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2017/09/12

少しアフェレシスと透析について HAの続き

前回、下記の②について話を進めさせていただいた。
①活性炭(DHP-1、ヘモソーバ、ヘモカラム)
②ポリミキシンB固定化吸着剤(トレミキシン)
③ヘキサデシル基固定化セルロースビーズ(リクセル)


今回は、③について触れたいと思う。

リクセルに関しては透析アミロイドーシスが血中のβ2MG(ミクログロブリン)と分かった後に、1996年に本邦での臨床治療に導入された比較的新しい治療である。

透析アミロイドーシスについてはアミロイドが沈着する部位によって異なるが、
・手根管症候群
・破壊性脊椎関節症
・肩関節症
などを生じる。

特に手根管症候群は多く、長期透析患者で見ることが多い。
横手根靭帯や腱鞘滑膜へのアミロイド沈着によって生じ、それらが肥厚し正中神経を圧迫し、手指の疼痛・しびれ・母指球筋麻痺・萎縮を呈する。手指の疼痛は透析中や夜間に増強する傾向が特徴である。

破壊性脊椎関節症は、脊椎関節にアミロイドが沈着することによって脊椎管腔の狭小化・椎体の骨浸食などをC4-6の下部頚椎に生じるものである。これに一致した神経根症状や脊髄圧迫症状が出現する。
Journal of clinical neuroscience 2016 volume 30 :155-157
この透析アミロイドーシスの予防のために様々な試みがされております。
現段階では生体適合性の良いハイパフォーマンス膜の使用やoff-line HDFやon-line HDFは通常膜によるHDに比べて予防効果があると報告されている。

今回話題に出すリクセルも、β2MGを除去する吸着療法である。リクセルに関しては、この後に適応について述べるように予防のものではなく、透析アミロイドーシス発症後にしようできるものである。

適応:下記の条件を満たせば1年間の使用が可能となる。その1年後に2.3があれば更に一年使用できる。
関節痛を伴う透析アミロイド症である。1.手術又は生検により、β2-ミクログロブリンによるアミロイド沈着が確認されている。
2.透析歴が10年以上であり、以前に手根管開放術を受けている。
3.画像診断により骨嚢胞像が認められる。

回路:下図で示すようにリクセルは単独ではなく、血液透析と同時に使用する。これは、他の吸着療法とは異なるものである。ダイアライザーの前に接続する。

カネカhomepageより引用

リクセルの種類:下図のように3種類に分かれる。
基本的には大きなサイズのものを使用しますが、心臓が悪い症例や血圧低下症例などはプライミングボリュームなどを考えて小さめのものを使用することも多い。
カネカhomepageより

リクセルは、2015年にアメリカのFDAに承認されました。今後、研究の幅も出てくる可能性もあります。

ただ、値段はかなり高額になるので、現時点では適応の症例に限っての使用という形になっています。
ただ、今後値段の問題が解決した場合に予防に使用できれば患者さんのQOLも上がるのかなと淡い期待は寄せてはいる。




2017/07/03

がん患者の急性腎不全 2

がん患者にとって急性腎不全は比較的身近であり、また起こすのは避けた方がいいであろうことを前回復習することが出来たと思う。


では、ここから数回に分けて原因について考えていく。
★血液腫瘍とAKIについてまず考える。
血液腫瘍とAKIの関連では、下記の3つの概念で考える。
1:悪性腫瘍関連

2:治療関連

3:その他の原因

で考える必要がある。


これに関しては下記の図が分かりやすい。

ただ、これの他にも起こりやすいものはしっかりと認識しておく必要がある。

☆起こりやすいものとしては、
敗血症、腎障害をきたす薬物など、腫瘍崩壊症候群(特にburkitt's リンパ腫など)、循環血液量減少
などである。

分類に戻って、まず悪性腫瘍関連のものであるが、下記のものに関して説明する。
・腫瘍浸潤
−血液疾患でお越しうるものとしてはリンパ腫や急性白血病などがあげられる。
 リンパ腫の患者の報告で60%と高率で腎臓に浸潤を来していたが、ほとんどのケースは診断されていない。つまり、症状や検査所見で出ることは非常に少ない。
診断は腎生検。

・多発性骨髄腫
−これは過剰産生された単クローン性のガンマグロブリンやfree light chainがcast nephropathy(円柱腎症)、軽鎖による近位尿細管障害、様々な腎炎(軽鎖沈着症、ALアミロイドーシス)を生じたりする。

cast nephropathyは多くの軽鎖が糸球体を通過しTamm-Horsfallタンパク(uromodulin)に結合して生じる。これが生じることで、尿細管閉塞や尿細管糸球体の炎症を生じたりする。

治療において透析の話に関しては以前にここで書いた。

軽鎖による近位尿細管障害は大量の軽鎖が炎症性サイトカイン、酸化ストレス、アポトーシスや繊維化を生じさせる。

次回は、もう少し血液疾患の続きとそのほかの話題に触れていきたいと思う。