2012/04/29

Hypogammaglobulinemia

移植の月には入院してきた腎移植患者さんをたくさん診る。入院するのは移植を受けた患者さんの1%かそこらで、残りの99%は透析も不要で、仕事・趣味・家庭などで幸せに暮らしているわけだが、病院にいるとそれを診ることはあまりない。
 さて移植患者さんの入院は大抵が感染症か腎機能障害、どちらも免疫抑制剤の副作用だ。感染症、とくに細菌感染を繰り返す人を診た時にスタッフが決まって「immunoglobulin levelは調べた?」と口にする。Hypogammaglobulinemia(HGG、低γグロブリン血症)を疑っているわけだ。しかし今まで疑った数例でチェックしたが免疫グロブリンレベルは正常だった。
 スタッフがレビュー論文をくれ(Curr Opin Organ Transplant 2008 13 581)、孫引きして腎移植患者を対象にしたスタディ論文(Transplant International 2008 21 57)に当たってみるとHGGは移植後早期に多く見られるらしい。

Oleander

 スタッフが「スリランカから来た人が自殺目的にOleander(夾竹桃)の種を大量摂取して運ばれてきたら、どうする?」という問題を回診中に出した。何のことやらと思ったが、話を聞くと夾竹桃にはoleandrinという強心配糖体が含まれ、Na-K-ATPaseを阻害して房室ブロックやら高カリウム血症やらを起こす。治療はDigibind(digoxin derivativeに感作されたヒツジの血清から取られた免疫グロブリンFabフラグメント)。強心配糖体はどれも分子量が大きく、かつ脂溶性でvolume of distributionが高いため透析除去できない。





[2019年8月12日追記]夾竹桃の花が咲くのは、盛夏(写真は筆者撮影)。夾竹桃の描写で始まる夏川草介著『神様のカルテ0(2015年)』の一短編、『有明』を読むまで知らなかった。咲き誇る夾竹桃の描写も、人物達の熱い思いや純情も、どこか涼しげに感じられる。信州が舞台なことと、漱石を意識した文体、そして医師でもある作者のクールな視点がそうさせるのだろう。まだお読みでない方はどうぞ。


2012/04/28

mineralocorticoid receptorのS810L変異

腎臓内科のような専門科に入ると、「学ぶ」だけでなく「知っているかどうか」という知識を見につけることもとても大事だ。たとえば「妊娠中の女性がrenal K wastingによる低カリウム血症になったら考えることは?」と問われれば反射的に「mineralocorticoid receptorの変異によりprogesteroneがaldosteroneに代わりrenal K wastingを起こすから」と答える。治療はK補充とamiloride(妊娠中の女性にはclass B)だ。
 スタッフによれば、腎臓内科医が集まる席でのクイズ大会でこの症例が出たが、誰もが「mineralocorticoid receptorの変異」と即答したらしい。でもただ知っているだけなら誰でもできる。それで専門科医なんだからせめて文献をと調べるとmineralocorticoid receptorのS810L変異の女性が妊娠中に異常な高血圧と低カリウム血症をきたしたというのが一本みつかった(Science 2000 289 119)。
 mineralocorticoid receptorのS810L変異があると、ligand binding siteにあるhelix 5のside chainが異常になるとか(この辺のくだりは学生時代なら興奮しただろうが、今はそうでもない)で、aldosteroneのみならずステロイドなら何でも、さらにはaldosterone antagonistのspironolactoneにまでも結合してしまう(gain-of-mutation)。
 それによりS810L変異がある患者さんは小さな頃から高血圧を発症する。検査値はやや低K、やや高HCO3(ただし変異のない群に比べて有意差はなかったが)でprimary hyperaldosteronismを疑うがaldosteroneレベルは極端に低い。妊娠中は高濃度のprogesteroneがmineralocorticoid receptorを刺激するので、降圧剤にも関わらず血圧は上がり続け、報告された症例では34週までに210/120mmHgになったので緊急帝王切開になった(赤ちゃんもお母さんも無事)。

angiotensin-(1-12)

他日、「腎臓がない人にもACE阻害剤は有効か?」という禅問答あるいは頓知のような質問に応えるべく色々調べたレジデントがRenal Grand Roundで発表していた。腎臓がなければreninが出ない、reninがなければangiotensin IIも出来ないだろうというわけだ。
 結論からいうと、reninがなくてもangiotensin IIはできる(Hypertension 2010 55 445)。手がかりになったのはangiotensin-(1-12)で、これがreninに関係なくangiotensin Iになると分かった。だから腎臓のない患者さんでもACE阻害剤は有効なはずだ。ちなみにangiotensin-(1-12)を2006年に初めて発表したのは宮崎大学のグループだ。

spironolactone

心不全科(循環器内科の中でもさらに細分化した分野)のフェローから「腎機能のない人にspironolactoneを投与して高K血症になるメカニズムはあるのか?」という質問を受けた。spironolactoneはaldosteroneの阻害薬で、 aldosteroneによる遠位尿細管でのK排泄を阻害するのが高K血症をきたす主な理由だ。それで、腎機能がない人には元から遠位尿細管でのK排泄がほとんどないわけだから高K血症にはなるまいというわけだ。

 自分の経験と記憶を瞬時に振り返り、「ある(けどどんなメカニズムか忘れた)」と返答した。そのあと腎臓内科のスタッフに聞くと、やはり同じ返答だった。それで調べてみると、腸管からのK排泄が阻害されると考えられているらしい(Current Hypertension Reports 2004 6 327)。

 実際に透析患者さんにspironolactoneを投与するとどうなるの?と調べた論文もあって、一本は高K血症になり(NDT 2003 18  2364)、もう一本は有意差が見られなかった(NDT 2003 18 2359)。だから何とも言えないが、後者はopen-label, non-randomized trialでエビデンスの質が低いし、今のところ(高K血症は)起こるという結論にしておこう。

5-oxoprolineふたたび

2年前に触れた論文(CJASN 2006 1 441)を、また読み返す機会があった。これはacetaminophenによって5-oxoprolineが蓄積してアニオンギャップアシドーシスをきたした症例をまとめたものだ。前の病院でレジデンシーをしていたときに尊敬するMICUのフェローが教えてくれて読んだが、当時は何のことやらよくわからなかった。いまは少し分かる。
 アセタミノフェン(タイレノールのこと)は含硫アミノ酸(システインなど)を枯渇させ、cysteine-glycineが細胞内に少なくなり、それによりdipeptidaseによって出来るはずのglycineも少なくなる。Glycineが少なくなるとglutathione synthaseによって出来るはずのglutathioneが少なくなり、それによりγ-glutamyl-cysteine synthaseの活性阻害が起こらなくなる。
 γ-glutamyl-cysteine synthaseが阻害されないので、この酵素活性によりγ-glutamyl-cysteineがたくさんできる。増えたγ-glutamyl-cysteineはγ-glutamyl-cyclotransferaseにより分解され、こうしてできる代謝産物が5-oxoprolineというわけだ。私は大学時代に生化学でglutathioneの代謝経路についてあまりよく勉強した記憶がない。酸化還元反応に関わる大事な経路なのに。
 臨床的に知っておくべきことは、報告例がほぼすべて女性ということだ。酵素活性に性差があるのかもしれない。またmalnutrition、肝障害(いずれもglutathioneが減る状態)を合併していることが多い。腎機能が悪化した人も、尿中から5-oxoprolineを排泄できないのでリスクが高い。治療法については、アセタミノフェンの服用を中止する他にはあまり書かれていない。
 なお今まで書いてきたのは後天性の5-oxoproline蓄積症だが、先天的な酵素欠損(glutathione synthase、それに5-oxoprolinase)によってなる場合もある。ただしこれらはautosomal recessiveで、homozygoteな人達がかかり、heterozygoteな人達は無症状だ。スタッフは「後天性と思われている人達はheterozygoteで、それにアセタミノフェンによる更なるglutathioneの枯渇が加わって発症するのだ」と言っていたが、そうだろうか。

CRRT dosing

 CRRT(持続透析)のdosingについての論文は知りながら、自分がいったいどれくらいの透析をしているのかも考えず、いつも同じオーダーを出していたことに気付いた。CRRTのdosingはeffluent、すなわちdialysate(透析液)、replacement fluid(filtration用の輔液)、それにvolume removal(除水量)で計り、体重で補正したml/kg/hrで表す。
 今使っているPrismaはCVVHDFで、hemodialysisもhemofiltrationも行うが、私はいつもdialysateを2000ml/hr、replacement fluidを1000ml/hrにしていた。これだけで体重70kgの人には3000/70 = 約40ml/kg/hr、除水量が3000ml/dayなら、さらに3000/24/70 = 約2ml/kg/hr、トータルで約42ml/kg/hrのCRRTをprescribeしているわけだ。
 CRRT dosingについて初期にでたイタリアの論文(Lancet 2000 355 26)は25ml/kg/hrの群が35ml/kg/hr、45ml/kg/hrの群に比べて生命予後(30-day mortality)が悪いという結果だった。それからいくつもの大規模スタディ(NEJM 2009 361 1627など)が出たが、多くはdoseの違いによる有意差はないという結果だった。
 私の考察は「ICUの患者さんは多くの場合に多臓器不全の一環として急性腎不全になるのであり、腎機能をどれだけ沢山replaceしたところで患者さんがより助かる訳ではない、寧ろ患者さんが助かるかどうかは他の臓器・あるいは敗血症など元々の病気プロセスがどうなるか次第だ」というものだ。
 これは「CRRTをするからには、全ての数字(電解質、酸塩基平衡、老廃物濃度など)を正常にもどすことが私たちの仕事だ」という考えと相克する。しかし論文を読んでから私は、「CRRTはとてもお金のかかる治療だし、検査値を正常に戻すために(文字通り)湯水のように透析液やreplacement fluidを使っても患者さんが助からないならやめよう」と思った。
 しかしなぜCRRTではdoseをeffluentなぞで表すのであろうか。それはほとんどのCRRTがCVVHDFでhemodialysisとhemofiltrationを同時に行うのでclearanceを計算するのが煩雑なことと、マシンの都合上effluentが計算しやすい(透析液、replacement fluid、除水量がすべてひとつのバッグに溜まる仕組み)からだろう。
 それで「effluent doseとclearanceは本当に相関しているの?」という疑問を持って調べた論文がある(NDT 2012 27 952)。例えばICUで患者さんは24時間ずっとCRRTにつながれているわけではなく、フィルターが血栓で詰まったとか、やれCTだ手術だと病棟を離れる間などの場合にはCRRTから外れている。またpre-filter replacementによるhemofiltrationでは、血液が希釈されて老廃物の濃度が下がり、それによる除去効率が下がる。
 それで調べてみると、35ml/kg/hrと思っていた場合にも実際は(故障、患者さんがICUにいないなどの理由で)28ml/kg/hr程度、pre-filter replacementによる希釈分も考慮すると25ml/kg/hr程度、そして計算によって求めた実際のclearanceは21-23ml/kg/hr程度であった。といっても20ml/kg/hrと思ってオーダーした患者さんに比べると有意に高いclearanceであったから、いままでの大規模スタディの結果を覆すものではないが。

2012/04/26

Detective Nephron

 ASN(米国腎臓学会)月刊紙、ASN Kidney Newsで最近始まったコーナーが"Detective Nephron"だ。名探偵ネフロンが弟子のL. O. Henle(loop of Henleを文字っている)が持ってくる症例を鮮やかに解き明かす筋書きだ。ネフロンはオフィスでコーヒーを飲んでおり、ヘンレの話を"Ah! This is going to be exciting."とか"Fascinating!"とか言いながら聞く。

 ヘンレも腎臓内科の基本は知っているので一生懸命考え、ネフロンに"Good work, my apprentice(弟子)"とか言われるが、ネフロンの豊富な知識と経験によって症例の解答が明らかになる。最後の"Never underestimate the power of the nephrologist."というセリフがカッコいい。

 私はこんな風になりたいのである。次々ともってくる症例を聴いただけでたちまち解決してしまうような。そして、わたしはフェローシップが終わるまでにそうなるつもりでいたのだと、約20年スタッフをしている今のスタッフと一緒に働きながらふと気付いた。

 毎日よく観察し、よく考え、よく読み、自分の診断能力を高めていくのは素晴らしいことだ。このwebsiteの蓄積も私の財産となるだろう、こうして引き続き爪を研げ。だが1-2年で完成しようなどとは思わない方がいい。Art is long, life is short。探偵ネフロンを目指すなら、あせらないことも肝心だ。

ところ変われば

AIN(急性間質性腎炎)の治療といえばoffending agentを止めることと、ステロイドだ。うちの病院でも、ステロイドを信じるスタッフと信じないスタッフがいるが、信じるスタッフはたいていprednisoneを用いる。以前紹介したmini-study(Am J Med 65 756 1978)がprednisoneを用いている。AINはとても臨床でとてもよく遭遇するのでステロイドも当然議論になるが、今月のスタッフは別の論文を持ち出した(KI 2008 73 940)。
 これはスペインのretrospective studyで、質は低いが曲がりなりにもステロイド投与群で腎機能がより回復した(mean follow-up 18 months)ことを示した。さらにステロイド投与群のうち腎機能が完全に回復した群は完全には回復しなかった群に比べてステロイドの投与が早期であったことが分かった(drug withdrawalからmeanで13日 v. 34日)。
 興味深いのはこの論文ではほとんどの症例でステロイドにmethylprednisolone IV (250-500mg daily x 3-4 days)、そのうえでprednisone(1mg/kg/d、8-12週間で漸減)が用いられたことだ。別のヨーロッパの論文でも同様にmethylprednisolone IVが用いられている(NDT 2004 19 2778)。ヨーロッパではmethylprednisolone IVなのだろうか。はたして日本ではどうなのだろう。

基本原理

 私が症例について話す全てのことは、①病態生理的にかなっており、②エビデンスに裏打ちされているように努めている。最近は、③経験に裏打ちされている、も加えたいと思っているのと、①から③の全てが揃っても、患者さんに検査や治療を提案するにはもう一つ、④信じること、が必要なのかなと思う。

 anti-phospholipid syndrome(APS)の患者さんが重度の深部静脈塞栓症で入院し、さらに腎不全になった。Up/Ucr 1.6のタンパク尿もある。SLEではなく(抗核抗体の他に症状も所見もない)、腎動静脈に血栓はない。Thrombotic microangiopathyは否定できないが、血液検査上は溶血の所見がない。

 UpToDateを調べると、primary antiphospholipid syndromeは様々な糸球体腎炎をきたすことが分かっている。だがこの人はAPSの他にもpro-thromboticな病気を抱えているうえ、heparinでは物足りないとdirect thrombin inhibitorのargatrobanが持続静注されているので腎生検というoptionはない(出血と塞栓症のリスクが高すぎる)。

 日一日と腎機能は悪くなる。透析導入は時間の問題だ。病勢を変えることはできないものか。論文を調べて、血漿交換が有効かもしれないというのがでてきた(QJM 1988 68 795)。生理学的にはanti-phospholipid antibodiesを除くわけだから話は通っている。この論文、SLEではないprimary APSによる腎不全が対象なところは患者さんと共通だ。

 ただし全例が20-30代と若く、かつ分娩後の腎不全、そして腎生検でthrombotic microangiopathyが確認されている点は患者さんと関係ない。多くの例で血漿交換後に速やかに腎機能が回復しているのはencouragingだが、実際血漿交換をするには透析カテーテルを挿入せねばならず、抗凝固剤argatrobanを切ったり、絶対にミスできなかったりとリスクが高い。

 それでスタッフはanti-phospholipid syndromeの経験が豊富な別のスタッフに相談した。すると彼はcatastrophic anti-phospholipid syndrome(三つ以上の臓器が冒されている状態)でないと適応にならないだろうと言う。エビデンスはない、あくまで彼の経験だ。それでさしあたっては血漿交換を控えていたが、そうこうしているうちに別の2臓器が血栓・虚血によって冒されてしまった。

 それで血漿交換を始めることになった。上手くいけばいいと思う。①生理学的にかなっており、②エビデンスは乏しいが一応encouragingな論文があり、③経験に裏打ちされ、④信じている。これが私たちにできるベストだ。専門家になるとこういう難局に追いつめられるから、①から④の基本原理を持つのが大事になるだろう。

 たとえば、この患者さんは血漿交換の前にIVIGを投与された。これは私からすると①生理学的な正当性に乏しく、②エビデンスはなく、③経験もなく、④信じていたかは知らないが「他に手がないからする」という感じがした。これにより患者さんは低ナトリウム血症(IVIGはほぼelectrolyte-freeなので)、TRALI(IVIGでも報告されている)、塞栓症(副作用の一つだ)すべてを合併することになった。


2012/04/15

mover and shaker

コンサルトにいると、次から次に降ってくるイベントに臨機応変しなければならない。ICUで透析カテーテルを挿入しているあいだにICUの新患を診にレジデントを差し向け、別のフェローにinpatient dialysis unitで透析中の患者さんを回診してもらい、別のレジデントは別の新患の尿沈渣をチェックしているとか。レジデントAが午前中に自分の外来で居ない場合、レジデントBとCがその患者さんをカバーし、でも午後にはレジデントBが外来に行ってしまうのでBの患者は12時までに回診しなければならない、とか。このように切り盛りして仕事をまわしていく人を、"mover and shaker"という。辞書によれば"the people in an organization who are most responsible for getting things done"。なおこの表現にはもう一つの意味があって、それは"someone who has power and influence in some field or activity"だ。いつかそうなるだろうか。

LN

 Lupus nephritis(LN)の講義があった。この先生も教育熱心で、2012年バージョンのスライドは旧バージョンからエビデンスをupdateしてあった。いままで部分的にかじった知識しかなかったものを、診断と治療について、まとまって学ぶことができた。まずは診断で、2003年にできたISN/RPS classificationについて学ぶことができた。これはmodified WHO classification(1982年)に比べてよりルールが単純で覚えやすい。

 Class Iはminimal mesangial LN、光学顕微鏡は正常だが免疫蛍光染色でmesangial depositが見られるもの。電子顕微鏡で見られても良いが、ISN/RPSは電子顕微鏡がない地域の診療にも適用できるように、また電子顕微鏡所見の読みが病理医によってマチマチなのを防ぐために、電子顕微鏡についてはオプショナルとしている。Class IIはmesangeal proliferative LN、mesangial hypercellularityあるいはmesangial expansionがみられるだけのものだ。scarring、sclerosis、necrosisなどが見られたら、Class III/IVに分類される。

 Class III/IVはfocal/diffuse LN、糸球体の50%未満/50%以上(sclerosedなものを含む)に病変が見られるものだ。IIIもIVも、急性病変のみが見られたら(A)、慢性病変のみが見られたら(C)、どちらも見られたらその割合に関わらず(A/C)とする。Class IVはまた、segmental(S)/global(G)に分けられる。Class Vはmembranous(WHO分類とちがってsubcategoryがない)、VIはadvanced LN(90%以上の糸球体がsclerosedでactivityがないもの)だ。分類の他にも、wireloop病変がLNの典型的な病変とされていること、免疫染色所見は典型的には"full house(何でも陽性になる)"だが文献によってはfull houseは20数%しかないこと、C1q陽性がとくにLNに特異的ということなどを習った。

 Prognostic factorについて、常識的なもの(診断時の腎機能が悪い、など)の他にblack/hispanic、anti-phospholipid syndromeがあると教わった。そしてraceとethnicityによる病気のheterogeneityゆえに、治療方法もraceとethnicityによって代わる(後述)。治療については、1991年の論文以来cyclophosphamide(CYC)が導入治療の基本であった(Arthritis Rheum 1991 34 945)。その後、CYCとMP(methylprednisolone)の併用が単独よりも優れている論文が出て(Ann Intern Med 1996 125 549、長期データはAnn Int Med 2001 135 248)、これはNIH regimenと呼ばれている。CYCは0.75 g/m2 body surface area(白血球減少に応じて0.5-1.0に増減)静注、monthly x6、そのあとquarterly x2yrs、MPは1g/m2 body surface area静注、daily x3、そのあとmonthly x12。

 NIHスタディのあと、2002年にEuro-Lupusというスタディが出て(Arthritis Rheum 2002 46 2121)、NIHレジメンよりlow-doseでも成績は変わらないという結果が出た。すなわちCYCは500mg静注、biweekly x6、MPは750mg daily x3、maintenanceにはprednisoneとazathioprine(欧州は伝統的にazathioprineが好きらしい)。ただこのスタディの対象は100%Caucasianだった。NIHスタディもEuro-Lupusもエビデンスの質は高く、現時点で白人のLN Class IVのinduction therapyとしてはどちらのレジメンも同程度に推奨されている。

 では白人以外ではどうか。MMFがよりinductionとして優れているというエビデンスがいくつもある。最初に出たのは香港/広州のスタディ(NEJM 2000 343 1156)で、100%Chinese populationでMMFが完全寛解81%、CYCが76%(有意差なし)で両者は同等という結果だった。長期の追跡調査(JASN 2005 16 1076)でも、MMF群は再発の割合が低く、白血球減少や感染症のリスクが低いという結果に。他にもいろいろなprospective studies(NEJM 2005 353 2219など)が出たが、最も知られているのはALMSスタディ(JASN 2009 20 1103)だ。

 このスタディのMMF doseは0.5 g twice daily x week、1.0 g twice daily x week、それから1.5 g twice dailyあるいは1.0 g three times to two times dailyだから、目標の3g/dは移植後のdoseにくらべて少し多い。ともかくALMSスタディは、全体としてMMFとCYCで寛解率に差はないものの、非白人、非アジア系の群(論文ではotherと書かれている、すなわち黒人とヒスパニック系のこと)でMMFのほうが断然CYCより優れているという結果を示した(人種・民族・地域差などにより注目した論文はReumatology 2010 49 128)。これを受けて黒人とヒスパニック系にはMMFが推奨されている。  

 維持療法については講義の時間が終わってしまったので聴けなかったが、調べた限りではlow-dose prednisone + (MMF or azathioprine)らしい。MMFとazathioprineを比較したスタディ(NEJM 2011 365 1886、これもALMSグループによるもの)が出て、MMFのほうが再発防止に優れていたらしい。MMFは消化器症状が多く、またcongenital malformationがblack-box warningなため妊娠を希望する患者さんには使いにくい、azathioprineは血球減少が多く、妊娠を希望する患者にも使えるので、患者さんに合わせて選択することになるだろう。なお維持療法のMMF doseは1.0g twice dailyだ。

[2015年5月追加]この講義を受けた時に導入療法にステロイド+MMF+タクロリムスを試した(移植後の免疫抑制と一緒だ;LNは移植後の再発が比較的少ないから理にはかなっていると思うが)スタディも習ったが忘れてしまった(たぶんJASN 2008 19 2001)。他にもいろんな組み合わせが試されているが、最近このレジメンの別のスタディがでた(Ann Inern Med 2015 162 18、ステロイド+cyclophosphamideに比して24週のフォローで有意性が示された)。

AKA

 腎臓内科のgrand roundはフェローとレジデントが発表するだけでなく、ときにはスタッフが発表する。先週は、わたしが七月に来たばかりの時にコンサルトでお世話になった教育熱心な、うちの大学でteacher of the yearを何年も連続して受賞している先生だった。この先生はおそらく60才前後であろうが少年のような目をした人で、症例で面白い点があったり、学ぶ意欲のある学生をみると目を輝かせる。そしてやはり毎日自転車通勤だ。そんな先生の発表は、やはり聴衆を引きつけた。うまく言えないが、違いが他のスタッフにくらべて明らかだった。話す様子に情熱が溢れている。そして分かりやすい。それを聴きながら、似たものを感じた。自分も教育、発表のアートをこんな高みに持っていけたらと思った。

  発表の中心はAKA、アルコール性ケトアシドーシスだった。AKAが起こるには①アルコール、②飢餓、③体液量減少、の三つが必要だ(AJM 1991 91 119)。①では大量に摂取したアルコールを代謝することでNAD+が消耗され大量のNADHが産生される。NAD+が消耗されると糖新生が起こりにくくなる。②ではglycogen storeがなくなり、③ではカテコラミン、コルチゾール、成長ホルモンの分泌促進になり、結果的に体内が低インスリン・高グルカゴン環境になる。低インスリン・高グルカゴン環境によって脂肪酸が一斉に(carnitine acyltransferase I、IIにより)ミトコンドリアに取りこまれβ酸化を受ける。

 β酸化により生じたβketo-acidであるacetoacetateは大量のNADHにより還元され、すぐさまβ-OH butyrateとなる。大量のNADHはまた、pyruvateをlactic acidにしてしまう(NAD+がないのでpyruvateはTCA cycleに入れない)。それでAKAでは尿検査のケトンが陰性(dipstickはacetoacetateを検出するから)で血液のβ-OH butyrateレベルが非常に高く、lactic acidosisを呈することもある。ただlactic acidosisについては、論文によれば肝臓にくらべてまだNAD+が残っている末梢組織で乳酸がpyruvateに戻るので、sepsis、thiamine deficiency、seizureなどが併存しない限りuncommonという(Emerg Med J 2006 23 417)。

 このことから、発表した症例ではlactic acidが高値であったため、別の先生が「この症例ではthiamine deficiencyを考えなければならない」とコメントしていた。それにしても腎臓内科にいると何から何まで勉強しなければならないから、飽きなくてよいが結構大変だ。

2012/04/11

cardio-renal syndrome

心不全の患者さんが、心機能低下に伴い(あるいは食塩摂取過剰のため)肺水腫、浮腫、体重増加などで入院してくると、みな利尿剤を投与される。ただ利尿剤は血管の外に漏れ出た体液を血管の中から除く治療なので、血管外から血管内への体液移動がスムーズでないと血管内ばかりがdryになって腎機能が悪化する。とはいえ、心のポンプ機能をよくしなればそもそも腎臓に届く血液量が増えないので腎機能は良くならない。だからこの状況でどのように利尿剤を使うかはなかなか難しい。
 人によって何を指標に利尿するかは違う。循環器科医は左房圧のsurrogateであるwedge pressureを絶対視している。だが他にも頚静脈圧とそのsurrogateである頚静脈努張、肺野所見、浮腫所見、体重、腎機能、metabolic alkalosis(contraction alkalosis)、などさまざまなパラメターがあって、総合的に判断しなければならない。どれくらい量をつかうか、持続静注とbolusではどちらが良いか、なども診療指針がないと思っていたが、昨年にはじめてこれについてのRCTがでたと知った(NEJM 2011 364 797)。
 この論文によれば、low dose(外来処方と同量のIV、すなわち約二倍の力価)とhigh dose(外来処方の2.5倍のIV、すなわち約五倍の力価)ではhigh dose群で体重はより減少したが、症状の軽減や入院期間には有意な差が見られなかった。bolusとcontinuous infusionでも(薬理学的には後者のほうが利尿に優れているとされているが)、やはりcontinuous infusion群で体重はより減少したが、症状の軽減や入院期間には差がなかった。クレアチニンの増加にも有意な差は見られなかった(なおこのスタディではクレアチニンが3mg/dl以上の患者さんは除外されている)。

Gd

 透析患者、腎不全患者にGadolinium造影剤(MRIの造影剤、CTのではない)はNSF(nephrogenic systemic fibrosis、身体が石のようになって動けなくなる恐ろしい病気)のため「禁忌」で、もはやそこにsecond thoughtの余地はないと思っていた。

 しかし何事も無批判に信じるのはよくない。現に「どうしても造影剤が要る時」というのはある。だから専門家としてどれくらいリスクがあって、リスクを下げるのにどんなことが出来るかを知っておく必要がある。

 ガドリニウム(Gd)はあまり水溶性がなく、きわめて毒性が強いので、chelate剤と共に用いる。ChelateされたGdはほぼ100%腎臓から排泄されるので、腎不全・透析患者でGdが身体にたまる心配がある(GFRが20-40ml/minで半減期が10時間、ESRDで半減期が34時間)。

 キレート剤の種類によって幾つかの製品があるが、FDAは米国で主に用いられている五種類の造影剤(Magnevist: gadpentetate, MultiHance: gadobenate, Omniscan: gadodiamide, OptiMARK: gadoversetamide, ProHANCE: gadoteridol)の全てでNSFが報告されているとして、全製品にblack-box warningを付している。

 しかし米国のNSF症例の80%はOmniscan、残りのほとんどはMagnivistのよるものだった。VA患者のカルテを2000年から2007年までリビューしてProHANCEを注射された患者さん約140人のうち、NSFを発症した人は一例もいなかったというデータもある(CJASN 2008 3 747)。いま働いているスタッフは「NSFはOmniscanで特に起こるのであり、ProHANCEではほぼ起こらないのだ」という。

 さて絶対にMRIの造影剤を使わなければならない時、どうするか。直後に透析(そして翌日も出来れば透析)することが勧められている。Gdのdializabilityについて調べた論文によれば(Radiat Med 2006 24 445)、meanの半減期が1.9時間という。これは日本の論文で、Omniscanを使っており、結論は「Gdは透析可能なので透析患者にも安全に用いることができる」となっている。

2012/04/08

定宿

いままで考えなかったが、アメリカの病院には腎臓内科病棟というものがない。そして腎臓内科コンサルトは外科ICU、内科ICU、循環器ICU、内科病棟、腫瘍内科病棟、外科病棟、精神科病棟、産科病棟、どこにでも行く。
 それで病院中を駆けずり回っているわけだが、同時にホームベースにあたる病棟がない。もしあると、そこに留まって仕事をして看護師さん、病棟受付の秘書さんなどともっと顔見知りになってより親しい会話などもなされることだろうに。
 でも外科ICU、内科ICU、循環器ICUに関しては、常に患者さんがいるし、顔見知りの看護師さんも多く、透析カテーテルの挿入や持続透析の細かな調整などでよく話すので「定宿」というくらいの感じはある。

2012/04/06

Dialysis catheter

きょうの内科Grand Roundは集中治療医の情熱と知識、経験が詰った質の高いものだった。テーマは中心静脈カテーテル(central line)。慣習的に行われている医療行為にEBMのメスが入って痛快だった。たとえば「INRが高ければ出血のリスクが高い」「FFPをあげればINRはさがる」などは迷信で、FFPによるTRALI、TACO(transfusion-associated circulatory overload)による害のほうが大きい。「Trendelenburg位にすれば内頚静脈が血液で充満し拡がる」というのも正しくない。
 そして「大腿静脈ラインのほうが内頚静脈ラインよりも感染症が起こりやすい」という通念もEBMで検証された。これについては腎臓内科コンサルトの診療でついこないだスタッフと議論になった点であり、かつ彼の取り上げたスタディが透析カテーテルでもあったので、興味深く聴いた。
 この論文はフランスの大学病院と市中総合病院が行ったスタディ(JAMA 2008 299 2413)だ。ICUでacute dialysisを要した症例に関して、内頚静脈にカテーテルを挿入した重症患者群と大腿静脈に挿入した群にrandomizeした。そしてカテーテルが不要になる(腎機能が回復または死亡)、新しいカテーテルが必要になる(感染症や血栓)などで抜去する際にそのtipを培養してcolonizationがあるかを調べた。
 深部静脈カテーテルのtip colonizationはライン感染のsurrogate markerとして認知されているようで、感染症雑誌に「~菌のtip colonizationの何%がのちに菌血症になった」という論文が、色々な菌に関して出ている(二匹目のどじょうという感じがするが)。
 このスタディの基本的な情報として、どちらの群も超音波を使わずに挿入され、平均して5-6日間留置された。またどちらの群も約80%がantiseptic-impregnated catheterだった(うちの病院はMediComp社のを使っているが、impregnatedなのだろうか)。
 結果、colonizationは大腿静脈の群で40/1000 catheter-days、内頚静脈の群で35/1000 catheter-daysと有意な差を認めなかった。ラインの留置期間とcolonization-freeかどうかのKaplan-Meier曲線(Figure 2)では10-15日を過ぎるまで両者に差はなく、それを越えると大腿静脈の群で内頚静脈の群にくらべてcolonization freeでない可能性が増えてくると判った。
 さてここからsubgroup analysisをしたら、BMIが高い人達では大腿静脈ラインでより感染症が高いと判った。これは太った人ではソケイ部が肉と肉の間で蒸れて感染したり汚れたりするからだと合点が行く。一方BMIが低い(<24)人達では逆に内頚静脈ラインでより感染症が高いと判ったが、これについては再検が必要だろうと著者は言う。
 このスタディは「大腿静脈は緊急時だけ、そして三日で他の場所に新しいラインを取れ」という教えを変えるか?「三日といわず一週間くらいはいいんじゃないかな」とは思える、実際そういうポリシーの病院もあるらしい(Pittsburghにいた頃は三日と戒めていたが、Iowaはそうでもない)。
 私が大腿静脈カテーテルを入れるのは、基本緊急時だけだ。Pittsburghでは、患者さんが目の前で死にかけている時に、超音波も何もなくてかすかな脈(大腿動脈)を頼りにほんの数分で中心静脈ラインをとった。透析カテーテルはそこまでの緊急性で挿入されることはまずないので、右内頚静脈を選ぶ。大腿静脈カテーテルは患者さんの動きが制限されるからできれば挿入したくない。たとえ既に右内頚静脈に他のラインが入っていても、ICUチームにお願いしてそれを左内頚静脈に移してもらっている。