日本内科学会も無事に終了し、今度は第62回日本腎臓学会の開催を指折り数えておられる読者も多いかもしれない。ちなみに、あと52日である。
今年のテーマは「腎臓学・元年」と改元を意識したものであるが、他国からだとピンと来ないかもしれないので、英語では"Open the Future"。名古屋駅周辺のまさに近未来的な街並みが映し出されたウェブサイトのトップページ(写真)には「あと何日」の表示がないが、海外からの参加者達も、「あと52日寝ると・・」と指折り数えて楽しみにしているに違いない。
あるいは、「もう25日寝て、そのあと27日寝ると・・」と二段階で考えているかもしれない。25日後には、第39回韓国腎臓学会もソウルで開催されるからだ。
筆者は数日前まで知らなかったが、韓国腎臓学会(KSN)は1980年に設立された比較的新しい学会だ。そのミッションのひとつに「南北統一への医療の備え」が挙げられているなど、韓国ならではの特色もある。しかし、おなじ専門分野のプロ集団であるから、親近感のある面も多い。
たとえば、日本の「慢性透析患者の現況」や米国のUSRDSに相当する「わが国の腎代替療法の現況報告(우리나라 신대체 요법의 현황 보고)」があったり、米国の専門医試験対策(Board Review Course and Update)にあたるNephrology Board Review Courseがあったりする。
さらに調べると、腎臓医療を取り巻く状況も似ていることがわかる。たとえば「腎代替療法の現況報告」から抜粋したこのグラフをみてほしい。
英語版のスライドだが、日本の状況に酷似しているので、赤線が血液透析患者なことはたとえ韓国語で書かれていてもわかるだろう。韓国では2017年に血液透析患者が73059人(人口100万人あたり1411人、以下同じ)、腹膜透析患者が6475人(125人)、腎移植患者が19212人(371人)である。
このグラフだけでも、学べることが沢山ある。たとえば、人口が日本の約半分しかない韓国で腎移植患者が年間19212人というのは、日本の1648人(2016年)よりも一桁多い。
韓国と言えばペア移植を世界で最初に開始したことで知られている(Transplant Proc 1999 31 344)。一方日本はABO不適合の生体腎移植の先駆者である。両国の移植件数の差は、ドナー不足に対する異なるアプローチによるものなのか?それとも、政策などその他の要素による違いなのか?
また、これだけ移植件数に差があっても血液透析患者数の増加率が圧倒的に高いのは、現時点では移植候補と考えられないことの多い高齢者(スペインなど、見直している国もある)が増えているからだろうか?それとも、これもまた医療報酬などその他の要因があるのだろうか?
このように、他国をみることは鏡のように自国をみることにもなる。日本からKSNに参加する方は少ないかもしれないので、せっかくの機会に得たことを、少しずつここで報告してゆく予定である。