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2018/01/10

高リン血症にナイアシン?

今回、高リン血症にナイアシンやニコチン酸アミドを使用することについて話題を触れたい。

これに関しては、いくつかのトライアルが行われ透析患者の高リン血症を下げるなどが示されているが、問題点としては治療期間が短かったり、サンプルサイズが小さかったり、研究デザインが悪かったりなどがあり、疑問視されていた。

それに対して二つの研究がしめされた。

1:Malhotra 達が報告したもので、CKD stage 3~4の患者352人をナイアシン投与群(1500-2000mg/dl)と少量投与群(50mg)に分けた。投与群ではリンが3.4→3.3mg/dl、少量群では3.4→3.6mg/dlとなり、一応統計学的な有意差はあったが、他のFGF、PTH、Ca、VitDなどの改善には寄与しなかった。この報告では、血清リンは軽度低下あるものの顔面紅潮の副作用が多く目立ったというものでnegativeな報告であった。(Clin J Am Soc Nephrol 13: XXX–XXX, 2018、doi: 10.2215/​CJN.05440517)

2:Lenglet 達が報告したもので100人の血液透析患者に経口のナイアシンかセベラマーの投与を24週間行なった。結果としては、ナイアシンではリンが6.5→5.6mg/dl、セベラマーでは7.1→5.3mg/dlとなった。リンに関しては低下はしたが、FGF23はセベラマーでは低下したが、ナイアシンでは増加し、Klothoはセベラマーで増加し、ナイアシンでは低下した。また、研究も副作用で途中で終了となっていた。(Nephrol DialTransplant 32: 870–879, 2017)

ナイアシンなどが、高リン血症に効果があるのは下図に示されるように消化管のNaPi2b受容体に阻害的に働き、Pの吸収を抑えるためと考えられている。

CJASN 2017より

現時点では、ナイアシンなどは有効な結果は出ていない。
現在少量投与のナイアシンがどうかという下記のstudyが走っている。

COMBINE
NOPHOS 

これらの結果にもよるが現段階では残念ながらナイアシンの使用を積極的には推奨はされない。




[おまけ]ナイアシンについて触れた2012年の投稿もご参照ください、当時の米国(大学病院)でどんなふうに議論されていたかの参考になるかもしれません。


2016/07/09

Renal Supplements

 2008年に冬眠するクマ(図)が尿毒症にならない仕組みにアミノ酸リサイクリングが考えられていると聴いて腎臓に興味を持っていたら、2013年にクマの論文が腎臓内科雑誌にでて、腎臓内科医は動物好きだなと改めて思った。しかしアミノ酸リサイクリングをしているのはクマだけではないらしい。アイソトープで標識したアミノ酸を用いた実験などで、じつは60kgのヒトで毎日250−300gのたんぱく質が入れ替わっており、そのうち100−120gが筋肉だという(CJASN 2016 11 1131)。しかし、それだけのたんぱくを全部CO2まで異化分解して1から作りなおすのは大変なのでアミノ酸リサイクリングをしており、結局1日に補うたんぱく必要量は50-80gで済んでいる。

 さてこのたんぱくターンオーバーのバランスは加齢やCKDで崩れる傾向にあり、加齢では同化合成にかかわるmTOR-p70s6kシグナリングの抑制が関与しているといわれる。実際健康な70代の被験者にω3脂肪酸を8週間摂らせたところこの系が再活性化したんぱくが増えたという小さなスタディがある(Am J Clin Nutr 2011 93 402)。またCKDでは、たんぱく分解が増えミオシン重鎖合成パターンが変わることがわかってきている。いまのところそれらに対して打つ手はないが、ω3脂肪酸はCKD患者で摂取も少なく血中濃度も低い(ω6/ω3比は炎症や死亡と相関する)ので、これを補ってはどうかというスタディが最近でた(CJASN 2016 11 1227)。

 ω3脂肪酸とは要するにfish oilである。肉食文化のためか欧米でfish oilは有難がられており、抗炎症作用がIgA腎症に試されたりしているが(NEJM 1994 331 1194、KDIGOガイドラインの推奨レベルは低い)、EPAとDHAを2対1で配合した1日2.9グラムのω3脂肪酸を透析患者さん(CRP 0.5mg/dl以上)に12週間投与したところ、たんぱく分解は減ったが合成も減ってしまい(プラセボ群では合成は増えた)差し引きは変わらなかった。この結果はOmega-3 Fatty Acid Administration in Dialysis Patients Studyの一部で、これから他の結果も出るだろうが、ω3脂肪酸(とくにEPAとDHA)の透析患者さんへの効用については古くからまことしやかに伝えられてきたらしい(CJASN 2006 1 182)。

 ω3以外のサプリメントはどうか。よく聞くのがカルニチンとクレアチンだ。紛らわしいが、カルニチンはラテン語で肉を意味するcaro、クレアチンはギリシャ語で肉を意味するkreasに派生する(フランスの化学者Michel-Eugène Chevreulが肉汁から発見し命名した)ので無理もない。カルニチンはリシンが腎臓と肝臓でビタミンB6、ナイアシン、ビタミンC、鉄などの存在下にメチオニンのεアミノ基がトリメチル化されて生合成されるが、肉(とくにヒツジ、ヤギ、ウマなど)からも摂取される。長鎖脂肪酸がミトコンドリアの外膜を越え内膜を越えTCA回路にたどり着くためのシャトルの役割をしており、長鎖脂肪酸は安静時の骨格筋・心筋の主エネルギー源なので、よくダイエットに効くなどと言われる。

 カルニチンは水溶性で分子量が161g/molのため透析で喪失されることから、静注で補うことがある。ただし血中濃度を測って補うことは稀だ(カルニチン欠乏症という長期絶食、酵素異常、肝疾患、腎尿細管異常などに関連した病気があるので測れる;ある検査会社では総カルニチンの基準値は45-91μmol/l、遊離カルニチンは36-74μmol/l、アシルカルニチンは6-23μmol/l)。一方でカルニチンが動脈硬化に関連するという心配があるが、ひとつの研究では腸内細菌で代謝されつくられるTMAO濃度が高い場合に限るという結果だった。静注ならいいのかもしれない。

 一方のクレアチンも筋肉のエネルギー源(CKすなわちクレアチンキナーゼによりリン酸化されATPが消費される)で、何段階か経て筋肉まで届く。生合成の場合、まず腎臓の近位尿細管でアルギニンとグリシンからAGATによりguanidinoacetate、GAAができる(マウスとちがいヒトでは肝臓などにもAGATがある)。GAAはGAT2を通って肝臓に入り、GAMTによりS-adenosylmethionine(SAM)からメチル基を受け取りクレアチニンになる(SAMはS-adenosylhomocysteine、SAHになるがメチオニン回路でSAMに戻る)。

 こうしてできたクレアチンが筋と脳にSLC6A8遺伝子にコードされたCRT(Na+/Cl-依存クレアチントランスポーター)を通って入る。筋と脳でCKのタイプが違う(CK-M、CK-B、心筋はCK-MB)のはよく知られているが、CKは細胞質で二量体、ミトコンドリアで八量体だそうだ。ほかに食事から50%くらい摂取される。腎機能が低下すると、腎臓のAGAT活性が低下しGAAが減る。また尿毒素物質のグアニジン化合物、とくにβ-GPAはCRTを阻害しクレアチンの取り込みを落とす。CKD、透析患者さんにカルニチンやGAAを補充して筋肉がつくかは、まだわからない。ただしクレアチンが非酵素的に分解されたのがクレアチニンなので、補充すればクレアチニン値はあがる(クレアチンサプリメントをのむ人の急性腎障害でクレアチニン38mg/dlというのをみたことがある)。

 なおカルニチンを細胞質に取り込むOCTN2(organic cation/creatine transporter novel type 2)の常染色体劣性遺伝異常ではカルニチン欠乏になり、カルニチン大量投与を行う。クレアチンではAGAT(をコードするGATM遺伝子)とGAMTの常染色体劣性遺伝、SLC6A8のX-linked異常で脳のクレアチン欠乏症になる。前者ふたつはクレアチン大量投与で治療できるが、SLC6A8異常は脳への取り込み異常なので反応しにくいようだ。それにしても栄養や代謝の話は複雑で、私の文章など専門の人からみればベイビートーク(あのねー脂肪酸がねー、というレベル)だ。彼らはどれだけ勉強するんだろう…すごいなと尊敬する。


2012/06/17

Niacin


 ESRD(末期腎不全)の高リン血症にはPhosphate bindersを用いるが、他にNiacinが有用かもしれない。Niacinは小腸のsodium-dependent phosphate transporterを阻害することが知られており、2004年に日本グループがNicotinamideの透析患者に対する有効性を発表した(KI 2004 65 1099)。12週間の治療でmean dose 1000mg/dのnicotinamideを投与した65人の透析患者さんで、Calcium carbonateに引けを取らないリン降下(6.9±1.5→5.4±1.3)をもたらしたという論文。今読んでみるとrobustに思えるが、当時うちのJournal Clubで取り上げられた時には相手にされなかった。うちの腎臓内科は保守的で、新しい治療にそう簡単には飛びつかないのだ。

 しかし、スタッフの中には「ナイアシンは安いし、calcium-containing phosphate bindersもsevelamerも効果がない時に加えることを検討してもよい」と思っている人もいたらしく、こないだ最近のアメリカの論文(CJASN 2011 5 582)が紹介され議論になった。これは腎臓病のない患者(GFRが低くても57-58ml/min程度)約1600人を対象にした、本来はNiacinの抗高脂血症効果を調べる(そしてflushingを抑えるlaropiprantとの合剤の効果と比較する)治験を、re-analyzeしたものだ。するとナイアシン1g/d投与群でリンが下がっていた(-0.3、95%CI -0.37 to -0.29)。元の血中リン濃度が低い(3.3±0.4)ので、降下の値が少ないのかもしれないが、それでも有意な結果だった。

 Phosphate binderは、食事中のリンに結合して吸収を抑える薬なので、一日三回飲まなければならない。用量が増えると、Calcium acetate 3錠とSevelamer 3錠、計18錠/d飲まなければならない。さらにLanthanumとなると、もはや薬が食事みたいなものだ。またSevelamerとLanthanumは非常に高価だ。その点Niacinは安価で、徐放剤なら一日一錠ですむ。ほてり(flushing)がメジャーな副作用だが、少量aspirinで対応できる。元々抗高脂血症薬なので、その効果も期待できるかもしれない(ESRD患者の高脂血症とその心血管系イベントリスクは、SHARPトライアルもあって不明瞭であるが)。