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2017/09/12

少しアフェレシスと透析について HAの続き

前回、下記の②について話を進めさせていただいた。
①活性炭(DHP-1、ヘモソーバ、ヘモカラム)
②ポリミキシンB固定化吸着剤(トレミキシン)
③ヘキサデシル基固定化セルロースビーズ(リクセル)


今回は、③について触れたいと思う。

リクセルに関しては透析アミロイドーシスが血中のβ2MG(ミクログロブリン)と分かった後に、1996年に本邦での臨床治療に導入された比較的新しい治療である。

透析アミロイドーシスについてはアミロイドが沈着する部位によって異なるが、
・手根管症候群
・破壊性脊椎関節症
・肩関節症
などを生じる。

特に手根管症候群は多く、長期透析患者で見ることが多い。
横手根靭帯や腱鞘滑膜へのアミロイド沈着によって生じ、それらが肥厚し正中神経を圧迫し、手指の疼痛・しびれ・母指球筋麻痺・萎縮を呈する。手指の疼痛は透析中や夜間に増強する傾向が特徴である。

破壊性脊椎関節症は、脊椎関節にアミロイドが沈着することによって脊椎管腔の狭小化・椎体の骨浸食などをC4-6の下部頚椎に生じるものである。これに一致した神経根症状や脊髄圧迫症状が出現する。
Journal of clinical neuroscience 2016 volume 30 :155-157
この透析アミロイドーシスの予防のために様々な試みがされております。
現段階では生体適合性の良いハイパフォーマンス膜の使用やoff-line HDFやon-line HDFは通常膜によるHDに比べて予防効果があると報告されている。

今回話題に出すリクセルも、β2MGを除去する吸着療法である。リクセルに関しては、この後に適応について述べるように予防のものではなく、透析アミロイドーシス発症後にしようできるものである。

適応:下記の条件を満たせば1年間の使用が可能となる。その1年後に2.3があれば更に一年使用できる。
関節痛を伴う透析アミロイド症である。1.手術又は生検により、β2-ミクログロブリンによるアミロイド沈着が確認されている。
2.透析歴が10年以上であり、以前に手根管開放術を受けている。
3.画像診断により骨嚢胞像が認められる。

回路:下図で示すようにリクセルは単独ではなく、血液透析と同時に使用する。これは、他の吸着療法とは異なるものである。ダイアライザーの前に接続する。

カネカhomepageより引用

リクセルの種類:下図のように3種類に分かれる。
基本的には大きなサイズのものを使用しますが、心臓が悪い症例や血圧低下症例などはプライミングボリュームなどを考えて小さめのものを使用することも多い。
カネカhomepageより

リクセルは、2015年にアメリカのFDAに承認されました。今後、研究の幅も出てくる可能性もあります。

ただ、値段はかなり高額になるので、現時点では適応の症例に限っての使用という形になっています。
ただ、今後値段の問題が解決した場合に予防に使用できれば患者さんのQOLも上がるのかなと淡い期待は寄せてはいる。




2016/10/23

食品添加物の重要性

当たり前かもしれないが腎臓内科医にとってリンはとっても大切である。
特に慢性腎不全にとってリンの管理は重要なことである。医師は薬を使ってリンを下げようとするが食事の管理は本当に重要である。
リンの食事で現代社会では食品添加物が重要な問題である。今回この論文では末期腎不全患者に食品添加物を制限した群(67人)とコントロール群(63人)でRCTを組んでいる。
結果では当初は血清リン値に違いはでなかったが、3ヶ月であれば有意差を持ち制限群での血清リンの低下を認め、70%近くが血清リンが5.5mg/dl以下になったということである。
2009年のJAMAにも同じような結果が出ている(これもRCTで人数は今回のものより大きい)

これに関しては僕たちが教科書的なものから得る知識であり、実際にこのように示されてわかることは、食品添加物の制限は重要であること・また、制限して3ヶ月程度して結果として出てくることである。
自分の目の前の患者さんに制限の重要性を話した時、「数ヶ月で血清リン低下の結果が出てきますから頑張りましょうね」というと少し目標が見えていいのかもしれない。

しかし、自分の知識がないので調べてみたのだが食品添加物(特に今回はリン酸塩)はなぜ必要なのか?
リン酸塩はまず大きく二つに分かれオルトリン酸塩、重合リン酸塩に分かれます。
リン酸塩はカマボコのコシを強くしたり、ハム・ソーセージの保水性・粘着性・膨張性を増したり、練り物・缶詰・醤油・佃煮・ソース・漬物・豆腐・アイスクリーム・酒類・チーズ・中華麺なでの変色防止や風味の工場など広い効果を持ちます。
つまりリン酸塩によって、加工食品の弾力UP、色調改善、保水性UPさせているようです。

リンの過剰摂取はPTH上昇をきたし、リン排泄を促すのと同時に骨粗鬆症もきたすためリンの管理は非常に重要である。
その中で、今回はリンの食品添加物との関連について簡単に書かせていただいた。

ただ、美味しそうというものにはおそらくリンが含まれているんだろうと思うし、自分たちがしっかりと知識をつけて患者さんに教育していくことは重要であると感じる。




2016/10/10

アミロイドーシスについて



今回アミロイドーシスを書こうと思ったのは単純にアミロイドーシスを診療していて、よくわかってないなと思ったのがきっかけである。
アミロイドって自分の身近になくイメージがつかみにくく、イメージがつかみにくいから病気もつかみにくいのかなと思ったので復習もかねて書こうと思った。

・アミロイドとは・・
以前はヨウ素デンプン反応と似た反応をすることからデンプン(ラテン語でamylum)と関係があると思ってつけられたものであるが、本体はある種のタンパク質である。
タンパク質は産生されると特定の形に折りたたまれる(フォールディング)が、この折りたたみの異常(加齢や慢性炎症や遺伝など)が生じると、異常なタンパク質が生じ、異常なものは除去される。
しかし、異常なたんぱく質ができるのが多すぎたりすると除去しきれず疾患の発症につながる。これがアミロイド-シスの根本である。


・歴史:19世紀から知られているが、理解が深まったのはここ数十年といわれている。
アミロイドーシスはまれな疾患であるが、一つには我々の認知不足もあるのかもしれない。そのためにこの疾患の理解を深め、しっかりと患者をみれるようになりたい。



・アミロイドの頭文字:
アミロイドは上にAAやALなどの頭文字がついているが、これは最初のA:アミロイドを意味し、次のAAのAは血性アミロイドA、ALのLはL鎖抗体由来アミロイドを指す。ATTRはトランスサイレチン由来のアミロイドを示す(下図参照)。


図:全身性アミロイドーシスの分類



















・アミロイドーシス:
アミロイドタンパク質は血流に蓄積するため、最終的に臓器や組織に沈着する。結果として生まれるアミロイド線維が、多臓器の障害を引き起こしたり、体内の一部位に局在したりする可能性がある。アミロイドは通常、腎臓、心臓、神経に沈着し、時には肝臓、脾臓、消化管や気道に影響を及ぼすこともある。
全身に沈着するものを全身性アミロイドーシス、特定臓器に沈着するものを限局性アミロイドーシスと呼ぶ。

今回は簡単にAAとALについて述べる。
私が混乱するのはおそらくはどのように産生されるか、疾患をどのように考えるかがわかっていなかったのが一番であると思う。読者の中にはそのような方もいると思うので、少しでも参考になればありがたい。

どこでできる?:ALの前駆蛋白は骨髄で産生されるもので、AAは循環血中の炎症性蛋白であり血中で産生されることが大きく異なる。
→
・ALでは多発性骨髄腫や原発性マクログロブリン血症を探すための検査(SPEP,UPEPや骨髄穿刺・生検)をする必要がある。
・AAでは血中でできるので基礎となる炎症を惹起する関節リウマチ、血管炎、Castleman病、自己免疫疾患などを精査する必要がある。

・診断:臨床症状や所見から疑い、組織で光顕でCongo-red染色陽性や電顕でのアミロイド繊維を見つけることである。AAとALは過マンガン酸処理でALは染色性が消失し、AAでは染色性が保たれる特徴を持つ。ただ、ALでも陽性になることがあり、診断には悩むことが多い。DFS染色なども有効とは言われる。
しかし、どの型なんだろうと悩むことは大いにある。そのような症例に当たった際には、病型診断を手助けするために信州大学(支援サービス)や熊本大学(支援サービス)があるので、利用するといいと思う。

今回は論文的なことではなく、自分の復習と情報整理を中心に書かせていただいた。

我々にとってアミロイドーシスは目には見えない疾患であり、多臓器が侵されてくる場合もあり、腎臓内科医として総合的な判断が必要になってくる疾患である。






2016/10/02

IgA腎症の治療って2(扁桃摘出パルスに関して)

前回IgA腎症の治療について書いてみた。
今日は日本で主に行われているIgA腎症に対する扁桃摘出パルス療法について考えてみた。

まず、日本ではアンケート調査で扁桃摘出または扁桃摘出+ステロイドパルス併用療法は65%以上で使用されている。おそらくは扁桃摘出の有効性を実感しているためこんなに高い数字なのであろう。

では、なぜ効くのか?を考えた時にIgA腎症の原因などの病態を把握する必要がある。
IgA腎症はIgAの特にIgA1サブタイプのヒンジ部糖鎖修飾異常(糖鎖異常IgA:GdIgA1(がラクトース欠損IgA1))が増加し、それに対する抗体の産生→免疫複合体の形成し、メサンギウム領域への沈着が生じるmulti hit 仮説が提言されている(JASN 2011 22(10) 1795-1803)。

面白いこととしては、GdIgA1を利用してそれによってIgA腎症を診断しようとする報告がいなされている(PLos One 2014 May 23;9(5))。これが現実化することでの利点としてはアジアの地域に多いIgA腎症を早期に診断することができるという点である。
IgA腎症の診断には腎生検が必要となるが、発展途上国ではそれも満足に行えない地域もあり、採血や尿マーカーで診断がつく時代が来れば個人的には嬉しい。また、後でも述べるがIgA腎症は早期の診断早期治療が大切なので、本当に重要であると感じる。

では、どの粘膜B細胞が作成しているかであるが、注目されているのがGALT(gut-associated lymphoid tissue:腸管関連リンパ組織)、NALT(nasopharynx-associated lymphoid tissue:鼻咽頭関連リンパ組織)である。
GALTに注目したのが、先のNEFIGAN TrialでのNefecon(腸管選択的ステロイド)である。
二つの違いはIgAサブタイプの偏りがありIgA1はNALTに多く発現している。
また、NALTは骨髄との関連がありIgA腎症の発症はMucosa-Bone Marrow Axisの異常が生じているためと考えられている。骨髄に関してはAPRILが話題であり、これの増加がIgA腎症の予後を悪くしているという報告もあり、(Medicine Volume 95, Number 11, March 2016)、これを多く持つものに対して扁桃摘出を行ったほうが効果があるという報告もある。

扁桃摘出パルスに関しては、先日扁桃摘出パルスの元祖の堀田修先生(現在はクリニックを仙台で開業されている)のお話を聞くことができた。簡単にまとめるとやはり大切なのは早期診断、早期治療ということであった。
IgA腎症を血尿主体の時の糸球体腎炎のphaseとそれ以降の蛋白尿が主体になる二次性FSGSのphaseに分けて話してくださった。二次性FSGSの状態ではいわゆる糸球体が焼け跡になってしまっているので、扁桃摘出パルスをしても効果に乏しいというお話を聞き、なるほど理にかなっているなと感じた。焼け跡になってしまってからでは遅いので、糸球体血管炎の早期の時期からの治療開始を推奨していた。ただ、この時期は血尿だけの時期なので日本のガイドライン上も経過観察となっている部分ではあり、患者さんにこのような治療の選択肢を行い納得いただけるようなら行うのもひとつかなと感じた。また、堀田先生のクリニックでは扁桃摘出パルスの他にも鼻咽腔の部分の処置を行ったりなど、本当に全てを前向きに動かれる姿勢の凄さ、考え方の凄さに本当に感銘を受けた。

・扁桃摘出パルスに関しては扁桃摘出とパルス療法はどちらが先でもいいらしいが、扁桃摘出を先行した場合はパルス投与を扁桃摘出から7日後以降に行うとのことであった。また、パルスを先行した場合には6ヶ月以内に扁桃摘出を行うのが原則のようである。

・実際に扁桃摘出パルスは論文などはどうかではあるか
日本では厚労省進行性腎疾患に関する調査研究班・IgA腎症分化会が主体となって行ったランダム化比較試験(RCT)「IgA腎症に対する扁桃摘出術とステロイドパルス療法の有効性に関する多施設共同研究」が行われており、2011年の腎臓学会で中間報告され、寛解率は扁桃摘出パルスが良かったが、尿タンパクなど明らかな有意差が出ていない。最終報告はまだなので今後の報告にこれは期待したい。
海外では中国からのメタアナリシス(Nephrol. Dial. Transplant.26 (6): 1923-1931.)が出されている。これでは、扁桃摘出単独やパルス単独では寛解に至らなかったが、扁桃摘出パルスでは寛解に至ったと報告している。

色々と書いたが、IgA腎症はしっかりと病態を理解し、様々な選択肢から患者さんのニーズに合う治療を選択することが大事である。
今はインターネット社会であり、扁桃摘出パルスに関しても調べ上げてくる人にも出会うかもしれない。そういったときに治療の提示やメリット・デメリットが話せるような医師になりたい。



2016/09/27

IgA腎症の治療って

IgA腎症の治療は2015年にSTOP-IgAN(N Engl J Med 2015;373:2225-36)がNEJMにでて色々衝撃を与えた分野である。
簡単に書くとSTOP-IgANは腎生検で診断されたIgA腎症においてACE-IやARBを用いて血圧を125/75mmHg未満にするなどの支持療法を6ヶ月しても蛋白尿≧0.75g/day以上の症例を対象としたRCTである。
支持療法群と免疫抑制療法併用群と比較している。免疫抑制療法群に関してはeGFRの値(60未満と以上)で異なる治療を行っている。
結果としては明らかな有意差はなく、ステロイド使用群で副作用でステロイド性糖尿病や体重増加のリスクが増加し感染症のリスクが増加した。
つまり、この群(蛋白尿≧0.75g/day以上)でも支持療法しましょうというものであった。

今回、JASNで[Corticosteroids in IgA Nephropathy: Lessons from Recent Studies]というbrief review(doi: 10.1681/ASN.2016060647)があり、よくまとまっていた。

現在のIgANの治療はKDIGO ガイドライン(KDIGO 2012)では
血圧コントロールは, ACE阻害薬やARBで行い,蛋白尿 <1g/dでは<130/80mmHgを目標、
蛋白尿 >1g/dでは<125/75mmHgを目標としましょう!

免疫抑制療法に関しては:3-6ヶ月のACE阻害薬やARBによる治療で、蛋白尿≥1g/dの場合は免疫抑制療法を行いましょう。免疫抑制療法はステロイドを主に使用しましょう
(Pozzi protocol:1gステロイドパルス3回(1,3,5ヶ月目)と隔日投与のPSL0.5mg/kg、
または0.8-1mg/kgの毎日の経口ステロイド内服)となっている。

様々なスタディが免疫抑制療法はどうなのか検証されている。
VALIGA cohort trial(Kidney Int 2014; 86: 828–836)ではRAS阻害薬単独よりもRAS阻害薬+ステロイド投与が蛋白尿>1g/dayの症例にはよく、eGFR<50の症例にもいいのではと言っている。

TESTING study( (ClinicalTrials.gov no. 01560052)はIgANで蛋白尿>1g/dayの症例でeGFRが20-120までの症例を集めステロイド治療(0.8mg/kg経口で2ヶ月でその後6-8か月で減量)の効果を見ている。
この症例では副作用で1.5年で中止になっている。副作用としては感染症である。ただ、ステロイド治療によって蛋白尿の減少含めた腎機能保護には優位に働いたという結果も得られている。

その他現在様々なスタディが進んでいる(直近ではIgANの病態で消化管の免疫の関連があるのではないかということで注目が集まっている、NEFIGAN trial: ClinicalTrials.gov no. 01738035)。これらは今後の結論を待ちたい。

なので、現状のIgANの治療判断としては難しいが、自分はこの論文の作者たちと同じ意見だが、KDIGOのガイドラインがなんだかんだいってバランスは取れていると考えそれを実践している。その中で、患者の状態や年齢を含めて考え、これらのスタディを活かせていけたらなと思う。

次回は日本の扁桃摘出パルスについて触れてみたいと思う。




             
                腎臓はやはり奥が深い。。



2016/09/01

Canons and Apocrypha

 オーストラリア、ニュージーランドはけっこう自前でスタディを組み、その結果が斬新なことが多い。こないだAJKDにでたメタアナリシスも、腎不全患者さんにおいてリン吸着剤と生命予後に「相関はない」というもの(DOI:10.1053/j.ajkd.2016.05.015、日本のスタディもはいっている)。リン吸着剤は心血管病患者さんにおける抗高脂血症薬のようなキードラッグなだけに、真逆な結果すぎてしばらくは無視されるのではないかと思う。
 ただ、カルシウム含有吸着剤が非含有(セベラマーだけで、ほかはサンプル数が少ないためか有意差がなかったが)にくらべて生存率が低いという結果はほかの試験でも確認されているので、非含有の吸着剤が標準的になっていくのかなと思う。個人的には、リン値をmmol/lからmg/dlに変えるときには3.095975倍すればいいというのが発見だった。
 ガイドラインは質の高くないスタディが根拠なこともおおいが、載れば正典だ。ただ載らない外典にも、ある患者層には役立つのかもしれない。たとえば、毎食前に飲まなければないリン吸着剤を1回にしてみても、結構な人たちでリン値がかわらなかったというスタディがある(AJKD 2006 48 437、対象はセベラマー内服の白人とアフリカ系透析患者、平均年齢は72歳)。


2016/08/05

Future Has Come

 未来の話としてここに書いてきた人工知能の爆発的発展と社会変容が、最近は肌身に感じられるようになってきた。こないだの「人工知能のほうが早く深く正確な診断をつけてくれる」というくだりが、現実化した。今朝の毎日一面トップはIBMのWatson(図)に2000万の論文を読ませて学習させたら難しい白血病の診断を10分でつけてくれ、患者さんに適切な治療がなされ助かったというニュースだ。AIの責任をとらなければならないし、Alpha Goが対局の一つでありえないミスするようにAIも完璧ではないから、医師がAIを監督する必要はある。AIを育てるエキスパートドクターも必要だ(AI科医とでも呼ばれるのだろうか)。しかし残りの、とくに外科以外の医師の仕事は確実に変わる。AI-guided medicineで、より正確な医療と、質の安全の確保と、癒やしの医療が提供できればいいと思う。
 そんなときに「低形成腎と尿管瘤と原発性副甲状腺機能低下症と精神発達遅滞を合併する先天性疾患」をGoogleだの内分泌学会ページだのUpToDateだの小児腎の教科書だのでチマチマ調べるのは、もはやシュールでしかない気がしてくる(小児腎の教科書『小児腎疾患の臨床』は名著だけれど)。2000万もの論文は一生かかっても読めないし、私もWatsonにききたい。でも今ここにWatsonはいないので、調べている。CAKUTに副甲状腺機能低下症を合併するもので原因遺伝子がわかっているのはHDR症候群(GATA3遺伝子)、22q11.2欠損症候群(TBX1遺伝子など)。ただし前者はhypoparathyroidism、sensorineural deafness and renal diseaseの略で感音難聴を合併し、後者は胸腺機能低下や心奇形などを合併するという。
 

2016/08/01

Crystals and Chemicals

 58面体にカットされたダイヤモンドをブリリアントカットと呼び(図)、1919年、ベルギー生まれのポーランド系ユダヤ人Marcel Toklowskyが20歳の時にロンドン大学大学院の研究論文として考案した。数学者であった彼がコンピュータのない時代にダイヤモンドの反射・屈折率を考慮して最も光り輝くように計算したのだ。
 これはideal cut(理想のカット)とも呼ばれ、現在までダイヤモンドカットの基本になっている。天才が才能で世界に貢獻するのは本当に素晴らしいことだなと思う。彼は1940年にニューヨークに移住して、1975年に引退するまで宝石デザイナー、宝石商として活躍した(New York Times 1991年2月15日付の追悼記事)。
 58面は、トップのtable、8個のstar facets、8個のkite facets、16個のupper girdle facets、16個のlower girdle facets、8個のpavilion main facets、そしてボトムのculetからなる。Culetをなくした場合は先がとがった57面体になる。ただこのカットもTolkowskyが光の3回以上の屈折を考慮していなかったことや、光はファセットに対していかなる角度からも入射してくることから、完璧ではないらしい。奥深い世界だ。
 さて腎臓内科医はたいてい元素が大好きだが、電解質しか興味がないわけじゃない。炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、フレロビウムは周期表第14族で、共有結合性化合物の炭素から下に降りるに従って金属製が増していく(フレロビウムは不安定な超重核元素だが、陽子114は魔法数で、中性子の魔法数184とあわせた同位体フレロビウム298は目に見えて存在させることができるかもしれない)。ダイヤモンドやガラスのように結晶をつくることから別名crystallogenと呼ばれることもある。
 炭素もケイ素も外殻に4つの非共有電子を持っているが、炭素は炭素どうしで鎖になるのに対し、ケイ素は-Si-O-Si-構造でつながっていく。ガラスもそうだし、シリコンはH(OSiH2)nOHと(OSiH2)nを骨格に持つsiloxane polymerのことだ。で、この半有機的なケイ素化合物には免疫撹乱作用があって、シリカとANCA関連血管炎の相関(JASN 2001 12 134)、SIIS(silicon implant incompatibility syndrome、レビューのひとつはImmunol Res 2013 56 293)としての体内シリコンによるANCA関連血管炎がある(Case Rep Nephrol 2014 2014 902089)。とくにMPO-ANCA。
 このようにANCA関連血管炎にも原因がある場合があるなんて、お友達に教えてもらうまで知らなかった。コカインのbulking agentに用いられるレバミゾールによる血管炎は経験したが。最近抗GBM病の分布に時間・地理的なクラスタリングがみられるというアイルランドの報告(doi: 10.2215/CJN.13591215)、血管炎ではないが膜性腎症とPM2.5の相関を示した中国の報告(doi: 10.1681/ASN.2016010093)があったばかりでもあり、環境曝露がどんどん明らかになる。



2016/07/13

Lost in translation

 UEFA EURO 2016のファイナルではフランスが延長戦で惜しくも敗れた(写真はイメージ)。サッカー延長戦の勝敗決着方法は2004年からゴールがあっても前後半までやりきるよう変更されたが、それまでは変遷があって、昔はサドンデス(突然死)方式だった。その突然死(院外目撃CPA)に対して高用量エリスロポエチン(Epoetin alpha:そういえば国産バイオ後発品の安価なEpoetin Kappaがあるらしいが、透析業界では長時間作用型が便利でまだあまり使われていないようだ)を行うことで脳の虚血後再灌流障害が改善するのではないかという、フランス多施設EPO-ACR-02トライアルのPhase 3結果がでた(JACC 2016 68 40)。
 どうしてエリスロポエチン?と思ったが、効果に時間のかかる赤血球造血とは別のメカニズムが想定されているらしい。エリスロポエチン受容体は二量体で、ちゃんとしたアイソフォームでは細胞質ドメインにJAK2がついてSTAT5をリン酸化するだけでなく、STAT1、STAT3、CRKLとも結合できる(EPOR-Tなどちぎれたアイソフォームもある)。いろんなところにあって、内皮細胞にもあるので腫瘍の血管新生に関与するといわれ、FDAが担癌患者への使用を注意するblack-box warningをつけている理由のひとつだ。
 とにかく機序はまだわからないのだが、10年以上前に動物の脳虚血モデルで脳細胞のアポトーシスをレスキューしたという報告(PNAS 2001 98 4044)、ヒトの脳梗塞例でペナンブラの縮小と脳ダメージマーカーの低減に相関したという報告などがでた(Mol Med 2002 8 495)。しかし数年前にSTEMIでの虚血後再灌流障害の改善を狙ったREVEALトライアルがでたが、両群で梗塞サイズに差はなく(70才以上ではむしろ大きかった)、介入群で死亡やステント内塞栓が多かった(JAMA 2011 305 1863)。
 さてEPO-ACR-02トライアルは、院外目撃CPA(60才前後、約半数がshockable、約6割にbystander CPRがなされ、ROSCすなわち循環の復活までの平均時間は25分、そして約4割が緊急でCPIを受けた)をクーリングを含む標準治療+EPO 40000単位を12時間ごと5回までうつ群と、うたない群で分け、60日後のCPCスケール1(ほぼ正常、5が脳死状態)の割合を比較した。結果、両群にほとんど何の差もなかった。60日後までに約60%が死亡、CPCスケール1は約30%。つまり生き残ったひとの多くは脳機能がたもたれたということで、EPOにかかわらずそれはよい結果なのだが、悪いのはREVEALトライアルよろしくEPO群でステント内塞栓が多かったことだ。
 個人的には、心肺停止の場合には組織の低酸素が刺激になって十分に内因性のEPOが分泌されるので、そこに大量療法をおこなっても受容体も飽和して効かないし、EPOが多すぎて副作用がつよくでるのではないかと考えてしまう。EPO濃度を測っていたらはっきりしただろうが。オーディオサマリーを聴いてみると、エディトリアルには「もうEPOの話はおしまいではないか(用量やタイミングの問題ではないのではないか)」と書いているそうだ。REVEALトライアルのこともあるし。でも心肺停止の脳保護にはいまのところクーリングしかなく、いろいろ調べてもまだ何もみつからない。基礎実験の結果が実臨床に反映されず残念だが、それが当たり前だから探し続けてほしいと思う。


2016/07/09

Renal Supplements

 2008年に冬眠するクマ(図)が尿毒症にならない仕組みにアミノ酸リサイクリングが考えられていると聴いて腎臓に興味を持っていたら、2013年にクマの論文が腎臓内科雑誌にでて、腎臓内科医は動物好きだなと改めて思った。しかしアミノ酸リサイクリングをしているのはクマだけではないらしい。アイソトープで標識したアミノ酸を用いた実験などで、じつは60kgのヒトで毎日250−300gのたんぱく質が入れ替わっており、そのうち100−120gが筋肉だという(CJASN 2016 11 1131)。しかし、それだけのたんぱくを全部CO2まで異化分解して1から作りなおすのは大変なのでアミノ酸リサイクリングをしており、結局1日に補うたんぱく必要量は50-80gで済んでいる。

 さてこのたんぱくターンオーバーのバランスは加齢やCKDで崩れる傾向にあり、加齢では同化合成にかかわるmTOR-p70s6kシグナリングの抑制が関与しているといわれる。実際健康な70代の被験者にω3脂肪酸を8週間摂らせたところこの系が再活性化したんぱくが増えたという小さなスタディがある(Am J Clin Nutr 2011 93 402)。またCKDでは、たんぱく分解が増えミオシン重鎖合成パターンが変わることがわかってきている。いまのところそれらに対して打つ手はないが、ω3脂肪酸はCKD患者で摂取も少なく血中濃度も低い(ω6/ω3比は炎症や死亡と相関する)ので、これを補ってはどうかというスタディが最近でた(CJASN 2016 11 1227)。

 ω3脂肪酸とは要するにfish oilである。肉食文化のためか欧米でfish oilは有難がられており、抗炎症作用がIgA腎症に試されたりしているが(NEJM 1994 331 1194、KDIGOガイドラインの推奨レベルは低い)、EPAとDHAを2対1で配合した1日2.9グラムのω3脂肪酸を透析患者さん(CRP 0.5mg/dl以上)に12週間投与したところ、たんぱく分解は減ったが合成も減ってしまい(プラセボ群では合成は増えた)差し引きは変わらなかった。この結果はOmega-3 Fatty Acid Administration in Dialysis Patients Studyの一部で、これから他の結果も出るだろうが、ω3脂肪酸(とくにEPAとDHA)の透析患者さんへの効用については古くからまことしやかに伝えられてきたらしい(CJASN 2006 1 182)。

 ω3以外のサプリメントはどうか。よく聞くのがカルニチンとクレアチンだ。紛らわしいが、カルニチンはラテン語で肉を意味するcaro、クレアチンはギリシャ語で肉を意味するkreasに派生する(フランスの化学者Michel-Eugène Chevreulが肉汁から発見し命名した)ので無理もない。カルニチンはリシンが腎臓と肝臓でビタミンB6、ナイアシン、ビタミンC、鉄などの存在下にメチオニンのεアミノ基がトリメチル化されて生合成されるが、肉(とくにヒツジ、ヤギ、ウマなど)からも摂取される。長鎖脂肪酸がミトコンドリアの外膜を越え内膜を越えTCA回路にたどり着くためのシャトルの役割をしており、長鎖脂肪酸は安静時の骨格筋・心筋の主エネルギー源なので、よくダイエットに効くなどと言われる。

 カルニチンは水溶性で分子量が161g/molのため透析で喪失されることから、静注で補うことがある。ただし血中濃度を測って補うことは稀だ(カルニチン欠乏症という長期絶食、酵素異常、肝疾患、腎尿細管異常などに関連した病気があるので測れる;ある検査会社では総カルニチンの基準値は45-91μmol/l、遊離カルニチンは36-74μmol/l、アシルカルニチンは6-23μmol/l)。一方でカルニチンが動脈硬化に関連するという心配があるが、ひとつの研究では腸内細菌で代謝されつくられるTMAO濃度が高い場合に限るという結果だった。静注ならいいのかもしれない。

 一方のクレアチンも筋肉のエネルギー源(CKすなわちクレアチンキナーゼによりリン酸化されATPが消費される)で、何段階か経て筋肉まで届く。生合成の場合、まず腎臓の近位尿細管でアルギニンとグリシンからAGATによりguanidinoacetate、GAAができる(マウスとちがいヒトでは肝臓などにもAGATがある)。GAAはGAT2を通って肝臓に入り、GAMTによりS-adenosylmethionine(SAM)からメチル基を受け取りクレアチニンになる(SAMはS-adenosylhomocysteine、SAHになるがメチオニン回路でSAMに戻る)。

 こうしてできたクレアチンが筋と脳にSLC6A8遺伝子にコードされたCRT(Na+/Cl-依存クレアチントランスポーター)を通って入る。筋と脳でCKのタイプが違う(CK-M、CK-B、心筋はCK-MB)のはよく知られているが、CKは細胞質で二量体、ミトコンドリアで八量体だそうだ。ほかに食事から50%くらい摂取される。腎機能が低下すると、腎臓のAGAT活性が低下しGAAが減る。また尿毒素物質のグアニジン化合物、とくにβ-GPAはCRTを阻害しクレアチンの取り込みを落とす。CKD、透析患者さんにカルニチンやGAAを補充して筋肉がつくかは、まだわからない。ただしクレアチンが非酵素的に分解されたのがクレアチニンなので、補充すればクレアチニン値はあがる(クレアチンサプリメントをのむ人の急性腎障害でクレアチニン38mg/dlというのをみたことがある)。

 なおカルニチンを細胞質に取り込むOCTN2(organic cation/creatine transporter novel type 2)の常染色体劣性遺伝異常ではカルニチン欠乏になり、カルニチン大量投与を行う。クレアチンではAGAT(をコードするGATM遺伝子)とGAMTの常染色体劣性遺伝、SLC6A8のX-linked異常で脳のクレアチン欠乏症になる。前者ふたつはクレアチン大量投与で治療できるが、SLC6A8異常は脳への取り込み異常なので反応しにくいようだ。それにしても栄養や代謝の話は複雑で、私の文章など専門の人からみればベイビートーク(あのねー脂肪酸がねー、というレベル)だ。彼らはどれだけ勉強するんだろう…すごいなと尊敬する。


2016/07/08

Heparin-grafted membranes

 Nafamostat(フサン®)、凝固線溶でついでにいえばCarbazochrome(アドナ®)、Tranexamic acid(トランサミン®)は、薬理学で教わらなかったがよくつかわれるので、少し調べておきたい。NafamostatはProstacyclinアナログで血圧低下作用がなく、セリンプロテアーゼ阻害薬としてフィブリノゲンからフィブリンへのたんぱく分解をおさえる。CRRTサーキットの開存は10-30時間(J Artif Organs 2013 36 208、Int J Artif Organs 2016 39 16)で、ヘパリンとくらべて出血は少ないようだが開存性の優劣はスタディによりまちまちだ。ただ24時間ごと膜を交換する日本ではそこまで問題にならないかもしれない。
 いっぽう、CarbazochromeはAdrenalineの酸化物Adrenochromeと尿素の化合物Semicarbazineが付加脱離反応して生成し、血小板のα受容体を刺激する。それにより細胞内Ca濃度があがり、PLA2を介したアラキドン酸カスケードのup-regulationとCalmodulinを介した血小板収縮(凝集物質の放出)を起こし止血作用を示す。Tranexamic acidはlysineの合成アナログで、プラスミノーゲンやプラスミンにある複数のlysine receptorをブロックしてフィブリンとの結合を防ぐ。価格と効果から、WHOの必須薬リストにも載っているキードラッグだ。知らなかったのは、これが戦時中にすべてを破壊されたあとの慶応義塾大学医学部生理学教室で(今年4月にご逝去なさった)岡本歌子先生が開発なさったことだ。
 さて、ヘパリンを使いたくない時の血液透析といえば日本ではNafamostat、米国では回路内クエン酸抗凝固(通常HDなら人手がいればpre-filter 生食ボーラス)が慣習だが、そろそろ新しい方法はないかなと思って調べてみたら(Semin Dial 2015 28 474)いくつかあった。なかでも、ダイアライザ中空膜の表面積は血液ライン内腔の20倍あるのでメインの膜部分をヘパリンでコーティングしようというのが熱い。膜技術の向上が医学の発展につながると堅く信じているのは欧州か日本だが、欧州のがみつかったので紹介する(日本にもあるのかもしれない、大手会社が今年「抗血栓性を飛躍的に向上させた新規高分子材料を開発」というプレスリリースをしている)。
 Heparin-grafted membrane(HGM)の歴史は古く、セルロース膜に陽荷電のN, N-diethyl-aminoethyl group (DEAE)をつけプライミング時に液に含まれるヘパリンでコーティングする技術は前からあった。しかしCTA、PSなどのメジャー膜が技術的に困難なので研究がやめになり、最近になってPAN膜でふたたび開発が始まった。有名なAN69ST膜はpolyethyleneimine polycationによりプライミング時にヘパリンをコートできる。さらに、PANとmethallylsulfonateのコポリマーにヘパリンを編みこんだHeprAN膜(Evodial®)がでて、proof-of-conceptのRHODESスタディ(Hemodial Int 2013 17 282)で通常HDにおいて有意にUFH、LMWH用量を減らした。
 つづけて多国籍オープンレーベルHepZeroスタディ(KI 2014 86 1260)がでた。出血リスクの高い透析患者さん約120人ずつで、HeprAN膜使用と通常膜(主にPEAS膜とPS膜)+生食ボーラスを比較したところ、成功率(血栓トラブルなく透析を終える)は生食群より有意に高かったが68%だった。また+15%の閾値をまたいでしまい、非劣性しかいえなかった。出血事象、その他の有害事象(PAN膜なのでアナフィラキシーとか)の差はかかれていない。出血や術前後で透析されたのでほとんどのひとは1回しか無ヘパリン透析を必要とせず、こういう人が病院にいたときに看護師さんに生食ボーラスの手間をかけるか、同じ効果でいつもとちがう高い膜を使うかは微妙なところだ。やはりNafamostatか。


2016/06/02

Intradialytic hypertension

 透析中に血圧が上がる患者さんは結構いる。透析低血圧は透析困難症とも呼ばれさまざまな対策がなされるのに対し、透析高血圧(または透析中高血圧;正式な医学用語は知らないが英語はinTRAdialytic hypertension)はそこまで注目されていないというか、Handbook of Dialysis(5e、2015年、John T. Daugirdas他)の透析中合併症にも含まれていない。Dry weightが多いとか交感神経系が亢進するとかは聞くし、透析前の降圧薬を増やしたりすることもあるが、きちんと調べたことはなかった。

 この分野で研究を続けてきたのはDr. Jula Inrigで、彼女がCLIMBスタディ、USRDS Dialysis Morbidity and Mortality Waves II cohortの分析で透析高血圧が心血管系リスク因子であることを示した。で、この頃からすでにその原因に体液過剰、透析液−血液Na濃度勾配、交感神経系の亢進、endothelin-1の増加(とNO産生の減少)、renin-angiotensin系の亢進、降圧薬の透析液への喪失、ESAなどが原因に考えられていた。

 で、"less-recognized cardiovascular complication of hemodialysis"、"it's time to act"などという論文が出ていた(AJKD 2010 55 580、Nephron Clin Pract 2010 115 c182)。透析高血圧じたいはよく知られているが、その定義も曖昧(研究では透析前後でsBPが10mmHg以上あがることが何度も続く、などとされその割合は約10%)で、2010年頃から減ってきたか増えているかもわからない。レビューが毎年(Curr Hypertens Rev 2014 10 171、Hypertension 2015 66 456、Blood Purif 2016 41 188)でているからホットトピックなのかもしれない。

 書いてあるのは、当初は透析高血圧は家庭血圧とは独立したリスク因子と考えられていたが、その後でたコホート研究や24時間、44時間(透析が4時間なので48-4)血圧モニタリングをつかったスタディでは透析高血圧じたいのadded hazard riskは消えて、家庭血圧が問題とわかった。いまでは透析高血圧は背景にある高血圧が透析をきっかけに(ちょっとちがうが白衣高血圧のように)悪化する現象と考えられている。

 体液過剰ではDRIPスタディが引用されdry weightをきちんと下げよう、とされ透析液−血液Na濃度勾配では透析液Na濃度を患者Na濃度−5mEq/lと+5mEq/lに設定したら低いほうが血圧が下がったスタディが紹介されている。内皮細胞障害、動脈硬化(aortic pulse wave velocity上昇)、交感神経系亢進、endothelin-1、renin-angiotensin system亢進は相互リンクして論じられ、α/βブロッカー(とくにβ、あるいはcarvedilol)、ACEI/ARBを使ってはどうかと言っている。

 そりゃそうだと思うが、意外とβブロッカーが入っていない患者さんは多い。βブロッカー(atenolol)とACEI(lisinopril)で心肥大のある高血圧透析患者を降圧すると後者で圧倒的にイベントが発生し中止になったHDPALスタディもあるし、βブロッカーはACEI内服の心不全においてbackground sympathetic nerve dischargeを減らさずlow- and high-frequency harmonic oscillations in sympathetic nerve activityを回復する(ほらやっぱり神経の話は難しい…とにかくいいことらしい)のでもっと使っていいのかもしれない。昔は血管拡張薬のminoxidilが使われたがいまはこれは育毛剤だ(海外でRogain®、国内でリアップ®)。

 Direct renin inhibitor(aliskiren)は使いにくいが認可はされているし効果もある。Sympathetic renal denervationは難治高血圧透析患者で効果を示した小さなスタディがあるが、SYMPLICITY HTN-3、SYMPLICITY HTN-3 Japanで有意な効果が出なかった。理論上は効果があるはずなので、シャム群にHawthorne効果があったとか、しっかり焼灼できていない(安全だったのはなによりだが)とかいろいろ言われている。別の会社がEnligHTN(図、次世代多電極デバイス)を治験中だ。Endothelin-1 antagonists(-entans、Bosentan®など)はいまのところ肺高血圧以外の高血圧には使われない(体液貯留が起こる;余談だが糖尿病性腎症の進行予防にatrasentanを用いたSONARスタディが組まれている)。

 透析中に降圧薬が喪失されることについてはβブロッカー(とくにatenolol、metoprolol;carvedilolは失われない)、ACEI(lisinoprilが50%、fosinoprilは失われない、ほかは30%程度)で注意が必要だが、ARB、CCB、clonidine、hydralazineはほぼ残るのであまり日本では関係ないかもしれない。ESAは静注後30分から3時間くらいMAP 20mmHg程度の高血圧を起こすとされ、透析高血圧の場合は透析後に打つのがよい(それがルーチンだと思うが)。透析液温度、透析液K、透析液Ca濃度も影響する。



2016/06/01

AKI and nutritional support

 AKIの栄養管理についてはESPENが2009、ASPENが2010、KDIGOが2012年にガイドラインを出しているがどれも予後にもっとも関わるprotein energy wastingを予防することを主眼に置いている。KDIGOでは透析を遅らせるためにたんぱく制限することを推奨しない、異化亢進のないRRT依存のないAKIでたんぱく質0.8g/kg/d、RRT依存のAKIで1.0-1.5g/kg/d、異化亢進があるまたはCRRT依存のAKIでは1.7g/kg/dまで、中心静脈栄養よりは経腸栄養を、と書いてある。
 AKIは多臓器不全の一部として起こることが多く、またAKIにkidney-centered systemic inflammatory syndromeとしての面があって(図、KI 2012 81 942)、いずれにしても消耗疾患なのでカロリーは十分に投与したほうが良いとされる(20以上、25−30以下kcal/kg/d)。またCRRTではアミノ酸やたんぱく質が失われることも考慮する。AKIの場合体液バランスの変動がはげしくどの体重を使うかでoverfeeding、underfeedingになる可能性があるが、慣例では家族にきいた「普段の体重」または(肥満の場合)理想体重を用いる。
 ただしAKIがheterogeneityのつよい疾患なこともありスタディがほとんどないので、エビデンスレベルは弱い。たんぱく質摂取量の推奨は異化を推定したデータから来ている。ただし実際にはこれでは窒素バランスはプラスにならないらしい(2.5g/kg/d近くのたんぱく質が必要)。Prescribed doseとreceived doseに差があるのはよくある話だが、そこまでたんぱく質を投与すれば尿毒症や体液過剰の悪化がおこるかもしれない。最初からもりもり栄養をあげて問題になればearly RRTをしたほうが予後がいいのかどうかは、スタディがないのでわからない。Early RRTについては、最近の(JAMA 2016 315 2190)も含めて数限りなくスタディがでているが。
 中心静脈栄養より経腸栄養が予後良好というのはわかるが、必要な栄養が経腸でとれないなら、透析中の静脈栄養などで補充してもよいとこの分野でレビューを多く書く(Curr Opin Clin Nutr Metab Care 2013 16 217、J Ren Nutr 2013 23 255)Dr. Enrico Fiaccadoriは言い、根拠のひとつにTICACOSスタディ(Intensive Care Med 2011 37 601)を挙げている。これは内科・外科・外傷ICUで経腸・中心静脈栄養を使って2000kcal/d・76g/kg/dたんぱく質を維持したら1400kcal/d・53g/kg/dタンパク質の群に比較してhospital mortalityが良かったという一施設スタディだが、入院期間や挿管期間は悪かった。AKI発症に有意差はなかった。
 AKIが全身炎症疾患という側面から、抗炎症の栄養素についての研究もされている。Glutamineは免疫細胞や増殖の速い細胞の基質で、heat-shock protein 70やglutathione合成を通じてHigh Mobility Group Box-1 related mediatorsのdown-regulationや酸化ストレスの緩和によって実験動物では腎保護効果をもたらすと言われている。ICU患者において0.2g/kg/d相当のglutamineが感染合併症を減らすかもしれないということで、透析でアミノ酸が失われるAKIではさらに投与するとよいかもしれない(ただし少量ではあるが尿毒素になる)。同様にω−3脂肪酸も酸化ストレスを緩和するとされている。


2016/05/27

ARNI and Ivabradine

 HFrEFの慢性期の治療薬といえばβブロッカー、ACEI/ARB、MRAだったが、2016 ACC/AHA/HFSA Focused Update on New Pharmacological Therapy for Heart FailureにClass of Recommendation I、Level of Evidence 2-R(randomized)でACE/ARBをARNIと代替するとadded benefitがある、またRecommendation IIa、Evidence 2-RでEF 35%以下でNYHA II-IIIで安定した洞調律 70/min以上の患者でguideline-directed evaluation and management(maximal β-blockadeを含む)を受けた患者にIvabradineを追加すると入院を減らすという追加事項が載った(DOI:10.1016/j.jacc.2016.05.011)。
 ARNIはangiotensin receptor-neprilysin inhibitorの略で、昨年PARADIGM-HFスタディがでた(当時は治験薬だったが今はsacbitril/valsartan、Entresto®という名前がある)。Neprilysinはかなり多彩な基質をもつ酵素でたとえばangiotensin IIも分解してしまうので、単独に阻害すると血管収縮など副作用が懸念された。それでまずACE/neprilysin inhibitorが開発されたが(omapatrilat、DOI:10.1002/ejhf.250)、血管浮腫が多くやめになった。
 PARADIGM-HFスタディはARNIとARBのhead-to-head trialではなく対照群のACEIに対しARBの用量が多かったのでneprilysin inhibitorによるadded benefitを証明できるか疑問に思ったが、すでに認可されている。50mg、100mg、200mg錠にsacbitril/valsartanが24/26、49/51、97/103mgの合剤でvalsartanはbioavailabilityがよいのでそれぞれ40、80、160mgに相当する。1日2回内服だ。eGFR 30ml/min/1.73m2以下はカナダはnot recommended、アメリカは50mg錠1日2回。75才以上の高齢者はカナダでは50mg錠から開始とある。
 Ivabradineはノーマークだったがペースメーカー細胞、とくに洞房結節のペーシングに関係のあるfチャネルを阻害する。Fチャネルはfunny channelの略で、膜電位が-50mVになると開いてNa+とK+の混合流入(funny current、If)による拡張期脱分極を起こす。このチャネルはvoltage-gated and cAMP-gatedな特徴があり、Hyperpolarization-activated Cyclic Nucleotide-gated channels family(HCN)に属する。Funny currentに似たIh(hyperpolarization-activated channel)がニューロンにもあり、ivabradine内服で網膜にあるIhチャネルを一部阻害しphosphene(眼閃、目を閉じていても光が見える)が約3%に起こる。
 最初心筋梗塞に対してBEAUTIFULスタディ(Lancet 2008 372 807)がされたがprimary endpointに有意差が出ず(サブ解析では効果も示されたが)、次に心不全に対してSHIFTスタディ(Lancet 2010 376 875)がでて適応が通った。ふたたび心筋梗塞に対してSIGNIFYスタディ(NEJM 2014 371 1091)が出たが有意差はなかった。心拍数にあわせて2.5mg、5mg、7.5mg 1日2回でtitrateするが、βブロッカーが最大はいった患者で洞房結節をいじるので除脈や房室ブロックなどに注意が必要だ。15ml/min/1.73m2以下の群はデータがないので慎重投与になっている。


2016/05/24

RRL

 泌尿器科のことも勉強しなければならないなと思う。珊瑚状結石などが腎盂腎杯に居座って慢性炎症が持続すると、二次性に腎洞や腎表面に脂肪が増生し、それがどんどん成長すると腎が押し広げられつつ萎縮し(上図、EURORAD Case 11934)、ついに脂肪に置き換えられて完全に消えてしまう(下図、Int J Surgery 2010 8 263)。これをrenal replacement lipomatosis(RRL)とかreplacement lipomatosis of kidney(RLK)とかいう(Indian J Nephrol 2010 20 92、Indian J Urol 2012 28 105)。知らなかった。



 原因は石関連がほとんどだが、まれに腎TBとの合併(Eur Radiol 2002 12 810)や移植腎との合併も報告がある(Transplantation 2005 79 496、Br J Radiol 2005 78 60、Case Report in Transplantation 2011 Article ID 161759)。腎実質内に脂肪増生が起こることもあり(xanthogranulomatous pyelonephritis、XGP)、これは尿路感染症によることが多いがRRLと共存したり(Int J Urol 2004 11 44)皮膚と瘻孔をつくったり(Clin Imag 2005 29 356)する。腫瘍との鑑別が難しく腎摘を要することも多い。
 腎洞の脂肪増生(renal sinus lipomatosis、RSL)じたいは加齢やステロイド使用などで両側におこるプロセスだが、腎を押し広げるほどのRRL/RLKはほぼ(ほぼほぼ?)100%片側性だ。両側性はIndian J Radiol Imaging 2002 12 251しかみつからなかった。
 慢性炎症がどうして脂肪増生になるのかはよくわかっていない。論文によっては腎の障害が脂肪増生を起こすというが根拠は書いてない。萎縮腎はいくらでもみるが脂肪増生を続発することは稀だ。やっぱり慢性炎症が脂肪増生を起こすのだろう。脂肪組織がTNF-αなど炎症サイトカインを出すことはあったと思うけど、逆は知らない。

2016/05/16

Podocytopathy Updates

 CD80(B7.1)が小児MCDで尿中に出て診断補助になるかもしれないという論文が出た時、CTLA-Ig(Abatacept、Belatacept)が治療に用いられるかもしれないと誰もが考えた。以後、CD80がMCDの足細胞に発現しているだけでなくFSGS、糖尿病性腎症でも足細胞に発現しているという発表がでて、CTLA-Igによりこれらのpodocytopathyと総称される疾患群が治療できるのではないかと期待された。

 2013年にRTX抵抗・血漿交換中の移植後FSGS4例とステロイド抵抗の原発性FSGSで足細胞にB7.1が発現しておりAbataceptで蛋白尿が減少し、その機序にはB7.1によるβ1-integrinの不安定化を阻害することが考えられた(NEJM 2013 369 2416)。しかし、B7.1発現の再現性がないという報告がたくさんでた。

 2014年には2型糖尿病性腎症の腎生検の半数以上でB7.1が染色され、染色の程度は糸球体病変の程度に相関し、in vitroで高糖濃度で培養された足細胞でPI3-kinase経路を介してB7.1が誘導され、CTLA-Igで阻害される細胞障害がみられた。しかしこれも再現性がないという報告がでた(JASN 2016 27 999)。

 FSGSも糖尿病性腎症も根治療法がない。原発性FSGSはずっとcirculating factorsの存在が示唆されておりsuPARが取り沙汰されたこともあったが動物実験でFSGSを起こすものの臨床試験ではinconsistentな結果が多く出ている。

 糖尿病性腎症は足細胞病として研究が進められているが、足細胞がどのように傷害されアポトーシスを起こすのかは解明されていない。健常マウスと糖尿病モデルマウスの糸球体における遺伝子mRNAパターンを比較した論文がでた(JASN 2016 27 1006)が、後者でレベルが落ちている遺伝子は、足細胞の数が減ったことで二次的にそうなっているらしいという。

 興味深いのは、その遺伝子変異がフィンランド型ネフローゼの原因となる足細胞のスリットを構成するNephrin(NPHS1;なおNPHS2はPodocin異常)が膵β細胞にもあり、細胞内ドメインがリン酸化されるとglucose-stimulated insulin release(GSIR)を起こす。インスリン遺伝子の転写メカニズムのひとつはインスリンによるIRA(insulin receptor A)刺激でmTOR経路の下流にあるp70S6Kを介して行われるが、NephrinによるGSIRがIRAと関係しているかなどは不明だ。

 最近の論文(JASN 2016 27 1029)でNephrin、IRA、IRB(insulin receptor B;glucokinase転写などを促進しβ細胞の機能維持を司る)をcotransfectさせたHEK細胞でNephrinはIRAではなくIRBと共発現していたが、IRA、IRBに依存せずにその下流にあるPI3K/Akt/mTOR経路を介してp70S6Kを活性化した。じゃあフィンランド型ネフローゼ患児は糖尿病になるかというとならない。でもOGTTをやると耐糖能異常がみられた(NPHS2ではみられなかった)。いまごろNephrinが壊れないような治療が研究されているかもしれない。


2016/05/11

NOAC antidotes

 新規経口抗凝固薬には拮抗薬がないのは、いくら半減期が短いとはいえあんまりじゃないかと思っていた。実際に出血→AKI→薬剤蓄積→出血が何をやってもとまらない(から透析した)という事態を経験したことがある。
 でもArgatrobanの拮抗薬Idarucizumab(Digibind®のようなFab fragmentで、商品名もPraxbind®、Boehringer Ingelheim社)が試験を通って(NEJM 2015 373 511)2015年10月にFDAの承認を得ていた。2.5gram/50mlで2100ドルだが。Humanized murine antibodyなので過敏反応が起こりうるのと、抗凝固薬の拮抗薬なので塞栓リスクがあるのと、どういうわけか低K血症を起こす。また溶剤にsorbitolが入っているのでhereditary fructose intolerance(二糖類のfructose-1-PをglycelaldehydeとDAHPに切るaldolase Bの異常;通常は乳幼児までに発見されfructose、sucrose、sorbitolを含まない食事をすれば予後は良好)の患者には使えない。
 Factor Xa inhibitorsに対してはdecoy receptorのAndexanet Alfaが試験中(NEJM 2015 373 2413)だ。副作用は便秘・味覚異常・ほてりなどという。今年2月に、Portola社がBristol Myer Squibb・Pfizer社に1500万ドル払ってこの二社が日本で治験を行うライセンス契約を結んだ。新規経口抗凝固薬は日本で年間売上が8億ドルを超え、今後も増えていくとおもわれるので備えのためにも拮抗薬の認可が早晩おりるだろう。
 [2016年6月追加]最近は、NOACではなくDOAC(direct oral anticoagulant)という。カルテでNO-anticoagulationと誤解されるのでDO-anticoagulationとなったらしい。
 [2016年7月追加]ApixabanとVKAを比較したARISTOTLEコホートで腎機能の悪化とリスク・ベネフィットの関係を追跡したところ(doi:10.1001/jamacardio.2016.1170)、腎機能が悪化した群で塞栓・出血・死亡リスクは高まる傾向にあり、eGFR 25-50ml/min/1.73m2の群と50-80、または90ml/min/1.73m2の群でApixabanのほうが出血リスクが有意に低かった(CKD-EPI式;CG式のデータも同様の結果)。これらの群で抗塞栓効果は数字上Apixabanのほうがあったけれど有意差はぎりぎり出なかった。またCHESTがシステマティックレビューをしたが(doi: 10.1016/j.chest.2015.12.029)、不均一性が高すぎて微妙なのと、eCrCL 50-80ml/minを腎不全と言って良いのかわからない。





2016/02/09

Cacao Flavanols

 (+)-cathechinとその異性体、(-)-epicathechinを主成分とするcacao flavanolに動脈硬化の予防や血圧低下の効果があるというのは10年近く前から言われていて(JAMA 2007 298 49)、そのメカニズムは不詳だが内皮細胞のNO活性をあげることが関係しているらしい。ただし、ダークチョコレートでないと意味がないし、ダークチョコレートも苦味をとるためにflavanolを除去している場合があるので、量が明記されているものでなくてはならない。さらに、チョコレートは脂肪が高くカロリーが高いので却って害になるかもしれない(Lancet 2007 370 2070)。とはいえ欧州のFDAにあたるEuropean Food Safety Authorityは、200mgのflavanolを含む食品で一定の基準を満たすものには"cocoa flavanols help maintain the elasticity of blood vessels, which contributes to normal blood flow"と表示してもよいと2014年に決めた。
 そんなわけでドイツで透析患者さんを対象に900mg/dのcocoa flavanolを摂ってもらうスタディがされたら、FMD(flow-mediated vasodilation)上は血管が柔らかくなった(doi:10.2215/CJN.05560515)という結果だった(血圧はほとんど下がってないけど)。しかしこの実験はダークチョコレートや純カカオでつくったココアを使ったのではなく、cacao flavanolだけを水に溶かして飲んでもらったので、実際にこれだけの効果を得るにはたくさんチョコやココアを摂らないといけない。たんぱく制限がかかり代わりに脂質と糖質でカロリーを得るCKDの患者さんなら可能かもしれないが。ただし苦い(市販のポリフェノール高濃度ダークチョコレートを試食してみたが、カカオマスの純度が80%を越えるとかなり苦く、もはや薬だ)。あと、caffeineやtheobromineによる昂奮も考慮しなければならない(朝食べたらいいかもしれない)。


2016/02/08

Lactic Acidosis and Lymphoma

 リンパ腫で重度の乳酸アシドーシスを合併することがある。機序には肝障害、解糖系の亢進(hexokinase II、IGF-binding protein遺伝子の発現亢進、ミトコンドリア膜電位の喪失など、doi:10.1155/2009/534561)、腫瘍の成長がはやく血管新生が追いつかず内部環境が嫌気状態になる、などいろいろ考えられている。これらのいわゆるB型乳酸アシドーシスのほかに、低血圧、低酸素、敗血症などによるA型乳酸アシドーシスを併発していることもある。治療は現疾患の治療だが、きわめて予後不良だ(死亡率80%以上、Seminars in Oncology 2013 40 403)。Cairo and Bishopによる腫瘍崩壊症候群の診断分類に乳酸アシドーシスは含まれていないが、アポトーシスにより乳酸が産生されるという報告もある(Br J Haematol 2001 114 574)。化学療法をはじめて、重症乳酸アシドーシスを透析でしのいだという報告もあるが(NDT 2007 22 2383)、A型乳酸アシドーシスを合併していたり、アシドーシスの是正が追いつかなければ仕方ない。
 なお腫瘍細胞が好気環境でも嫌気環境でも解糖系が亢進していることをWarburg効果といい、FDG-PETはdeoxyglucoseが解糖系の亢進した細胞に取り込まれることを原理に利用している。リンパ腫は取り込みがとくにさかんで診断に利用されるが、じつはリンパ節のなかでFDGを取り込んでいるのは間質細胞で、腫瘍細胞は間質細胞がつくった乳酸を取り込んでさかんにミトコンドリアで利用している(つまりリンパ腫において乳酸アシドーシスはparaneoplastic syndrome)ということを組織の免疫染色で示した興味深い論文があった(乳酸産生にかかわるPKM1、PKM2、乳酸のエクスポートにかかわるMCT4は間質細胞でよく染まり腫瘍細胞ではほぼ染まらない、など;Seminars in Oncology 2013 40 403)。これはreverse Warburg effectと呼ばれているそうだ。それにしても代謝経路は複雑で、壁に代謝マップを貼っておきたくなる。


2016/02/04

キラキラ

 ATNで無尿になっているとき、高用量のフロセミド(100mgとか200mgとか240mgとかひとによって違うけど;私は日本に帰ってきてからは100mgにしているが)をボーラスして1−2時間の尿の反応をみて、でなければ透析するというプラクティスがある。20mgとか40mgじゃ出るものも出ないよね、という感覚が腎臓内科をやっているとなんとなく身につく。まあ高用量でもでないだろうな、とさっさと見切りをつけて透析を始める理由がほしくて打つことがほとんどなのだが、ときには腎臓が起きたように透明な尿が出ることもある。でもこういうテストに信ぴょう性はないらしいとどこかで読んだ(フロセミドはクリアランスをあげるわけではないので結局透析開始を遅らせるだけで死亡率を悪化させるおそれがあるとか;たとえばAnaesthesia 2010 65 283)。逆に体液減少にともなう腎前性腎不全が戻るかどうかをみるのに、外液を1L入れたけど出ませんとか、出ないので5Lいれてみますとか言われると、2Lくらいがちょうどいいんじゃないかなあ(反応尿があればよし、なければ諦める;ショックで入れなきゃいけない場合は別だが)と思う。これも根拠はないけど、経験的に。いずれのばあいも、反応するときはキラキラ透明な淡黄色がすーっとでて、濁った褐色の尿が滲むように出る時は尿細管が溶けたのをみているだけである。