2018/11/07

対岸のカテ感染予防

 透析カテーテルの話は、血液透析(HD)であれ腹膜透析(PD)であれ、それらを診ていない限りは「遠い」ものになってしまう。以前アメリカにいたころPDカテ感染予防に蜂蜜を試した話を書いた(結局だめだった、Lancet Infect Dis 2014 14 23)が、話としては興味深くても「ふーん」で終った感がある。

 またPDカテ感染では「さまざまなペット動物がPDカテーテルを触って珍しい感染をおこした」という報告も多い(たとえば、ハムスターはPediatr Infect Dis J 2004 23 368)が、これもPDを診ていないと実感はわかないだろう。




 血液透析カテーテルの感染も同様で、診ていないと「カテーテルなんかにするからでしょ」「うちはカテーテルの患者さんはいないので」で終ってしまうが、診ていると切実な問題だ。だから、カテーテルでHDを行なう患者さんの多い(導入時の80%!)米国で行なわれた米国腎臓学会で、カテーテル感染予防キットClearGuard HD(図)が注目を集めていたのもうなずける。




 この分野ではながらく抗菌薬によるロックが主流だったが、Clear Guard HDは芯の部分にChrolhexidineがコートしてあり、カテーテル内腔を消毒する。透析大手DaVita施設で既存のTego + Curosに対する有意性を示した論文はJASNに(JASN 2018 29 1336)、別の大手Fresenius施設で標準カテ指導と比較して感染を有意に減らした論文はAJKD(AJKD 2017 69 220)にそれぞれ載った。

 もちろんopen-labelだが、いずれも大規模スタディであり、Chrolhexidineは術創消毒などでは第一選択になりつつある。コスト(1回で使い捨てなのでそれなりにお金はかかるだろう;ただし、感染を防ぐことで費用対効果があるかもしれない)や副作用次第では広く用いられるようになるかもしれない。

 「ふーん」と思うのも、無理はない。以前触れたようにいまの数字ではカテーテルは日本の血液透析患者さんの1%にすぎない。しかし、2018年は透析学会により10年に一度の調査がおこなわれるはずで、その結果カテーテル患者さんが1%から少しでも増えていた場合、この話題は割とクローズアップされるだろう(患者さんの高齢化など、そうなる可能性は十分ある)。個人的には、そうでないことを願う。