2016/07/22

Too many regimens, too few grounds

 MGRSという概念が確立してだいぶになるが、骨髄腫の治療選択肢がどんどん広がっているのと対照的にMGRSの治療は遅れている。実臨床にいると、その理由はこれが血液腫瘍内科と腎臓内科のあいだに落ち込んでしまう領域で、前者はMGUSを治療しない(最近は変わってきたが)し後者はケモをオーダーしないことも関係していると思う。私も似たような経験をした(結局RTXをつかったが一応根拠はあるらしい、Leuk Lymphoma 2004 45 2047)。それでもオンコネフロロジーという言葉もうまれて、治療経験の報告論文(KI 2015 88 1135、ボルテゾミブ)やレビュー(doi: 10.2215/​CJN.03160316)なども書かれるようになった。

 ただし、本物の骨髄腫でもそうなのだが、いろんな新しい薬が認可されまくって(ボルテゾミブの兄弟ixazomibとcarflizomib;レナリドマイドの兄弟pomalidomide;非選択的ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬のpanobinostat;抗CD38モノクローナルIgG-κ1のdaratumumab、NEJM 2015 373 1207;抗SLAMF7モノクローナル抗体のelotuzumab、NEJM 2015 373 621など)、これからもどんどん増えるだろう。覚えきれないのでthemmrf.orgを時々読むようにしようと思うが、おかげでレジメンが錯綜している。私は血液腫瘍内科ではないので深くは立ち入らないが、移植不適応の高齢者には未だにメルファランベースのレジメンが推奨されていたり、ボルテゾミブの神経障害が強調されすぎていたり、よくわからない。

 もっとわからないのがMGRSの治療だ。スタディなどない。やっと定義と分類が確立したところだ。もちろん日本ではMGUSあつかいで保険適応にならない。そもそもオプションでお願いしないと腎病理で軽鎖まで染めてくれない。偉い先生たちが腎機能異常とM蛋白をみたらどうするかを話し合うアテンディングラウンド論文が最近あった(CJASN 2016 11 1073)が、MGRSの分類とアセスメントに話が終始していた。いくらえらいといっても根拠と経験がないんじゃあ適当なことは言えない。腎臓内科は治験をするのが苦手(AJKD 2014 63 771、如実に他専門内科にくらべて低い)だが、血液腫瘍内科はトライアルが大好きなので協力して根拠のある治療で腎臓を救えたらいいなと思う。免疫抑制薬がいらなくなる骨髄移植後の腎移植とかもあるし。