CRRT(持続透析)のdosingについての論文は知りながら、自分がいったいどれくらいの透析をしているのかも考えず、いつも同じオーダーを出していたことに気付いた。CRRTのdosingはeffluent、すなわちdialysate(透析液)、replacement fluid(filtration用の輔液)、それにvolume removal(除水量)で計り、体重で補正したml/kg/hrで表す。
今使っているPrismaはCVVHDFで、hemodialysisもhemofiltrationも行うが、私はいつもdialysateを2000ml/hr、replacement fluidを1000ml/hrにしていた。これだけで体重70kgの人には3000/70 = 約40ml/kg/hr、除水量が3000ml/dayなら、さらに3000/24/70 = 約2ml/kg/hr、トータルで約42ml/kg/hrのCRRTをprescribeしているわけだ。
CRRT dosingについて初期にでたイタリアの論文(Lancet 2000 355 26)は25ml/kg/hrの群が35ml/kg/hr、45ml/kg/hrの群に比べて生命予後(30-day mortality)が悪いという結果だった。それからいくつもの大規模スタディ(NEJM 2009 361 1627など)が出たが、多くはdoseの違いによる有意差はないという結果だった。
私の考察は「ICUの患者さんは多くの場合に多臓器不全の一環として急性腎不全になるのであり、腎機能をどれだけ沢山replaceしたところで患者さんがより助かる訳ではない、寧ろ患者さんが助かるかどうかは他の臓器・あるいは敗血症など元々の病気プロセスがどうなるか次第だ」というものだ。
これは「CRRTをするからには、全ての数字(電解質、酸塩基平衡、老廃物濃度など)を正常にもどすことが私たちの仕事だ」という考えと相克する。しかし論文を読んでから私は、「CRRTはとてもお金のかかる治療だし、検査値を正常に戻すために(文字通り)湯水のように透析液やreplacement fluidを使っても患者さんが助からないならやめよう」と思った。
しかしなぜCRRTではdoseをeffluentなぞで表すのであろうか。それはほとんどのCRRTがCVVHDFでhemodialysisとhemofiltrationを同時に行うのでclearanceを計算するのが煩雑なことと、マシンの都合上effluentが計算しやすい(透析液、replacement fluid、除水量がすべてひとつのバッグに溜まる仕組み)からだろう。
それで「effluent doseとclearanceは本当に相関しているの?」という疑問を持って調べた論文がある(NDT 2012 27 952)。例えばICUで患者さんは24時間ずっとCRRTにつながれているわけではなく、フィルターが血栓で詰まったとか、やれCTだ手術だと病棟を離れる間などの場合にはCRRTから外れている。またpre-filter replacementによるhemofiltrationでは、血液が希釈されて老廃物の濃度が下がり、それによる除去効率が下がる。
それで調べてみると、35ml/kg/hrと思っていた場合にも実際は(故障、患者さんがICUにいないなどの理由で)28ml/kg/hr程度、pre-filter replacementによる希釈分も考慮すると25ml/kg/hr程度、そして計算によって求めた実際のclearanceは21-23ml/kg/hr程度であった。といっても20ml/kg/hrと思ってオーダーした患者さんに比べると有意に高いclearanceであったから、いままでの大規模スタディの結果を覆すものではないが。