2010/04/18

Geriatric nephrology

 その日の学会プログラム一個目は、geriatric nephrology(老年医学)だった。まず高齢者(80歳代 octogenerians、90歳代 nonagenerians)に透析を導入すべきかというテーマで、よりfrail(弱った)で機能が落ちている人には、透析をせずにその他の治療(症状をとる、精神的ケア、家族のケア、など)に専念したほうが生活の質が高いのではないかという話になった。高齢者診療では、simultanious core modelといってまだ元気なうちから少しずつ徐々に弱っていくのに備えた準備が必要と考えられている。Stanfordの先生が第一人者らしく、高齢者で透析を導入した人がどうなったかをよく追跡して調べているようだった。
 続いては65歳以上の患者さんへの腎移植について。腎移植を受けたほうが、受けずにいる(待ち続ける)人より長い目で見ると長生きする。移植腎のallocation(配分)がテーマになっており、ヨーロッパではドナーとレシピエントの年代をマッチして移植し始めている(Eurotransplant Senior Program)。これが年齢差別なのかは、議論されている。高齢者の腎移植では、免疫抑制剤の量に配慮が必要だ(T cell subsetsに変化が起きている)。またNODAT(New Onset Diabetes After Transplant)という疾患概念があるらしい。
 最後はリハビリの話だった。演者はToronto大学から来た人で、やたら声がエレガントだったが、彼女がしていることは非常に興味深かった。「リハビリ集中治療」なるユニットにco-borbidity(合併症)の多く心身機能も非常に弱ったお年寄りを入院させ、リハビリ、薬剤師、栄養師、看護師、(医師)のチームで50日以上かけて患者さんを総合的に回復させる。米国ではSNF(老人ホーム)任せで医師もおざなりにしか診ず、入居者をふたたび家に帰そうなどとは誰も思っていない。しかしここでは入院患者の60%以上が家に帰っていくという。「diseaseを診るのではなくimpairmentを診る」というリハビリ理念を実践している素晴らしい人だと思った。いまの病院にもカナダ出身の同僚が二人いるが、二人とも老年内科志望で数年後はカナダに帰るという。それだけカナダの老年医学はやり甲斐があり上手くいっているのだろうか。