2018/05/30

いつも悩むタンパク尿について・・・1

 今日はタンパク尿について話そうと思う。

 診療していて悩むのは、

 ①糖尿病性腎症末期のタンパク尿が減らない。。どうしよう。
 ②activeな腎炎がない時にこのタンパク尿を放置していいのか?放置した場合になにか悪いのか?

 などを悩むことが多い。。

 そもそもタンパク尿の程度は直接的な糸球体内圧の変化によって変動すると言われている。なので、我々としては糸球体内圧を減らす治療→タンパク尿の減少につながると考えて治療を行なっている。

 ①に関しては、糖尿病患者に対するタンパク尿の軽減がどこまでの有効性をもたらすかは不明確な部分が多かった。

 1994年の論文では、1型糖尿病の研究であるが、ネフローゼレベルのタンパク尿が出ている症例に対して、タンパク尿を抑えた群は、腎機能悪化の予防と良好な血圧コントロールに繋がったことを示した。

 その後にIDNtrialRENAAL trialのpotshot analysisなどでもタンパク尿の減少→腎予後の改善に繋がっていることを示している。

 では、タンパク尿を減らすために我々ができることは下記の方法がある。

 ①ACE-I や ARB単剤の使用
 ②ACE-I+ARBの使用
 ③ARB+直接レニン阻害薬の使用
 ④選択的ミネラルコルチコイド拮抗薬の使用
 ⑤他の降圧薬の併用療法
 ⑥塩分コントロール
 (+αでペントキシフィリンなど)

 ①に関しては、下図に示すようにACE-IやARBの使用がタンパク尿の軽減に寄与することが示されている。



 また、先に述べたIDN trial(irbesartan:アバプロ)やRENAAL  trial(losartan:ニューロタン)でも示されている。

 ②に関しては、知っておくべきtrialはVA NEPHRON-D studyONTARGET trialである。
結論だけに割愛するが、両方とも併用療法を行い、腎不全や死亡率の点で単剤治療と差は認めなかったが、急性腎不全、低血圧や高カリウム血症の割合は併用療法で増加したことがわかっている。

 併用療法は推奨度は低いと考える。

③ARB+直接レニン阻害薬(ラジレス)である。

 これに関してはAVOID trialで有効性が示されている。ラジレス+ニューロタンの使用で20%以上タンパク尿を低下させた。その際に合併症なども見られることがなかったという。

 しかし、その後のALTITUDE trialで腎機能の保持には働かず、また合併症が優位に多かったという報告がされている。

 なので、これも現時点では推奨度は低い。

 ④選択的ミネラルコルチコイド拮抗薬(セララ)の使用に関しては、長期データに関してはないものの単剤でもタンパク尿を減らしたというデータもあり、またACE-IやARBと併用することでタンパク尿を減らし、腎保護に働かせたというデータも散見されている。
腎機能がある程度維持されているケースに用いているので、高カリウム血症や腎機能が低下した例では注意をする必要がある。

 これに関しては、ケースを選べば推奨度は中等度。

 ⑤他の降圧薬との併用療法では、非ジヒドロピリジン形カルシウム拮抗薬(diltiazem:ヘルベッサー、verapamil:ワソラン)は単剤使用でもタンパク尿の減少をもたらしたという報告もあり、併用でも同様な結果が下図のように示されている。




 色々な機序がいわれているが、マウスの研究では糸球体内圧の低下をもたらし改善させているといわれている。




 ジヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬(amlodipine:アムロジン、nefedipine:アダラートなど)はタンパク尿を増やしたという報告もあれば、変化させないという報告もある。

 推奨度は中等度。

 ⑥塩分制限に関しては、研究は少ないが4g/day未満に塩分摂取を抑えた場合にARBに夜タンパク尿低下作用がしっかりと出たという報告がある。4g/日というと厳しすぎるが、塩分制限が重要であるということは抑えておく必要がある。

 推奨度は中等度〜高度

 今回振り返って見て、タンパク尿を減らすという意味で我々ができることはやはり少ないなと感じる。

 ただ、本当にタンパク尿低下→腎機能悪化予防なのか?ここを次回は少し触れたいないと思う。






2018/05/23

医療にとって大切になる PRO(Patient-Reported Outcome)、PRE(patient-reported experience)

 今回の話題はPRO(Patient-Reported Outcome)やPRE(patient-reported experience)について話そうと思う。

 あまり正直聞きなれないかもしれないし、何故腎臓内科のブログで?と思われるかもしれない。ご存知のように2018年のNephMadnessの優勝はこのPROに関してであった。

 ■PROに関して

 日本語では「患者報告アウトカム」とされ、「患者による症状・医療行為の主観的な評価」のことである。

 例として、82歳の慢性疾患を持っている女性がいるとする。彼女は色々な症状があり、また協力性も低くコミュニケーションも上手に取れず、医療者によっても症状の評価が様々であった。

 こういう例に対してPROM(Patient-Reported Outcome Measures)を用いる。

 PROMは症状や不安やQOLなどを数値化する。例えば、

 ・QOLであればEQ-5DAQoL
 ・症状であれば、疼痛ならNPRS、疲労感ならFSS
 ・うつ症状ならK10PHQ2、不安ならGAD7
 ・機能の評価ならWHODAS2.0ODI
 ・健康関連QOL評価ならSF36

 などで数値化をする。

 ちなみに何故これをするといいかというと①患者、②医療者、③保険などの支払い側にとってメリットがあると言われている。

 ①患者にとっては、先の症例のようなコミュニケーションが困難な人でも訴えの点数化によって患者ニーズの把握に繋がり、また患者の症状をメインとした患者中心の医療を行うことができる。

 ②医療者にとっては患者に出した薬の効果を数値化されることによって評価することができる。それによって不必要な治療を減らして、コストを抑えることができる可能性がある。

 ③支払い側にとっては、この治療行為がしっかりと行えているかの判断に繋がりお金を支払う判断材料になる。

 では、腎臓領域に関してはどうであろう。

 ・Kidney disease Quality of life Short form(KDQOL-36)(36個も質問はあってかなり骨は折れそうである。)

 ・Dialysis Symptom Index(30個で非常に簡潔)

 最近のsystematic reviewでも、KDQOL-36を透析導入前や透析中の患者に使用した方がよく、またESRD-SCLTM(End stage renal disease symptom check list transplantation module)を移植の人に使ったほうがいいとされている。

 ■PREMは何か

 「患者に経験したことを報告してもらうこと」である。例えば、待合での待ち時間は長かったですか?や医師が言ったことをどれくらい理解できましたか?などである。

 このメリットは言うまでもなく、生のfeedbackがもらえるため患者のQOL向上に対してどのように変化をすればいいかを理解できる。

 このPREMの改善→PROMの改善に繋がることも非常に多い。

 腎疾患に関して、これについて述べた論文がある(Nephrology and hypertension)。

 PROMやPREMはまだまだ使用できる場面としては限られてはいるが、今後色々と中心になってくる話題に感じた。







2018/05/18

待てないSMART、SALT-ED 3

 SMART、SALT-EDトライアルはそれぞれICU、非ICU患者を対象におこなわれた。バンダービルド大学病院ERに来て入院になった患者さんのうち、輸液を500mlでもされた人はすべてincludeした(ICUに行ったらSMART、行かなかったらSALT-EDに入れる、一粒で二度美味しい)プラグマティック・スタディだ。

 プラグマティック・スタディなので、ランダム化はクラスター(ICUの種別ごと、月ごと)でおこない、ブラインドはされず、基本的にはICU全体のポリシーとしてすべての患者を含め、同意書も不要だった(これらについては中篇で紹介した)。

 しかし、「脳ICUもあるけど、低張の生理的輸液は脳浮腫を悪くするってSAFEトライアルでわかったでしょ?」と思う人もいるかもしれない(このブログにも書いた)。だから、このスタディでも、脳傷害患者で生理的輸液が相対的禁忌と考えられる場合には医師判断で生理的輸液を避けることができた。

 それと、もうひとつ生理的輸液の相対的禁忌として使用を止める権限が医師に与えられたのが、「高K血症」だ。数字の基準などはなく、完全に自己裁量だ。これについては、脱線(英語でdigress、図)しなければならない。




 たしかに、高K血症でカリウム入りの輸液をいれると何かあったときに寝覚めが悪い。しかし、実際には生理的輸液のK濃度は4mEq/lで、1Lいれても4mEqのカリウムで高K血症になることはない(Anesth Analg 2005 100 1518)。むしろ、カリウムフリーの生理食塩水はCl濃度が高くてSID(AG非開大)アシドーシスを起こすので、カリウムはむしろ上がる傾向にある(Renal Fail 2008 30 535)。

 脱線、終わり。

 さて、SMARTのプライマリ・アウトカムはMAKE(Major Adverse Kidney Event)という、①死亡、②新規の腎代替療法、③持続的な腎機能低下(ベースライン比200%増、ベースラインが不明な場合は人種・性別・年齢から計算されるそれ相応の値)を複合したもの。

 一方SALT-EDのプライマリ・アウトカムはホスピタル・フリー・デイ(来院して28日のうち、入院していなかった期間のこと;入院期間を逆にみたもの)だった。

 で、どうなったか?

 SMARTではMAKEで有意差、SALT-EDではホスピタル・フリー・デイには差がでなかったがMAKEには有意差がでた。




 これは、ちょっとびっくりする結果だ。なぜなら患者が受けた輸液量はSMARTで平均約2L、SALT-EDでは約1L(毎日ではなく、通算!)だったからだ。これが本当なら、

「本当は怖い生理食塩水」
「生食は少しでも身体に悪い」

 といいたくなるほどわずかな量だ。大変だ(写真)。




 もちろん、ブラインドされていないのでバイアスが起こりうるとか、有意差と言ってもわずかだ、とかの検証は必要だ。より慎重な(プラグマティックでない)RCTのPLUSも進行中だし(こちらに紹介した)、それでは別の結果になるかもしれない。

 とはいえ、どうしてこんなことになるのか?生食の何がいけないのか?は、考えなければならない(図)。





 論文では高Cl血症になることと、HCO3-濃度が下がることを示して、塩素イオンの害を示唆している(塩素イオンの害については、こちらも参照)。

 またSPLITのサブ解析では、敗血症患者で生理的輸液が好まれ、心ICUでは生食が好まれている。これらも、前者ではアシドーシスが命取りになる一方、心臓はアルカローシスが嫌い(心臓手術前後にアルカリ化してAKIを予防したら、かえって予後多悪かったという論文は、こちらに紹介)ということかもしれない。

 で、どうしたらいい?生食とはもう、お別れだろうか(写真はT-BOLANの"Bye For Now"、1992年)?ほんとうに、救急外来で1本入れるだけでも、ダメなのだろうか?





 「ダメ」とまではいいにくいけれど、リアルワールドではではどんどんこれから輸液シェアが「新規生理的輸液」に置き換わっていくだろうな、という予感がする。ワーファリンのシェアがDOACによって減っているように。メトフォルミンがGLP-1アナログ、DPP4阻害薬やSGLT2阻害薬に置き換わっていくように。

 それ自体は、悪いことじゃないし、永く使われている独占的な薬に対して、もっとよい薬がないか探してチャレンジしなければ進歩はない。生理食塩水というのは(知りたい方はClin Nutr 2008 27 179を読むといいが)、どうしてこんな風に広まったかが謎な輸液でもあるから、そろそろみんなの魔法が解けても(英語でdisenchanted、写真は同名のブロードウェイミュージカル)いいのかもしれない。
 




2018/05/07

腹膜透析(PD)における悩ましい点 4

 今回は腹膜炎に関しての話をしようと思う。

 腹膜炎は単施設の研究で患者あたり0.06-1.66回起こすという報告がある(PDI 2011)。これは、多施設の研究(PDI 2011)での結果(0.60回/患者)よりも多いが、海外の報告では2人の患者で約1回の腹膜炎を起こすということになる。

 日本では、発症率は低く2016年の報告では0.24回/患者あたりと非常に少ないが、腹膜炎はしっかりと認識しておく必要性がある。

 腹膜透析における腹膜炎は、下記のように定義されている。




 ここで、よく疑問に思うことを掘り下げてみよう。

 1:細胞数のカウントは注液してどのくらいの時間での排液ならいいのか??

 結論から言うと最低1〜2時間の貯留が必要になる。

 貯留時間が短い場合には、細胞数は増えない場合も多いため、好中球の割合が重要になる場合がある。また、患者の症状もしっかりと確認する必要がある。

 2:培養検査やグラム染色で起炎菌出ないと診断しちゃダメなの??

 培養陰性の腹膜炎は20%ほどある。

 そのため、そのことは念頭に置いておく必要がある!これが、今回の文章のキーコンセプト。

 3:患者さんの排液が混濁していて、細胞数は2時間くらいして出るんですけど、治療は待ったほうがいいですか??

 やはり数時間でも遅れると患者状態の悪化につながるリスクがある。

 そのため、排液混濁があり腹膜炎が疑われる時点で初期治療を開始する。初期治療の際にIV(静脈内投与)かIP(腹腔内投与)なのかは施設によって異なるかもしれないが、基本的には初期治療はIVで投与をして入院加療後IP管理にする場合が多いのではないか。

 下記は一つの治療例にはなる。




 4:腹膜炎の治療期間はどのくらいですか??また、カテーテルを抜かなくちゃいけない時は?

 治療期間は起炎菌によって異なる。重症化をしやすい菌を把握しておくと理解がしやすい。黄色ブドウ球菌、腸球菌、緑膿菌は重症化しやすく治療期間も3週間である。緑膿菌は作用機序の異なる2種類の抗生剤を使用することが推奨されている。

 抜去に関しては、治療反応性が悪い場合はまずは抜去の対象と考える必要がある。下記が簡単にまとめたものになる。



 
 細かな抗生剤などの選択や菌の詳細などは割愛する。

 今回、培養陰性の腹膜炎について掘り下げる。

 培養陰性腹膜炎の定義は、先の腹膜炎の定義の中で、培養検査が陰性のものである。
まず、培養陰性の原因として咲いたは検体の採取方法や培養方法が間違っていると言うものである。英国の報告でも10%程度の施設が適切な培養方法を用いていなかったと報告している。
 
 細菌の種類によっても真菌、マイコバクテリウム、レジオネラ、カンピロバクター、ウレアプラズマ、マイコプラズマなどは培養陰性になりうる。

 抗生剤の事前投与や化学性腹膜炎(イコデキストリン(PDI 2003)などによる)も培養陰性の原因になる。

 ISPDでは20%未満に培養陰性腹膜炎の割合をするように推奨している

 そのためには培養の採取方法・培養を行う際の遠心分離後の取り扱いなどに注意する必要がある。

 培養陰性腹膜炎で起炎菌として、非黄色ブドウ球菌のグラム陽性菌が原因として考えられる。そのため、培養して72時間たって陰性であり、患者の状態が改善していれば(G+、G-の両方の治療をしている。)、グラム陽性菌飲みにターゲットを絞る抗生剤に変更し14日間の治療が推奨されている。


PDI 2010より

 では、培養陰性腹膜炎は培養陽性腹膜炎に比べて予後はどうなのか?

 これに関しては、様々な報告がありオーストラリアの435人の報告では、培養陰性の方が抗生剤の反応性、入院のリスク低下、カテーテル抜去率の低下、死亡率の低下に寄与していた。

 同様にイランの1500人の大規模な報告では、6年と言う長期で見た場合に培養陰性腹膜炎の方が死亡率や腹膜炎離脱が低かったと言う報告がある。




 まずは、培養陰性腹膜炎を見たときには、検査方法が間違っていないかを再確認して、また予後は比較的いいことも念頭に入れておく。






2018/05/02

腹膜透析(PD)における悩ましい点 3

 今回は腹膜透析で常に難しいなと感じる出口部感染と腹膜炎の話題に触れようと思う。今回の投稿では出口部感染とトンネル感染。

 まず、世界的にはISPDのガイドラインは2016年のものが出ている(日本語版も出ている)。

 この世界的なガイドラインは1983年に出され、その後1989年、1993年、1996年、2000年、2005年、2010年と改定されている。

 出口部感染に関しては、日常の腹膜透析の外来を行っていると遭遇する場面は非常に多い。

 出口部感染で重要なことは

 1:予防(消毒など)
 2:評価
 3:治療

 である。

 1.予防

 一番大切なのはPD管理の教育である。PD導入時の教育と教育が不十分な場合には再教育を行う必要性がある。特に手指消毒は非常に重要である(RCTでの証明はない)。

 出口部のケアに関しては、現時点では優れた洗浄剤の指摘はないが、ポピドンヨード群で出口部感染が減少したという報告もあるが、強く支持できるだけのエビデンスに至っていない。

 S. aureus(黄色ブドウ球菌)による出口部感染は頻度が多く、腹膜炎や腹膜透析の中断に繋がる。ムピロシン軟膏の塗布は多くの報告で有用性が示されている。

 2.評価

 出口部感染はカテーテル出口部や周囲の皮膚発赤の有無にかかわらず膿性の滲出物があることで診断される。


近森病院写真より引用(http://www.chikamori.com/page1011.html)

 トンネル感染は皮下トンネル部に発赤・腫脹・圧痛・硬結が認められる場合に診断される。通常は出口部感染を伴っている場合が多い。

 出口部感染は、そのため膿性滲出物の所見が重要になる。これがなくて培養だけ取ってみたら陽性だった場合は、おそらくは出口部の所にコロニー形成しており、感染とは評価し難い。

 また、出口部感染のアルゴリズムを下記に示す。





 ここで、一つ悩ましいのはカテーテル感染を疑って超音波検査を行うかであるが、超音波検査の適応としては

 ・トンネル感染が疑われる場合の初期評価
 ・トンネル感染の臨床所見が認められない出口部感染の初期評価(特に黄色ブドウ球菌)
 ・抗菌薬投与後の出口部感染およびトンネル感染の経過フォロー目的
 ・再燃性の腹膜炎のエピソードがある場合

 などが挙げられる。

 超音波が容易に利用できる場合には、一度トンネル感染の有無は見ておくのがいいと考える。

 3.治療
  
 治療に関しては経口抗菌薬が基本となり、期間は緑膿菌によるものを除き、最低2週間の治療期間が必要である。緑膿菌に関しては最低3週間の治療期間が必要である。

 今回詳細な抗菌薬などや菌については触れないが、グラム染色を行い起因菌がグラム陽性菌か陰性菌かを確認することは、治療薬の選択で非常に重要である。


http://www.rouringi.jpn.org/gakujutu/biseibutsu03.html より引用


 また、難治性(3週間の抗生剤投与でも治療が無効)の出口部感染やトンネル感染の場合には、カテーテル抜去・異なる出口部での再挿入が推奨されていることには留意する必要がある。

 次回は、腹膜炎の話を少し触れたい。その中でも培養陰性の腹膜炎について触れようと思う。






2018/05/01

腹膜透析に対する悩ましい点 2

 新年度も腹膜透析の話題から始めようと思う。4月はバタバタしてしまい、投稿できずに申し訳ない。
 
 前回、体液のコントロールの難しさをお話しした。

 今回は溶質のコントロールの難しさを考えてみる。

 溶質の除去として腹膜の性質を知っておく必要性がある。

 腹膜透析は透析液を腹膜に入れる。それがどのようにして溶質を除去しているのか?つまり、腹膜透析液と血管のなかの溶質がどのようにして交換をしているのか?である。

 重要な因子としては毛細血管壁、間質、中皮細胞がある。


京阪PDネットワークより引用(https://www7.kmu.ac.jp/keihanpd/pd_basic_knowledge/4-4/


 このなかで最も重要なのが毛細血管壁である。毛細血管壁は水と大分子量の溶質の障壁として働いている。

 間質も重要であり、小分子量の溶質の30%相当の障壁になると言われている。

 最も重要な毛細血管壁の部分には3つの細孔(pore)がある。

 1. Large pore:数は少ない。大きな分子の通過や水に寄与
 2. Small pore:数はたくさん。小分子や水の移動に寄与
 3. Ultrasmall pore:水の移動のみ(Aquaporin-1と呼ばれる水チャネルがある)





 腹膜の溶質除去に関わる因子としては

 ・有効腹膜表面積:有効腹膜毛細血管表面積(有効灌流された毛細血管の数)
 ・毛細血管:壁の透過性
 ・間質透過性
 ・腹膜荷電
 ・腹膜透析液と中皮細胞間の拡散距離

 などがある。

 溶質で小分子(BUN、Cr)の除去の場合

 拡散(Diffusion)により除去される:そのため透析液濃度、腹膜透過性、有効腹膜表面積によって決定される。


http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/blood/pamph59.html より引用


 溶質で大分子(タンパクなど)の除去の場合

 拡散(Diffusion)と対流(Convection)の両方の働きによるが、基本的には移動速度は分子量が大きいほど移動速度は遅い。

 小分子量物質の腹膜移送率と限外濾過量を評価する目的で腹膜平衡試験(PET:Peritoneal Equilibration Test)が行われる。PET検査は、

 ・D/P CrでCr(溶質・尿毒素)の透析液への除去を評価する。
 ・D/D0 Glucose で血液内への再吸収を評価している。




 PET検査のやり方に関しては下記になる:


京阪PDネットワークより引用(https://www7.kmu.ac.jp/keihanpd/pd_basic_knowledge/4-4/


 注意点として、用いる液は主には2.5%ブドウ糖液を用いる。患者さんには前日からのプライミングを依頼する。

 かなり患者にとっても時間的な制約も出る検査であり、施設によって異なるが年に1-2回程度で行う場合が多い。

 PET検査に関しては、ブドウ糖が腹膜透析から血液に早く移行する場合にはHighになり、移行が遅い場合にはlowになる。

 移行が早いと早期に浸透圧勾配がなくなり、除水ができなくなるため透析液の貯留時間は短くすべきである。下記がまとめた表になる。



京阪PDネットワークより引用(https://www7.kmu.ac.jp/keihanpd/pd_basic_knowledge/4-4/


 溶質除去の効率としてKt/V ureaが用いられており、ISPDガイドラインでも1.7以上が推奨されている。これは、先行研究で1.6-1.7未満では死亡率が上昇したという報告があるのが一因である(PDI 2004

 では、このKt/Vが患者の死亡率にどこまで直結するかについては、下記の2つの研究が重要であるが、結論としては小分子の除去とアウトカムの直結はなかった。
CANUSA study(2001年 JASN:カナダ・米国での研究)




 ADEMIX study(2002年 JASN:メキシコでの研究)




 なので、現時点ではKt/Vに関しては、適切な物質除去が行えているかのマーカーになっているのみであると報告もされている(2016 Seminar in dialysis)。

 色々と内容が飛び飛びになってわかりづらいと思うが、次回も少し腹膜透析について続けようと思う。