では、肝腎同時移植のdisadvantageはないのか。私は、患者さんを肝腎同時移植でリストに載せ、一度肝臓のみのオファーが来たが「やはり腎臓も一緒がいい、きっとすぐに両方のオファーがくる」と断り、結局オファーが来る前に容態が悪化してリストから外れ、ついに帰らぬ人となった経験がある。
もっともこんなことは普通は起こらない。ただしうちの地域では、MELDスコアの高い(29以上)患者さんがいれば、地域内なら州外からの肝臓でもその人に真っ先にあげるという取り決めがある。しかしこの取り決めには、その際腎臓は肝臓についてこないという落ち度があるのだ。州(local OPO)レベルでは、腎臓は肝臓についてくる。
MELDスコアの高い患者さんに臓器を融通する取り決めについては、現在全国レベルで議論がなされておる。うちの地域の実験的な取り組みは、総じて肝臓病患者さんの死亡率を低下させなかったので、MELDスコアを上げて35以上で融通しようという線で話が進んでいる。何年先に導入されるかは分からないが、このルールの草案にはすでに腎臓が肝臓についてくる旨明記されているらしい。
SLKは、腎臓のinefficient useではないのか?という懸念についても、いくつかデータがある。まず、腎臓単独で移植した場合(KTA、kidney transplant alone)に比べてSLKは成績がずっと悪い。2002-2006年にかけてのUNOSデータを分析したところ、SLKの12-month graft survivalが約70%なのに対し、KTAは約90%だった(Transplantation 2008 85 935)。SLKでは例のimmuno-protective effectによって拒絶は少ないかもしれないが、そもそも患者さん自体が亡くなっているのかもしれない。
また、高齢(65歳以上)で移植時に透析を受けていた場合、LTAでもSLKでも1年患者生存率は他の群にくらべて格段に悪い。2002-2004年にかけてUNOSデータを分析したところ、SLKで約65%、LTAで約50%だった。おなじ高齢者でも、腎臓のみを移植する場合、1年患者生存率はnon-ECD腎で93%、ECD腎で91%だ。患者さんが一年以内に亡くなるのに、腎臓をあげてどうするの?(それだったらその腎臓を他の腎臓病患者さんにあげたほうがいいのじゃないの?)という疑問が起こる。つづく。