2013/02/23

MPGN

 MPGN(membrano-proliferative glomerulonephritis)について語ろうと思って、知識と経験と文献を集めていた。すると、米国腎臓内科学会がだすKidney Newsの人気連載Detective NephronにMPGNが弟子と師匠の問答形式でわかりやすく説明された(Kidnry News 2013 2 22、会員でなくても読める)。著者Dr. JhaveriはブログNephron Powerを書く教育熱心なスタッフで、彼がMPGNの第一人者Dr. Sethiと協力して作った。

 MPGNは病理像を描写しただけの診断名だから、病態プロセスを反映しない。Type I-IIIの分類(Iはsubendothelial deposit、IIはdense deposit、IIIはsubepithelial deposit)も形態の違いで治療方針を変えない。それが病態生理に基づいて分類されるようになったのは最近のことだ(NEJM 2012 366 1119、著者はDr. Sethi)。

 この美しいレビューによれば、MPGNはimmune-complex mediatedとcomplement-mediated(とそれ以外)に分類される。前者は免疫グロブリンとC3いずれも沈着。抗体によって補体反応が惹起され腎糸球体内皮細胞が破壊され、さらに好中球や単球などが浸潤し増殖性変化を起こし、mesangium細胞が抗体と補体のごみ層を覆うように基底膜を修復するので膜性変化が起こる。

 その原因は自己免疫疾患、感染症、慢性炎症、paraproteinemiaなど様々だ。自分の経験で最近多いのはMGUS(monoclonal gammopathy of unknown significance)によるMPGNで、これはもはやunknown significanceではないからmonoclonal gammopathy–associated MPGNと呼ぶべきと著者は主張する。

 後者はC3のみが沈着。抗体も微生物のかけらもなくても勝手に補体が暴走して起こる。補体の代替経路は常に低レベルにオンであるが、暴発しないようにFactor Hはじめ様々なタンパク質が制御している。この制御系に先天的に異常があると、感染症など補体活性が高まるちょっとしたキッカケを機に補体が暴れてしまう。C3 nephropathy、dense deposit diseaseがこれに分類される。

 その他は、C3もIgGも糸球体に沈着しないもので、基本的にはTMA(thrombotic microangiopathy)のことだ。原因として薬剤性TMA(CNI、calcineurin inhibitorなど)、TTP(thrombotic thrombocytopenic purpura)、骨髄移植後、放射線治療後、悪性高血圧、APS(anti-phospholipid syndrome)などがあげられる。

 [2016年7月追加]MPGNの治療は上記のような原病に準じるわけだが、原発性の場合どうするかについては数が少なく小児の限られたデータしかないのでガイドライン(KDIGO 2012年、日本腎臓学会2014年)でもエビデンスレベルが低い。試されたのは1mg/kg/dのステロイドと経口cyclophosphamideないしMMFで、KDIGOは「ネフローゼで腎機能悪化例に対して」推奨されている。例によってRTXも試され効果があったようだ(Clin Nephrol 2012 77 290)。