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2020/11/10

造影剤腎症におけるBNP、NT-proBNPの役割

 最近全然投稿できずで申し訳有りません。少しずつ記載していこうと思います!

今回は心臓血管造影検査と造影剤腎症についてふれていきたいと思います。

まず、本邦の造影剤ガイドライン2018(https://cdn.jsn.or.jp/data/guideline-201911.pdf)の知識は抑えておく必要があります。詳細は読んでいただきたいのですが、Chapter5の経動脈的造影剤投与における検査・治療の項目で今回のCAGに関する項目が触れられています。この中で、造影剤の量が少ないほうが造影剤腎症発症のリスクが少なくなる可能性があること、CKD患者では造影剤腎症発症の発症リスクが増加する可能性があること、造影剤腎症の発症した患者では心血管イベント発生率が多いことが記載してある。

造影剤腎症の発症は悪い結果につながるため、早期に造影剤腎症のリスクを判断するということは非常に重要になる。

今回急性冠症候群に対して冠動脈造影を行った患者たちのAKI発症の予測にBNPやNT-proBNPが用いられるかを検討したMeta-analysisが出ていたので報告していく。

そもそも、BNPとNT-proBNPとは何なのか?臨床現場でも混同することが多いと思う。その部分をまずは解説していく。

心臓に負担がかかると、まずpre-proBNPが合成される。pre-proBNPは、その後にproBNPになり、生物学的活性をもつBNPと生物学的活性を持たないNT-proBNPに切断される。基本的にはBNPとNT-proBNPは1:1の割合で生成される(下図参照)。


BNPは昇圧系ホルモンに拮抗し、利尿、降圧作用を介して心筋のリモデリングを防ぐ。

BNPとNT-proBNPの半減期はBNPが20分、NT-proBNPが約120分で、加齢、女性、腎機能障害、心機能低下で上昇し、肥満で低下するという特徴がある。BNPは腎臓以外でも代謝されるが、NT-proBNPはほぼ腎臓での排泄のため、腎機能障害時にはNT-proBNPは高値となる。BNPは血漿採血で、採血後早期に血漿分離、凍結保存を行わないと測定値が低下する。NT-proBNPは血清採血で検体が安定化しているので検査の外注を行う診療所や在宅医療などで実施しやすい特徴がある。


BNPとNT-proBNPは心不全の除外に主に用いる。その際のカットオフを下記に提示する。



ここまで、話が脱線してしたが、BNPとNT-proBNPが冠動脈造影を行った場合の造影剤腎症の良好な予想マーカーになるかもしれないとことが報告された。

現時点では、造影剤腎症の診断は造影剤使用後の血清Crの上昇で判断する。しかし、健康な人では糸球体濾過量(GFR)の約50%が低下しないと血清Crの変化として認識されないことから考えると疾患の拾い上げには弱い可能性がある。そのため、別の早期の診断のツールが非常に重要であった。今回そこで注目されたのが、BNPとNT-proBNPである。

では、なぜBNPと造影剤腎症の関係があるのか?に関しては、完全にはわかっていないが、下記の理由が言われている。

・冠血管症候群による腎臓の循環不全によってBNPの腎排泄が低下するため

・BNPが先行研究でも全身炎症において上昇することが知られており、冠血管症候群における炎症や免疫反応の状況を反映している

これらの理由から、造影剤腎症においてBNPとNT-proBNPは上昇することが予想され、今回のMetaanalysisでもBNPとNT-proBNPの上昇が造影剤腎症の診断ツールとして有用であるという報告が出た。

この研究では、limitation(造影剤腎症の定義が明確化されていない、研究での基準値の違い、異質性の存在)はあるが、BNPやNT-proBNPの上昇が造影剤腎症の診断ツールとして有用であるということは、臨床現場での選択肢が広がるため、非常に参考になる。



2020/05/16

総力戦

 毎週木曜日に更新されるものといえば? 

 −NEJMの最新号がweb pageに登場する日

 私も読者の1人である。中でも「case records of MGH」はいつも興味深い臨床推論が展開されて楽しみにしている。そんな中、今週の症例(DOI: 10.1056/NEJMcpc2002418)が一際目をひいた。

 題名は、AKIを合併した68歳男性のCOVID19患者の経過である。
 
 普段であれば「case records of MGH」は病歴から鑑別、診断、治療、経過ととにかく臨床医の頭の中を言語化してくれている。
 
 しかし、今回のcase recordは少し趣きが異なる。

 ・たった数ヶ月で様々な知識が不完全ながら集約してきた様子
 ・目の前の患者の臨床医の苦悩
 ・社会背景まで考慮した考察

 この論文の中でも、

 ・腎臓自体へのCOVID19の直接障害
 ・凝固障害
 ・透析条件
 ・限りあるリソース

 などの問題点が挙げられている。COVID19の知識の確認はここを確認していただきたい。

 ところで、この患者は結局どうなったか?

 最終的にはリハビリテーション施設へ無事転院した。

 ほっとした。
 
 今、まさしく全世界がCOVID19と戦っている。

 総力戦を描き上げた、そんなcase recordだった。

 なお、同じ号のClinical practice(DOI: 10.1056/NEJMcp2009575)も参照






 
 

2020/05/14

りんごと腎臓

 これは一体?


 特に既往歴のない40歳代女性が発熱、全身倦怠感で来院した。バイタルサインは安定している。元気にお話できている。ところが、Cr1.3mg/dl(ベースのCr0.8mg/dl)かつ炎症反応も軽度上昇している。


 Cr0.3mg/dl以上の上昇でありAKIである。いつものAKIの鑑別かと思うだろう。もちろん自分もそう思った。緊急透析の適応を確認、腎後性の否定、尿定性検査、尿沈渣を提出して...という流れだ。基本的な流れは抜けなく行うことが重要である。

 さてその間に何をするかというと、患者さんとの直接の対話すなわち病歴聴取である。「どんな背景の患者に」、「どんなことが起きて」腎障害が発生しているかをつかむことが診断につながることが多い。この患者さんに問うと、病気になった子供とのコンタクトがあったとのこと。先行感染ありか...その時は特に何も感じず診察が進んでいった。

 診察すると下肢に紫斑ができている。あれ、感染を契機とした紫斑性腎炎か?はたまた心内膜炎などの菌血症なのかそれとも膠原病などあるのかなどと思っていた。


 感の鋭い方は気づいたかもしれないが、子供が病気だったからさらに突っ込んで聞くことで、大きく展開は動く。1週間ほど前に子供がりんご病だったとのこと。

 はて、りんご病すなわちパルボウイルス感染と腎臓は何か関係があるのだろうか?そんな疑問をお持ちの皆様に簡単にご紹介するのがこれ(CJASN 2007 2 S47)。


 パルボウイルスといえば、伝染性紅斑、赤芽球癆、多関節炎、胎児水腫を起こす自然界で最も小さい、single strand DNAウイルスである。潜伏期として5-6日あると言われる。病原性はNon-structural protein というもので規定され、赤血球前駆細胞に感染し前述したNPにより融解したりアポトーシスを起こしたりする。血中のピークは8-9日、IgMは曝露から10-12日で現れ, IgGは14日目ほどで現れるとされる。

 臨床兆候は、患者の年齢、血清学的異常、免疫状態により規定される。免疫抑制患者(特に細胞性免疫低下者)により重度の症状が出ることがある様だ。

 さてここで腎臓とB19感染だ。現時点で想定されているのは、糸球体に対する免疫複合体沈着により糸球体腎炎様の経過を呈する症例報告がある。病理学的には、Endocapillary proliferative glomerulonephritisが最も多いと報告されている。


 本末転倒な話であるが、パルボウイルス感染によって確実に腎障害が起きているのかを証明することは難しく、PCR法などを実施し同定しようとする試みがある様だ。治療は現時点で特異的なものはなく、IVIGが有効かもしれないとする報告がある。


 りんごと腎臓、関連が意外とあるものだ。

 
 
(とあるサイトより)

 

2020/04/30

PDによるAKI治療

 AKIの腎代替療法は、「いつ始めるか」は議論になっても「どのモダリティーか」が議論されることはほとんどない(こちらも参照)。しかし先週、米国腎臓学会のKidney360という雑誌に「COVID-19パンデミックがもたらす、米国でのPDによるAKI治療」という論文がでた(doi:10.34067/KID.0002152020)。

 米国も日本と同様、成人AKI治療でPDすることはまずない。しかし、パンデミックによりHD機・CVVHDF機が不足し、ニューヨーク市などではAKIの治療にPDが使用され始めているという。信じられない事態だが、現実だ。

 論文は「(万一に備えて)PDによるAKI治療をおさらいしましょう」と言う。そこで、その効果・禁忌・アクセス・処方について以下にまとめる(参考文献は前掲論文と、国際PD学会のガイドライン;Perit Dial Int 2014 34 494)。


1. 効果


 PDによるAKI治療には、よいイメージをお持ちでない方も多いだろう。たとえば、マラリア患者と敗血症患者あわせて70例のAKIを対象にPDとHDFを比較したベトナムのRCTは、PD群で有意に死亡が高く早期中止となった(NEJM 2002 347 895)。しかし、このスタディはPD治療が不十分・不適切だったようだ。

 その後、透析量を増やし、プラスチックのカテーテルを使い、バッグ交換もサイクラーにしたスタディがいくつも行われた。その結果、2017年のCochraneレビューは「総死亡と腎機能回復にほとんど有意差なし(確証は中等度)」と結論している(doi:10.1002/14651858.CD011457.pub2)。

 とはいえ、AKI治療にPDが選ばれる最大の理由は、コストの安さと「過酷な環境(austere environment)」での威力だ。極論すれば、水道も電気も必要ない。またCOVID19パンデミックにおいては、医療スタッフと患者の接触を減らせるとも期待されている。
 

2. 禁忌


 PDによるAKI治療の絶対・相対禁忌には以下が挙げられる。

腹膜への侵襲
腹膜炎
腸管の障害
重度の高カリウム血症
薬物中毒
重度の呼吸不全・肺水腫
腹水・腹腔内圧上昇
腹臥位
ショック肝・乳酸アシドーシス
(重炭酸イオンのPD液なら可)

 懸念を挙げると、「重度の高カリウム血症」や「薬物中毒」は溶質除去の速度と量。「重度の呼吸不全・肺水腫」は、除水速度・量と、横隔膜の運動制限。「腹腔内圧上昇」は腹腔コンパートメント症候群などだ。
 
 COVID19のAKIで最も気になるのは「重度呼吸不全・肺水腫」だろう。PD液を2L貯留しても肺コンプライアンスなどの指標に有意差のなかったスタディはあるが(Clin Exp Nephrol 2018 22 1420、ただし肺炎は全患者の約20%)、呼吸管理に注意が必要だ。またCOVID19肺炎で患者を腹臥位にした場合も、PDは現実的ではないだろう。


3. アクセス


 AKIのPDといえば、昔は金属棒のようなカテーテルが使われていた(読者の中に、使っていた方もおられるかもしれない)。しかし現在は、AKIでも末期腎不全と同様に、柔らかくカフが2個ついたカテーテルが用いられる。

 ただ、緊急性と患者移動の困難さから、挿入はベッドサイドが多いようだ。腹腔に穿刺した針からガイドワイヤーを留置し、ダイレイターの外筒を「剥きながら(peeling-away)」カテーテルを挿入する。腸管損傷リスクもあるので、透視・エコーは使いたい(使ったテキサスの動画、使わないタイの動画も参照)。

 挿入後すぐに使うので、PD液リークはリスクだ。これについては、結局「うまい人が慣れた方法で(local expertise and operator experience)」やることが大切とされ、施設や報告により発症率はさまざまだ。傍正中切開・タバコ縫合(腹膜・腹直筋後鞘・前鞘の3箇所にかける方法はSemin Dial 2003 4 346)・少量PD液から開始するなどの工夫もある。


4. 処方


 AKI患者で異化が亢進していることや、PDはHDに比べ溶質除去が甘くなりがちなことから、透析量は末期腎不全より多い。PDの有効性を示したブラジルのランドマークRCT(Perit Dial Int 2007 27 277)は1日Kt/V 0.6(weekly Kt/V 4.2、こちらも参照)だったが、現在のガイドラインは1日Kt/V 0.3(weekly Kt/V 2.1)を推奨している。

 以下に、前掲Kidney360論文のサンプルを紹介する(ICU患者、APD、体重70kg以下の場合)。



 
 交換回数が多いので大量のアルブミンが喪失され、その量は前掲ブラジルRCTで1日21グラムもあった。信じられないことに低アルブミン血症の有意差は見られなかったが、別のブラジルRCTでは蛋白バランスと死亡率に負の相関がみられ(CJASN 2012 7 887)、ISPDガイドラインは蛋白摂取を1.2g/kg/dにするなどの工夫を推奨している。


★ ☆ ★


 いかがであろうか?正直、AKIにPDと言われても困るのではないだろうか。モダリティーとしてHD・CVVHDFより優れている点はほとんどないし、なにより経験がなさすぎる(論文はfamiliarityの重要性を強調するが、そんなものがある人はまずいないだろう)。

 しかし、とにかくやらないとCOVID19患者をAKIで死亡させてしまうような限界状況が、現に起きている地域がある。そしてその時、「知りません」では済まされないからこそ、急遽この論文がでたのだろう。

 そうした状況にならないことを願うのはもちろんだが、今からAKIに限らずPD一般に少しでもfamiliarityを持っておくことに、損はないだろう。





2020/04/08

微小変化型ネフローゼのAKI

 ステロイドが著効することが多く、おそらくステロイドでなくても治療できるであろう(こちらも参照)微小変化型ネフローゼ症候群(minimal change disease, MCD)。しかし、起こると厄介なのがAKIだ。

 AKIは成人MCDの約30%に診られるとされ(日本のデータでよく引用されるのはNephrology Carlton 2015 21 887)、AKIのある群はない群に比べて予後が悪く、寛解にいたるまでの期間も長い。

 なぜMCDはAKIになりやすいのか?よく聴かれるのは、糸球体のお話だ。

 たとえば、内皮側とボウマン嚢側の膠質浸透圧差が低下すれば、糸球体のろ過圧が低下してGFRは下がる。また、足突起のeffacementによってスリット頻度が減れば、基底膜の「抜け」が悪くなるとも言われる(図は、JCI 1994 94 1187を改変)。

 


 しかしAKIとなると、話は糸球体だけで終らない。そこで、「腎前性」「腎後性」ならぬ、「糸球体前」と「糸球体後」にわけて考えてみよう。

 「糸球体前」には、血行動態や血管病変が挙げられる。血行動態に影響するリスク因子としては、利尿薬使用・NSAIDs使用・造影剤使用などが挙げられる。また、血管病変を反映してか、高齢者や高血圧既往のある群ではAKIのリスクが高い。腎生検で動脈硝子化などが診られる群でも同様だ。

 なお、低Alb血症で膠質浸透圧が保てず有効動脈血液流量が減ることでAKIや代償的なRAA系の亢進・Na再吸収の亢進が起きる、という「アンダーフィリング」仮説は、なんとなく説得力があるものの、現在では疑問視されている(KI 2018 94 861)。

 その理由として、ネフローゼでは血管内だけでなく間質の膠質浸透圧もさがる(Nephron 1985 40 391)、リンパ潅流が亢進して結果的に血管内容量が維持される、AKI合併例は非合併例より血圧が高い、ステロイド使用後はAlb値が回復するより早く尿が出始める、などが挙げられている。

 いっぽう「糸球体後」とは、主に尿細管のことである。

 「微小変化」という呼称に反して、MCDの尿細管の変化は実に多彩だ。尿細管細胞内の空胞・硝子滴形成、微絨毛の消失、尿細管内腔の円柱形成、糸球体の肥大と増殖(Nephrol Dial Transplant 1995 10 2212)などは、臨床的にAKIのない例にも観察される。

 さらに、AKIのMCD患者では、多くの場合に急性尿細管壊死(ATN)が観察される。詳しく観察すると、病変は糸球体に近い近位尿細管に目立つようだ(図はBMC Nephrol 2017 18 339)。


出典はこちら
左は尿細管傷害マーカーvimentinの染色
右は細胞増殖マーカーKi67の染色
gは糸球体、+は遠位尿細管

 近位尿細管には糸球体から漏れてきたアルブミンを再吸収する働きがあるので(こちらも参照)、大量の蛋白尿が糸球体から流れてくると疲弊してしまうのかもしれない。疫学的にも、大量の蛋白尿と著明な低Alb血症はAKIのリスク因子だ。
 
 また近年、ATN合併例は非合併例にくらべ、著明にエンドセリン1の発現が亢進している(血管・糸球体・尿細管)という報告がでた(AJKD 2005 45 818)。負荷のかかった尿細管に、エンドセリン1による虚血が重なることで、AKIになりやすいのかもしれない。

 なお、尿細管が間質浮腫によりつぶれる「腎浮腫(nephrosarca)」仮説も、そのような像が観察されることは確かにあるようだが、観察されないことも多く、どこまでAKIに関与しているかは疑問視されている(KI 2018 94 861)。

 まとめると、以下の表のようになる(上段は病態、下段はリスク因子)。


他に考慮すべきこと:
じつは別のネフローゼだった、腎静脈血栓、薬剤性腎炎など

 
 現状は、前掲KI論文著者が言うように「ステロイドが効くまで時間を稼ぐ」しかないが、AKIを合併したMCDは寛解までに時間がかかり、稀だが透析依存になることもある。今後「尿細管保護薬」などの開発が進み、尿細管のケアが充実すればなと思う。



出典はこちら



2020/03/18

少し時代に乗って ~COVID-19と腎臓 part1 ~

現在日本や世界でも新型コロナウイルス(COVID-19)がとても騒ぎにはなっている。

一般診療においても様々な情報が飛び交っていると思う。
個人的にはプライマリ・ケア学会の資料(添付)はよくまとまっているのではないかなと思う。これから、様々な合併症の報告も出てくるのかもしれない。
また、英語の資料では様々なものが出ているがACPの資料がいいかもしれない。また、CRITICALCARE NORTHAMPTON.COMのサイトは非常に色々な情報がまとまっているのでとてもわかり易い。

あとは、Hopkinsが出しているCOVID-19のMAPなどは非常に見やすいので現状を把握する上では非常に理解がしやすい。

まずは、一般的な情報を簡単におさらいをしていこうと思う。
以前2003年に流行したSARSや2012年に流行したMERSも今回と同じコロナウイルスで有るということは既知の事実であろう。下図はそれらをまとめたものになる。

下表は一般的なCOVID-19の症状になる。
やはり発熱の割合が多い。


下表はCOVID-19の採血検査になる。
白血球上昇は少なく、血小板はやや低下する。その中でリンパ球は減少している。LDH上昇とCRP高値、CK高値などがある。プロカルシトニンは正常で肝機能は30%の患者で上昇する。

ここからは、腎臓という観点からもちろん見ていこうと思う。
まだまだ分かっていない部分も多いとは思うが分かってる範囲で記載をしてきたいと思う。

COVID-19感染と腎臓
まずは、AKIの発生についてみていく。
以前のSARS、MERS(両者ともコロナウイルス)でのAKIの発生率は5-15%であったと報告され、ただ、AKIにまで至った例では60-90%と高い致死率が報告されていた。
それに比べると、まだ報告は十分ではないがCOVID-19でのAKI発生率は3-9%であり多少前者より下がる(JAMA2020)。

COVID19とAKIリスク

しかし、最近の報告では、感染者の中で血清Crが15.5%の患者で増加し、また14.1%でBUNが上昇したと報告がある。また、最近の報告でCOVID19で入院した710人の患者で、入院時にタンパク尿+血尿が44%に認められ、26.7%に血尿だけ認められたという。

ここまでのまとめ:
現段階ではAKIになるリスクはあり。発生率ははっきりはしていないが感染患者の10%前後。ただし、AKIになった場合は非常に死亡率が高くなる。
COVID19とmortality

AKIの原因は?
明確になっていない部分が多いが、多臓器不全やショックと共に起こることが多く、急性尿細管壊死(ATN)が一番の原因と考えられる。
2005年のSARSのときには横紋筋融解症も少ないが報告されていた。

治療に関しては?
基本的には対症療法となる。AKIに関してもまずは血圧コントロールをおこない、体液管理も行い、必要時に腎代替療法を開始する。

現在出ている治療に関しての報告:
・現在、RamdesivirのTrialが中国で開始され、2020年4月には終了するというから驚きである。この薬は抗ウイルス活性を有する開発中の核酸アナログ薬になっている。
・リン酸クロロキンが中国の他施設研究でCOVID19関連肺炎に対して有効だったという報告も有る。
報告によっては血液灌流(Hemoperfusion)がサイトカイン除去に有効に働いたのではないかと言われている(6L/hrの大量の血液灌流が敗血症患者の炎症性サイトカイン(IL-6)などの除去に有効だったという報告による)。
・ステロイドに関してはSARSの際のメタアナリシスからも、ステロイド投与による利益よりも害のほうが多いということが報告されている。そのため、COVID-19でも推奨はされていない。
・COVID-19に罹患したが回復した人の血漿を投与することで臨床症状の改善を認めたあという報告があり、中国では現在他施設RCTでこの研究が進行中である(NCT04264858)。
・モノクローナル抗体であるトシリズマブがCOVID-19感染に有効かを中国では他施設RCTで行われている(ChiCTR2000029765)。
・また、COVID-19はACE2の受容体に結合する特性があり、その点でACE-IやARBは有効かという議論が有るがこれに関しては結論が出ていない。

治療のまとめ
まだ色々な情報が出ているが確固たるエビデンスのある治療はない。

次回はCOVID19と透析や移植について少し触れたいと思う。

現在色々と活動にも制限がかかる中、日々診療にあたっているみなさんも体調にはぜひ気をつけてください。


2020/03/13

Critical care nephrology ~ShockとAKI~

今回は題名どおり、「ショックとAKI」について考えていく。

まずは症例を一緒に解いて、そこから考えてみよう!
症例:
65歳女性
咳・発熱・低酸素血症でクリニックを受診。迅速検査にてインフルエンザA陽性であり、オセルタミビルの内服加療開始したが、症状悪化傾向認めたため救急外来を受診。そして集中治療室に高度発熱・胸部レントゲンでの多発性肺野陰影・挿管管理が必要な呼吸不全にて入院となった。
血液培養検査、気管支肺胞洗浄を施行→MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が両方から検出
入院後経過:
2L(30ml/kg)の外液の補液加療と適切な抗菌薬加療にもかかわらず、低血圧が持続。右内頸静脈から中心静脈カテーテルを挿入。MAP(平均血圧):45mmHg、CVP(中心静脈圧):11mmHg、ScVO2(中心静脈酸素飽和度):89%、動脈血乳酸濃度:10.2mmol/l、尿量:10mL/hrであった。

質問:次に行うマネージメントとして適切なのはでどれだろう?
1:ノルエピネフリン投与と下肢挙上テストを補液反応性かどうかを見るために行う。
2:ドパミン投与を開始する。
3:CVPが12cmH2Oを超えるまで補液を継続し続ける
4:体液過剰による危険性があるため、患者は30mL/kgでの補液投与はすべきではないし、さらなる補液も必要ない。
5:ScVO2が70%を超えているので、組織酸素運搬は適切であり追加の治療は必要ない。



正解は 1 

皆さんは正解にたどり着いただろうか?
少し、わからなかったよ〜という人のために、解説も交えて行こうと思う。

まず、ショックについて
ショックは循環不全をきたし、それに伴い組織循環不全、組織での酸素利用ができなくなる病態である。収縮機血圧<90mmHgやMAP<70mmHgの場合、いつもの血圧より40mmHg以上下がった場合などがショックと判断される。

ショックは4種類のタイプに分かれる。
・血液分布異常性ショック(Distributive shock)、循環血液量減少性ショック(Hypovolemic shock)、心原性ショック(Cardiogenic shock)、閉塞性ショック(Obstructive shock)


治療について
・まず、ショックの原因を把握することは重要。
治療の基本原則は細胞外液の補液を行い必要があれば血管作動薬を用いる。

モニタリングに関して
 −CVP、ScVO2:敗血症性ショックの際にこれらを指標にして補液量を決定することはもはや推奨されていない(ARISE, ProCESS, ProMISe trialの結果から)。ScV02>85%と高いと予後が悪いことが示されている。→3と5は間違いであるとわかる。
 −肺血管抵抗圧:有用性は示されておらず、逆にカテーテル関連感染の増加や不整脈や肺血管障害などを引き起こしうる。肺高血圧の時には検査の有用性は示唆されている。

上記のモニタリングとは異なり、補液反応性を見る方法はとても有益である。
補液反応性を見る方法として、動脈圧波形分析法(pulse contour analysis)、食道ドップラーや経胸壁ドップラー、バイオインピーダンス測定、PLR(Passive Leg Raising動画)などがあり、最近の報告ではPRLが最もいい動体分析とされている。なので、1は正解!!
しかし、各々の検査はそれぞれに特有の限界があるということと、ショックにおける補液管理は全ての可能なデータを用いながら用いることが重要である。


血管に働く薬として、全身の血管抵抗を上げる血管作動薬と心拍出量を増加させる循環作動薬がショックの治療には用いられる。心原性ショックの場合には全身血管抵抗を低下させる薬剤が用いられる。(下図参照)


ノルエピネフリン(カテコラミンの1種)は敗血症性ショックでは第一選択で用いられる薬剤である。これは様々な研究やメタ解析によってノルエピネフリンはほとんど頻脈(ほとんどが心房細動)を起こさずに、ドパミンに比べて全死亡率を下げたという研究に基づいている。このことから、選択肢2は間違い。

バソプレシンはV1受容体を介して血管収縮を起こし、カテコラミンで反応しないショックに対して有用に働く。そのため、敗血症性ショックにおいてはカテコラミンを使用して第2に使用する薬剤であり、また、心臓血管手術後の血管拡張性ショックに有効な薬剤である。バソプレシンはカテコラミンに比べて心房細動をより起こしづらいという利点がある。バソプレシン使用で低ナトリウム血症が生じるか懸念があるかもしれないが、臨床研究では報告はされていない。VANISH trial(敗血症性ショックに対してバソプレシンとノルエピネフリンを腎機能をアウトカムとしてみたもの)では、バソプレシン使用群では腎代替療法の必要な頻度を減らしたが、さらなる研究が必要で、この結果があったとしても基本は現時点では敗血症性ショックに対してはノルエピネフリンが第一選択である。

アンジオテンシン2もバソプレシンと同様に非アドレナリン作用で血管収縮を生じさせる。本邦では承認されていないが、海外では血管拡張性ショックの有用性の報告から敗血症性ショックで使用されているようだ。ここの部分に関しては、非常にわかりやすいトライアルのまとめがあるのでリンクを貼っておく。

これらの血管に働く薬はMAP≧65mmhgを目標にして投与される。
このMAPのゴールに関しては、MAPを上げすぎた方がいいかということに関しては、研究(NEJM 2014)でMAP高くする事での有用な結果は出ていない。ただ、慢性的に高血圧のある人ではMAPの設定を高くした方が腎代替療法の必要な割合が減るという報告がある。ただし、心房細動の頻度も増えるというおまけ付きではあるが。。

今回はShockとAKIについて触れてみた。
絶対見なくてはいけない疾患であり、薬剤選択もぜひ復習していただきたい。


2020/03/12

僕たちのMGRS 5/6(診断)

また、前回から期間が空いてしまったが今回は診断について記載をしてみたいと思う。

さて、今までの内容は、
僕たちのMGRS:
 ・MGRSをめぐる混乱の中から
 ・1/6 (歴史)
 ・2/6 (定義)
 ・3/6 (分類)
 ・4/6 (病理)
とまとめてあるので参考にしていただきたい。

今日は診断について話を進めていく。
流れとしては、
『①MGRSを疑うか?→②検査・尿検査はどうか?→③腎生検』となる。

①では、まずどのような人を疑うのか?
MGRSを疑う人:
・「非腫瘍性、もしくは前腫瘍性のモノクローナルガンマグロブリン血症があり」+「腎障害(腎機能低下やタンパク尿)がある」

②検査について
ここでは、モノクローナルガンマグロブリン血症を診断するための検査について述べたいと思う。
*単クローン性免疫グロブリン検査について
・血液と尿の電気泳動検査(SPEP・UPEP):最初の検査



・免疫固定(Immunofixation):これもSPEP/UPEPと同時に検査する。
原理:SPEP、UPEPで指摘したM蛋白がどの免疫グロブリンの増殖に由来するかを検出
通常は1種類の重鎖と軽鎖が検出される。電気泳動と抗原抗体反応を組み合わせた蛋白の同定法。



・遊離軽鎖検査(Free light chain assay):免疫固定でもわからない軽鎖の上昇を判断
血中の重鎖と結合していない軽鎖(κ、λ)を計測する。κ/λ比の正常値は0.26-1.65で、この範囲外である場合はいずれかの軽鎖が増殖していることを示唆。重度腎障害(CKD stage5以上)の際には0.34-3.10まで上昇



これらの検査結果は、腎疾患のタイプや重症度との関係ははっきりはしていないが、診断や予後決定の上で重要である。


Nature review nephro 2019


上記のようにMGRSを疑うような人に対して腎生検施行することを考慮する。

③上記の中の腎機能障害や尿異常などに関しては下記のように考えると理解しやすい。
・とくに腎生検を推奨する場合(下記の中の一つでもあれば):


・腎生検を中等度推奨する場合(下記の中の一つでもあれば):


①まずはMGRSを疑うかどうか?
      ↓
②採血検査や尿検査ではどうか
      ↓
③腎生検をして病理検査を確認

という流れになる。

今日は世界腎臓デイ、みんなでお祝いしましょう!
今年のテーマは
kidney health for everyone everywhere – from prevention to detection and equitable access to care.”
なので、しっかりと診断をして治療につなげることは非常に重要になる。

次回は最後の治療について、是非楽しみにしてください。


2020/03/03

Critical care nephrology ~敗血症とAKI~

少し症例も提示しながらCritical care nephrologyで遭遇しやすい疾患を見ていく。

症例1
高血圧の既往が有る68歳女性が、発熱・嘔吐・混迷で救急外来に受診。
来院時バイタル:体温 39.3℃、血圧 130/59 mmHg、心拍数 98回/分、呼吸数 26回/分、SpO2 92% (室内気)
身体所見:指示に従えない、右CVA叩打痛あり
血液検査:WBC 2200/μl、Cr 2.3mg/dL (Base line 0.7)、尿白血球数 >50/視野以上
画像検査:非造影腹部CT検査 結石などなく大きな問題なし
ICUに入院となった。

質問:患者のAKIの原因で最も正しいのは?
A:血流量低下に伴う虚血性急性尿細管壊死がAKIの原因である
B:敗血症の定義に入らないため、AKIの原因は敗血症ではない
C:血圧が正常なため、AKIの原因は敗血症ではない
D:AKIになることで入院中の二次性の感染リスクが増加する。
E:敗血症によるStage 3のAKIであるため、準緊急の腎代替療法が適応になる前に腎代替療法をしたほうが利点が大きい。

いかがだろうか?

ここでの正解はD

少し解説も兼ねてこのAKIを紐解いていければと思う。

・まず、ICUの場面ではどのようなものが一般的にはAKIを引き起こしやすいのか?
→敗血症、心臓手術、急性肝不全、腹部コンパートメント症候群、肝腎症候群、悪性腫瘍、心腎症候群 などがあげられる。

まとめた表を下記に示す。
AJKD2020より

今回の症例では、腎盂腎炎による敗血症が病態としては疑われる。

敗血症:
敗血症に関してはSepsis-3(JAMA2016)によると
「感染症に対する制御不能な宿主反応によって引き起こされた、生命を脅かす臓器障害で、臨床的にはSOFA score 2点以上」で定義される。
(ICU外ではqSOFAで2点以上:①呼吸数が22回より多いか?②収縮期血圧が100mmHg未満か?③意識変容をみとめるか?を各1点としてみている。)
(ICUではSOFA scoreでみている。)

今回の症例ではqSOFAで呼吸数異常、意識変容があり敗血症の定義を満たすためBの選択肢は不適当である。

敗血症でAKIになることは適切な治療や介入をしない場合に、死亡や慢性腎不全に至る可能性も高い疾患である。それを、わかりやすく示したものが下記の図になる。

KI 2019より引用

では、なぜ敗血症でAKIになるか? これについては正確にはまだわかっていない。

以前は、AKIになる理由として、循環不全になり、急性尿細管壊死(ATN)を起こすことによると考えられていた。
しかし、動物実験では腎血流量は敗血症では低下しない事がわかっている。また、敗血症性AKIで亡くなった人の剖検でもATNを起こさず比較的腎臓の組織は保たれていた。

敗血症性AKIは血圧低下がなくても生じうる。(選択肢Cが間違いであるとわかる)

敗血症性AKIの機序については、下記の機序が言われている(図参照)。
・1つ目は血管に関する機序であるが、シャントができることによって糸球体への血流量が低下する。

・もう一つは炎症に伴う機序である(①~③の順に進んでいく。)
①敗血症ではDAMPs/PAMPs(Damage associated molecular pattern/Pathogen  associated molecular pattern)が敗血症では産生され(DAMPs/PAMPsは組織損傷や微生物侵入の痕跡を示す)、糸球体を通過する。

②通過したDAMPs/PAMPsは尿細管上皮に有るTLR(Toll-like receptor)にくっつき、サイトカインや活性酸素(ROS)や酸化ストレスや内皮活性化を起こす。内皮活性化によって白血球や血小板の移動を生じさせ、血栓形成や血流を停滞させる。また、グリコカリックスの障害や凝固カスケードの亢進が生じる。

③尿細管上皮細胞の傍分泌(paracrine)によって、尿細管細胞のアポトーシスを避けるために細胞活動性を停止させ、最終的にはTGFフィードバック(尿細管糸球体フィードバック)を介して、輸入細動脈の収縮を起こし腎血流量を低下させる。
KI 2019より引用
はっきりとしていない部分も多い。
ただ、Septic-AKIは単純な血流低下に伴うATNではないということの認識は重要である。
(Aは異なる選択肢とわかる。)

治療に関して
適切な時期の抗生剤投与、原因コントロール、適切な体液管理は敗血症患者の予後を左右する上で重要である。
透析を早期にしたほうが良いか?に関しては、下記の研究をみていただければと思う。
ELAINでは早期に透析をしたほうがいいという結果は出たが、その他の2つの研究では早期の透析導入の優位性を示すデータはない(以前に投稿)。
なので、現状ではSeptic AKIの場合でも緊急透析導入の適応を前倒ししてまで緊急透析を導入する根拠はない。(選択肢Eは間違いとわかる)
AJKD2020より

今回は、Septic AKIの内容だけになってしまったが、少しこのような形でCritical care nephrologyを振り返れればと思う。

2020/02/28

Critical care nephrology 腎臓が悪くなるのを知るために。

今回から少しだけ集中治療と腎臓という視点で話していこうと思う。
最近良く耳にすることも多いCritical care nephrologyについて話していく。

この概念はイタリアのClaudio RoncoとオーストラリアのRinaldo Bellomoなどが集中治療領域に高頻度におこるAKIやESRDのことを指し、Intensivist・Nephrologistが手を取り合って治療していく必要性が有る。まだまだ、歴史の浅い分野であり日本での地位が確立している病院は正直少ない印象を受ける。
彼らの著書のCritical care nephrologyは必読のものである。2019年に改定されている。

はじめは集中治療とAKIを早期に認識することについて触れたいと思う。
最近の研究で、97施設1800人の集中治療患者で患者の57%が1週間以内にAKI(ステージを問わず)に進展したという報告があった。そのなかで、39%が重症AKI(KDIGO stage 2 or3)、13.5%が腎代替療法を必要とした。


集中治療領域でAKIになることは死亡率を上げるリスクファクターとして知られている。
腎代替療法を必要とするAKIの死亡率は40-55%といわれ、集中治療領域の心筋梗塞(20%)、AKIを伴ない敗血症(15-25%)、人工呼吸器を必要とするARDS(30-40%)の死亡率(カッコ内は死亡率)より高いというのは非常に驚かされる。

しかし、AKIにだれがなるか、AKIの人で腎代替療法が必要になるかはわからない場合が多いが、その中で患者のリスク層別化をすることは重要になる。

まず、このリスクの層別化でぱっと思い浮かぶのは以前にもお話したことが有るbiomarkerである。

しかし、このbiomarkerを使用する上で注意するべき点が有る。
それは、やたらめったらと取らないことである。
ん?どういうこと?なのかというと、検査前確率が高い人に行うべき検査であるということである。

その他に用いられるリスク層別化としては下表のものになる。
少し下に解説を入れていきたい。
1:Clinical risk prediction score
 下記のスコアで5point以上であればAKIのリスクが高いと判断する。
NDT 2018より
2:Computer algorithms
 これは今後AIが発達していく世の中になるであろうし、血中biomarkerよりも6時間以上早くAKIを予測したという報告も有る。

3:Furosemide stress test
  高用量フロセミド負荷(1mg/kgのフロセミド負荷、もしくは投与してある人には1.5mg/kgのフロセミド負荷)をして、2時間尿を測定し200ml/2hrをカットオフとして判断する(感度87%、特異度84%)。

このようなリスク層別化のツールを用いながらAKIのリスクをしっかりと想起することはわれわれにとっても大切だし、AKIになると患者さんの死亡にも寄与するため、その対抗策を講じることは非常に重要である。

今回はCritical care nephrologyの最初の部分をかたった。

腎臓内科の医師は基本的にはクレアチニンなどの数字に踊らされることはないと思うが、尿も含めて患者をトータルに見れる視点を持つことが非常に重要である。


2019/10/18

虎ノ門みやげ 後編

 前編のあと、先生は腎性低尿酸血症のお話をされた。

 腎性低尿酸血症といえば、URAT1またはGLUT9の異常により尿酸が再吸収されず、極端な低尿酸血症・尿結石・運動後AKI(悪心嘔吐・ひどい腰痛が特徴で、来院時Crが5mg/dl程度のわりに非乏尿で尿酸値が低め)・GLUT9異常では脳梗塞を合併する疾患だ。詳細は先月の投稿も参照されたい。

 ここでは、講演で得られた感動を二つ共有したい。

 1つ目は、ウリカーゼの進化史だ。先生は「尿酸といえば(痛風や脂肪肝など)害が多く、大悪党ではなくても小悪党くらいに思う方が多いだろう」とお話したうえで、生物が進化の過程でいかにウリカーゼを不活性化(同遺伝子を偽遺伝子化)してきたかを概述された。

 ヒトのウリカーゼ遺伝子は、①コドン33がストップコドンに、②イントロン2の2塩基AGがAAに(スプライシングが不可能に)、③コドン187がストップコドンになっているという。講演では、霊長類でこうした異常がどう共有されているかを示す、以下のような図が提示された(出典の記載がなかったので、ここにはPNAS 2014 111 3763)!


列記された動物は上から、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、
オランウータン、テナガザル、カニクイザル、アカゲザル
(網掛け部分が偽遺伝子化している)


 さらに興味を持って調べてみると、哺乳類は長いあいだ徐々にウリカーゼ活性を落としてきたことがわかった(図はPNAS 2014 111 3657)。まるで「哺乳類補完計画」だが、ウリカーゼ活性を止めて血中に尿酸を増やすことには、果糖を代謝しての脂肪蓄積作用や抗酸化作用などの進化論的利点ががあったと推察されている(Semin Nephrol 2011 31 394)。


時間軸上段は白亜紀、第三紀、第四紀
下段は暁(ぎょう)新世、始新世、中新世、鮮新世

 
 2つ目は、腎性低尿酸血症がAKIや脳梗塞を合併する機序についてだ。先生は推察だとしつつも、血中に尿酸がないと、運動などで酸化ストレスが増えたときに、血管を拡張しておくことができないのではないかとおっしゃった。

 先生によれば、腎臓で消費されるATPは全身の10%に及ぶという。調べてみると、たしかに腎臓の安静時エネルギー消費量は440kcal/kg/dで、心臓と並んで臓器の中で最も高い(Marinos Elia先生による、検証はAm J Clin Nutr 2010 92 1369)。そう考えれば、運動時AKIは「一時的な腎梗塞」であり、ひどい腰痛がおきる点も符合する。


 尿酸がどのように血管収縮を抑制しているか、どうして心筋梗塞にならないか、ウリカーゼのある他の哺乳類はどうしているのか、・・など疑問は尽きない。しかし、こうして得られた感動こそ「キセキ」。その意味でも、人間でよかった(図は、まんが日本昔ばなしエンディングテーマだった、『にんげんっていいな』より)。





2019/09/18

尿酸値が低いことは問題ないですか?

我々は高尿酸血症の診断・治療は色々な知識があり、選択肢がある。
実際、患者さんも高尿酸血症に伴う痛風発作では疼痛も強く、尿酸が高くなることを恐れる人もいる。

では、尿酸が低い人はどうであろうか?
「尿酸が低いですが、大丈夫ですね。異常なしです!」
で帰してしまうのか?

今回は、その話題を少し取り上げようと思う。

低尿酸血症は定義上、血清尿酸値が 2mg/dL未満のものをいう。
1991年と昔の報告ではあるが、入院患者の2%、一般人口で0.5%と頻度は低い。

機序としては
・尿酸の産生低下
・尿酸の酸化
・尿酸の尿細管再吸収障害
にわかれる。

☆産生低下には、先天性障害・後天性障害に分かれる。
 先天性のものには、遺伝性キサンチン尿症やプリンヌクレオチドホスホリラーゼ欠損症
 後天性のものには、キサンチンオキシダーゼ阻害(アロプリノールやフェブロキサットなど)、重度肝障害
などがある。

☆尿酸の酸化
 人間は他の動物とは異なり尿酸酸化酵素を持っていない(つまり、酸化させることができない)。
 腫瘍崩壊症候群における急性腎不全の予防や治療に使用されるラスブリカーゼは尿酸を酸化させアラトインという物質に変換させる尿酸酸化酵素として作用する。
このラスブリカーゼの使用などで低尿酸血症になる。

実験医学オンラインより引用

☆尿酸の尿細管再吸収障害
これに関しても、先天性障害と後天性障害に分かれる。
 先天性のものには家族性低尿酸血症がある。家族性低尿酸血症は本邦で腎性低尿酸血症(RHUC)として知られ、ガイドラインがでている。
 これは、近位尿細管における尿酸再吸収トランスポーターの欠損で、URAT1/SLC22A12、GLUT9/SLC2A9の欠損が報告されている。


Up To Dateより引用
後天性のものには
  Fanconi症候群、体液過剰(近位尿細管の再吸収低下)、頭蓋内疾患(尿酸クリアランスが増加)、AIDS、薬剤(ベンズブロマロン、プロベネシド、高用量ST合剤、高用量サリチル酸など)※、炎症、妊娠、経静脈栄養管理、ホジキンリンパ腫などの悪性腫瘍、タマゴテングタケ中毒などがある。

※ちなみにARBのロサルタンなどは心臓移植でシクロスポリン使用に関連する高尿酸血症に対して尿酸を下げる作用として働く(URAT1の阻害)

では、結論の部分であるが低尿酸血症は多くの場合は無症状ではあるが、合併症では
・急性腎不全
・尿路結石形成
・可逆性後頭葉白質脳症
があり、これは知っておく必要がある。

・急性腎不全に関しては、RHUC患者の男性に多い。
起こるシチュエーションとしては激しい運動後、6-12時間以内に腰背部痛、腹痛、嘔吐が生じる。平均Crは5.5mg/dL 程度と言われ中には透析や慢性腎不全に移行するものも数は少ないが報告されている(NDT 2004)。
この病態は運動後急性腎不全(EIAKI:Exercise induced AKI)として知られている。

・尿路結石症に関しては、頻度は尿酸排泄が亢進する疾患で多くなる。RHUC患者では尿酸結石とシュウ酸カルシウム結石の形成合併が多い。

・PRESは頻度は非常に低いがRHUSの患者での報告はある(pediatrics 2011、 Eur J pediatrics 2013)。

なので、低尿酸血症は頻度はそこまでは高くはないが、出会ったらしっかりと鑑別を考える必要があるし、合併症の併発はないかの精査を行うことは重要である。


2019/05/25

APSN/KSN CME 2019 1/2

 APSN(アジア太平洋腎臓学会)とKSNの共催CMEに参加してきた。4時間で8つのレクチャーを聴いたが、まず前半を紹介する。


1. 腎障害における酸化ストレスと低酸素


 まずSTAT3、Th17、Sphingosine kinase 2、VAP-1、自律神経といった、AKIの発症・予防に関わるさまざまな要素が説明された。神経の脱落や再生を調べるのには透明な腎臓が作成されており(CUBIC-kidney、doi:10.1016/j.kint.2019.02.011)、改めて衝撃的だった。なお、VAP-1は既に経口阻害薬ASP8232が治験されている(Lancet Diabetes Endocrinol 2018 6 925)。





 AKIで低酸素状態などでエピジネティックなスイッチが入ると、線維化などでCKD進展リスクとなる。こうした転写因子を阻害する試み(EZH2阻害薬DZNep:Sci Rep 2018 8 3779、HDAC阻害薬Pracinostat:Int Immunopharmacol 2017 42 25など)も紹介され、腫瘍内科のような分子標的アプローチが腎臓内科でも本格化していることが実感された。

 そのあとDKDについて、各クラスの経口血糖降下薬の腎保護作用(メトホルミン、DPP4、SGLT2)が紹介された。SGLT2阻害薬はeGFRが低下すると血糖降下作用は低減するが、腎保護作用は持続する(ので、患者と相談のうえcompassionate useも考慮しては)という話もあった。ほんとうに腎保護薬としての適応が通るかもしれないし、腎保護作用を強調して工夫された新しい薬がでるかもしれない。

 その新しい薬として、バルドキソロンとHIF-PH阻害薬が紹介された。バルドキソロンは国内第三相試験AYAME、Alport症候群に対するCARDINALトライアルが進行中である。eGFRを上げアルブミン尿を増やすこの薬の長期的な効果を心配する声もある(JASN 2018 29 357)。

 CKDがこの薬でまったく新しいパラダイムに入ることを期待しているが、2022年に終了予定のAYAMEが万一「eGFRによい有意差がありすぎて早期終了」になった場合、喜びつつも慎重に長期データを注視したい。


2. 糖尿病患者とPD


 なぜこのようなトピックが話されたのかと思ったが、韓国はまだPD患者の比率が比較的多い。以前紹介したグラフを見ていただくと、10年前まではHD:PDが3:1くらいですらあった(もっとも、どんどんその差は開いているが)。

 さらに、PD患者の糖尿病には独自の注意点がいくつかある。まず、腹膜透析液に含まれるグルコースを考慮しなければならない(300kcal/d程度は吸収されるという)。それで、グルコース含有の少ない(「生体適合性のよい」とも)透析液も開発されているが、IMPENDIAスタディ(JASN 2013 24 1889)ではHgbA1cは有意に低下したが死亡率は上昇した。除水不十分によるものと考えられており、今後の課題と言える。

 ここで「透析と言えば、HgbA1cよりグリコアルブミン(GA)じゃないの?」、「何で測るにせよ、どこが治療ゴールなの?」という二つの質問が頭に浮かんだ読者もおられるかもしれない(筆者もそうだった)。

 PDでは一般的に血液喪失が少ない一方、透析液と一緒にアルブミンが失われる(DKDで残腎機能があれば尿からも)。HgbA1cを指標にした研究を多く目にするが、近年はGAのほうが正確とする報告(Int J Mol Sci 2016 17 619)もあり、現場も個別に対応したり両方測ったりしているようだった。

 ゴールについては、"vigilant"という言葉が使われていた。これは「ちゃんと見張る」くらいの意味で、インテンシブではないということだ。HgbA1cが8%以上の群で死亡率が高かったデータがいくつかある(Diabetes Care 2014 37 1304)ことと、「燃え尽き糖尿病」になっている患者も多いことがその理由のようだった。


3. CKD-MBDの最新コンセプト


 100枚ちかいスライドで25分のお話をされたので駆け足だったが、一番のメッセージは「栄養から25(OH)ビタミンDを摂取しましょう」だった。25(OH)ビタミンDが足りないと副甲状腺が「ビタミンD飢餓」になり、活性型ビタミンD用量が増えて異所性石灰化などの問題も多くなるので、25(OH)ビタミンを摂取するのがよいという筋だった。

 なお発表者は台湾の方だったが、台湾のような低緯度地域でもビタミンD欠乏は多く、大気汚染も関係しているらしかった(Rev Endocr Metab Disord 2017 18 207)。レクチャ後は「医局のみんなで25(OH)を測ってみたら、みんな低かったんだよ」という小話も聞けた(なお、日本でも2016年から測定可能)。

4. がん診療でみられる腎障害のマネジメント


 抗腫瘍薬に用いられるさまざまな薬と腎障害について述べられた。どんどん新薬がでてくるので把握しにくいが、部位で大別でき(図はKI Reports 2017 2 108)、薬のクラスによってもだいたいどの腎障害が起こるかを予測できるようだった。




 抗血管新生薬のなかでは、bevacizumabが最も早くから高血圧・蛋白尿の合併に気づかれたので研究が進んでおり、病態はTMA(VEGFによる補体制御因子CFHの活性化が抑制され、組織レベルで補体制御が利かなくなる;JCI 2017 127 199)と分かっている(図はJASN 2019 30 187)。眼科での硝子体注射でも血中に移行して腎障害を起こした報告がある(CKJ 2019 12 92)ので要注意だ。




 つづいて、免疫チェックポイント薬についてだった(なお、CTLA4、B7/CD28、PD-1L/PD1のような話はCancer Discov 2018 8 1069が詳しいようだ)。どんどん適応が広がって、移植後の免疫抑制薬使用者にがんが見つかってニボルマブを使うといった場合すらある(NEJM 2017 376 191)。

 腎障害で薬剤を中止するか、ステロイドをつかうかといった常識的なアルゴリズムはある(下図、doi:10.2215/CJN.02340219)ので、あると便利かもしれない。




 他にもCAR T細胞療法による腎障害(CJASN 2018 13 796)、BCL2の特異的阻害薬venetoclaxによるCLLの腫瘍崩壊症候群予防などが紹介されていた。また、内容とは別に、eAJKDやNephron Powerでもお馴染みのKenar D. Jhaveri先生(上記論文のうちいくつかの著者でもある)による、GlomConをイチオシしていた。


 後半へつづく(写真は、韓国で見かけることの多い、カササギ)。





2019/02/16

AKIにおける透析のタイミング

 以前にもこの話題に関しては、腎臓内科が必要とされる時で触れたが少しアップデートした話題もあるので、触れたいなと思う。

 AKIは様々な原因で生じる。そして、原因検査を行いながら原因に応じた治療を行なっていく。

 例えば、嘔吐・下痢を繰り返してAKIになった症例であれば、バイタルを測定し適切な補液を行えば改善する可能性が高い。

 ただ、適切な治療を行なっているにも関わらずAKIの重症度が高かったり、AKI罹患期間が長かったりした場合には透析を必要となる場合が多い。

 AKIに対する薬物治療は、様々なものが試されているが有用なものは出ていない。

 今も、敗血症AKIに対してAlkaline phosphataseやL-カルニチン、入院中のAKIに対してビタミンD、尿毒素除去、ペントキシフィリンなどがon goingで行われている。

 透析時に考えるのは、いつ透析するの?何の透析をすればいいの?かと思う。

 ☆いつ透析?

 これに関しては、現時点では早期にやることの有用性は示されておらず緊急透析のindicationに入る前の段階で透析を行うことが重要になる。

 −例えば、適切な薬物治療を行なっているのに、血清K濃度が6mEq/Lを超えてきたり、著明なアシデミアが進行したり(pH<7.1)、体液過剰が進行し呼吸状態が悪化する場合などがいい例である。

 これに関しての裏付けのtrialは前回も記載したAKIKI trialとELAIN trialがあり、下記の表と前回の話を確認してもらいたい。



 ELAINで早期群の有用性が示されたが、単施設であり目立たないバイアスなどが、過剰に早期群の有用性を示しているのではないかと言われている。

 JAMA2016の早期透析は健康?という論文は面白いので添付しておく。

 2018年にNEJMに敗血症によるAKIに対しての早期透析の有用性についての検証もされている。

 この論文ではフランスの29施設のICUの488人の早期敗血症に重度AKI(RIFLE分類でFailureに入っているもの)を伴う患者に対して行われ、早期群にはAKI後12時間以内、晩期群はAKI後48時間以上して透析を行なったものである。

 晩期群では有意差はなかったが、早期群に比べ高カリウム血症の発生があったり、代謝異常が起きたりなどはあったが、90日死亡率に有意差は認めなかった。




 この話題に関しては、現在STARRT-AKI(NCT2568722)も行われており、今後の検証が待たれる。

 ☆何のmodality?

 これに関しては、腹膜透析は今回は割愛し、IHD(intermittent hemodialysis)、CRRT(continuous renal replacement therapy)、SLED(sustained low-efficiency hemodialysis)に関してどれがいだろうか?ということに関して話していく。

 これは現時点では、どれが有意というものは示されてはいなく、その施設の経験や慣れているものを用いるのがいいのではとされている。


 この分野はおそらく今後も調べられていく分野であり、我々も常にアップデートしていく必要性があるなと感じた。