腎臓内科領域でどこが好きかに関しては人それぞれだと思う。
私は全然できていないことは承知しているが、電解質異常が大好きである。
皆さんもご存知のようにSkeleton Key Group(全世界の腎臓内科フェローが電解質異常に対して症例を出しているグループ)が、いくつか電解質異常について症例を提示している。
とっても教育的で興味深いのでぜひ参考にしてもらいたい。
今回は、このグループからの症例で自分なりにも解釈を加えながら解説していきたい。
症例:
30歳女性で鎌状赤血球症がありハイドロキシウレアで治療、HIVがあり抗レトロウイルス薬で治療。2年前のCD4は410 cell/microL。現在、急性の腹痛、胸痛、両側のすねの痛みで入院中。
内服薬:テノホビル(HIVの薬)、ラミブジン(HIVの薬)、エファビレンツ(HIVの薬)、ヒドロモルフォン(オピオイド系鎮痛薬)、市販薬の内服はなし
痛みは高流量酸素投与とヒドロモルフィンでコントロールされていた。痛みはSick cell crisisによるもの(Sick cell crisisは血管閉塞によって疼痛が生じるものである。)
入院時採血
Alb 4.0mg/dL、BUN 10mg/dL、血清Cr:0.7mg/dL(GFR 78mL/min/1.73m2)、Na 140mmol/L、K 3.0mmol/L、 Cl 115mmol/L、HCO3 15mmol/L、血糖 90mg/dL
血液ガス検査
pH 7.38、pCO2 30mmHg、pO2 138mmHg(nasal 5L)、HCO3 14mmol/L
まず、この症例にある電解質異常と酸塩基平行異常を見てみる。
採血検査からは、低カリウム血症、高クロール血症
血液ガス検査からは、代謝性アシドーシスがあり、AG(Anion gap)はNa-(Cl+HCO3)で計算すると10となり、AG非開大性の代謝性アシドーシスがあるとわかる。
代償に関しては、予想pCO2=1.5×HCO3+8±2で計算すると、29±2となり実際は30であり予想範囲内である。
なので、この症例ではAG非開大性の代謝性アシドーシス、低カリウム血症となる。
皆さんはこの症例から何故このような電解質異常が生まれたのかわかるだろうか?
代謝性アシドーシス+低カリウムの原因として一番多いのは、下痢であるがこの症例では下痢は有していない。次の鑑別としては尿細管性アシドーシスがあがる。
内服薬の中でテノホビルはproximal RTAを起こし、鎌状赤血球はdistal RTAを起こしうる。
非AG開大性代謝性アシドーシスの原因として語呂での覚え方がある。
一つはHARD UP(生活が苦しいという意味)
Hyperventilation(過換気)
Acetazolamide(アセタゾラミド)
Renal tubular acidosis(尿細管性アシドーシス)
Diarrhea(下痢)
Ureterosigmoidostomy(尿管S状結腸瘻)
Parental Saline(NaCl大量輸液)
もう一つはUSED PART(中古という意味)
Utero enterostomy(尿管結腸瘻)
Small bowell fistula(小腸瘻)
Extra chloride(NaCl大量輸液),
Diarrhea(下痢)
Pancreatic fistula(膵液瘻)
Addison's disease(アジソン病)、Acetazolamide(アセタゾラミド)
Renal tubular acidosis(尿細管性アシドーシス)
Tenofovir and topiramate(テノホビルやトピラマート(抗てんかん薬))
続いて、非AG開大性代謝性アシドーシスの際は尿中アニオンギャップ(尿AG)と尿浸透圧ギャップの計算は鑑別に重要になる。
尿AGは尿中アンモニアの排泄の指標となる。
尿AG=尿Na+尿K−尿Cl
=未測定陰イオン−未測定陽イオン(アンモニアイオンも未測定陽イオンに含まれる)
つまり、代謝性アシドーシスの際には尿から酸がしっかりと排泄される(=尿アンモニアが排泄される)ので、尿中AGは負(<0)になる。正常は−20〜−50μEq/Lである。
尿中AGが正(>0)になる場合には、遠位型RTAなどの尿アンモニア排泄障害を考えなければならない。
この有用な尿中AGであるが、限界があるということも知っておく必要性がある。
・未測定陽イオン(ケトン、重炭酸、馬尿酸(トルエン中毒)など)の存在が尿AGを上昇させている場合
・リチウム高値が尿AGを低下させている場合
・腎機能低下でアンモニア排泄が抑えられている場合
などは、尿中AGの信頼性が落ちることも認識しておく。
その場合には尿中浸透圧ギャップが非常に鑑別に有用な手段になる。
尿浸透圧ギャップ=測定尿浸透圧 − [2×(UNa+Uk) + UGlu/18 + Uua/2.8]
となり、正常は10〜100mOsm/kgである。尿中アンモニアは尿浸透圧ギャップの半分であり、正常は5〜50mmol/Lになる。
なので、
尿浸透圧ギャップ/2 < 150では、尿アンモニア排出ができていないので腎臓由来の遠位型RTAを鑑別にあげる必要がある。
尿浸透圧ギャップ/2 > 400では、尿アンモニア排出が問題なく腎臓以外の原因(下痢など)を考える必要がある。
なので、トルエン中毒や糖尿病性ケトアシドーシスでは積極的に尿浸透圧ギャップを用いる必要がある。
尿浸透圧ギャップの限界としては、
・ウレアーゼ産生菌がいる場合には尿中アンモニアと尿浸透圧ギャップの関連が乏しくなる。
・アルコールやマンニトールなどの浸透圧物質の尿中排泄がある場合に尿アンモニアが増加していない割に尿中浸透圧ギャップは大きくなる。
・尿中Naや尿中Kが異常な場合
今回の尿所見としては
尿pH 7.1、尿糖 2+、尿蛋白定量 100mg/dL、尿蛋白/Cr比 0.42 mg/mg、尿Na 130mmol/L、尿K 42mmol/L、尿Cl 94mmol/L
今回の症例では尿糖や尿Uaなどはなく尿浸透圧ギャップは計算できなかったが、
尿AG=尿Na+尿K−尿Cl
=130+42-94
=78
となった。つまりアンモニア排泄がうまくできていないことがわかる。
ここで、想起される疾患は尿細管性アシドーシスである。
尿細管性アシドーシスの際に
尿AGが正になるのは基本的にdistal RTAである。
distal RTAでは尿中pH >5.3で、尿中AGが正になる特徴がある。
Proximal RTAでは尿中pH <5.3で尿中AGは負である。重炭酸などの治療で尿中pHが上昇し、尿中AGが正になる。
この症例では、尿中pH7.1で尿AGが正であり、distal RTAと判断する。
採血で下記のものが追加された。
尿酸:2.1 mg/dL
血清リン:2.9mg/dL
ここで、ふと疑問が出る。尿糖陽性、尿酸低下、血清リン低下があり、近位尿細管での再吸収が阻害されているのでは?と考える必要がある。つまり、proximal RTAの存在も考える必要がある。
この症例では画像検査で両側の腎結石を認めた。
distal RTAではアルカリ尿であり、かつ尿中カルシウム 排泄が亢進。それによってリン酸とカルシウムが結合してリン酸カルシウム結石ができたと考える。また、結石形成を阻害するクエン酸が代謝性アシドーシスと低カリウム血によって減少する。それによって、より結石を形成しやすくなる。
最終的に今回の症例は
・鎌状赤血球によるDistal RTA
・テノホビル±鎌状赤血球によるProximal RTA
によって生じていると考える。
今回の症例のように深くアニオンギャップ正常代謝性アシドーシスを考える機会も少ないのではないか?
なので、個人的には非常に勉強になった。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2020/05/22
2019/04/30
尿から色々考えてみよう (尿AGとアンモニアの小話)
今回は小話なので短く書こうと思う。
CKDにおいて尿中アンモニウムは非常に重要である。尿中アンモニア低下は腎臓、生命の予後悪化の関連性が示されている(JASN 2017)。
では、どのようにして尿中アンモニアをCKDの患者では測定すればいいのであろうか?
そもそもCKD患者で、尿AGがうまく尿中アンモニア濃度の推定に寄与しない理由としては、計算式にリンや硫酸などを含んでいないためとされ、下記のようなUAGPLUSという式が提言された。
この式を用いた場合には、尿AGと尿アンモニア濃度に一定の相関性が認められたと報告
なので、もしCKD患者で尿中NH4を測定したい場合に、UAGPLUSを用いるのがいいかもしれない。もちろん直接測定できるのが一番だが。
まず、結論から書くと尿中AGはCKD患者では尿中アンモニア測定のいい代替方法にはなりづらい。
CKDにおいて尿中アンモニウムは非常に重要である。尿中アンモニア低下は腎臓、生命の予後悪化の関連性が示されている(JASN 2017)。
![]() |
JASN 2017より |
では、どのようにして尿中アンモニアをCKDの患者では測定すればいいのであろうか?
そもそもCKD患者で、尿AGがうまく尿中アンモニア濃度の推定に寄与しない理由としては、計算式にリンや硫酸などを含んでいないためとされ、下記のようなUAGPLUSという式が提言された。
![]() |
CJASN 2018 |
この式を用いた場合には、尿AGと尿アンモニア濃度に一定の相関性が認められたと報告
されている(下図)。
![]() |
CJASN 2018 |
なので、もしCKD患者で尿中NH4を測定したい場合に、UAGPLUSを用いるのがいいかもしれない。もちろん直接測定できるのが一番だが。
あまり、注目度としては薄いアンモニアではあるが、今後は色々な場面で注目を浴びて行く可能性は高いのではないか。
2019/04/29
尿から色々と考えてみよう (理解が難しい尿中アンモニウムについて)
尿電解質を少し複合的に考えてみよう。
尿電解質はアンモニアの排出が腎臓からどのくらい出ているかを判断する情報を与えてくれる。
アンモニア?急にこのワードが出てくると身構えてしまうのは自分だけであろうか?
まず、簡単になぜアンモニアが話に出てくるのかを説明する。
まず、体は常に酸負荷の環境にさらされている。食事から酸も発生する。
その環境下で、酸を排出して酸が溜まらないようにするかは非常に重要になってくる。
排泄する方法には様々な方法があるが、肺からCO2として排泄される揮発性酸と腎臓から排泄される不揮発性酸がある(緩衝系ももちろん忘れてはいけない)。
その中で、腎臓から不揮発性酸として排泄する方法として、
①HCO3-にH+がくっついて中和する方法
②H2PO42-にH+がくっつき、尿から排泄する方法
③NH3にH+がくっつきNH4+として尿から出す方法がある。
①
②
③
UAGは正常では30-50mmol/Lである。これは、測定されないような尿中陰イオンがあるためである(尿中の主な陽イオンはNa+、K+、NH4+、主な陰イオンはCl-、HCO3-、リン酸、硫酸である)。
代謝性アシドーシスの際に、尿中アンモニウムイオンが増加するとNH4Cl(アンモニウムクロライド)として出てくるため、尿AGは陰性になる(下図A)。
尿AGが陽性であれば腎臓からのアンモニウム排泄ができていない=腎臓がアシドーシスの原因と考えられる。
では、直接尿中アンモニアなんて測定せずに、UAGを使えばいいのでは?と思うかもしれないが、このUAGの弱点を知っておく必要がある。
弱点としては、
一つは遠位尿細管に達するNaが極端に少ない場合にH+排泄が障害されるためUAGは当てにならない。目安として尿Na>20mEq/lが必要である。
もう一つは、測定できないような陰イオンがあった場合にUAGの数値が異なる値になってしまうことである。
測定できないイオン:例えばDKAやAKAの時に出るナトリウムケト酸塩、ナトリウム馬尿酸、トルエン中毒などで出る安息香酸ナトリウムなどでは尿中アンモニアが適切に排泄され、本当はUAGが陰性になるはずなのを陽性にしてしまう。これは、測定できない陰イオンがNH4+にくっついて、NH4Clとして排泄されないため、UAGを陽性にしてしまうためである。D乳酸アシドーシスでも同様なことが生じる(上図B参照)。
このような時に有用になるのが尿浸透圧ギャップである。
上の図が非常にわかりやすい。尿浸透圧ギャップは正常値は10-100mOsm/kgである。
ちなみに尿中アンモニアは尿浸透圧ギャップ÷2で求めることができる。
尿浸透圧が陽性になっている理由はNH4Clが一般的には尿中浸透圧を構成しているものであるためである。
代謝性アシドーシスの際に
尿浸透圧ギャップが150mOsm/kg未満であれば、尿中アンモニア排泄障害を考え、RTAなどの疾患を想起する(アシドーシスなのにしっかり腎臓から排泄できていない。)。
尿浸透圧ギャップが400mOsm/kgより多い場合には、尿中アンモニアが過剰に排泄されている病態を考え、慢性下痢による高クロール性代謝性アシドーシスやトルエン中毒などを考慮する必要がある。
尿浸透圧ギャップが使用の限界としては細菌などによ尿路感染などでは尿浸透圧と尿アンモニア排泄との相関性が失われる、尿の濃度が濃い場合には尿浸透圧ギャップは尿アンモニア排泄を過小評価する、アルコール(メタノールやエチレングリコール)、マンニトールなどの使用は尿中アンモニア排泄が高くない場合でも尿中浸透圧ギャップを増加させることなどがある。アルコール中毒の際には血中と尿中浸透圧ギャップが非常に診断の役に立つことは重要である。
ちょっと長くなってしまって申し訳ない。少しでも理解の助けになれば嬉しいなと思う。
尿電解質はアンモニアの排出が腎臓からどのくらい出ているかを判断する情報を与えてくれる。
アンモニア?急にこのワードが出てくると身構えてしまうのは自分だけであろうか?
まず、簡単になぜアンモニアが話に出てくるのかを説明する。
まず、体は常に酸負荷の環境にさらされている。食事から酸も発生する。
その環境下で、酸を排出して酸が溜まらないようにするかは非常に重要になってくる。
排泄する方法には様々な方法があるが、肺からCO2として排泄される揮発性酸と腎臓から排泄される不揮発性酸がある(緩衝系ももちろん忘れてはいけない)。
その中で、腎臓から不揮発性酸として排泄する方法として、
①HCO3-にH+がくっついて中和する方法
②H2PO42-にH+がくっつき、尿から排泄する方法
③NH3にH+がくっつきNH4+として尿から出す方法がある。
①
![]() |
http://fblt.cz/en/skripta/vii-vylucovaci-soustava-a-acidobazicka-rovnovaha/7-acidobazicka-rovnovaha/より引用 |
②
![]() |
http://fblt.cz/en/skripta/vii-vylucovaci-soustava-a-acidobazicka-rovnovaha/7-acidobazicka-rovnovaha/より引用 |
③
![]() |
http://fblt.cz/en/skripta/vii-vylucovaci-soustava-a-acidobazicka-rovnovaha/7-acidobazicka-rovnovaha/より引用 |
あくまでも、すべての方法は尿からH+を出すための方法である。
この中で、①、②の方法は限りがあるため、③の方法が腎臓から酸を排泄するという方法で非常に重要かつ有用となる。
ちなみに、アンモニウムイオンは近位尿細管で生成され、尿細管に分泌される。その後ヘンレ上行脚で再吸収され、細胞内でアンモニアを生成し、腎髄質の間質で高濃度に蓄積され、集合管のα介在細胞のチャネルから分泌されH+と結合しアンモニウムイオンとして排泄される。
![]() |
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3041479/#!po=56.2500 より |
話がかなり脱線してしまったが、尿アンモニアイオンの排泄が尿からどれだけ酸を排泄しているかの指標になっていることはわかっていただけたかもしれない。
そこで、非アニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスの原因が腎臓か腎臓でない場所が原因かを判断する材料として酸の排泄部位の理解が重要となる。
腎臓が原因の場合は、腎臓からうまく酸の排泄ができない=尿中アンモニウムイオン排泄は低下し、腎臓以外が原因の場合は尿中アンモニウムイオンは増加する。
尿中アンモニウムイオンの測定をすれば原因は判明する!しかし、測定できない施設が多い。その場合は間接的な方法で測定する。その方法が尿AG(Anion Gap)である。
UAG=Usodium + Upottasium - Uchloride
話がかなり脱線してしまったが、尿アンモニアイオンの排泄が尿からどれだけ酸を排泄しているかの指標になっていることはわかっていただけたかもしれない。
そこで、非アニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスの原因が腎臓か腎臓でない場所が原因かを判断する材料として酸の排泄部位の理解が重要となる。
腎臓が原因の場合は、腎臓からうまく酸の排泄ができない=尿中アンモニウムイオン排泄は低下し、腎臓以外が原因の場合は尿中アンモニウムイオンは増加する。
尿中アンモニウムイオンの測定をすれば原因は判明する!しかし、測定できない施設が多い。その場合は間接的な方法で測定する。その方法が尿AG(Anion Gap)である。
UAGは正常では30-50mmol/Lである。これは、測定されないような尿中陰イオンがあるためである(尿中の主な陽イオンはNa+、K+、NH4+、主な陰イオンはCl-、HCO3-、リン酸、硫酸である)。
代謝性アシドーシスの際に、尿中アンモニウムイオンが増加するとNH4Cl(アンモニウムクロライド)として出てくるため、尿AGは陰性になる(下図A)。
尿AGが陽性であれば腎臓からのアンモニウム排泄ができていない=腎臓がアシドーシスの原因と考えられる。
では、直接尿中アンモニアなんて測定せずに、UAGを使えばいいのでは?と思うかもしれないが、このUAGの弱点を知っておく必要がある。
弱点としては、
一つは遠位尿細管に達するNaが極端に少ない場合にH+排泄が障害されるためUAGは当てにならない。目安として尿Na>20mEq/lが必要である。
もう一つは、測定できないような陰イオンがあった場合にUAGの数値が異なる値になってしまうことである。
測定できないイオン:例えばDKAやAKAの時に出るナトリウムケト酸塩、ナトリウム馬尿酸、トルエン中毒などで出る安息香酸ナトリウムなどでは尿中アンモニアが適切に排泄され、本当はUAGが陰性になるはずなのを陽性にしてしまう。これは、測定できない陰イオンがNH4+にくっついて、NH4Clとして排泄されないため、UAGを陽性にしてしまうためである。D乳酸アシドーシスでも同様なことが生じる(上図B参照)。
このような時に有用になるのが尿浸透圧ギャップである。
尿浸透圧ギャップ=測定された尿浸透圧-計算で求められた尿浸透圧
となる。上の図が非常にわかりやすい。尿浸透圧ギャップは正常値は10-100mOsm/kgである。
ちなみに尿中アンモニアは尿浸透圧ギャップ÷2で求めることができる。
尿浸透圧が陽性になっている理由はNH4Clが一般的には尿中浸透圧を構成しているものであるためである。
代謝性アシドーシスの際に
尿浸透圧ギャップが150mOsm/kg未満であれば、尿中アンモニア排泄障害を考え、RTAなどの疾患を想起する(アシドーシスなのにしっかり腎臓から排泄できていない。)。
尿浸透圧ギャップが400mOsm/kgより多い場合には、尿中アンモニアが過剰に排泄されている病態を考え、慢性下痢による高クロール性代謝性アシドーシスやトルエン中毒などを考慮する必要がある。
![]() |
precious boy fluid より引用 |
尿浸透圧ギャップが使用の限界としては細菌などによ尿路感染などでは尿浸透圧と尿アンモニア排泄との相関性が失われる、尿の濃度が濃い場合には尿浸透圧ギャップは尿アンモニア排泄を過小評価する、アルコール(メタノールやエチレングリコール)、マンニトールなどの使用は尿中アンモニア排泄が高くない場合でも尿中浸透圧ギャップを増加させることなどがある。アルコール中毒の際には血中と尿中浸透圧ギャップが非常に診断の役に立つことは重要である。
ちょっと長くなってしまって申し訳ない。少しでも理解の助けになれば嬉しいなと思う。
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