米国腎臓学会メイン会場のエキシビションにはさまざまな会社・団体が出展して(日本腎臓学会もそのひとつ)いるが、今年もっとも派手に宣伝していたのはPatiromerで、カリウムだけに"K"arnival(カーニバル、写真)と題したブースでお祭り気分を演出していた。
この新規K吸着薬(商品名Veltassa®)はこのブログでも何度か紹介した。スイスの製薬会社がつくったが、2018年には日本の製薬会社が国内における独占的開発・販売契約を締結した。どこかで外挿試験をして、認可されればMRさんがパンフレットを持ってくるかもしれない(ペンやお弁当の提供については、来年以降さらに業界の自主規制が強まる見込みなので、わからない)。
そのpatiromerについて、新しい論文(doi.org/10.2215/CJN.04500418)がCJASNにでた。こちらのvisual abstractにあるように、一番のメッセージはこの薬を4週間内服すると尿リン排泄(24時間、尿Cr補正)がさがるが、尿Ca排泄は変わらないということだ。
PatiromerはCa/K交換なので、Kを吸着する代わりにCaが腸管にでて、リンを吸着すると言いたいようだ。CKD患者でリンが減るのはよいが、Ca含有リン吸着薬のように放出されたCaが血管石灰化などを起こしては困る。尿Ca排泄に有意差はなかったが、このスタディはカルシウムのネットバランスをみていないし、4週間と短期間なので長期の影響はなんともいえない。
またabstractには載っていないが、以前から知られているように血中Mg濃度は有意に低下した(0.2mg/dl、P<0.001)。マグネシウムもまた、減ると血管石灰化や心血管系イベントなどさまざまな悪影響があるとされているから、これにも注意を要する。
ただ正直、これらの心配にどれくらい実質的に意味があるかは分からない。
実はCa/K交換樹脂(カリメート®、アーガメイト®)とNa交換樹脂(ケイキサレート®)の争いは、日本でずっとある。そして、例によって前者は石灰化の心配、後者はNa貯留・血圧上昇の心配などが言われている。また最近は、K+吸着選択性の高い後者がK+とサイズの似ている(こちらも参照)NH4+をよく吸着しアシドーシスを補正するという。しかし、宣伝文句以上ではない印象もある。
お祭り騒ぎのPatiromerだが、宣伝文句以上の効果があればいいなと思う(写真は2011年ドラマ『パーティーは終った』の主題歌、『夢の世界』を歌ったMonkey Majik)。