃度に与える効果は変わるということだ。しかしこの例では、どうして尿Naが77しかないのに尿浸透圧が300もあるのだろう。尿中尿素が高いのだろうか、しかし血漿BUNは9しかないが。まあ折角だから尿中尿素でも調べてみよう。