2013/02/01

心臓手術後の低リン血症

 肝切除後の低リン血症のは聞いたが、心臓手術後の低リン血症というのは初めて聞いた。報告(Eur J Cardiothoracic Surg 2004 26 306)によれば約1/3に見られ、より長く人工呼吸器、より多く昇圧強心剤のサポートを要した。
 ここで「なぜ低リン血症?」と少し混乱した。「カルシウム、PTH、ビタミンD」の軸、それに「腸管、骨、腎臓」間のホメオスタシスは手術の数時間でそこまで大きく動かなそうだから。それで、このような急性変化は細胞間のシフトと考えた。
 前掲論文や症例報告(Anesthesia 2006 61 1211)によれば、カテコラミン、サイトカイン、低体温などはいずれもリンを細胞内に引っ込める。飢餓(絶飲食)下に糖液とインスリンを静注しても同じことが起こりうる。なお、以前は輸血すると抗凝固剤でリンが下がると考えられていたが、実際はそんなことはない(Intensive Care Med 1985 11 144)。