2010/10/03

pulsating

 中心静脈ラインを挿入するとき、静脈と確信して血管に針を入れた(超音波ガイド下)のにそこから流れてくる血液が拍動しているという事態が二回もあった。動脈を穿刺したのかと困惑した。並走する動脈の拍動が静脈に伝わることはあるが、そのレベル以上に拍動している。だが見た目はあきらかに静脈血で、血液ガス分析でも静脈血だった。一人目の患者さんは重度肝不全、二人目の患者さんは重度心不全があった。静脈圧が普通の人より大分高いので拍動していたのだろうと結論した。

2010/10/02

unravel

 手技中にunravelという単語を聞いた。ほどく(disentangle)が原義、転じて解明する(resolve)という意味もある。また動脈ラインを挿入後、糸でラインを巻きつけ結紮し固定する。この「巻きつける」という動詞がでてこず、nativeの後輩や看護師にも訊いたが彼らも分からなかった。今調べると、twistが当てはまるようだ。

2010/07/02

Everybody loves me

 「第一希望に決まってよかったね」という言葉には、「さみしくなるけど君がそこに行きたいのなら共に喜ぶことにしよう」という意味もあると知った。また、アメリカ人が"I will miss you"と言ったら心からと思ったほうがよい。だってアメリカ人はポジティブなことが大好きで、ネガティブな(湿っぽい)ことは大嫌いだから、よほどのことがないと「淋しくなるよ」「淋しくなるわ」なんて言わないだろう。ここで"I will miss you, too"(僕もだよ)とか軽く言うと、"No you won't"(うそばっかり)ということになり、その場は和むが密かに相手が傷ついているかもしれないから注意が必要だ。"Who knows I may come back and see you again?"(また会えるかもしれないじゃん?)みたいなポジティブな返しが求められよう。この街に、この職場に来て二年。よい人間関係を結んでいる証拠だろう。素晴らしいことだ。これからの一年は、次のステップを考えなければ。

2010/06/29

Objectives

 さて、MICUも終り、ほっと一息ついている。今月は活き活きと楽しくかつアグレッシブに仕事ができて充実していた。同時に課題も発見した。ひとつは、手技ができるのは良いとして、これからはそれを人に教えたりトラブルシュートしたりできる必要がある。手技を英語で教えるのはなかなか難しい。スポーツを教えるようなものだ。「針を進めて(go in)」「ゆっくり引いて(come back slowly)」「ガイドワイヤーを通して(feed the guide wire)」など。

 二つ目は、sickな状況にもグレードがあって、分単位、十分単位、一時間単位、数時間単位、一日単位を争うというようにそれぞれ対応が異なることだ。すべての状況が、患者さんに飛びかかるようにやれ挿管だラインだとドサドサやる必要があるわけではない。すべての出血が、緊急手術や緊急内視鏡、緊急血管造影が必要なわけではない。リスク査定が重要だ。

 三つ目は、すべての侵襲的手技は確実に行わなければならないということだ。あせって合併症を起こしたり、手技に失敗しては元も子もない。だから、そもそもその手技が必要かを熟慮したり、もっとも安全に行える方法を選んだり、止血・凝固異常があればそれを緩和したりする。幸い先月は何も起きなかったので、私は怖いもの知らず(intrepid)でイケイケ(aggressive)だった。今後は慎重さが必要だ。

2010/06/17

Congratulations, you have matched!

 晴れて第一志望の、中西部の小さな街にある巨大な大学病院にマッチした。患者さんは周辺の各州からどんどん集まってくるので卒業後に「あれは経験しなかった」「これは経験しなかった」ということがない。なんでもできる一人前の腎臓内科医に育てるという哲学が一貫している。腎移植も膵腎同時移植も、ものすごい件数やっている。大学病院で教育も研究も充実している。何もないところに志の高い医者が集まって作り上げている病院だ。先生方もすばらしかった。日本にいたころお世話になった故人の恩師がかつて研鑽した場所でもある。それにしても、最初面接に行くまではそんなに印象深くなかったのに、実際行って気にいって、そのあといろんな病院をみたけれどここが一番いいと思ったのだから、自分の目に寸分も狂いはない。思う存分やってみたい。

2010/06/08

5-oxoproline

腎不全の患者がアセトアミノフェン服用後にアニオンギャップ代謝性アシドーシスをおこしたら、5-oxoprolineの蓄積を疑う必要がある。アセトアミノフェン過量内服の患者さんが来て学んだ。このあたりの生化学の知識は曖昧なのでもう一度学びなおす必要がある。

2010/04/18

学会を終えて

 発表をたくさん聞いて勉強になったが、英語表現も少し学んだ。"robust study"とは、「ちゃんとした(よくデザインされ結果に信頼のおける)研究」ということ。"tease out"とは、「調べて(情報などを)徐々に引き出す、探り出す」という意味。"mitigate"とは「緩和する」の意味。"hit the bull's eye"はダーツから来た表現で、「難しい標的を狙う(bull's eyeとはダーツの的のちょうど真ん中)」。"queezy"とは「吐きそう」の意味。"reader's digest version"とは、「非常に短くまとめること(reader's digestの話は一つ一つが短いため)」。"deter"とは「くじけさせる、阻止する」の意味。
 Career choiceについてのコーナーもあり、各界に進んだ先輩医師によるパネルディスカッションが参考になった。開業、産業(製薬会社で新薬研究、また企業のコンサルタント)、移植、基礎研究、臨床研究、集中治療(腎臓内科と兼職)、教育、などが選択肢のようだった。もちろん多くの人は開業する。集中治療の人は「燃え尽きに気をつけろ」と言っていた。開業しているパネリストは、アカデミックな人たちに囲まれ「ライフスタイルとお金で選びました」と言えない雰囲気で、少し居づらそうだった。
 「なぜ腎臓内科を選んだか」の質問には、「生理学が好き」「初めてついた指導医が腎臓内科医で何でも知っていた」「ほかの内科とも密接に関わる」などとみんなが答え、これは私をふくむほとんどの腎臓内科志望者が同意する理由と思われる。類は友を呼ぶものだ。移植に進んだ先生は「腎移植をうけた患者さんがまるで奇跡のように生活を取り戻すのに関わるのは非常にrewardingだ」と言っていた。
 学会にいって、いつか自分も講演したいという思いが湧いてきた。研究でその分野の第一人者にならないかぎり学会で講演するのは難しいが学んだことや自分が知っていることをレクチャーして教えるのは愉しいものだろう。なお日本人の方にも知遇を得ることができ、目標の一つがかなった。これからキャリアが進むにつれてinteractionが出てくるかもしれない。

critical care nephrology

 プログラム二個目は、critical care update(集中治療)だった。演者は三人ともcritical care nephrologistで、この分野がすでに確立していることを感じさせた。まずは血糖コントロールについて。ストレス下に血糖があがるのは生理的反応であるが、高血糖が炎症サイトカインを誘導するのは確かだ。それでベルギーの医師Van Den Berghのグループが2001年に「インスリンの使い方ひとつでこんなに命が助かる」という衝撃的な論文を発表した。その後さまざまな再試験が行われたが同じ結果にはならず、tight glycemic controlが本当によいかは議論され続けている。いまのところ学会が勧める内科ICU患者のターゲット血糖は140-180mg/dl、「100と180のあいだをとって」という感じである。
 つぎに輸血の適応や是非について。Hgb 7g/dlという線はTRICCという1999年発表された論文に拠るが、exclusion criteriaで対象から外された患者群についてはこれは当てはまらない。ただこの論文は冠動脈疾患を持つ患者群にもあてはまり、急性虚血がない限りはたとえ冠動脈疾患の既往があっても輸血は7g/dlからでよい。Hgbが減っても、isovolemic anemiaであれば血行動態にはさほど影響を与えない。これはUCSFで学生から血を抜いてその分生理食塩水を注射するという実験が行われて実証されたらしい。TRALIのほかにもTACO(circulatory overload)、TRIM(immuno-modulation)、Transfusion-associated kidney injuryなど様々な合併症が知られてきている。また、保存期間が15日を過ぎた輸血赤血球は機能に劣るという迷惑な論文(そんなことを言ったらもっとたくさん献血が必要になる)もあった。
 そのあとは、septic shock時のステロイドについてだった。(ストレスホルモンを産生できない)副腎摘出した動物はストレスに適応できず生き残れない。だから人間でもストレスに適応できない状況ではストレスホルモンを補充したほうがよかろうという考えからステロイド治療が行われるようになった。2002年にJAMAに発表されたDr. Annaneの論文で、hydrocortisone静注とfludrocortisone経口を併用したものだった。その後CORTICUSという追試では静注のみで行われたが有意なsurvival benefitが出なかった。その後いくつもの追試が行われ、結果はバラバラだった。それで2009年JAMAにmeta-analysisが載ったが結論は「どちらともいえない」だった。ただし、CORTICUS studyではステロイド群でショックからの回復が有意に早かったことが示された。vasopressinとの相互作用を示唆する論文もあり、今後もステロイドの有効な使い道を探すべく研究が続けられそうだ。
 なお最後の演者が「主要論文にメタアナリシスがでるということは『誰もよくわからない』ということの高尚な言い換えだ」と言っていたのが面白かった。この演者はDCの人で、シーク教徒でターバンにスーツを着ていたがおそらくIndian Americanで、物凄く雄弁かつ自信に満ちていた。この人は翌日もICU患者のfluid managementについて講演し、身体所見やCVP、CVOPはもはや優れたpreloadのpredictorとはいえず、LVEDVI(体表面積で調整した左室末期拡張期容積)、Li Dilution CO、Impedance cardiography(PWVと近い)、pulse contour CO(動脈ライン波形から計算する)、など新しい機械が次々生まれているらしいことも教えてくれた。

Geriatric nephrology

 その日の学会プログラム一個目は、geriatric nephrology(老年医学)だった。まず高齢者(80歳代 octogenerians、90歳代 nonagenerians)に透析を導入すべきかというテーマで、よりfrail(弱った)で機能が落ちている人には、透析をせずにその他の治療(症状をとる、精神的ケア、家族のケア、など)に専念したほうが生活の質が高いのではないかという話になった。高齢者診療では、simultanious core modelといってまだ元気なうちから少しずつ徐々に弱っていくのに備えた準備が必要と考えられている。Stanfordの先生が第一人者らしく、高齢者で透析を導入した人がどうなったかをよく追跡して調べているようだった。
 続いては65歳以上の患者さんへの腎移植について。腎移植を受けたほうが、受けずにいる(待ち続ける)人より長い目で見ると長生きする。移植腎のallocation(配分)がテーマになっており、ヨーロッパではドナーとレシピエントの年代をマッチして移植し始めている(Eurotransplant Senior Program)。これが年齢差別なのかは、議論されている。高齢者の腎移植では、免疫抑制剤の量に配慮が必要だ(T cell subsetsに変化が起きている)。またNODAT(New Onset Diabetes After Transplant)という疾患概念があるらしい。
 最後はリハビリの話だった。演者はToronto大学から来た人で、やたら声がエレガントだったが、彼女がしていることは非常に興味深かった。「リハビリ集中治療」なるユニットにco-borbidity(合併症)の多く心身機能も非常に弱ったお年寄りを入院させ、リハビリ、薬剤師、栄養師、看護師、(医師)のチームで50日以上かけて患者さんを総合的に回復させる。米国ではSNF(老人ホーム)任せで医師もおざなりにしか診ず、入居者をふたたび家に帰そうなどとは誰も思っていない。しかしここでは入院患者の60%以上が家に帰っていくという。「diseaseを診るのではなくimpairmentを診る」というリハビリ理念を実践している素晴らしい人だと思った。いまの病院にもカナダ出身の同僚が二人いるが、二人とも老年内科志望で数年後はカナダに帰るという。それだけカナダの老年医学はやり甲斐があり上手くいっているのだろうか。

2010/04/16

学会

 Disney Worldというのは果てしなく広く、ランドマークであろうシンデレラ城など奥のほうで全く見えない。日本にあるもので比較できないが、アメリカのNational Parkくらいでかい。そのなかにEpcot、Hollywood Studio、Animal Kingdom、Magical Kingdomという四つのエリアがあるらしい。それと別に、学会の会場となる超巨大なホテルがある。以前にも乗ったことのあるHyundai Sonataをかっ飛ばし、駐車場に乗り付けいざ集合場所へ。
 今回は実に88人の内科・小児科研修医が招かれたらしい。ほとんどが内科で、ほとんどがすでに腎臓内科に進むと決めているが、この招待の本来の趣旨は「まだ腎臓内科に進むか迷っている人を呼ぶ」ことらしい。それなら一年目のときに教えてほしかった。ここに来れば最新の知見が学べ、第一人者の先生の話を聞け、将来行きたいプログラムややりたいことなども早めに見つかったかもしれない。とはいえうちの病院で一年目に学会に行かせてもらうのはほぼ不可能だが。
 さっそく講義を聞く。朝の一つ目は、各種糸球体腎炎について。IgA腎症では、扁桃や骨髄でB細胞から産生されるgalactose-deficient IgAと、その結果おこるmesangeal proliferationが発症に関与しているらしい。膜性腎症では、足細胞表面にあるPLA2Rに対する自己抗体IgG4が発症に関与しているらしい。Ponticelli regimen(ステロイドパルスとサイトキサン)が主流だが各種免疫抑制剤、それにリツキサンも試されている。FSGSについては、HIV-associated collapsing nephropathyの発症にPYH9遺伝子異常が関与しており、この遺伝子異常はアフリカではじまり以後世界中に広まっていったという考えが面白かった。
 朝の二つ目は、慢性腎不全(CKD)と心血管系の疾患の関係について。透析患者の死因の約1/3は心疾患で、そのうち約2/3は不整脈による突然死だという。血中Troponin T濃度、低カリウム濃度の透析液、自律神経異常、睡眠時無呼吸などはリスク因子だ。いまのところ患者さんにbenefitとなる治療はみつかっていない。動脈の硬さの指標に、pulsatility index(脈圧/MAP)、PMV(pulse wave velocity)、AIX(augmentation index)などがある。血圧コントロールをしてもこれらの指標が好転しなければ心血管系イベントは減らない。CKDの領域は「X、Y、Zがmortalityに相関している」という話ばかりで、「じゃあどうすればよいか」という話は数年先なのだろうか。
 午後の一つ目は、FGF-23についての講演を聞いていたが面白くないのと本で調べればよいと思ったので、途中から尿路結石についての講演に変えた。同じ枠に3つの講演が並列しているのだ。結石の話では、尿中にカルシウムを多く排泄している人は必然的に骨密度が低いという話がでて、cinacalcet(副甲状腺細胞のCa-sensing receptorに作用しPTH産生を抑制する)は骨密度を改善しないこと、thiazideとbisphosphonateの併用は改善することなどを学んだ。
 午後の二つ目は、Literature Reviewを聞いた。これは3人の演者が30分ずつ15-25の重要な論文について要点を語るというもので、講談というかしゃべくり漫才というか、演者の話術を楽しむコーナーでもあるようだった。おかげで高血圧、透析患者、腎移植についての最新の知見をすっかり学ぶことができた。なかには移植腎の予後評価に従来用いられるBanff classificationよりも、PRA(panel reactive antibody)、DSA(donor-specific antibody)、microcirculation injuryなどを取り入れた新しい分類のほうが正確という論文や、透析中の患者さんに心エコーをしたらmyocardial stunningが起こっており、これらの心筋はやがてhybernationを起こし、心機能低下や心血管系イベントにつながっていくという論文などがあった。
 夕方には、ポスターを順繰り見て回るというイベントがあったが、この頃にはさすがに疲れてきた。そのあとは会場を後にしたが、今日は面接であった人たちに再会したり、友達の友達に会ったりして学会らしい人とのつながりも感じることができた。そのうちの一人でエチオピア出身でもうじき腎臓内科フェローを卒業するという人とは、一緒にご飯を食べながら少し仕事のことや将来のことなど語り為になった。午前中の講演では大きな会場で質問も一個したし、それなりに参加した一日だった。

2010/03/06

Milk-Alkali syndrome

 夜中に忙しいのは困らない。患者さんを診るのは好きだ。後輩を教えたり、看護師さんたちと昼間はあまりできない気さくな会話をするのも気晴らしになる。問診能力を鍛えることにもなる。このあいだはミルクアルカリ症候群を問診で診断したりもした。高カルシウム血症と急性腎不全が血液検査で判明し入院になった患者さんがいた。血液検査データを読むと、なぜか重炭酸イオン(HCO3-)が異様に高い。
 問診しながら患者さんとその家族にカルシウムの値が高いことを伝えると「牛乳の飲みすぎは関係あるでしょうか」と尋ねられた。「たいていそれだけでは(高く)なりません、baking sodaでも飲んでいれば別ですが」と答えると、なんと飲んでいた。それも大量に、TUMS(calcium carbonate)と一緒に、胃薬として。腰痛に対し鎮痛剤(NSAIDs)を摂りすぎて胃炎を起こしていたようだ。
 何十年も前によい薬がなかったころの胃炎の治療法に、クリーム・カルシウム・重曹を大量に摂るというのがあり、副作用として高カルシウム血症を起こした。これをミルクアルカリ症候群という。この治療法はもうとっくに廃れているので現在では滅多にみられない。骨粗鬆症予防でビタミンDとカルシウムを摂取することにより似たようなことが起こることはあるが。

2010/02/13

Academia

 天下のJohns Hopkins、ここはAcademiaという別の国なのだなと思う。米国医学教育発祥の地といってもよい本場では、各facultyの教育に対する熱意と、学び続ける強い情熱がちがう。それがインタビューをしたり昼のカンファレンスに参加したりして伝わってくる。特に腎臓内科はそれが満ちているのか、フェローの数は他の科に比べてとても少ないにもかかわらず毎年のようにbest teacher fellowを輩出しているらしい。私の居る病院は分院だけど、どちらの先生にも教わることができるし、診療の場が分院(市中病院)なほうが却ってcommonな病気をよく診療出来そうだ。研修医は本院のほうがtoo confidentなのに対し、分院のほうが教わり上手で話を聞く子が多いらしい。rareな病気も分院とはいえ沢山くるみたいだし、分院で診れないものは本院で補われるようになっている。二年間終わって「おれは何でも診れる、診たことある」と自信を持っていえるプログラムだとフェローやここ出身のアテンディングが太鼓判を押していたのは、きっと本当だろうという印象を持った。

2010/02/11

Thomas Jefferson

 Thomas Jefferson大学は、都心にあって歴史も実績もあり、この街に4-5個ある医学部のなかでは名門の部類にはいる(ペンシルベニア大学のようにIvy leagueではないけど)。一学年あたり300人の医学生が在籍する、巨大な医学部である。ただ病院は古くてせまく、前述の特徴を合わせても、なんだか日本のわが母校をみたような既視感を味わった。
 大雪のため面接はあまりテキパキとは進まなかったが、それでもキャンセルされていたら代わりの日も選べなかった(研修医にそんな余裕はない、それに飛行機代もバカにならない)ので助かった。アイオワ大学の面接に見られたような「おれたちが未来をつくる」という意気込みは感じられなかったが、「ここは名門でスゴイんだぞ」と皆が思っている感じを受けた。
 プログラムディレクターは、私が他にどの病院を受けるのかをすべてリストアップさせ、さらにいまいる病院にICUベッドが何床あるかを訊ねた。症例を与えられ考えを述べさせられたりもしたが、臆せず楽しんで回答できた。彼は「知識を問うというよりも、ストレス下にどう対応するかを見ているのだ」と言っていた。その過程でEwart's signという心嚢液貯留に伴う身体所見を教えてもらった。
 ルーマニア系(名字がそんな綴りだったので訊いたらそうだった)の先生と面接したけれど、この先生は教育にとても情熱のある先生で意気投合した。また、私が研修において独立の気風を重んじていることをとても評価してくれた。Yale出身でペンシルベニア大学を経て今の大学に移ったという経歴で、かつフランスと南米の病院に留学したことがある(仏、西語で診療できる)この先生とは、一緒に働いたら面白そうだなと感じた。

2010/02/10

アイオワ

 初の面接は(大統領の予備選挙ではないが)アイオワ、二年ぶりの訪問である。レジデンシーの頃と違い、応募者・ポジション数ともに少ない(レジデンシーは1000-2000人の応募者、フェローは200人)ので病院側も振るい落とす質問を沢山せずにすむようだ。お互いの相性が合うかを確かめあったりと、勧誘の向きが強かった。
 Program directorは、「ポジション数は3、応募者の中でもっともよい腎臓内科医になりそうな人上位3人を選ぶ。彼らが何をしたいかは問わない、何をしたくてもそれをサポートする環境を作る。」という大らかな発言をした。遠隔地にある巨大な病院で、研究・診療とも国内トップレベルだった。さらに場所柄、「自分以外まわりに医師が誰もいない環境でも独りでやってゆける力をつける」という気風が感じられた。

2010/01/27

master of all trades

 "Jack of all trade, master of none"という言い回しがある。これは一方では「generalistは器用貧乏になりがち」という意味である。他方では「専門に偏りすぎてもいけない」という戒めでもある。今月は内分泌内科専門医がattendingであったので、糖尿病の管理や甲状腺疾患、ビタミンD欠乏症と副甲状腺機能亢進症まで、彼の専門分野については耳にタコができるほど学んだ。専門家だから聴ける高尚で深い知見は刺激的でもあった。

 ただし、今月学んだこれらの専門的な診療がはたして一般医家にも受け入れられるかというとそうでもない。他の指導医(とくに総合内科医)と働いた場合には、「そんな風に診療する必要はない」と言われるかもしれない。総合内科の指導医と勉強すると何でもオールラウンドにカバーして学べるのだが、どうにも深みがない。基本的にガイドラインに沿った診療で、専門的判断は各専門科医に任せることになる。

 そこで私が勉強したい道は、まずとことん何か一個専門を学んで、そこから周辺領域にも理解を深めていくやり方だ。腎臓内科はその点、周辺領域が広い(糖尿病、高血圧、心血管疾患、腎炎、移植と免疫抑制、緊急透析とcritical care、など)。ここまで医学が専門分化すると、結局master of oneで精いっぱいというのが現状だとは思うけれど、一生懸命勉強してmaster of all tradesを目指したい。