2011/12/30

enteric hyperoxaluria

フェローシップも半年過ぎて、だいぶん腎臓内科医の目でモノを診れるようになったと思っていたが、まだまだ「ぽかん」としてしまうような知らないことがある。今日も、colostomyを持つ患者さんが慢性腎不全(CKD stage 3)とPTH上昇で外来にやって来たので「二次性副甲状腺機能亢進症でしょう」と思っていたら、指導医が「なぜこの患者さんのPTHは高いの?」と聞く。
 そのあと彼が、脂肪酸やbile saltが吸収されない患者さんではenteric hyperoxaluriaが起こりcalcium oxalateの結石ができやすいことを説明した。カルシウムが脂肪酸に捕捉されてそのまま吸収されずに流出してしまうことと、小腸(回腸末端)で吸収されずに流れてきたbile saltにより大腸の小分子透過性が亢進することが主因という。
 この患者さんはtotal colectomyをしたが小腸そのものはintactそうだし、尿管結石の既往もないので当てはまるかは分からないが勉強になった。

2011/12/29

Geographic nephrology

 さきほどのBEN(Balkan endemic nephrology)の話をしていたとき、ボスが"geographic nephrology"という造語を使った。そしてKorean hemorrhagic fever(いまはHFRS、hemorrhagic fever with renal syndromeという)の話になった。これは朝鮮戦争時代に兵士が次々にかかった病気で、臨津江(イムジンガン、임진강)の支流漢灘江(ハンタンガン、한탄강)から名づけられたハンタウイルスによる。

 ハンタウイルスにも何種類かある(JASN 2005 16 3669)。アメリカのものは主に呼吸器症状を呈し、4-corner area(New Mexico、Arizona、Colorado、Utahといった南西部諸州)に多い。HFRSは主にScandinavia諸国、Balkan諸国、Koreaで報告されている。原因は不明だが、血管内皮細胞障害が主因と考えられている。

Balkan endemic nephrology

 旧ユーゴスラビア移民で血尿(dysmorphic RBCs、negative cystoscopy)とタンパク尿(Upro/Ucr 0.9)、それにCKDのある患者さんを診察して「どうも腎外症状に乏しいし、よくわからないから一通り検査して腎生検かなあ」と思いつつボスに相談したら、まず「どこの街出身か聞いてこい」という。そして戻ってくると彼がパソコンにインターネットで調べたユーゴスラビアの地図(Kidney Int Suppl 1991 34 S9–S11からの転載)を広げ、「これは何だ」という。
 何のことやらサッパリ分からずいると、この地図はBalkan Endemic Nephropathyのendemic areaを示したものだという。主に、ドナウ河の支流Sava河に沿って点在している。彼は患者さんの出自を聞いてすぐさまこの疾患を思い浮かべたらしい。もっとも、血尿はあまりみられない(urothelial tumorがあれば別だが)し、proteinuriaの程度もちょっと多いし、IgA腎症など他の疾患かもしれない。腎生検をすることになったので、結果を待つことにしよう。典型的にはtubular atrophy、severe fibrosis、それにatypiaがみられるらしい。
 雑誌のエディトリアル(KI 2006 69 644)とUpToDateによれば、病因はいまだによく分かっていない。environmental factorとgenetic factorが考えられている。前者ではochratoxin A(真菌の毒素、穀物を地中で冬季保存するためか?)、aristolochic acid(Chinese herb nephropathyの主因)などが有力視されている。後者では3q24-26あたりの遺伝子異常、それにp53異常が見つかったりしている。endemicな村に長らく住んでいても罹らない人がいたり、家族歴があっても村に長くいなければ発症しなかったりするので未だに真相は謎だ。

2011/12/15

go overboard

 カンファレンスでは二人(フェローとレジデント)が発表し、麻酔科のレジデントは腎不全患者における疼痛管理という極めてrelevantなtopicについて話した。前から思っていたが、US Medical Graduateで外科・麻酔科などのcompetitiveなレジデンシースポットを勝ち得た人達は、おしなべてとても優秀だ。

 彼女が引用していた論文(J Pain 2005 6 137)は、WHO three step analgesic ladderを元に腎臓内科医がreviewしたものだ。各薬の代謝と腎排泄、腎不全患者へのdose adjustmentの要否、腎毒性の有無などがladderの順を追って説明され分かりやすかった。Table 2は切りぬいて白衣に入れておく価値ありだ。

 Discussionのところで、ボスの先生が「わたしたち腎臓内科医は、NSAIDsに関してgo overboard(やりすぎ)じゃないかと思う」とおっしゃった。たしかにarthritisなどNSAIDsがよく効く痛みで家の外にも出られないような人に、NSAIDsは絶対禁忌というべきか。

 脱水、利尿剤、ACEI、高カルシウム血症、造影剤などと重なれば一粒のibuprofenが腎臓の命取りになることもあるだろう(し実際にみたこともある)が。患者さんの全体像をみて、riskとbenefitを計って判断することだ。さておき、go overboardという表現が気に入った(甲板を行きすぎて船から落っこっちゃう、ということ)。

TINU

カンファレンスでTINU(tubulointerstitial nephritis and uveitis)の勉強になった。要は尿細管・間質性腎炎にぶどう膜炎(たいてい両側で前房、突然発症する)が合併したもので、診断はソフトだ。そもそも症候群だから単一のentityではないかもしれない。たとえばsarcoidosisの限局型なども混ざっているかもしれず、そのうちLofgren症候群などと並んで分類されるかもしれない。
 紹介された自験例は私も少し関与したので覚えているが、眼症状が数週間~数か月おくれたので初めは何の病気やらさっぱり分からなかった。review article(Surv Ophthalmol 2001 46 195)によれば26%でぶどう膜炎が先行、15%で同時発症、そして65%で腎炎に続発したという。
 病因は分かっていないが、HLA(DRB1*02)との相関、KL-6との相関、マイコプラズマ抗原を注射したらマウスがTINUになった、IgG4との関係、など色々な人が興味を持って調べている。最近では抗mCRP(modified CRP)IgGが腎と眼の共通自己抗体ではないかという論文がでた(CJASN 2011 6 93)。
 IgG4といえば膵炎じゃない?と思っていたが、腎臓でも関係しているようだ。これはべつのトピックとして調べるが、じつはIgG4は日本で主に研究されている分野らしい。IgG4と膵炎(sclerosing)の関係を示したNEJMの論文(NEJM 2001 344 732)は信州大学が発表したし、そのreferenceをみても日本のグループの論文が多い。日本にいた時分に知らなかったのはなぜだろう。

2011/12/13

膵移植

先週は膵移植のレクチャがあって膵移植は何のためにやるのか学ぶことができた。膵移植は、1型糖尿病患者に、多くの場合はQOL(インスリンを打たなくてもよい)、そしてhypoglycemic unawarenessのために行われる。QOLを向上する以外にいいことはないのか。
 一つには、糖尿病性腎症が予防できる。ミネソタ大学の論文(NEJM 1998, 339, 69)では、膵移植後にアルブミン尿が消え、病理所見が消え、GFRも安定した(overfiltrationがなくなり、それ以後低下もしなかった)。美しい結果だが、現在糖尿病腎症を防ぐために膵移植をすることはあまりない。
 というのも膵単独の移植はgraft survivalが悪いからだ(early rejectionの良いマーカーがない)。現在はSPK(膵腎同時移植)が主流だ。これなら腎臓がrejectionのsentinel organになる(拒絶が始まればScrが上昇する)。別にPAK(腎移植後の膵移植)もあるが、腎・膵が別のドナーからなので抗原性が高くなる。
 では、SPK(膵腎同時移植)で得られるメリットは何か。Northwestern大学のretrospective studyによれば、患者さんが長生きできる(Transplant 2001, 71, 82)。Cadaveric kidney transplant、waiting list群と比べての話で、living-donor kidney transplantとは同じくらいという結果だった。膵腎同時移植のドナーはcadavericだがとても若い(たいてい30歳まで)ことと関係しているかもしれない。
 また、心血管疾患が予防できるかもしれない。これは1型糖尿病で血糖コントロールにより心血管疾患が防げるというDCCTスタディ(NEJM 2005, 353, 2643)から敷衍した希望的な見方で、実際に高血圧がよくなった(Circulation 2001, 104, 563)とか、頸動脈内膜肥厚が改善した(Diabetes 2001, 50, 496)とかの論文はある。
 ほかに、糖尿病性網膜症を良くしたという報告はあるし、実際経験されるらしい。糖尿病性神経症や胃麻痺(gastroparesis)は、神経伝達速度がやや向上したという報告は有るが、経験的には良くならないそうだ。膵腎同時移植はうちのVAがVAのなかでは全米で唯一の移植施設であり、これから触れる機会も多そうだ。

2011/12/08

話を聴く

 外来で診た患者さんの話をよく聴くと、患者さんとrapportを築きやすい。大学病院の専門内科外来なので、何人もの医師に会い、長い経過で、みんな「あれでもない、これでもない」と言われてここに紹介されるのだ。だから、ある程度自分に考えがあったとしても、いきなりそれを告げるのではなく、まずは相手の話を聴くほうがコミュニケーションがうまくいく。

 さてそんな患者さん達の中で、Scrがある薬(抗高triglyceride血症薬)を飲んでから上昇したという人がいた。私はそのクラスの薬が腎障害をおこすという話は聞いたことがなかったし、acute interstitial nephritisのサインもないし、クレアチニンの排泄を促進するという(そういう薬もある、たとえばST合剤)話も聞いたことがない。

 でも他にacuteなcreatinine riseを説明する仮説もあまりなく、幾つかの追加検査をすることにはしたが、その抗高triglyceride血症薬をやめてみれば?と思った。そもそもこの患者さんはこのクスリを始める前から高脂血症などなかったし、statinに対するintoleranceもないのだ。そして追加検査もあらかた陰性で帰って来た数ヵ月後、血液検査の結果をみると果たしてScrはクスリを飲む前のbaselineに戻っているではないか。

 電話してみると患者さんとその妻はもちろん喜んでいたし、彼らは最初からこのクスリのせいではないかと疑っていた(のに誰も聞いてくれなかった)から尚のことだった。話を聴いてくれてありがとう、"You are such a wonderful man!"とかいうからこちらも嬉しかった。それからも彼らが何かで外来に連絡するたびに「あの先生はすばらしい」みたいなことを言ってくれるので、なんだか照れる。

SRC

Grand Roundで強皮症腎(scleroderma renal crisis, SRC)の話がでた。いつ移植すべきかというのが争点だった。というのも強皮症腎はmalignant hypertensionのひどい例で、renin-angiotensin-aldosteroneを効果的にブロックできれば腎機能が回復しうるからだ。最近のスタディ(英誌QJM 2007 100 485)では36%が透析を必要とせず、23%が一時的に透析を必要とし、41%が透析依存になった。一時的にといっても、一年半くらいたって腎機能が回復して透析不要になることもある(Ann Int Med 2000 133 600)。

 では移植を急ぐよりも、じっくり透析をしながらでも回復を待っていたほうがいいのかという話になる。ある論文はwaiting listに載って移植を待つよりも移植したほうが生存率がよいという(AJT 2004 4 2027)。しかしこのsurvival curveはlead-time biasとselection biasがあってそのままは受け入れられない。移植群は移植した日からの生存率、waiting list群はリストの載ってからの生存率だし、移植を受けた群はリストにのった中で「この人なら移植しても大丈夫」と思われた人達だからだ。

 もう一つの論文は、disease recurrenceがどれくらいどういったリスクのある患者に起こるかを調べたもの(AJT 2005 5 2565)だ。彼らの自験例とliterature searchによれば、disease recurrenceによりgraft lossになった群では強皮症腎からESRDに移行する期間が極めて短く(直後から二週間以内)、透析から移植までの期間も短かった(2ヵ月から2年)。UNOS(移植患者データベース)も調べたが、underreportedなせいであまり有益な結果は得られなかった。

 そもそも私は強皮症腎を診たことがないし、病理上"onion skin"と呼ばれる血管壁の肥厚と多層化がみられること、TMA(thrombotic microangiopathic anemia)を呈しうることなども知らなかった。Captoprilを治療に用いることは知っていた(それだけならおそらく内科医なら誰でも知っているだろう)が、用量やルート、短時間に血圧をみながらtitrateしていくことなどは調べてやっと知った。

 毎日学びがあって退屈しない。そういえば先月、ACEIのうちどれが腎排泄だったかを調べたのにもう忘れてしまった。たしかenalaprilは腎排泄、lisinoprilは腎排泄ではなかったはず。captoprilはどうだったか。またTMAに関するreview(Curr Opin Nephrol Hypertens 2010 19 372)も印刷したきりまだ読んでいない。一歩一歩やっていくしか、ない。


2011/12/04

FGF23 induces LVH

Journal clubで"FGF23 induces LVH"(JCI 2011 121 4393)を発表した。これは、①慢性腎不全の患者さんは心疾患で亡くなる、②慢性腎不全の患者さんではFGF23血中濃度が高い、③FGF23濃度は左心肥大に相関する、④FGF2は心肥大を起こす、という研究結果を踏まえて行われた実験だ。

 15ページもある長編で、実験も多い。慢性腎不全cohortをcross sectionalとprospectiveに調べ、in vitroでFGF23を心筋に振りかけて調べ、FGF23がどの受容体や細胞内シグナルを用いるか調べ、in vivoでマウスにFGF23を注射して、さらにFGF23が高レベルなマウス(kl/kl)や慢性腎不全モデル(5/6腎摘ラット)を用いた。

 分かったことは多い。FGF23がFGF2と同様に病的な心肥大を起こすこと。それはFGF受容体を介すること。従来知られていた、FGF23のリンやビタミンDに関する作用に必要なKlotho co-receptorに依存しないこと。細胞内シグナルは、FGF2が用いるMAPKではなくcalcineurin-NFATであること、など。

 この実験から日常臨床に翻って言えることは、腎臓内科医は患者さんのリンをメチャメチャ本気で下げなければならないということだ。高リン血症が慢性腎不全患者における心疾患および死亡のリスク因子であることはずっと前から知られていたし、KDOQI guidelineもリンの上限を5.5mg/dlに推奨している(AJKD 1998, 31, 607-17などが典拠になっている)。高リン血症を放置するとFGF23濃度が上がってしまう。


2011/12/03

GnRH analog

ついでだからcyclophosphamideによる女性不妊のことも少し勉強した。さっきの論文(後者)がじつは女性患者にGnRH analog(triptorelin、3.75mg IM every 28 days)を投与するスタディも行っていて、投与群では下垂体を鈍磨させ卵巣をいわば冬眠状態にして、cyclophosphamide終了後にovarian failureが防がれた。非投与群はovarian failureになった。
 他にも重症SLEで効果をあげた論文(Arthritis Rheum 2005, 52, 2761-67)などいくつかの研究結果が紹介されていた。そのうちmeta-analysisが出るかもしれないが、どの論文もnon-randomizedあるいはnon-controlled studyなのでどこまで信憑性をもって有用性を示せるかは謎だ。ともかくGnRH analogは"It doesn't hurt"という論理でおそらく広く行われていると思われる。

Sassari大学

Cyclophosphamideの毒性にも色々あるが、しばしば(ことに小児科領域で)問題になるのが不妊だ。男性不妊にはsperm bankを勧めるが、testosterone療法も試されてている。イタリアSassari大学のグループ(サルディニア島にある)による論文がでてきた(Ann Int Med 1997, 126, 292-295、それにAJKD 2008, 52, 887-896)。
 前者では、testosterone 100mg IM every 15 daysをIV cyclophosphamideと一緒に受けた群(n=5)が、IV cyclophosphamideだけ(n=5)、PO cyclophosphamideだけ(n=5)の群に比べて治療完了後、三か月、六か月たってsperm countが有意に保存されていた。
 後者はpilot studyであった前者の結果を受けて行われたので、randomizationは行われなかった。Testosteronのdoseを増やして(250mg IM every 15 days)、sperm motilityやsperm structural abnormalitiesの保存、testosterone levelの向上、FSH levelとLH levelが変わらないことなども調べた。こういうデータは、自分が患者さんを診療するときに少なくとも根拠にできるから有用だ。

UNC Chapel Hill v. EUVS

 今日はrenal vasculitisの講義があった。先生はUNC Chapel Hillの出身だ。UNC Chapel Hillといえば糸球体腎炎の全米における最大のセンターであり、全米屈指の腎臓内科センターらしい。そんなことも知らなかった。そんな先生が「悔しいけどEUVS(欧州の血管炎研究グループ)のほうが質の高いスタディをしてるのよねー、でも彼らは論文を発表するのが遅い!」とか言うのを聞くと「本場で鍛えた人は違うなあ」とか思う。

 さてそんな先生の講義で分かったのは、腎血管炎(ANCA-associated vasculitits)の治療が9年前と変わっていないことだ。IV cyclophosphamideのほうがPO cyclophosphamideよりも短期間で積算投与量が少なく毒性を減らすことができるらしい。maintainanceにはAZA(azathioprine)のほうがMMF(mycofenolate mofetil)より優れている(EUVSのRCT、NEJM 2003, 349, 36-44)。

 血漿交換も、これまたEUVSがRCTをしており(MEPEX study: JASN 2007, 18, 2180-2188)腎機能の悪い例(Scr 5.8以上、あるいは透析を要する)では血漿交換とcyclosporine(とステロイド)を併用した群でESRDへの進行が有意に防がれた。彼らのprotocolが"7 exchanges in 14 days, exchange volume of 60mg/kg/session, with albumin replacement"だったので、皆それに従っている。

 以前に紹介したRAVE trialも、腎臓内科医(やリウマチ内科医)が「cyclophosphamideよりも毒性の少ないクスリはないものか?」と何年もかけて探し求めた文脈の中で生まれたと気付かされた。それでcyclophosphamideとrituximabを組み合わせようなどという話にはならないわけだ。MTXなども試され、重要臓器が冒されていないケースでは関節痛などの症状を緩和するらしい。