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2015/05/18

HRS

 肝硬変においては門脈圧亢進とbacterial translocationに伴う腸管NO産生によるsplanchnic vasodilatationで血液のpoolingが起こり、結果effective arterial blood volumeが減って腎臓がunder-filledになる(NEJM 2009 361 1279)。この大前提をHRS(hepatorenal syndrome;肝腎症候群) physiologyと呼んだりしていた。しかしHRSとHRS physiologyは少し違う。HRSは、HRS physiology以外の要因がないにもかかわらず純粋なHRS physiologyで腎が干上がってpre-renal azotemiaになることを言う。

 だから理論上はHRSでは肝臓がすべて悪くて腎臓はまったく悪くない(から肝移植すればよくなるはずだし、ドナー提供意思のあるHRS患者さんが亡くなってその腎を移植すれば正常に機能するはずである、あくまで理論的には。それについては以前に書いた;リンク1リンク2リンク3リンク4リンク5)。つまりHRSは利尿剤によるeffective arterial blood volumeの減少、低アルブミン血症、出血性ショック、NSAIDsなど薬剤、B/C型肝炎・ウィルソン病など肝臓にも腎臓にも障害を起こすものなどを除外して診断する。具体的な診断基準は(AJKD 2012 59 874);

 ①腹水のある肝硬変
 ②S-Cr>1.5mg/dl
 ③二日以上利尿剤を中止しアルブミンを負荷(1g/kgまたは100g)してもCrが改善しない
 ④ショックがない
 ⑤腎毒性の薬剤使用がない
 ⑥腎実質の疾患がない(蛋白尿>500mg/d、血尿>50RBC/hpf、腎エコーの異常所見)

 心腎症候群は大して臨床的意義なく五分類されているが、肝腎症候群は1型と2型に分かれその臨床的意義は大きい。1型HRSは急速に腎機能が悪化するものをいい、2週間以内でS-Crが倍になるか2.5mg/dl以上に達する。治療しなければaverage median survivalは2週間だ。2型HRSは1型に当てはまらないより緩徐な腎機能の悪化をいう。2型HRSのaverage median survivalは約半年とされる(下図)。


 1型HRSは基本、肝移植が第一選択だ。そうしないと死亡率が余りに高いので、MELDスコアにもS-Crが入っているわけだ。しかし肝臓がどっかに落ちているわけではないので、それまでは血管収縮薬とアルブミンの併用が行われ、データがあるのはterlipressinだがmidodrineやnorepinephrineを用いることもある。2型HRSの治療も根治的には肝移植だが、こちらは治療の有効性を示すよいデータがあまりない。この論文は大容量腹水穿刺(+アルブミン補充)、norfloxacin(bacterial translocationを防ぐためだろうか)、血管収縮薬がリストされていた。大容量腹水穿刺を繰り返すのが面倒ならALFApump®といって持続的に腹水を膀胱に流すデバイスを使ってもいいかもしれない(下図;日本にもあるのかな)。



 HRSの予防は良いデータがない。アルブミンのルーチンな補充は現在では推奨されていない。Norfloxacinの予防内服は小さなデータがあるようだ。急性アルコール性肝炎におけるHRSの予防でpentoxyfyllineが試されたことがある(がpentoxyfyllineはHRS予防じゃなくてもアルコール性肝炎にどのみち用いられるはず)。V2 selective receptor blocker(vaptan)が予防するかもしれない。データがないから著者も小さなスタディを見つけて書きたい放題だ。
 とまあHRSについて書いたが、うえに紹介したNEJMとAJKDのレビューが秀逸なのでそれを参考にしたらいいと思う。教科書的な投稿になってしまって申し訳ない。もっと熱血だったり面白みがあったりしたほうがこちらも書き甲斐があるし読者のみなさんも読み甲斐があるだろうに…。でもまあいいか、たまにはこういう平穏な投稿があっても(朝カンファで「HRSだけで30分語れる」と発言したら「じゃあやって」と言われたので有限実行で書いている)。

 [追加]HRS-type AKIに関する国際腹水クラブのレビューが出た(J Hepatol 2015 62 968)。まだ詳しく読んでないが、診断基準からS-Crの値が消えて、そのかわりに国際腹水クラブが提唱するAKIのステージングを採用している。治療の基本原則とコンポーネントはほぼ変わりないようだ。

2012/10/11

起死回生

 こんな風になりたいな、と思うスタッフの言葉があった。Renal Grand Roundでのこと。テーマはMARS(Molecular Absorbent Recirculating System、俗に言う"肝臓透析"の一つ)。テクノロジーについて解説した前編と代わり、後編は質の低い臨床データと結論のないメタアナリシスをさんざん見せられ、しかもみな欧州のスタディ(米国では薬物中毒にのみ適用)だ。

 演者の声も暗く単調だし、みんな退屈した。さらに「こんなデータもないものを実験的に使うんじゃない」「ECMOと一緒だ、2~3の生存例があるだけで、それが有効性の証拠になり、以後効いているか効いていないか分からないのに使われ続けている」と不満を口にする人も。私も「今日は収穫なかったな、うたた寝すればよかった」と思っていた。

 すると、一人のスタッフが「Amanita(テングタケの一種)の治療にはMARSの他にもあるよね、Milk Thistle(マリアアザミ)の種から抽出した、あれなんだっけ?」と発言した。演者も「ありますね、えっとあれは…」と名前を思い出そうとした。先生によればこの薬はキノコ毒素(amatoxin)による肝障害を予防する効果があるという。あとで調べるとSibilininと分かった。

 キノコ摂取から24時間以内までOK。米国では治験を行っているPI(primary investigator)に電話するとまるでマジックのように(FEDEXよりも速く)届けてくれるらしい。そこで少し笑いが起き、さらに別の先生が「tubing systemでもあるのかな?」と冗談をいい、みんな大笑いしてお開きとなった。私も、会の内容がイマイチで雰囲気が悪くても、さりげなく学びを提供し、笑いを取りたいものだ。


2012/06/21

Thin Red Line between SLK and LTA 2/4

 では、どんな人が肝臓移植後に腎不全が残るか悪くなるのか。これがmillion-dollar questionだ。1990-2000年、つまりMELD前の時代のSRTRデータを分析してCKD(GFR30未満、あるいは透析依存)のcummulative incidentを調べた論文があり、それによれば肝移植後のCKD累積発病率は5年間で18%だった(NEJM 2003 349 931)。さらにmulti-variate Cox regression analysisを行い、年齢、移植前のGFR、移植前の透析、C型肝炎、高血圧、糖尿病などがリスク因子とわかった。

 もう少し系統的に言うと、①移植前の腎機能(肝腎症候群、それ以外の急性腎障害、慢性腎臓病、透析期間)、②CNI(calcineurin inhibitor、tacrolimusとcyclosporine)、③年齢、④周術期の腎障害、⑤C型肝炎とそれに関連した腎炎、⑥BKウイルスなどを考慮する必要がある(JASN 2007 18 3031)。もっとも、肝移植後のBK腎症はあまり多くないらしいが(Transpl Infect Dis 2006 8 102)。

 ①についてメインに取り上げると、2002-2007年のUNOSとUSRDS(United States Renal Data System)データを両方つかって肝移植までの透析期間と移植後の腎機能を分析した論文がある(Liver Transplantation 2010 16 440)。透析期間が30日未満の群では70%が移植後透析不要になり、30-60日の群で56%、60-90日で23%、90日以上で11%だった。「透析不要になったのは患者さんが亡くなったから(is this death-censored)?」という批判に答えるため各群の移植後生存率も示され、透析期間が90日以上の群を除けばsurvival curveはほぼ同じだった。

 また、2000-2005年にかけてのペンシルベニア大学のデータでは、移植前にクレアチニンが1.5mg/dl以上の期間が12週間以上続いた群で約25%が5年間でGFR以下になったのに対し、12週間未満はほんの数%しかならなかった(Liver Transplantation 2008 14 665)。しかしこれらのデータは腎機能障害の原因によって患者さんを分けていないので、「肝腎症候群(HRS)のように肝移植後に腎機能が戻ると考えられている例でも、腎不全が長引けば肝移植しても腎機能は戻らないの?」という問いには答えられない。

 HRSについては、1988-2004年にかけてのUCLAのデータがある(Arch Surg 2006 141 735)。HRSで、透析期間が30日以下で、肝臓のみ移植された80人は、術後にmedianで9日間透析を要したが、ほぼ全員(約95%)が一か月もすれば透析不要になった。ただし生き残ればの話で、この群の1年生存率は66%だった。それに対し、肝腎症候群でSLKを受けた患者さんの生存率が透析期間によって異なるかを調べたところ、8週間未満で64%、8週間以上で88%だった。例によって、これが腎臓を一緒に移植したからなのかは、分からないのであるが。

 「腎臓病の種類によって予後が違うというなら、腎生検してはどうか?」というスタディがメイヨークリニックでなされた(AJT 2008 8 2618)。2005-2008年にかけて44件のどっちつかずの症例について腎生検したところ、じつに多彩な病変が見られた。43%がHCV陽性であったせいもあるだろうが。これらは、生検しなければ分からなかったであろう、というのも血尿やタンパク尿が見られた例は約半分しかなかったし、ましてFENAはほぼ全例1%以下(underfilled kidney、門脈圧亢進により腎臓が干されているということ)だった。

 彼らの結論は、生検結果が①糸球体硬化が40%以上、②間質線維化が40%以上、③びまん性のMPGNのいずれかが見られれば腎予後不良としてSLKに振り分けるというallocation ruleが適切であったというものだ。移植後のフォローアップ(GFRなど)でみるかぎりplausibleな結果だった。inter-observer variabilityもなかったという。しかし見逃せないのは二単位以上の輸血、あるいはIR(interventional radiology)による止血手技を必要とする合併症が18%に見られたことだ。つづく。


Thin Red Line between SLK and LTA 3/4

では、肝腎同時移植のdisadvantageはないのか。私は、患者さんを肝腎同時移植でリストに載せ、一度肝臓のみのオファーが来たが「やはり腎臓も一緒がいい、きっとすぐに両方のオファーがくる」と断り、結局オファーが来る前に容態が悪化してリストから外れ、ついに帰らぬ人となった経験がある。

 もっともこんなことは普通は起こらない。ただしうちの地域では、MELDスコアの高い(29以上)患者さんがいれば、地域内なら州外からの肝臓でもその人に真っ先にあげるという取り決めがある。しかしこの取り決めには、その際腎臓は肝臓についてこないという落ち度があるのだ。州(local OPO)レベルでは、腎臓は肝臓についてくる。

 MELDスコアの高い患者さんに臓器を融通する取り決めについては、現在全国レベルで議論がなされておる。うちの地域の実験的な取り組みは、総じて肝臓病患者さんの死亡率を低下させなかったので、MELDスコアを上げて35以上で融通しようという線で話が進んでいる。何年先に導入されるかは分からないが、このルールの草案にはすでに腎臓が肝臓についてくる旨明記されているらしい。

 SLKは、腎臓のinefficient useではないのか?という懸念についても、いくつかデータがある。まず、腎臓単独で移植した場合(KTA、kidney transplant alone)に比べてSLKは成績がずっと悪い。2002-2006年にかけてのUNOSデータを分析したところ、SLKの12-month graft survivalが約70%なのに対し、KTAは約90%だった(Transplantation 2008 85 935)。SLKでは例のimmuno-protective effectによって拒絶は少ないかもしれないが、そもそも患者さん自体が亡くなっているのかもしれない。

 また、高齢(65歳以上)で移植時に透析を受けていた場合、LTAでもSLKでも1年患者生存率は他の群にくらべて格段に悪い。2002-2004年にかけてUNOSデータを分析したところ、SLKで約65%、LTAで約50%だった。おなじ高齢者でも、腎臓のみを移植する場合、1年患者生存率はnon-ECD腎で93%、ECD腎で91%だ。患者さんが一年以内に亡くなるのに、腎臓をあげてどうするの?(それだったらその腎臓を他の腎臓病患者さんにあげたほうがいいのじゃないの?)という疑問が起こる。つづく。


Thin Red Line between SLK and LTA 4/4

 このようにさまざまな立場からさまざまな希望があるのに、データは完全でないし、それでも肝臓のみ、肝腎同時移植、という決断を日々くださなければならない。それで、偉い人たち(国内大規模移植センター長、腎臓内科、肝臓内科、移植外科など)が集まって会議を開いた。2006年に最初に集まり、2007年にもう一度集まり、コンセンサスなるものを提唱した(AJT 2008 8 2243)。

 それによれば、①末期肝臓病患者でCKD(GFR <30)、②AKI including HRSでクレアチニンが2mg/dl以上または透析を8週間以上必要としている、③末期肝臓病患者のCKDで、腎生検が30%以上の糸球体硬化あるいは30%以上の間質線維化を示している、の三点は例外的に自動的にSLKとしてもよいだろう、ということだった(もう一つ、④末期腎不全の透析患者の無症状な肝硬変で圧較差10mmHg以上の門脈圧亢進がある場合、というのもあるが、これは別のトピックなので又の機会に)。

 まとめると、①SLKはMELD導入以後増えているが、一方で何千人の腎臓病患者が腎臓を待ちながら毎年亡くなっている。②CKD(GFR <30)あるいは原因は何であれ透析を8週間以上必要としていればSLKをというコンセンサスは現行ではリーズナブルだろう(根拠は乏しいが)。③SLKにリストすると、うちのエリアではMELD29ルール(臓器の融通)に落ち度があるせいで腎臓がついてこないので、瀕死の患者さんは肝臓単独にくらべて長く待たされるかもしれない。④全国レベルでは政治やさまざまな立場の違いからまとまりにくいだろうが、一病院のレベルでなら絶え間なく議論してデータを集めていくことで、よりよいコンセンサスが作れるかもしれない。

 以上のような内容だった。よくもまあ、これだけの内容を30分で話せたものだ。事前に、移植腎臓内科スタッフ二人による査読を受けたことが助けになった。論文を紹介するのに、どのような情報が必要で、どのような結論と批判的考察をすべきかも少しわかるようになった。いままでこれが中々できなかったのだ、つい鵜呑みにしてしまって。移植外科、肝臓内科のスタッフも来てくれて、彼らの意見も聴けたのがよかった。

 ちょっと悲しかったのは、一般腎臓内科のスタッフが余り来ず、来ても「自分には関係ない」という感じであまり発言が聞けなかったことだ。しかし逆に、移植腎臓内科のスタッフで一般腎臓内科のGrand Roundにはあまり来ないか発言しない人もいる。こうしてフェローのあいだに全方向に蓄積した知識と経験がとても重要で、一旦フェローを終えれば自分の専門以外は(とくに移植は、それをキャリアの一部に選ばない限りは)疎くなるということだ。私は、できればどちらもと考えているのであるが。終わり。


Thin Red Line between SLK and LTA 1/4

 Renal Grand Roundで、私が不得手としている「不確かな領域について話す」発表をした。テーマは、SLK(simultaneous liver kidey transplant、肝腎同時移植)とLTA(liver transplant alone、肝のみ移植)についてだ。確たるデータがないなかで、幾つかの論点を挙げ、関連するデータを批判的に考察し、現時点のコンセンサスを紹介し、自分の立場をまとめる。よい訓練になった。

 まず、SLKは2002年にMELD(Model for End-stage Liver Disease)が採用されて以来増えた。MELDは肝臓病患者さんが移植を待ちながら亡くなることがないようにリスク評価するモデルで、腎機能がとても大きなウェイトを占める。そのため二つのジレンマが生じることになった。ひとつは、腎機能の悪いこれらの患者さんに腎臓も移植するべきか。もうひとつは、腎臓病がメインで透析依存しているが軽度の肝硬変もある患者さんに、肝臓も移植するべきか。

 今回は前者のジレンマについて話した。SLKのメリットは、survival benefit、透析(が肝移植後に必要だった場合)を避ける、KAL(kidney after liver、肝移植後の腎移植)を避けるなどだ。問題は、腎機能が肝移植後にもどった場合腎臓は他に必要な人にあげればよかったということになる、肝腎同時移植は待ち時間が短いのに臓器・患者さんともに成績が悪く、腎臓移植を待ちながら亡くなっている何千人もの腎臓病患者に対して不公平ではないかということ。

 Survival benefitについては、2002-2005年にかけてSRTR(Scientific Registry of Transplant Recipients)データを分析したところ移植時に透析を受けていたLTA患者は、移植時に透析を受けていたSLK患者に比べ成績が悪かったという結果がある(AJT 2008 8 2243)。ただしこれが腎臓移植の有無による違いなのかは分からない。MELDスコアはLTA群のほうが高く(39、SLK群は31)、彼らは肝臓病がより重度だったのかもしれない。

 さらに1999-2004年にかけてのOPTN(Organ Procurement and Transplant Network)/UNOS(United Network for Organ Sharing)データを分析した論文によれば、移植時にクレアチニンが2mg/dl以上あるいは透析を受けていたLTA患者は、SLK患者にくらべて成績が悪かった(AJT 2006 6 2651)。それで2mg/dlというのが一つのカットオフになっているが、これまたobservationでありsurvival benefitと断言できるものではない。

 肝臓と一緒に移植された腎臓は、腎臓単独で移植された場合に比べて拒絶反応を起こしにくい。肝臓にはimmuno-protective effectがあるので、SLKもLTAもABOのみ合わせればHLA適合に関わらず移植できる(何とクロスマッチしない)。これがKALになると、二人目のドナーから腎臓を貰うので、拒絶を起こしやすい(Transplantation 2006 82 1298)。だから、「この人は肝臓移植後も腎不全が残るか悪くなる」と思うなら、肝腎同時移植したほうがよい(ただし移植して何年も生き残らないとこの利益は得られないのであるが)。つづく。


2012/03/11

Oxalate nephropathy

 先日、oxalate nephropathyについての講義があった。講義したのは、なんとレジデント時代の先輩だった(うちのスタッフ枠に応募し、面接の一環で講義していた)。この人は一緒にいた当時は威張ったところがあったが、そのあとMayoで修行しただけあって、レクチャの様子といい質問を受ける様子といい、あふれる知性に謙虚さが同居する様子で、「変わったなあ」と感心した。

 さて内容だ。Oxalateは腸管から吸収される分とendogenousに作られる分がある。腸管からの吸収には脂肪酸、カルシウムなどが関係しているが、それ以外にもSCL26A familyと呼ばれるトランスポーターや、oxalobacter formigenesという細菌などが関係していることが分かった(関係文献:Nature Clinical Practice Nephrology 2008 4 368)。

 Endogenousなほうは、glyoxylateからLDHによってoxalateになる(関連文献:JASN 2001 12 1986)。Glyoxylateはperoxisomeとcytosolのあいだを往き来できるが、peroxisomeではglyoxylateが出来過ぎないように、alanine + glyoxylate → pyruvate + glycineという反応が起きている。これを司る酵素がalaine/glyoxylate aminotransferase(AGXT)で、主に肝臓に存在している。補酵素はvitamin B6。

 Cytosolでも、glyoxylateが全てoxalateにならないようにglyoxylate → glycolateという反応が起きている。これを司るのがglyoxylate reductase(GR)だが、この酵素には他の活性(hydroxypyruvate reductase, HPR)もあって、合わせてGRHPRと呼ばれる。これも主に肝臓に存在している。

 AGXTの異常による高oxalate血症をprimary hyperoxalosis type 1(PH1)、GRHPR異常によるものをPH2という。確定診断には肝生検、DNA検査などが必要になる。治療は、尿路結石がチョコチョコでているうちは支持的でよい(食事、補水、PH1には大量Vitamin B6療法)が、腎機能が低下するとそうではない。

 というのも、PH1、PH2の患者さんではGFRが30ml/minを切ると身体でどんどん作られるoxalateが行く場を失い、どんどん溜まる。これをsystemic oxalosisと言って、calcium oxalateが骨など(基本的に全ての臓器)に沈着し痛み、貧血、神経症状などが起こる。だからoxalateを除くため早期に透析導入する(場合によっては長時間透析や持続透析が必要)。

 腎移植は成績が良くない、というのも身体中にcalcium oxalateが大量に溜まっている限り、そして酵素異常のために肝臓がどんどんoxalateを作り続ける限り、せっかく移植した腎もすぐさまoxalate nephropathyに掛かってしまうからだ。なので肝腎同時移植が推奨される。oxalateの血中濃度が戻るには時間がかかるので、大量の輔液とalkali citrateで腎を洗い流す必要がある。


[2020年1月6日追記]高シュウ酸血症には二次性もあり、脂肪酸やbile saltが吸収されない患者さんではenteric hyperoxaluriaが起こりcalcium oxalateの結石ができやすい。カルシウムが脂肪酸に捕捉されてそのまま吸収されずに流出してしまうことと、小腸(回腸末端)で吸収されずに流れてきたbile saltにより大腸の小分子透過性が亢進することが主因という。

 ・・そしてそれが、NEJMの人気コーナー、"Clinical Problem Solving"の先週号で取り上げられた(doi:10.1056/NEJMcps1809996)から、もはや世界の常識になってしまった(写真はテネシーでデビューしたガーナ出身の歌手・Ruby Amanfuによる1998年のファーストアルバム、"So Now The Whole World Knows")!




 症例は、ベースのCrが1.4mg/dlだった55歳女性が、数日間の食思不振や倦怠感のため受診したところ、Cr 11.8mg/dlであったという。腎前性・腎後性腎障害を除外されたあと、CVVHDFを行いながら腎生検したところ、シュウ酸カルシウム結晶がメザンギウムに沈着し、周囲に軽度の炎症を伴っていた。

 それだけなら非特異的だが、BMIが43kg/m2で、数ヶ月前から肥満治療薬・オルリスタット(リパーゼ阻害薬、日本では未承認)を開始された病歴が鍵になった。

 さらに、尿中シュウ酸排泄が1.06mmol/d(正常値は0.04-0.5)なこと、一次性高シュウ酸血症を疑わせる代謝異常がみられず(尿中glyoxalate・glycerate・hydroxy-1-oxoglutarateは正常)、遺伝子異常もみられなかった(上記のAGXT・GRHPRだけでなく、PH3の原因遺伝子HOGA1も正常)ことから、二次性の診断にいたった。

 本例はオルリスタットを中止してビタミンB6を投与したが腎機能は戻らず、腹膜透析依存となった。オルリスタット投与開始後は頻回に腎機能をフォローするなどの予防・早期診断が望まれる。さらに知りたい方は、レビュー論文(NDT 2016 31 375、World J Nephrol 2015 4 235など)も参照されたい。


 ・・それにしても、タイトルを"When the Cause Is Not Crystal Clear"とつけるあたり、アートだ(こちらも参照)。Cで頭韻を踏み、さらにクリスタル・クリア(とても明らかなことを意味する英語イディオム、下図も参照)と、結晶のクリスタルを掛けている。さすが、英国の著者だ。


(出典はこちら


2012/02/25

肝臓 and/or 腎臓

肝腎症候群の患者さんでは、肝臓のせいで腎臓がうまく働けないだけで、肝移植したら腎臓は正常に機能するはずである、というのが理論上の説明だ。実際、昔の論文で上手くいった例はある。一つは(NEJM 1969 280 1367)肝腎症候群で亡くなった患者さんの腎臓を別の人に移植したらちゃんと機能したというもの。もう一つは(NEJM 1973:289 1155)肝腎症候群の患者さんの腎機能が肝移植後に回復したというもの。

 注目すべきはazotemiaの期間が5-104日と比較的短かったことだ。今の指導医によれば、透析導入して3カ月たったような場合にはいくら肝腎症候群であっても、患者さんの腎が肝移植後に回復することは余りないという(要出典)。それでどんな場合に腎機能回復が見込まれ、どんな場合に見込まれないのか調べた人がいないかなと思って調べてみた。

 一つの文献(NDT 2006 21 478、single-center retrospective study)では、28人中16人で肝移植後に腎機能が改善した(透析依存にならずScrが1.5mg/dl以下)。腎機能が回復した患者さんのほうが若く術後7日目のビリルビン値が低かった。そして腎機能が回復しなかった患者さんのほうが原疾患としてアルコール性肝炎が多く、術後により透析を必要としていた。non-responderのほうが移植前のScrが少し高かったが、これは統計的にnon-significantだった。

 どうしてこんなことを調べていたかと言うと、肝硬変に腎不全を合併してGFRが25ml/minくらいまで低下した人がいて、移植外科医が「この人に(肝臓のみならず)腎臓も移植したほうがいいかな?」と聞かれたからだ。この人は肝腎症候群とはっきり言えない面があるし、GFR 25ml/min程度ですでに3か月が経過している。それで移植後に体液バランスの崩れや免疫抑制剤(calcineurin inhibitorの腎毒性)などで腎機能は低下すると考えられ、腎臓も移植するようにリコメンドした。

 肝臓だけ移植して、腎機能が悪化して透析導入になれば、そこで別のドナーからの腎移植を考えなければならないが、ドナーの数は少ないほうが免疫上都合がよい。そしてKAL(kidney after liver)移植は肝腎同時移植にくらべて成績が悪いことが分かっている。でも、肝腎移植したはいいが患者さんのnative kidneyが働き始めたら、あげた腎臓は不要だったということになる。もっとも外から見ただけでは、どちらの腎臓が働いて尿を作っているか分からないのであるが(differential GFRを調べれば別)。