2018/03/31

腹膜透析における悩ましい点 ①

今年度最後のアップはPDに関して触れようと思う。

日本において腹膜透析の普及率は2016年の報告で血液透析との併用療法を含めても1万人もいない(2016年度 調査報告より)。割合としても3%未満と低い。

では、なぜ普及がしないのであろうか?腎臓内科専門医の中でも自分が慣れていない場合には患者に療法選択をしない場合も多いと考える。では、腹膜透析が難しいと感じる理由には様々あるが、
①体液量管理
②溶質除去の管理
③腹膜炎
④カテーテル不全
などが挙げられる。

今回、少しこの点も紐解けていけたらと考える。

①体液量管理
腹膜透析患者の体液管理は非常に難しい。
体液量評価の方法も様々な方法が開発されている(バイオインピーダンス、ECW/TBW比、IVCの計測、胸部レントゲンでのCTR)ので、それらを駆使して検査をする必要がある。

◇では、体液量多いのはまずいのか?
これに関しては、NDT2014PLoS One2013が非常にキーとなる。
これらの論文は単施設の研究であるが、PD患者の体液量増加は心血管死亡率の増加、高血圧のコントロール不良、睡眠時無呼吸症候群、入院期間の延長、QOL低下につながることが示唆されている。

◇体液量は低い方がいいのか?
体液量低下に関しては炎症の惹起、低アルブミン血症への惹起、MIA(malnutrition-inflammation atherosclerosis)症候群からの心血管疾患につながる。

なので、体液バランスに関しては適切が一番いい。

ただ、前の話に戻るが体液の評価は難しく、臨床的な評価のみとバイオインピーダンス法を用いた体液評価の比較でバイオインピーダンス法で測るとボリューム過多と診断される割合が25−60%増加すると報告(PLosOne 2013)されている。


他の研究(NDT2012)でも肺エコー検査で臨床所見上は高血圧などもなく体液過多の所見のない患者が36%も体液過多と診断されている。


◇なぜこんなに体液過多がいるのか?
多くの要因があるが、一つの報告だとHD患者に比べて口渇感が強く、また飲水を多く飲む傾向にある。これは、PD患者で使用する透析液の糖が一因ではないかと言われている。
透析液の糖により高血糖を来し、口渇感がわき飲水量が多くなると考えられている(NDT2004)。また、HDに比べて常に口うるさく言われることもないのも一因ではないかと言われている(PD患者の外来通院は大抵は月1回程度であるため)。
PD患者の体液の評価における尿量の判断も米国とヨーロッパでは真逆である。
米国は尿量は体液量と関連性が強いといっているが、ヨーロッパでは強くないと言っている。ここもまだわかっていないところである。

◇体液過多に関わる因子としては
常日頃外来の患者にも話す機会が多いと考えるが、一番重要なのは塩分の制限である。なので、ここは一番気をつける必要がある。下の図でも示すように体液過多の予防で気をつけることは、塩分制限・栄養をしっかりとる・動脈硬化の予防・全身の炎症を防ぐことが気をつけられることである。


◇透析の種類で何か変わるか?
腹膜透析には大きく分けるとCAPD(手動で透析を行う方法)とAPD(機械で透析を行う方法)がある。また、透析液としてもブドウ糖液とイコデストリン液がある。
まず、透析液に関してはGDP(ブドウ糖分解産物)が一つの話題である。このGDPが高いと腹膜劣化性につながるので、高濃度のブドウ糖液は使用しないほうがいいとも言われてはいる。Cochrane reviewでGDP産生が低い透析液を12か月以上しようしたほうが、腎機能の保全や尿量の増加につながったという報告が出てはいるが、これに関しては反対の意見も多い。GDP産生が低い透析液を使用した場合に除水効率が下がり体液過多になる報告がある(PDI 2016)。残存腎機能が低下してきて、除水効率も下がってきた場合にイコデキストリンを使用する場面が多く、これは前述のCochraaneの報告でも有用性が示唆されている。

では、APDとCAPDでの違いに関しては、観察研究ではあるが体重コントロールと塩分除去に差はないと言われている。

なので、結論としてはPDでの体液コントロールは臨床的な評価だけでは難しく、様々な方法を駆使しながら行う必要がある。
また、体液過剰を防ぐために塩分の制限・利尿薬の管理を行うことが重要である。
透析方法に関してはPETでhighの症例であれば、APDで頻回交換が最適であるしPETでlowであればCAPDでゆっくり交換が適切である。

2018/03/23

低ナトリウム血症を考える③

前回CSWSの話をしたが、尿中Naが高い場合にCSWSとSIADHを比較して多いのはSIADHである。

あるケースシリーズで、187人の神経外科領域の低ナトリウム血症の原因を検証した場合であるが、7人がCSWSで123人がSIADHであったという報告がある。
なので、脳外科手術後低ナトリウム血症≠CSWSは非常に重要である。

では、SIADHとはどんな病態であろう?
まず、ADHに関しては身体にとっては浸透圧変化に対しての重要な調整因子であり、また循環血液量の変化に対しても重要な調整因子である。調整因子というのは、変化に対して調整しようと働くホルモンであるということである。
下図は低ナトリウム血症のキーな図である。


まず、低ナトリウム血症は基本的には水の異常(自由水過多=低ナトリウム血症、自由水不足=高ナトリウム血症)である。水の異常は浸透圧の異常と相関する。なので、低ナトリウム血症を見た際には、まずは浸透圧の異常は大丈夫かな?と尿中浸透圧を見る。
ここで、ADHは浸透圧(Osmo)と循環血液量(volume)の両方の調整因子であるので、もし浸透圧系の異常があった場合に、volume系はどうなのだろう?と考えて、尿中Naの変化をみる。このアルゴリズムが今のガイドラインの診断アルゴリズムである。

話は脱線してしまったが、SIADHはADHが浸透圧変化やvolume変化に関係なく不適切に分泌する疾患である。
不適切に分泌する理由としては、疼痛や嘔気に伴うもの、小細胞肺癌に伴うものなど様々な理由がある。


また、ADHの血中濃度測定に関しては、参考程度にはなるが必ずしも必要はないということは認識する必要がある。

SIAHDでは、
・有効浸透圧の低下(275mOsm/kg・H2O)
・血清浸透圧が低い割には尿の浸透圧が高張(Uosm>100mOsm/kg・H2O)
・臨床的に循環血液量で脱水所見(起立性低血圧・頻脈・皮膚の乾燥・口腔内乾燥)や過剰所見(腹水・浮腫)は乏しく、正常である。
・正常の塩分摂取・水分摂取の状況でも尿中Naの上昇がある(UNa>20-30mmol/L)
・甲状腺機能低下症や副腎不全などの似たような病態を取るものが否定されている。
・腎機能は正常、利尿剤の使用(特にサイアザイド)はない。

ことが診断には重要である。
治療は
・基本的に重篤な症状(痙攣や意識障害など)のある場合には、高張食塩水を使用
その際には、体重あたりの量を1時間で投与をすると約1mmol/LのNaの上昇が見込める。
・飲水制限は一番推奨度は高い:尿量よりも500mL程度少ないくらいの飲水制限が一つ推奨されている。
・トルバプタンも一つの治療のオプションである。バプタンに関しては自由水の排泄からの急速なNaの補正がかかり、これが患者のアウトカムをどこまで改善させたかは現時点では定かではなく、これが米国と欧州のSIADHに対するバプタン使用の差にもなっている。
・尿素の投与も一つの選択で、急速な上昇はないが飲むのが不快で非常に苦みがある。
・デメクロサイクリンも一つのオプションであり、腎性尿崩症を生じうる。


今回の教訓としては、CSWSが状況的に(脳外科手術後など)で疑われたとしても、SIADHは非常に多いので注意をするという事である!!


下の図は飲水制限をしている人の絵である。









2018/03/22

長期留置カテーテル

 日本のブラッドアクセスはどういう割合なのだろうか?わが国の透析資料は透析学会が毎年発表する『わが国の慢性透析療法の現況』が詳しい。しかしブラッドアクセスの割合は、そのハイライトである「図説」には載っておらず、詳細なデータ一覧にも見つけられなかった。

 別の論文(透析会誌 2011 44 855)では2008 年のデータが載っており、以下のようだった。

内シャント(AVF) 89.7%
人工血管使用の内シャント(AVG) 7.1%
動脈表在化 1.8%
そのほか動脈直接穿刺 0.1% 
長期植え込み型静脈カテーテル 0.5%
一時的静脈カテーテル 0.5%
単針透析 0.2%
その他 0.1%

 2013年にでた透析の国際比較DOPPSの論文(J Vasc Access 2013 14 264)でも、「透析カテーテルの割合は日本で1%」と書いてある。日本は「透析といえば内シャント」として国内外で認知されている感がある。

 しかし、もし2018年版の数字があれば、長期留置カテーテル使用は上記より多いのではないかと思う。カテーテルを入れられる施設は限られているが、入れられる施設では新規導入患者さんの4人に1人くらいが結局長期留置カテーテルになっている印象すらある(これらには出典はありません)。

 フィスチュラ・ファーストといっても長期留置カテーテルが必要な患者さんはいるし、腎臓内科医として入れ方くらいは知っておかねばならない(私は最近まで知らなかった)。そこで、右内頚静脈用を例に概略を簡単に説明する。

 まず右内頚静脈に穿刺してガイドワイヤー(紫線)を挿入するところまでは一緒だ。このとき、透視を用いて先端を下大静脈に落としておくと、その後の操作で抜けたり心室に当たったりすることを防げる。




 そのうえで、カテーテルの血管外(皮下)の部分が収まるいくつかの工夫をする。一つ目は、カーブした部分をいれるため穿刺部のたかさで水平に2cm程度皮切(赤線)して皮下組織をはがす。

 もう一つ目は皮下トンネルで、鎖骨の下に出口部を5mm程度皮切(赤線)して、頚部に皮切した部分の外側にかけて皮下にトンネルをつくる。出口部の場所は、体表にカテーテルを置いて(必要なら透視を使って)決める。




 そのあと、トンネラーをカテの先端につけ、カテごと出口部からカテーテルを頚部に皮切したところまで通す。最近はカテーテルのトンネラー(写真)が鋭利なので、とくに皮下組織が薄く柔らかい場合にはトンネルを一生懸命掘らなくてもよいことが多い。



 ここまでくれば、あとはカテーテルを静脈内に挿入する作業だ。ワイヤーにダイレイターを通し、ダイレイターの先端がSVCにあることを確認したら、外筒(グリーン)を残して内筒(ピンク)をガイドワイヤーとともに抜去する(逆血防止弁がない場合、逆血に注意する)。




 そして、ダイレイターの外筒にカテーテルを挿入し、透視で先端が適切な場所にあることを確認し、閉創。脱血がスムースなことを確認し内腔をヘパリンで充填する、胸部X線で合併症の有無を確認する、などは短期用と一緒だ。

 テクニック的な部分は動画サイトなども参照してほしいし、カテーテルの種類などによるちょっとした違いなどは各施設のやり方やメーカー添付文書などに従ってほしい。「トンネルカテーテルってどうやっていれるの?」という原理だけでも伝わり、光が差せばと思う。




2018/03/20

フィスチュラ・ファースト 3

 フィスチュラ・ファースト・ブレイクスルー・イニシアティブがおこなわれて、カテーテルを減らすことをより意識したフィスチュラ・ファースト・カテーテル・ラスト(FFCL)イニシアティブが始められた一方で、カテーテルに対する内シャントの優位性を検証する試みも行なわれた。

 そのひとつが昨年JASNに発表されたものだ(JASN 2017 28 645)。といってもカテーテルと内シャントで前向きRCTを行なうことは難しいから、この論文もUSRDSデータベースを用いた自然実験になっている。彼らが注目したのは、内シャントを造設されたがカテーテルで透析導入となった患者群(AVF-CVC)だった。

 AVF-CVC群と、内シャント造設なくカテーテルで導入された患者群(CVC)では、カテーテルで透析しているという点は同じだ。しかし、下図のようにAVF-CVC群の生存率(IIの線)はCVC群(IIIの線)よりもよく、最初から内シャントで導入になった患者群(AVF、Iの線)のそれに近かった。




 この論文は、FFCLのメリットを興味深い形で示すことになった。内シャントをつくっただけで身体にいいということは、もちろんない。内シャントを導入前につくった患者さんはそれだけ元気で、よりよいケア(丁寧なフォロー、適切なタイミングでの手術)を受けているということだ。こうした「患者選択」の要素が、FFCLによるベネフィットの2/3以上を説明していると、この論文は言う。

 もちろんこれだけで「So the first shall be the last, and the last first(マタイの福音書20章16節)」とはならないし、FFCLイニシアティブは現在も進行中だ。

 ただ、大事なことは「末期腎不全へのトランジションを適切に行い、その患者ごとに最適な治療モダリティー、最適なブラッドアクセスを提供することで、これを「ペイシャント・ファースト」と言ったりもする(Semin Dial 2012 25 640、ここでは高齢者に最適なブラッドアクセスが内シャントに限らないという文脈で)。

 次回は、日本における長期留置透析カテーテルについて触れようと思う(タイトルは変わります)。





低ナトリウム血症を考える②

今回は悩ましいCSWS(cerebral salt wasting syndrome)とSIADHについて簡単に記載をしようと思う。

この2つを分ける理由はやはり治療をしたとしても、それがもう一方の疾患だった場合に低ナトリウム血症を悪化させるためである。

★飲水制限:SIADHの治療であるが、CSWSの患者では低ナトリウム血症進行
★生理食塩水投与:CSWSの治療であるが、SIADHの患者では低ナトリウム血症進行

■CSWSに関して
やはり軸は脳と腎臓になる。
つまり、くも膜下出血や外傷や外科手術などの脳のダメージによって引き起こされる場合が多い。
神経ホルモンの変化が最終的に尿細管に変化を引き起こし低ナトリウムを引き起こす。

ちなみに、CSWSはSIADHよりも7年前に報告されているらしいが、広く認知されるようになったのは1980年の論文からのようだ。

CSWSは通常のNa異常とは異なると考える必要がある。
低ナトリウム血症は基本的には水の異常である。(Naの異常は浮腫や循環血液量減少など)
しかし、CSWSでは明らかに尿からの塩類喪失でありNaの異常になる。なので、治療はNaを補充する生理食塩水である。
尿からのNa喪失であるが多い症例では600mmol/day(35g/dayの塩)というから驚きである。

注目をされた1980年の論文では、12人のケースシリーズで神経手術前後のvolumeの状態をみて、ナトリウムの数値を見て、10人に中等度低ナトリウム血症が発生し、しかも循環血液量は減少していたというものである。

なので、①尿からNa排泄増加、②循環血液量減少の2つがあれば、CSWSの報告などに用いていたが、循環血液量の評価は非常に難しく、SIADHも尿中Na多くなるので、判断に迷う場合が今でも多い。
たとえば、循環血液量評価の点で中心静脈圧(CVP)などは心機能は正常で、頭部外傷のある若い人では正常であってもCVPは低く出やすいので、CVPの測定は循環血漿量の評価には向いていない。

循環血液量減少時は通常は尿酸や尿素の尿細管での再吸収が増加する。
しかし、CSWSではおそらくはNa再吸収を阻害する因子が、同じように尿酸や尿素の再吸収を阻害するため尿中に漏れる。たとえ、低ナトリウム血症を補正してもFEureaは増加したままであるのは非常に面白い。
下の図は2009年のCJASNの論文のグラフであるが非常にわかりやすい。
これは、尿中の浸透圧の変化をみていて生理食塩水の投与での両方の変化を見ている。




この経過からもわかるように、CSWSもSIADHも尿中Naは出ていて、かつ循環血液量の評価は非常に難しく、最初に患者さんをみた段階での即座の判断は非常に難しいということは把握しておくべきである。
その中で、暫定診断で治療をした時に患者さんがどちらの方向にいくのか?をみて判断する事が重要である。

そこで、CSWSと診断した時にん?この人頭の病変ないな?と言った時にRSWS(renal salt wasting syndrome)はどうかなというのが一つ考えると思う。
これに関してとSIADHに関しては、次回お話しをしようかなと思う。



2018/03/19

低ナトリウム血症をもう一度まとめる ①

低ナトリウム血症に関しては、以前にも様々書いている(Reset Osmostat, 尿素投与, Free water clearanceなど)
しかし、振り返ってみると、majorな項目はそこまで記載していなかった。

今回、Neph maddness 2018(腎臓の分野で何が重要だったかをみるもの)で低ナトリウム血症が取り上げられていたので、少し触れたいなと思う。

まず、低ナトリウム血症のガイドラインとしては、欧州のガイドライン米国のガイドラインがある。
主に用いられるのは、欧州のガイドラインかもしれないがしっかりと両者を理解しておくことは重要である。
Nephmadnessの図に非常にわかりやすい図があったので添付する。
Nephmadness 2018より

基本は患者の重症度の把握を行う。
→緊急性の対応が必要であれば高張食塩水投与を行う(ヨーロッパガイドラインでは5mEq/Lあげる、米国ガイドラインでは4-6mEq/Lあげる)。

高張食塩水の作り方は生理食塩水500mlから100ml抜き、そこに10%生理食塩水を120ml追加することで作成できる。

治療においては、やはりover correction(過補正)を防ぐことが一番である。
そのため厳密な尿量管理やNa管理が必要となる。とくに、その中でODS(浸透圧性脱髄症候群)を発生するリスクが高い患者(重症低ナトリウム血症、低カリウム血症、肝硬変、低栄養、アルコール依存)は補正のスピードを通常よりもゆっくりとしたほうがいい。

もし、過補正になった場合には再誘導する必要がある。
Neph madness2018より
図は非常にわかりやすく、通常であれば24時間以内に8mEq/L以下にする。しかし、上記のようなリスクが高ければ6mEq/L以下にする必要がある。

次回はCSWSとかに関してふれたい。
頑張れ低ナトリウム血症!!

2018/03/18

腎臓内科にとっての糖尿病③ :メトホルミン製剤の使用について考える。

では、①.②で話した話題に関して、今回腎不全患者のメトホルミン投与に関しての論文が出たので紹介する(Diabetes Care 2018)。

まず、2016年4月にメトホルミンとCKDに関して、FDAが勧告をだし、

・メトホルミン投与がeGFR<30mL/min/1.73m2の時は推奨されていない

・eGFRが、30-45 mL/min/1.73m2の時はメトホルミン開始は推奨されていない

・メトホルミン内服者が
 >eGFR<45mL/min/1.73m2になった場合:利益と不利益を天秤にかけて判断。
 >eGFR<30mL/min/1.73m2になった場合:メトホルミン内服は中止する。

という推奨になっている。

メトホルミンは1977年にPhenforminの投与が開始となり、メトホルミンは乳酸アシドーシスを危惧されながらもCKD患者さんに1944年に承認された。

まず、メトホルミンのCKDに対する研究を見ていくと
まずは、2017年度のAnnals of Internal Medicineのsystematic reviewがある。
詳細に関しては割愛はするが、moderateのCKD(eGFR30-60まで)に対するもので、メトホルミンの死亡率低下効果が示されている。この研究では、6つの研究で、うち1つは45未満のeGFRを含んでいる。
メトホルミンのCKDに対するSystematic review
上記のFDAの勧告に対してメトホルミン投与はCKD3-4の人にどうなのか?を研究したのが今回の論文である。
本題のDiabetes careの研究では、3つの研究が行われ、

1:CKDステージ1-5のメトホルミン投与量の研究:CKDステージには関係なく、メトホルミン投与量を下記のように増量していく。


2:CKDstage3A,3B,4に対する4か月のメトホルミン投与治療:下図のようなCKDstageによって決まった投与量を行い、血清メトホルミン濃度・乳酸HbA1c濃度測定

3:CKDstage3A,3B,4へのメトホルミン単回投与(500mgの投与)での薬物動態(0,0.5hr,1hr,2hr,4hr,6hr,8hr,12hr,24hrでフォロー)。

ものが行われた。

1では、下図のようにCKDのステージとメトホルミンの血中濃度には関連性があった。
2では、下図のようにメトホルミン血中濃度はFDA推奨の5mg/L以下に抑えられていた。

また、血中乳酸濃度も下図のようになっており、乳酸値2.5mmol/Lを超えるものもいたが、統計学的な有意差は認められていない。

3では、メトホルミンの血中濃度にCKDstageがかわっても統計学的な有意差は認めなかった。

まとめると、CKDのstageがあがればメトホルミンの血中濃度はあがるが、量をまもればとくに乳酸アシドーシスなどの発生は高くない(CKDstage4であっても)。

推奨として
CKDstage3では1.5g/日のメトホルミン投与を行い、腎機能の推移をしっかりと行い、乳酸値が5mmol/lを超えるようであれば中止し、2.5mmol/l以上であれば注意深く観察する。

CKDstage4に関しては、今後の前向き検討を行い証明していく必要はある。

この研究自体は単施設であるので、今後多施設や人種なども加味した研究をおこなえればいいなと感じる。
ただ、メトホルミンは非常に重要な薬であり、腎不全であってもしっかりと使えるようになればいいと考える。

2018/03/15

フィスチュラ・ファースト 2

   米国の透析は1972年に公的医療Medicare、Medicaidでカバーされるようになった(別ブログでも紹介した)。フィスチュラ・ファースト・ブレイクスルー・イニシアティブ(FFBI)は、2003年にそのCMS(Center for Medicare and Medicaid Services)が始めた運動だ。その翌年には18あるESRD Network(すべての透析施設はこのどれかに属している)すべてが採用し、一気に広がった。

 これは内シャントで透析をうける患者さんの割合をふやそうという運動であるが、この割合がたかい透析施設にインセンティブ(ひくい透析施設には逆にディスインセンティブ)が働く仕組みだったこともあり、内シャントの割合は2003年の32%(導入したての方もすっとしている方も含めたすべての透析患者さんのなかでの割合)から2011年には60%台にカイゼンした(実際、66%という目標は欧州やアジア諸国を意識したものだ)。

 目標をたてて一斉に達成するのは米国のすごいところだが、もうひとつすごいのは、やったあとに検証して、修正したり改良したりところだと思う。下図(Semin Dial 2012 25 303)をみてすぐわかるのは、フィスチュラ・ファーストが達成したのは「人工血管グラフト(赤線)をやめて内シャント(茶色)にした」ことが大部分で、カテーテル(灰色線)は余り減っていないことだ。




 そこで、2014年にはカテーテルを減らそうと、FFBIがフィスチュラ・ファースト・カテーテル・ラスト(FFCL)に改められた。内シャントが作れるはずの人をちゃんと同定しよう、導入前にタイミングよく腎臓内科医に紹介してアクセスを確立しよう、などの掛け声のほか、カテーテル患者さんの割合が少ない透析施設にインセンティブがつくようにもなった(Five Star Rating systemという)。

 その後どうなったか?つづく(写真はガスコーニュ地方に古代から伝わる闘牛の一種、Course landaiseの全仏連盟FFCL)。



2018/03/09

フィスチュラ・ファースト 1

 日本と米国の透析医療では無数に違いがあるが、そのひとつがバスキュラーアクセスだ。透析に関する資料は米国だとUSRDSが便利であるが、2017年の年次報告には次のようなことが書いてある(2015年のデータ)。

・透析導入患者の80%がカテーテルで透析をはじめた
・1年後には80%が内シャント(AVF)ないし人工血管(AVG)を用いられた
・血液透析患者全体では、62%が内シャントを用いていた

 バスキュラーアクセスの動向は、下図のようになっている(青線が内シャント)。



 2000年代初頭から内シャント透析患者さんの割合が増えているが、これは意図的なものだ。この頃から米国では、フィスチュラ・ファースト・ブレイクスルー・イニシアティブ(フィスチュラとは動静脈瘻、つまり内シャントのこと)いうカッコいい名前のキャンペーンが張られた。

 このあと2-3回にわけて、フィスチュラ・ファーストと言ういわば医療における「カイゼン」の歴史を振り返り、高齢化などで確実にカテーテル患者が増えていると思われる日本の動向を探り、最後に長期留置透析カテーテルについて基本的なことを押さえてみようと思う。

(写真は1940年に起こったアメリカ・ファースト運動の集会。欧州の戦争に介入しない孤立主義を訴えたが、真珠湾攻撃の4日後に解散した)