2018/03/20

低ナトリウム血症を考える②

今回は悩ましいCSWS(cerebral salt wasting syndrome)とSIADHについて簡単に記載をしようと思う。

この2つを分ける理由はやはり治療をしたとしても、それがもう一方の疾患だった場合に低ナトリウム血症を悪化させるためである。

★飲水制限:SIADHの治療であるが、CSWSの患者では低ナトリウム血症進行
★生理食塩水投与:CSWSの治療であるが、SIADHの患者では低ナトリウム血症進行

■CSWSに関して
やはり軸は脳と腎臓になる。
つまり、くも膜下出血や外傷や外科手術などの脳のダメージによって引き起こされる場合が多い。
神経ホルモンの変化が最終的に尿細管に変化を引き起こし低ナトリウムを引き起こす。

ちなみに、CSWSはSIADHよりも7年前に報告されているらしいが、広く認知されるようになったのは1980年の論文からのようだ。

CSWSは通常のNa異常とは異なると考える必要がある。
低ナトリウム血症は基本的には水の異常である。(Naの異常は浮腫や循環血液量減少など)
しかし、CSWSでは明らかに尿からの塩類喪失でありNaの異常になる。なので、治療はNaを補充する生理食塩水である。
尿からのNa喪失であるが多い症例では600mmol/day(35g/dayの塩)というから驚きである。

注目をされた1980年の論文では、12人のケースシリーズで神経手術前後のvolumeの状態をみて、ナトリウムの数値を見て、10人に中等度低ナトリウム血症が発生し、しかも循環血液量は減少していたというものである。

なので、①尿からNa排泄増加、②循環血液量減少の2つがあれば、CSWSの報告などに用いていたが、循環血液量の評価は非常に難しく、SIADHも尿中Na多くなるので、判断に迷う場合が今でも多い。
たとえば、循環血液量評価の点で中心静脈圧(CVP)などは心機能は正常で、頭部外傷のある若い人では正常であってもCVPは低く出やすいので、CVPの測定は循環血漿量の評価には向いていない。

循環血液量減少時は通常は尿酸や尿素の尿細管での再吸収が増加する。
しかし、CSWSではおそらくはNa再吸収を阻害する因子が、同じように尿酸や尿素の再吸収を阻害するため尿中に漏れる。たとえ、低ナトリウム血症を補正してもFEureaは増加したままであるのは非常に面白い。
下の図は2009年のCJASNの論文のグラフであるが非常にわかりやすい。
これは、尿中の浸透圧の変化をみていて生理食塩水の投与での両方の変化を見ている。




この経過からもわかるように、CSWSもSIADHも尿中Naは出ていて、かつ循環血液量の評価は非常に難しく、最初に患者さんをみた段階での即座の判断は非常に難しいということは把握しておくべきである。
その中で、暫定診断で治療をした時に患者さんがどちらの方向にいくのか?をみて判断する事が重要である。

そこで、CSWSと診断した時にん?この人頭の病変ないな?と言った時にRSWS(renal salt wasting syndrome)はどうかなというのが一つ考えると思う。
これに関してとSIADHに関しては、次回お話しをしようかなと思う。