2016/07/06

DAAs and Nephrologist

 C型肝炎ウイルスには身体を構成せずRNA複製などに関わるたんぱく群であるviral non-structural proteinがあって(図;Front Microbiol 2012 3 54)、それを阻害する抗HIV薬のようなのがどんどんでている。DAA(directly-acting antivirals)と言うらしい。NS5A阻害薬はDaclatasvir、Ombitasvir、Elvasvir、Ledipasvirなど-svir、NS5B阻害薬はSofosbuvir、Dasabuvirなど-buvir、NS3/4A阻害薬はAsunaprevir、Paritaprevir、Teleprevir、Simeprevir、Grazoprevirなど-previrの語尾をもつ。抗HIV薬のようにコンビネーションで使うのが一般的なようだ。また便中排泄で重度腎不全や血液透析の患者さんに使用できるのもあって、業界雑誌に宣伝されまくっている。透析から離脱できるかはちょっとわからないが、移植待ち・移植後の患者さんなら再発予防に適応だと思う。

 ところで、DAAは肝臓内科医しか処方できないが腎臓内科医も無縁ではないようだ。というのも、そのひとつombitasvir/Paritaprevir/Ritonavir内服後の薬剤との因果関係を否定出来ない急性腎不全が9件あり、うち1件が死亡したからだ。使用上注意改訂のリリースをよむと「カルシウム拮抗薬の薬物間相互作用(注:CYP3A4阻害による、Lexicomp®カテゴリーDでAmlodipineは50%減量が奨められている)が原因と考えられる治療抵抗性低血圧および著明な腎機能低下を伴う薬剤性腎障害による多臓器不全で死亡」とある。薬剤性腎障害の部分はわからない、腎生検結果の結果をみるしかない(ステロイドと原病で修飾されているだろうが)。これからデータを集める必要があると思う。血圧低下と腎機能低下にはαβ拮抗薬(Carvedilolはglycoprotein P/ABCB1阻害により濃度があがりうるのでカテゴリーC)、ARB(Candesartanは機序不明だがカテゴリーDで濃度があがることがあるという;開始時減量が考慮される)も関与していたかもしれない。

 「定期的に腎機能検査を」「腎機能低下とCa拮抗薬内服の患者では急激な腎機能低下に注意し起こったら中止を」という注意書きがあるが、もうすこし具体的でなくていよいのかなと心配だ。薬剤相互作用による血圧低下はすぐにでもおこるので、どうしてもCa拮抗薬やARBでなければならない、というわけでなければ避ける(継続するなら減量、血圧モニターするなど)という診療もありかもしれない。DAAがいろんな薬物代謝酵素に影響するのは、ひとつにはその相互作用を利用しておたがいの濃度を上げるようにデザインされているからでもあるようだ。DAAは価格とかいろいろあるがC型肝炎診療の希望だし、相互作用をよく調べて防ぎうる合併症ならば、対策してうまくいけばいいなと思う。