2013/02/22

酸塩基平衡の本質 2/2

 何でも食べれば酸になる。炭水化物はCO2(嫌気下には乳酸)、脂肪はCO2(飢餓、インスリン低下時にはケトン)、たんぱく質はCO2と不揮発酸(とくに動物タンパクは硫黄やリンがあるから)になる。その結果一日に出る15000mmolのCO2と50-100mEqの酸をどう排泄するか?これが生命に課せられた課題だ。

 というのも正常のpHは7.4、H+濃度にして40ナノモル/Lに過ぎない。H+は毒なのだ。だから生命はH+をさまざまなバッファーにより取り込んでいるほか、CO2は肺で排泄、その他の酸は腎臓で排泄している。こう聴けば、あなたも愛する者の安らかな寝息に「ああ、酸を排泄しているのだなあ」と生命の神秘を感じるのではないか。

 もし感じなければ、イルカ、クジラ、ベルーガ、アシカ、アザラシなど、息を止めて長く水中に潜る愛らしい動物達のことを考えよう。彼らは代謝と心拍数を下げてCO2産生を押さえ(その分嫌気代謝で乳酸がたまるが)、CO2と乳酸を潜水が終わるまで筋肉にトラップしておくなど大変な工夫をしているのだ(Compr Physiol 2011 1 447)。

 ここから話は腎臓による酸排泄の仕組み、血液最大のバッファHCO3-、それを維持する肺と腎臓のチームプレイ、チームプレイのルールであるHenderson-Hasselbalchの方程式(式自体より、それが意味すること)へと進む。私にとってはこれが酸塩基平衡の本質、まずこれを理解しなければつまらない。数字と計算はそのあとだ。