2013/02/22

酸塩基平衡の本質 1/2

 クマが冬眠できるのも、ペンギンの脚が凍らないのも、サケが淡水と海水を行き来できるのも、スナネズミが砂漠で生きられるのも、全部腎臓と関係ある(まだ詳しくわかってない部分もあるが)。ペンギンの話などは、ヘンレ係蹄のcounter-current exchangeを説明する際に多くの医学部の授業で取り上げられていることだろう。

 腎臓は恒常性を守り、環境に適応する臓器。腎臓を学ぶと、世界の見方が変わる。先日、日本で酸塩基平衡についてレクチャする機会に恵まれたときも、それを強調したくてタイトルを『世界は酸塩基平衡でまわってる』にした。要は酸塩基平衡をbig pictureで捉えようということだ。その一部を説明してみよう。

 まずはツカミでイルカの尿酸結石について説明した(J of Zoo and Wildlife Med 2012 43 101)。イルカの尿管結石は原因不明だが、水族館で飼育の群に見られ野性では稀だ。そして研究により水族館群では尿中のcitrateがほぼゼロなことがわかった(Comparable Med 2010 60 149)。これと酸塩基平衡の関係は、大有りだ。

 Citrateは酸のバッファーだから、酸の大量摂取により枯渇する。これは私の推察だが、水族館で飼育の群は野生に比べて魚ばっかり食べて、しかも訓練のご褒美などでたくさん食べているのかもしれない。といわれても「魚がなんで酸なの?」と思うだろう。で、生物と酸(摂取と排泄)について話を始めた。続く。

 [2013年3月追加]クマの冬眠の話がレビューされた(KI 2013 83 207)。例の尿素→アミノ酸リサイクリングのみならず、骨代謝や血管・血栓・創傷治癒についても記述されている。