Grand Roundで強皮症腎(scleroderma renal crisis, SRC)の話がでた。いつ移植すべきかというのが争点だった。というのも強皮症腎はmalignant hypertensionのひどい例で、renin-angiotensin-aldosteroneを効果的にブロックできれば腎機能が回復しうるからだ。最近のスタディ(英誌QJM 2007 100 485)では36%が透析を必要とせず、23%が一時的に透析を必要とし、41%が透析依存になった。一時的にといっても、一年半くらいたって腎機能が回復して透析不要になることもある(Ann Int Med 2000 133 600)。
では移植を急ぐよりも、じっくり透析をしながらでも回復を待っていたほうがいいのかという話になる。ある論文はwaiting listに載って移植を待つよりも移植したほうが生存率がよいという(AJT 2004 4 2027)。しかしこのsurvival curveはlead-time biasとselection biasがあってそのままは受け入れられない。移植群は移植した日からの生存率、waiting list群はリストの載ってからの生存率だし、移植を受けた群はリストにのった中で「この人なら移植しても大丈夫」と思われた人達だからだ。
もう一つの論文は、disease recurrenceがどれくらいどういったリスクのある患者に起こるかを調べたもの(AJT 2005 5 2565)だ。彼らの自験例とliterature searchによれば、disease recurrenceによりgraft lossになった群では強皮症腎からESRDに移行する期間が極めて短く(直後から二週間以内)、透析から移植までの期間も短かった(2ヵ月から2年)。UNOS(移植患者データベース)も調べたが、underreportedなせいであまり有益な結果は得られなかった。
そもそも私は強皮症腎を診たことがないし、病理上"onion skin"と呼ばれる血管壁の肥厚と多層化がみられること、TMA(thrombotic microangiopathic anemia)を呈しうることなども知らなかった。Captoprilを治療に用いることは知っていた(それだけならおそらく内科医なら誰でも知っているだろう)が、用量やルート、短時間に血圧をみながらtitrateしていくことなどは調べてやっと知った。
毎日学びがあって退屈しない。そういえば先月、ACEIのうちどれが腎排泄だったかを調べたのにもう忘れてしまった。たしかenalaprilは腎排泄、lisinoprilは腎排泄ではなかったはず。captoprilはどうだったか。またTMAに関するreview(Curr Opin Nephrol Hypertens 2010 19 372)も印刷したきりまだ読んでいない。一歩一歩やっていくしか、ない。