2012/04/11

Gd

 透析患者、腎不全患者にGadolinium造影剤(MRIの造影剤、CTのではない)はNSF(nephrogenic systemic fibrosis、身体が石のようになって動けなくなる恐ろしい病気)のため「禁忌」で、もはやそこにsecond thoughtの余地はないと思っていた。

 しかし何事も無批判に信じるのはよくない。現に「どうしても造影剤が要る時」というのはある。だから専門家としてどれくらいリスクがあって、リスクを下げるのにどんなことが出来るかを知っておく必要がある。

 ガドリニウム(Gd)はあまり水溶性がなく、きわめて毒性が強いので、chelate剤と共に用いる。ChelateされたGdはほぼ100%腎臓から排泄されるので、腎不全・透析患者でGdが身体にたまる心配がある(GFRが20-40ml/minで半減期が10時間、ESRDで半減期が34時間)。

 キレート剤の種類によって幾つかの製品があるが、FDAは米国で主に用いられている五種類の造影剤(Magnevist: gadpentetate, MultiHance: gadobenate, Omniscan: gadodiamide, OptiMARK: gadoversetamide, ProHANCE: gadoteridol)の全てでNSFが報告されているとして、全製品にblack-box warningを付している。

 しかし米国のNSF症例の80%はOmniscan、残りのほとんどはMagnivistのよるものだった。VA患者のカルテを2000年から2007年までリビューしてProHANCEを注射された患者さん約140人のうち、NSFを発症した人は一例もいなかったというデータもある(CJASN 2008 3 747)。いま働いているスタッフは「NSFはOmniscanで特に起こるのであり、ProHANCEではほぼ起こらないのだ」という。

 さて絶対にMRIの造影剤を使わなければならない時、どうするか。直後に透析(そして翌日も出来れば透析)することが勧められている。Gdのdializabilityについて調べた論文によれば(Radiat Med 2006 24 445)、meanの半減期が1.9時間という。これは日本の論文で、Omniscanを使っており、結論は「Gdは透析可能なので透析患者にも安全に用いることができる」となっている。