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2019/03/01

腎臓内科医が考えるC型肝炎について。

 皆さんはC型肝炎(HCV)の診療は得意だろうか?

 多くの腎臓内科医は首を横に振る人も多いかと思う。筆者もその一人である。

 KDIGOからCKDにおけるHCVのガイドラインが出ており、それを見ながら少し勉強できたらと思う。

 今回は、簡単な記載であり実際には直接ガイドラインを見ていただきたい。

 評価のタイミング

 以前の2008年に比べて、より細かく提言された。

 ・CKD患者
  −CKD評価の最初の段階でHCVスクリーニングを行う(1C)。
  −抗体検査が陽性の場合には、NAT(核酸増幅検査)によってHCV-RNA検査を行う(1A)。
  −HCV感染患者には肝臓の繊維化を評価を行う(1A)

 ・透析患者
  −施設透析開始時、または透析機器の変更や方法変更時にHCVスクリーニングを行う(1A)。
  −施設透析では、6ヶ月毎に抗体検査とNAT検査を行う(1B)。
  −NATだけ、もしくは抗体検査が陽性時にNAT検査を行う(1A)。

 ・腎移植患者
  −腎移植評価の際にHCVスクリーニング評価を行う(1A)。

 肝繊維化評価目的に肝生検などの侵襲的な検査は行うべきではない。

 ☆抗体検査

 下記に簡単な手順のアルゴリズムの表を載せる。




 HCV感染の治療(CKD患者、移植患者)

 以前のガイドラインと比べインターフェロンの使用推奨がなくなった。

 ・HCV感染のある、すべてのCKD患者に対して抗ウイルス治療可能か評価を行う(1A)。
  −インターフェロンなしの治療を推奨(1A)
  −HCVのgenotype、ウイルス量、治療歴、薬剤の反応、GFR、肝臓繊維化の程度、合併疾患の程度、腎臓・肝臓移植の適応(1A)

 ・GFR≧30ml/min/1.73m2 (CKD G1-G3b)の患者では、DAA(direct-active antiviral)治療のレジメンが推奨(1A)

 ・GFR <30ml/min/1.73m2 (CKD G4-G5D)の患者では、リバビリンを用いないDAA治療を推奨。




 ・腎移植患者ではHCV治療時に評価をする。
  −DAAを基本とした治療を推奨(1A)
  −HCVのgenotype、ウイルス量、治療歴、薬剤の反応、GFR、肝臓繊維化の程度、合併疾患の程度、腎臓・肝臓移植の適応(1A)
  −インターフェロンを含めた治療は避ける。



 薬剤について:




 透析施設でのHCV感染の予防:

 これに関しては、2008年のガイドラインとの違いはない。

 ・感染管理と手指衛生が非常に重要(1A)。
 ・HCV患者に専用の透析機械を用いることは推奨されない(1D)。
 ・HCV感染患者の隔離は推奨されない(2D)。

 腎移植前後のHCV感染の管理:

 2008年からDAAの使用推奨もあり抜本的に改訂された。

 ・代償性肝硬変患者では腎移植単独(肝腎同時移植でなく)が推奨される。
 ・HCV感染ドナーはHCV感染レシピエントに移植すべき。
 ・DAA治療のタイミングは個々のケースで決定すべき。下記の表を参照。




 HCV感染患者の腎疾患の診断と治療:

 ・HCV関連腎症の治療は初期治療として、DAAでの治療を行い、クリオグロブリンの増悪、ネフローゼ症候群の発症や急速進行性腎障害が生じている場合には、免疫抑制剤や血漿交換を追加使用検討する。

 このHCVのガイドラインは我々が臨床を行う上で非常に重要である。

 このガイドラインでは、DAA治療が中心となっている。DAA治療において難点はが高コストである。なので、低所得国など多くの国で純粋に踏襲できない可能性はあることには注意するべきである。


http://chiba-kantomo.com/hepatitis-commentary/2431 より引用


2016/07/06

DAAs and Nephrologist

 C型肝炎ウイルスには身体を構成せずRNA複製などに関わるたんぱく群であるviral non-structural proteinがあって(図;Front Microbiol 2012 3 54)、それを阻害する抗HIV薬のようなのがどんどんでている。DAA(directly-acting antivirals)と言うらしい。NS5A阻害薬はDaclatasvir、Ombitasvir、Elvasvir、Ledipasvirなど-svir、NS5B阻害薬はSofosbuvir、Dasabuvirなど-buvir、NS3/4A阻害薬はAsunaprevir、Paritaprevir、Teleprevir、Simeprevir、Grazoprevirなど-previrの語尾をもつ。抗HIV薬のようにコンビネーションで使うのが一般的なようだ。また便中排泄で重度腎不全や血液透析の患者さんに使用できるのもあって、業界雑誌に宣伝されまくっている。透析から離脱できるかはちょっとわからないが、移植待ち・移植後の患者さんなら再発予防に適応だと思う。

 ところで、DAAは肝臓内科医しか処方できないが腎臓内科医も無縁ではないようだ。というのも、そのひとつombitasvir/Paritaprevir/Ritonavir内服後の薬剤との因果関係を否定出来ない急性腎不全が9件あり、うち1件が死亡したからだ。使用上注意改訂のリリースをよむと「カルシウム拮抗薬の薬物間相互作用(注:CYP3A4阻害による、Lexicomp®カテゴリーDでAmlodipineは50%減量が奨められている)が原因と考えられる治療抵抗性低血圧および著明な腎機能低下を伴う薬剤性腎障害による多臓器不全で死亡」とある。薬剤性腎障害の部分はわからない、腎生検結果の結果をみるしかない(ステロイドと原病で修飾されているだろうが)。これからデータを集める必要があると思う。血圧低下と腎機能低下にはαβ拮抗薬(Carvedilolはglycoprotein P/ABCB1阻害により濃度があがりうるのでカテゴリーC)、ARB(Candesartanは機序不明だがカテゴリーDで濃度があがることがあるという;開始時減量が考慮される)も関与していたかもしれない。

 「定期的に腎機能検査を」「腎機能低下とCa拮抗薬内服の患者では急激な腎機能低下に注意し起こったら中止を」という注意書きがあるが、もうすこし具体的でなくていよいのかなと心配だ。薬剤相互作用による血圧低下はすぐにでもおこるので、どうしてもCa拮抗薬やARBでなければならない、というわけでなければ避ける(継続するなら減量、血圧モニターするなど)という診療もありかもしれない。DAAがいろんな薬物代謝酵素に影響するのは、ひとつにはその相互作用を利用しておたがいの濃度を上げるようにデザインされているからでもあるようだ。DAAは価格とかいろいろあるがC型肝炎診療の希望だし、相互作用をよく調べて防ぎうる合併症ならば、対策してうまくいけばいいなと思う。




2015/05/14

Sofosbuvir

 日本で最も高い薬はeculizumabだと認識していたが、これは夜間発作性ヘモグロビン尿症とatypical HUS(以前に書いた)くらいしか適応がなく使われる頻度は低い。しかし昨日認可されたsofosbuvir(商品名sovaldi)は、一錠6万円で記録を更新?したうえに、疫学的にも頻度のたかいC型肝炎に対する治療薬だ。

 私は肝臓内科医ではないのでこの薬がヌクレオチドアナログのprodrugで代謝されてNS5B(HCVのRNA合成に必要な酵素)を阻害することや、HCVのgenotypeに関わらず米国肝臓内科学会・感染症学会のガイドラインで第一選択薬になっていることなどの詳細を把握する必要はない(Wikipediaでもお腹一杯だ)が、注目すべきはこの薬は先進国と発展途上国で価格が大きく違うということだ。

 開発したGilead社は、ジェネリック製薬会社が発展途上国91ヶ国でsofosbuvirの後発品製造を許可しており、インドでは1コースの治療(1錠ではなく)300ドルで販売している。だから、これからこういう薬価の二重構造がうまれると、逆医療ツーリズムで、先進国なら何百万円かかる治療を発展途上国に行って安く受ける時代が来るかもしれない。