2012/06/21

Thin Red Line between SLK and LTA 1/4

 Renal Grand Roundで、私が不得手としている「不確かな領域について話す」発表をした。テーマは、SLK(simultaneous liver kidey transplant、肝腎同時移植)とLTA(liver transplant alone、肝のみ移植)についてだ。確たるデータがないなかで、幾つかの論点を挙げ、関連するデータを批判的に考察し、現時点のコンセンサスを紹介し、自分の立場をまとめる。よい訓練になった。

 まず、SLKは2002年にMELD(Model for End-stage Liver Disease)が採用されて以来増えた。MELDは肝臓病患者さんが移植を待ちながら亡くなることがないようにリスク評価するモデルで、腎機能がとても大きなウェイトを占める。そのため二つのジレンマが生じることになった。ひとつは、腎機能の悪いこれらの患者さんに腎臓も移植するべきか。もうひとつは、腎臓病がメインで透析依存しているが軽度の肝硬変もある患者さんに、肝臓も移植するべきか。

 今回は前者のジレンマについて話した。SLKのメリットは、survival benefit、透析(が肝移植後に必要だった場合)を避ける、KAL(kidney after liver、肝移植後の腎移植)を避けるなどだ。問題は、腎機能が肝移植後にもどった場合腎臓は他に必要な人にあげればよかったということになる、肝腎同時移植は待ち時間が短いのに臓器・患者さんともに成績が悪く、腎臓移植を待ちながら亡くなっている何千人もの腎臓病患者に対して不公平ではないかということ。

 Survival benefitについては、2002-2005年にかけてSRTR(Scientific Registry of Transplant Recipients)データを分析したところ移植時に透析を受けていたLTA患者は、移植時に透析を受けていたSLK患者に比べ成績が悪かったという結果がある(AJT 2008 8 2243)。ただしこれが腎臓移植の有無による違いなのかは分からない。MELDスコアはLTA群のほうが高く(39、SLK群は31)、彼らは肝臓病がより重度だったのかもしれない。

 さらに1999-2004年にかけてのOPTN(Organ Procurement and Transplant Network)/UNOS(United Network for Organ Sharing)データを分析した論文によれば、移植時にクレアチニンが2mg/dl以上あるいは透析を受けていたLTA患者は、SLK患者にくらべて成績が悪かった(AJT 2006 6 2651)。それで2mg/dlというのが一つのカットオフになっているが、これまたobservationでありsurvival benefitと断言できるものではない。

 肝臓と一緒に移植された腎臓は、腎臓単独で移植された場合に比べて拒絶反応を起こしにくい。肝臓にはimmuno-protective effectがあるので、SLKもLTAもABOのみ合わせればHLA適合に関わらず移植できる(何とクロスマッチしない)。これがKALになると、二人目のドナーから腎臓を貰うので、拒絶を起こしやすい(Transplantation 2006 82 1298)。だから、「この人は肝臓移植後も腎不全が残るか悪くなる」と思うなら、肝腎同時移植したほうがよい(ただし移植して何年も生き残らないとこの利益は得られないのであるが)。つづく。