また、高血圧の基準に関しては近年変遷が大きい。これに関しては以前に書いている。
日本でも2019年度に高血圧治療ガイドラインも刊行が予定されている。
高血圧の基準値に関しては、現在、ACC(米国心臓協会)の高血圧ガイドラインでは、130/80mmHgに引き下げられている。
本邦では現時点では、高血圧基準を140/90mmHgとし合併症がない75歳未満の降圧目標を130/80mmHg未満に引き下げる方向となっている。これは、最新の本邦のガイドラインが刊行されてみないとわからない。
その降圧目標を達成するために、降圧薬もいろいろな種類が使用されている。
下図はNDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)のデータである。
割合としては、ARBが多いが、タナトリルやレニベースなどのACE阻害薬(ACE-I)も処方としては多い。
今回は、このACE-Iが癌の増加に寄与しているのでは?という報告があったのでみてみよう。
この報告の前までは、メタアナリシスではARBの使用やACE-Iの使用で全般的な癌関連死の増加との関連はないことが示されていた(LANCET oncol 2011)。
今回の報告は、英国の100万人近いデータのコホート研究でACE-IかARB使用で、癌、特に肺癌との関連はどうなのか?というのを見ている(BMJ 2018)。
細かい部分は論文を読んでいただきたいが、結論としてはACE-Iでは肺癌の発生率が増加し、また内服期間が延長すればするほど肺癌の発生率が上昇するといったものであった。
これだけ聞いてしまうと、ACE-Iは肺癌の可能性が上がるから使用しない方がいいのか?と思ってしまう。
この論文に関しては、早速Rapid responseが寄せられており、ACE-Iの肺癌リスクは少ないと言っている。もちろん肺癌の最大リスクは喫煙である。
この報告で注意すべきこととしては、交絡や発見バイアスなどが含まれていることである。この場合の発見バイアスは
ACE-Iの使用 → 副作用の咳嗽 → 咳嗽の検査のために肺のレントゲン検査 →肺癌の発見率上昇
が考えられる。
この結果は、もちろん交絡因子の除外やバイアスの除外の点などからも前向き研究での検討が待たれる。
ACE-IはARBに比してコストパフォーマンスはいい。コストの面、リスクの面色々な面を見て患者に適応していければいいと思う。
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