◆この人にとってベストな治療はどうだろうか?について考えてみる。
つまり、HFrEFとCKDを有する人に対しての治療である。
・治療目標:
これは、症状の改善、機能の改善(心臓や腎臓の)、入院回数の減少などの生活の質(QOL)の向上、死亡率の改善であろう。
・治療としては、どんな方法があるのか?
まず、HFrEFの治療として・・・ESC ( European Society of Cardiology)のガイドラインでは、ACE inhibitor、β blockerは耐えうるEBMで確立された最大投与量がFirst Lineの治療となる(下図に日本語のものを添付)。
その後、症状残存しEFが35%以下ならばミネラルコルチコイド阻害薬を投与する。これも耐えうるEBMで確立された最大投与量が推奨されている。
これでも、改善がない場合には本邦での発売は2018年12月現在未ではあるが、イバブラジンやARNI (Angiotensin Receptor Neprilysin inhibitor)を考慮する。
それでも、難しい場合はジゴキシンやH-ISDN (Hydralazine and isosorbide dinitrate)やLVAD (左室補助装置)や心臓移植を考慮する必要がある。
やはり薬がCKDに対してどれだけ影響を与えうるかは考える必要がある。
・ACE inhibitor、ARB
これは我々が最も使用する薬の一つであると同時に悩ましい薬ではないだろうか?少なくとも私にとっては悩ましい薬である。
では、CKDを有する心不全患者に対しての使用はどうであろうか?
まず少し先行研究を振り返る。
– 1987年にNEJMからCONSENSUS Trialが提唱された。
これは、重症心不全に対して従来治療にenalapril(ACE阻害薬)を加えると全死亡はどうなるかを見た研究であるが、この結果でACE阻害薬の有用性が認められた(NYHA分類や心臓サイズの減少)。
この際の腎機能としては平均で血清Cre 1.5mg/dL程度であったが、1.7~3.4mg/dLはハイリスク群として投与量を2.5mg/dayより開始し漸増する方法を用いた(通常は10mg/dayより漸増)。
– 2001年にNEJMからVal-HeFT trialが提唱された。
これは、慢性心不全治療に従来治療にvalsartan(ARB)を追加した場合の死亡率、合併症発生率などを見たものである。
この研究は、ARBを従来治療(ACE-I, β遮断薬, 利尿薬, ジゴキシン)に加えた際に、死亡率や合併症発生は減少したが、ARB+ACE-I+β遮断薬の併用じは死亡率および合併症に有害な結果が出ていることがpost hoc analysisから分かっている。
この研究では、血清Cre >2.5mg/dLは除外されている。
CKD stage4以降の患者対象での研究がほとんどないため、結論づけは難しいがCKD stage3までのHFrEFの患者ではACE-Iの使用は効果を考えると使用はやむを得ないと考える。
・β遮断薬
では、β遮断薬についてはどうであろうか?
これも少し先行研究を振り返る。
–1999年にLANCETからでたMERIT-HF trialをまずは話す。
HFrEFに対してmetoprolol投与で全死亡や全入院の推移を見たものである。
結論としては、死亡率、突然死、入院の低下、NYHA心機能分類の改善に寄与した。
この研究では、腎疾患での除外を行っていなかったためpost hoc analysisで、eGFR<45mL/min/1.73m2の患者群で見た時に、eGFR>60の患者群よりも死亡率の低下に寄与したと報告されている。
なので、進行したCKDでもβ遮断薬の使用は有用である。
これと同様の結果は、高齢者を見たSENIORS trialやCIBIS-Ⅱなどでも示されている。
ただ、すべてのβ遮断薬がいいというわけではなく、アテノロール、ナドロール、ソタロールなどの腎排泄性のものに関しては、高度腎不全の際には使用を控えることが推奨される。
腎臓と心臓に関して少し見ていけたかと思う。
また、もしミネラルコルチコイドについてなどやARNに関して、またACE-Iを途中でや得た場合どうなるのか?などの希望があれば書きたいなとおもう。
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