2011/04/01

IV lines

 末梢静脈ラインを5本とることが内科board examの受験資格に含まれているので、ERに行ってきた。ひさしぶりなうえに、米国の患者さんは静脈が厚い脂肪層に埋まっていて難しいのではないかと少し不安だった。そうしたら、教え好きの看護師さんが「いま一人患者さんがいるけど、彼女は難しいから見てなさい」といって教えてくれた。静脈など全く見えなかった上に抗凝固剤を内服していたが、一回失敗して二回目で見事に成功していた。
 そのあと細かなテクニックについてレクチャしてくれた上、彼自身の腕を差し出し"Are you brave enough to put a line in me?"と言ってきた。これはお言葉に甘えていいのか迷ったが、良い機会なので"I think I am brave enough."と答えてやらせてもらった。彼もまた静脈が脂肪に埋まっていたが、手背の割と太くまっすぐな静脈にラインをとる事が出来た。「もっと刺入角度を下げて」とかその場でアドバイスしてくれたのが為になった。
 これで自信がついて、その日の夕方に本当の患者さんのところにいって、肥満患者さんと透析患者さんから2本ラインを取った。うち一本は、静脈弁に当たってカテーテルが進まなかった。しかし、看護師さんが生理食塩水をゆっくりflushして、弁を開けながら挿入するというプロの技を駆使してなんとか入った。翌日は、指導なしでラインを取り、かつ他の研修医にやりかたを教えてあげた。卒業間近になってみんな慌ててERに駆け込んでラインを取りに来ているが、多くは私の様に末梢ラインをとるなど久しぶりで不安なのだ。
 今回、Sir William Oslerの言う"See one, do one, teach one"が見事に実践された。おかげで患者さんを実験台にせず済んだ。他の不安な研修医が「どうせboardのためだ」とやっつけ仕事で慣れないライン取りで患者さんを傷つけることも防いだ。ということはHippocratesの"Do no harm"も実践したということか。もともと仲がいいERと、今までと違う形の交流ができて楽しかった。しかし、これら(末梢静脈ライン講習と手技credential)は一年目にあるべきだ。プログラムに提案しよう。