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2017/06/24

抗凝固薬と腎機能障害 3

前回の話までで、ARNの概念と認知をしていただいたと考える。

今回は少しふみ込んでの話をしていく。

ARNのメカニズムはどんなメカニズムなのか?
・わかっている事:大まかな機序に関しては明確になっている。
糸球体透過性の破たんにともない、出血がボウマン嚢に流出し尿細管に流出する。赤血球が赤血球円柱を尿細管で作り閉塞や尿細管虚血を生じる。
キーワードとしては
・糸球体出血
・赤血球円柱による尿細管閉塞
・尿細管細胞障害
である

・不明確な部分:分子生物的なメカニズムは不明
PARs(proteinase-activated receptors)が糸球体の内皮細胞に発現していて、これがトロンビンによって活性化されている。トロンビンの活性化を抑えるVit K拮抗薬の投与によって内皮細胞障害を生じ、糸球体出血を生じさせるのではないか?と考えられている。これは、どう物実験などでも検討はされている。
ワーファリンやダビガトランなどの治療合併症として、高血圧が知られているが、これは内皮細胞障害にともなうものではないかと考えられていて、また高血圧がさらに腎機能障害を助長する可能性がある。


分子生物学的メカニズム:プロテインCがpodocyteの壊死の防いでいる。

ARNは何かしらの予後につながるのか?
・ARNがあることで、腎予後や全死亡率の上昇につながることが分かっている(KI:2011)。

ここまでで、ARNがおおまかにどのように生じるのか?
起こることがあまりよくないことなんだなとつかんでもらえたら幸いである。


これは、赤血球円柱の所見の図である。

2017/05/24

マラソンは好きですか?? マラソンと腎臓の関係。

最近はマラソンがブームである。よく皇居ランなど自分も一度はしてみたいものである。


今回、AJKDからマラソンランナーと腎機能に関しての論文が出てる。(AJKD 2017)

今回この論文を検討してみる。

背景:

マラソンランナーは26.2マイル(=42.195km)を走り、高温環境などのストレス環境にさらされる。
マラソンランナーの腎機能障害発生に関しては不明確なことが多い。

2014年に米国で55万人のマラソンランナーをみている報告があるが、腎機能障害に関しては見落とされている事が多かった。

今回の研究は、マラソンランナーと腎機能障害の発生に関して多種のマーカーを用いて検討している。


患者:

2015年のHarfoldマラソン参加者で22歳~63歳で同意が得られた人。


Inclusionした人BMI18.5-24.9、少なくとも3年以上のランニング経験、少なくとも3年で週平均15マイルを走っている人。


Exclusionした人:レース前4か月以内にけがをした、4週以内にほかのレースに参加した、レーレース前48時間以内やレース後24時間以降にNSAIDsを使用、レース前8週以内にスタチンやステロイドや輸血を受けた、甲状腺機能低下や腎機能障害や冠動脈疾患、痙攣発作の既往がある人


検査:

尿と血液サンプルを3つのタイミングで測定。

マラソン開始前24時間(day0)、マラソン終了後30分以内(day1)、マラソン終了後24時間(day2)と3つのタイミングを見ている。

項目としては、血清クレアチニン、CK、尿中Alb、尿沈渣など


採血でマーカーも同時期に測定している。


マーカーに関しては6つの障害因子(IL-6IL-8IL-18KIM-1NGALTNF-α)、2つの回復因子(YKL-40MCP-1)を測定。

検体提出に関して:

血液や尿の検体は冷凍してすぐにエール大学に2時間以内に搬送している。

尿沈渣に関しては採取後2時間以内に検査している。

アウトカム評価:

アウトカムに関してはAKIを主要アウトカムとしてみている。

AKIの定義はAKINの分類基準に沿っている。


尿沈渣は腎尿細管上皮細胞や顆粒円柱の数で評価をしている。




結果:

今回22人のランナーが研究に参加。マラソンの日は16.7℃で26.2マイルを全員が完走した。

内訳は9人が男性で13人が女性。そのなかの1人がtypeDMで、6人が2週間以内にNSAIDsの内服をしていた。

バイタルに関してはマラソン直後の脈拍数の増加がみられた。

平均Creday00.81day11.28day20.9であった。


その他の結果はCKに関してはday2でもピークアウトを認めていなかった。
沈渣に関してはday1から増加を認めていて、下記のような顆粒円柱の所見を認めていた。



尿中のAlbに関してもday1で増加を認めた。

各種マーカーに関しては下図で示すとおりDay1で上昇しday2で低下している。



結論:

マラソンに伴いAKIを来す可能性がある。

上記を考える際に考慮すべきこととして:

AKIの評価でCreだけではマラソンの場合に筋肉の崩壊や体液の移行などでも起こる事がありうる。そのため、今回尿沈渣やマーカーなどを用いた。マーカーに関しても最近の研究でマラソンに伴い上昇する事が報告されている。尿沈渣ではAKIの生じた原因がATNであったことを示唆している。健康な人にどのようにATNが生じたのか、構造的な研究はされていないため不明確ではある。


今回の報告はサンプルサイズが少ない点などのlimitationはあるが、マラソンランナーにおいてマーカーや尿沈渣をみた最初の研究であり今後の研究へつながればと考える。


2012/09/20

Making a difference

 フェローも二年目、レジデントや医学生と一緒に働くコンサルトで何か教育的な新しいことがしたい。そう思って始めた一つが毎日学習の振り返りをメールで送ることだ。興味深い尿沈渣所見があれば病理検査室でカメラ付き顕微鏡を借りてデジタル画像にして送る。いままでdysmorphic RBC(日本語で「破砕赤血球」ということもあるが、実際はミッキーマウスのような形をしているものが多い)、赤血球円柱、尿酸結晶、ロイシン結晶(メープルシロップ尿症、肝不全などで見られる)などを撮った。Aciclovirの結晶は、写真のアイデアを思いつく前に見つけたので雑誌記事の写真を送った(NEJM 2008 358 e14)。

 回診で議論されたトピックとそれについての論文(主にレビュー)のリンクを張り、それだけでは誰も読まないだろうから数行の解説を付けて送る。いままでhyperkalemia 、normotensive ARF、SIADH、vaptans  in cirrhotics、hepatorenal syndrome、CRRT、hypernatremiaなどについて短く解説した。さらに、亀の冬眠を可能にする酸塩基平衡のヒミツ(以前ここに書いたやつ)、野生動物たちがビタミンD欠乏にならない訳(皮脂が毛に沁み込み、それが日光を浴びてビタミンDになり、それをペロペロなめて摂取しているのだ!)など面白いトピックも送っている。

 ただでさえ忙しいのに、これで帰宅が一時間遅くなる。でも楽しいので、80-hour ruleに違反しない限り今月いっぱいは続けるつもりだ。メールの返事が来たことはまだないが、こちらとしても褒めてもらうためにしている訳でなし、彼らの頭に「ああそんなことフェローが言ってたな」くらいに残ればいいと思っている。今のところ、レジデントも医学生も(遅くまで忙しくて大変なのに)このローテーションを楽しんでくれているみたいで何よりだ。