2011/12/04

FGF23 induces LVH

Journal clubで"FGF23 induces LVH"(JCI 2011 121 4393)を発表した。これは、①慢性腎不全の患者さんは心疾患で亡くなる、②慢性腎不全の患者さんではFGF23血中濃度が高い、③FGF23濃度は左心肥大に相関する、④FGF2は心肥大を起こす、という研究結果を踏まえて行われた実験だ。

 15ページもある長編で、実験も多い。慢性腎不全cohortをcross sectionalとprospectiveに調べ、in vitroでFGF23を心筋に振りかけて調べ、FGF23がどの受容体や細胞内シグナルを用いるか調べ、in vivoでマウスにFGF23を注射して、さらにFGF23が高レベルなマウス(kl/kl)や慢性腎不全モデル(5/6腎摘ラット)を用いた。

 分かったことは多い。FGF23がFGF2と同様に病的な心肥大を起こすこと。それはFGF受容体を介すること。従来知られていた、FGF23のリンやビタミンDに関する作用に必要なKlotho co-receptorに依存しないこと。細胞内シグナルは、FGF2が用いるMAPKではなくcalcineurin-NFATであること、など。

 この実験から日常臨床に翻って言えることは、腎臓内科医は患者さんのリンをメチャメチャ本気で下げなければならないということだ。高リン血症が慢性腎不全患者における心疾患および死亡のリスク因子であることはずっと前から知られていたし、KDOQI guidelineもリンの上限を5.5mg/dlに推奨している(AJKD 1998, 31, 607-17などが典拠になっている)。高リン血症を放置するとFGF23濃度が上がってしまう。